百物語〜その準備において〜
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 気が付いたかしら。

あなたここがどこだかわかる?わかったら大したものね、と褒めてあげるわ。

 私の名前は八雲紫。あなたをここに呼んだ張本人よ、外来人さん。

あら、胡散臭そうな顔をしてるわね。まあいいわ。

あなたを呼んだのは他でもない、教えて欲しいことがあるからなの。

「百物語」って知ってるかしら?

外の世界だと毎年夏になると誰もがこれをするって聞いたわよ。

なんでも百人が一人一本のロウソクを持って、一人が呪文を唱えると手に持った灯火を吹き消していって、最後のロウソクを消すと怪物を召喚できるっていう話じゃないの。黒魔術みたいで素敵。

 それを一度やってみたいのだけれど、ちゃんとしたやり方がわからないのよねえ。

だから境界をいじって、あなたを呼んだというわけなの。もうだいたいおわかりかしら?

 ちゃんとしたお話が聞ければそれであなたを外の世界に帰してあげる。だからそんな怖い顔をしないで、その「百物語」というもののやり方を教えていただいてもいいかしら。

あら、違うの?

人数は百人も要らない?ロウソクが百本あれば何人でもいいのね。

呪文を唱えるのでなくて怖い話をするの?

 話が終わると一つロウソクを消して、最後のロウソクが消えるといままで話した怖い話がその場で実際に起こる……と。

なるほど、それはそれで面白そうね。俄然やる気がでてきたわ。

藍は……たしか橙をつれて買い物だったわね。じゃああなた、人を集めてきてもらえるかしら?ちゃんと「百物語」ができる程度に人数が集まったら帰してあげる。

え、説明が終わったら帰す?そういえばさっきそんな約束してたかしらねえ。

あれは嘘よ。

         †

で、そう言われてあなたは私のところに来たわけね。

まあ、紫が最初に指定した場所としては割とまともじゃない。この博麗神社に来たからには無事に外の世界には帰してあげるわ。ただ、紫の差し金となるとなにをしでかすかわからないから、すぐに帰すわけにはいかないけど。

そういえば自己紹介がまだだったわね。

博麗の巫女、博麗霊夢。それ以外はメンドクサイからいいわよね。

で、その「百物語」だっけ?

なにが面白くてそんなことやらなくちゃいけないのやら。紫も案外暇ねぇ。

言っておくけど私は行く気は無いわよ。こう見えても結構忙しいんだから。

え?それはその、神社の境内を清めたりとか――酒蔵に入ろうとする鬼を追っ払ったりとか――退治されに来る天人を追い返したりとかいろいろやることが……。

って、そんなことはどうだっていいのよ!

ともかく、私は行かないからね。そこのところ紫にもよく言っておいて。

……ちょっと、そんな顔しないでよ。まるで私が見捨ててるみたいじゃない。何を言っても私は行かないからね。私が行かなくても魔理沙とか萃香とか、面白がって行くようなのがたくさんいるでしょうに。第一、そんなことしなくてもあなたはちゃんと帰してあげるから、だから……その……ええっと。

はあ、しかたないわね。

 その「百物語」をするには人数が必要なんでしょう?私も心当たりを当たってあげるから、あなたは紫に言われた伝手をたどりなさい。こんなふうに動くなんて異変でも起きないかぎりないんだからね。

ああ、でも一つ条件をつけさせてもいいかしら。ただ働きなんてごめんだから。

あなたいまいくらもってる?

……そう。じゃあ、その半分。外に素敵な賽銭箱があるから入れてきなさい。

        †

 あはははは。

それは霊夢らしいといえばらしいぜ。ただ、恨まないでくれよな。あいつも人恋しくて腹が減ってんだ。

なに、言ってる意味がわからない?じゃあこの魔理沙さまが教えてやるぜ。

あそこはただでさえ人が来ない。人が来ないから賽銭がない。だから腹が減る。

以上だ。これよりやさしくは言えないぜ。

で、「百物語」だったな。面白そうなんで行ってもいいぜ。

たしか怪談っていうのを話せばいいんだよな。

そうそう。ついでに私も人を集めるのに協力してやるよ。

まずアリスだろ、紅魔館からパチュリーに、咲夜、レミリア。フランはたぶん無理だろうなぁ。あれ、誰か忘れてるような……まあいいか。

それに守矢神社の連中も誘ったら来るかな。

なんか霊夢と誘うメンバーが被りそうだが、なに、気にすることもないか。

ところで怪談って怖い話のことだよな。

だったらちょっと前にあんなことがあったな。あれを話すか。

聞きたいか?ならせっかくだから教えてやるぜ。

あれは数ヶ月前、家のそばの木に珍しいキノコが生えてたんだ。で、どんな味なのかと思って食ってみたんだけど、そしたら股の間から同じキノコが生えてきてだな……正直アレ以上の恐怖は感じたことはなかったぜ。

え?「百物語」って最後のロウソクが消えるといままで言った話がその場で本当に起こるのか。

……じゃあやめておくか。

         †

あら、あなたここに何の用?

太陽の花畑に進んで立ち入る人なんて馬鹿か命知らずしかいないのはご存知?まあ、その様子からしてあなたは前者なのでしょうけど。

……人里への道を歩いてて、気が付いたらここにいた?あなた気はたしかかしら。里へ行くならどう歩いてもここにはたどり着かないわよ。

けどせっかくここに来たんだもの。用件があるなら聞いてあげてもいいわよ。青い顔してないで早くお話しなさいな。

へぇ、あなた紫の使いなの。じゃあここにいるのも納得できるわね。

「百物語」?なにかしらそれ。

ふぅん、怪談ねぇ。すごくどうでもいいわね。

どうせなら紫が直接来て欲しかったわ。そうしたら一勝負でもして、結果によっては行ってあげてもよかったのに。

……ああ。それが面倒なのね、彼女。

そういうわけだから早く消え去りなさい。早くしないと苗床にしちゃうわよ。

そうそう、このあたりは日が落ちると人食い妖怪や悪い妖精なんかがでたりするから気をつけなさいね。あなたみたいなのはカモだから。

……?

ちょっとまって。

あなたその鞄に入れてるのはなに?

タカラ……フラワーキューブ?

        †

おかえりなさい。どうだったかしら?

あら、結構がんばったじゃない。

それに……幽香まで参加させるだなんて大したものね。褒めてあげる。

白々しい?うふふ、いったいなんのことかしら。

種明かしをすると幽香の畑とあなたの進路の境界をつなげたのはたしかに私よ。彼女と対面してあなたがどんな反応するか楽しみだったし。

でも幽香を説得できたのは紛れも無くあなたのおかげ。彼女ったら香霖堂でフラワーロックを買ってるのは知ってたけど、ここまでとは思わなかったわ。

さて、約束だしそろそろあなたを外の世界に帰さないといけないわね。別に私たちの「百物語」を見ていってもいいけど、最後のロウソクが消えたときにあなたの命が残っている保証がないわ。

それにあまり外来人で遊ぶと霊夢にどやされちゃうから。

ああところで、前に「百物語」と一緒に聞いたんだけど、あなたの世界には「肝試し」というものがあるらしいわね。

「肝」って内臓のことよね。それを試すんだから、なんだか宵闇の妖怪が喜びそうな話じゃない。

それで思いついたんだけど、「百物語」ではこんなお話を話そうと思うのよ。

わる〜い妖怪にだまされて使いぱしりにされた挙句、最後には食べられちゃうお話。

そう、まるであ・な・た、みたいに。

うふふふふふ……。

説明
初めての東方二次創作。語りの練習もかねてます。
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東方 語り 百物語 

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