魔動少女ラジカルかがり A.C.E. -第四話Aパート-
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「あたしの所属部署? 航空魔導師隊いうとこ。そこの機動二課や」

 

「ああ、私と同じ……ってええ!? 姉さん! オーリス姉さん!」

 

『もしもし。やあ、君の姉さんだ』

 

「何で素人を航空魔導師隊に入れているんですか! 殺す気ですか!?」

 

『七歳でそこに入った君が言うことか。……まあ素人なのは承知だ。だが早く育って欲しいのでな。午前は訓練校だし、職場でもまだ戦闘現場に出ずに担当者と組ませて災害出動とテロを想定した研修だ。On-the-Job Traningという言葉があるだろう』

 

「まあ、すぐに現場に出さないなら良いですが……」

 

『まあ、すぐにテロ現場に出動だが。そのときのトレーナーはカガリになる』

 

「ええええ、嘱託局員に任せないでくださいよ」

 

『一言で言うと、責任取れ、だ』

 

 そう言うと姉さんは一方的に通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第四話『その昔。遥か次元の彼方にアルハザードがあった。』前編

 

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪我が完治し地上本部へと復帰できるようになった頃には、すでに二月も終盤を迎えていた。

 気が付けば私も十歳になっていた。

 

 入院前はダライアスの仕事ばかりしていたので、地上本部でまともに働くのは実に十一ヶ月ぶりとなるのだろうか。

 私はようやく自分の所属課、通称蒼穹紅蓮隊に戻ってきたのだ。

 

 時空管理局地上部隊ミッドチルダ地上本部航空魔導師隊機動二課。

 

 この課は現在企業テロ対策課となっており、地上本部から来たオーリス姉さんが統括を担当している。

 

 組織の頭に魔導師を置かずに文官を置くのは地上本部の特徴である。理由は、貴重である優秀な魔導師に組織運営を兼業させるくらいなら、休息を多く取らせてその分現場へ多く出動させる、という人材不足からくる運用だ。

 

 企業テロは年々激しさを増している。

 この時期に長らく離れてしまった私は、戦果を持って応えなければならない。

 

 そんな中での悩みの種は、はやてさんの存在だった。

 

 魔力値はSランク相当。使用可能魔法もSランクまで使え、ミッドや近代ベルカのオーソドックスな魔法から、古代ベルカや地方世界の独自魔法など幅広い魔法を使うことはできる。

 夜天の主は、魔導書のバックアップを受けずとも蒐集した魔法を発動することができ、またエミュレートの実行速度も速い。レアスキルというやつだ。

 

 だが、そんな万能能力を持っていても、本人は魔導師資格すら持っていない新米魔導師。

 知識と経験が圧倒的に不足している。

 

 はやてさんはつい半年前まで自分で歩くことさえできなかった一般人だったのだ。

 幼少からシミュレーターと学習器で教育されてきた私と同じと考えてはいけない。

 

 

 課の自席に座り、背もたれに身体を預けながらはやてさんの蒐集魔法一覧を眺め、頭を悩ませる。

 

 大まかな運用方針や現場での作戦内容については隊長陣が指示してくれるだろうが、細かい部分では私が導いていかねばならない。

 魔法のリストは膨大だ。ミッド式の総合魔導師さんに丸投げしたいところだが、ミッド式以外の魔法が多すぎてどの方式の魔導師がやろうとも同じだろう。

 

 いや、このリストにないダライアス式パイロットの私だからこそ方式の偏りなくアドバイスが出来るのだろうか。

 

 これだけの魔法があるのだ。一点特化型より複数の魔法を自在に使いこなす万能型の魔導師を目指すのが良いだろう。本人も蒐集魔法だけに頼らずたくさんの古代ベルカの魔法を覚えたいと言っているし。

 古代ベルカの総合魔導師。どのような魔導師なのだろう。

 

 守護騎士さん達なら知っているだろうか。バグの影響で過去の記憶に穴があるらしいが。

 

 そういえば、シグナムさんの現所属は首都防衛隊だったか。

 地上本部に近いので何かと相談に行けそうだ。撃ち落されたときの記憶が鮮明なので、まだ少し怖いけれど。

 

 

 ヴォルケンリッターの一番の実戦的実力者であるシグナムさんが首都防衛隊に配属されたのは、本局の部隊であるミッドチルダ首都航空隊への牽制の意味が強いのだろう。

 企業テロの一番の激戦区である首都クラナガンで、地上本部が十分な働きを出来ず本局舞台に手柄を持っていかれることになってしまえば大変だ。

 

 ただの縄張り争いではない。ミッド全体の治安を守っている地上本部が、その中心地である首都の防衛だけを本局に良いとこ取りされてしまうというのは、対外的な印象が非常に悪い。また内部の士気低下も引き起こされてしまうので始末が悪い。

 

 さらに首都航空隊側も陸を敵視している局員さんが多いというので、首都圏での対立は激しい。

 

 そこへ空戦AA試験を一発で通り、実力はオーバーAAAとされるシグナムさんが即戦力として投入できれば、中解同への対応競争も新たな局面を迎えるだろう。

 

 ああ、所属からこんな組織対立の裏側を想像してしまうなんて、私もゲイズ親子に毒されてきた。

 

 私に必要なのは世渡りではなく戦場で魔動機械の性能を試すことだ。

 はやてさんと一緒の職場になってもそれは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新暦65年2月27日。中小企業解放同盟によるテロが起こった。

 

 ミッドチルダ北部の地方都市。臨海第八空港の近辺に本社を構える多次元警備会社に対する声明が出ている。

 警備会社とは名ばかりの軍需産業の一大メーカーであり、地方世界にさまざまな魔法兵器を輸出している。

 

 なるほど、中解同が狙うには十分と言える世界間交易企業だ。

 死の商人ともなれば、中解同以外の組織も関わっていそうに思える。

 

 航空魔導師隊への出動がかかる。

 今までの通りだと、警備会社を狙うと言っておきながら周囲のビル郡も徹底的に破壊しようとするだろう。

 

 地上本部から地方都市への距離は非常に遠い。

 

 周りの局員さん達は転送施設へ急ぐが、地上本部には大部隊をピンポイント転送するような設備は未だ無い。

 続く企業テロのおかげで出動が早くなったが、それでも本局のような最先端施設が多く揃っていない以上、すぐに鎮圧というわけにはいかないのだ。

 

 新調したばかりの浅緑のパイロットスーツに着替えた私は、分隊長から指令を受けはやてさんの元へと向かう。

 

「さ、はやてさん、行きますよ」

 

「お、おう」

 

 小さなリインフォースさんを肩に乗せ、はやてさんは両の拳を握って気合を入れた。これが彼女のテロ現場への初出動となる。

 技術部のラボで一通りの調査を終えたリインフォースさんは、こうしてはやてさんと一緒にいたり、書の中で休眠を行ったりしている。

 夜天の書が((融合型|ユニゾン))デバイスとしての機能を発揮するには、管制人格である彼女の仲介が必要らしい。

 

 管制人格なしの夜天の書は、蒐集魔法のエミュレーター機能を除くと一般的なストレージデバイスとさほど違いが無いとのことだ。

 容量は管理局の最先端デバイスと比べても遥かに膨大だが。

 

「み、みんなについていけばいいんやな」

 

 足の補助器を唸らせて他の局員さんと一緒に転送室へ向かおうとする。

 だが私はそのはやてさんの肩を掴む。話はまだ終わっていない。

 

「はやてさん、私たちは別行動です」

 

「え、どういうこと?」

 

「基本的に私は速度を生かした先遣隊としての行動を取ります。はやてさんはそれについてきてもらいます」

 

 これだけではまだ事情が飲み込めないのか、首を捻らせている。

 私は分隊長から貰った座標スフィアをリインフォースさんに手渡して話を続ける。

 

「蒐集した魔法の中に同世界長距離転送魔法を持っているでしょう。良いですか。本局や次元航行部隊とは違い、ここの隊では長距離転送なんていう大魔法を使える人なんて貴女くらいしかいないんです」

 

 航空魔導師隊にも高ランク魔導師は所属しているが、使用魔法は戦闘に偏っており、転送魔法はみな魔法機械に頼りきりである。

 はやてさんが蒐集した転送魔法は、ある管理世界の地上部隊所属の召喚師から奪われたもの。存分に活用させてもらわねば。

 

「リインフォースさん、その座標いけますか? テロ現場から少し離れた地上部隊の施設です」

 

「問題ない。すぐにいける」

 

「では私の武装のある格納庫へ。そこで飛びます」

 

「了解や!」

 

 魔法機械群による企業テロはすでに始まっている。急がねばならない。

 もちろん、テロが起きている都市にも地上部隊の支部があり、テロへの応戦を続けているだろう。

 だが、中解同は圧倒的戦力を誇り、各支部の持つ戦力は明らかに不足している。

 

 地上本部は軍隊ではなく警察組織。過剰戦力を持つなどとんでもない。それが、本局や海の人たちの考えだ。他の世界では、自衛軍が自分達の手で自分達の世界を守っていると言うのにだ。

 

 格納庫に向かい、以前の中解同戦でも使用したR-GRAY2とビックバイパーT301を装着する。

 

 整備は行き届いている。この前確認したのだが、私が居ない間も技術部の人たちが定期的に点検をしていてくれたらしい。

 ありがたいことだ。地上本部はエリート魔導師ではなくあらゆる技能者の日々の努力で成り立っている。

 

「リインフォース、ユニゾンイン、いくで!」

 

 夜天の魔導書が光り輝き、はやてさんがバリアジャケット姿になった。いや、騎士甲冑というのか。

 

 丸く膨らんだ白い帽子に、白と黒で構成されたコート。背中からは黒い羽が生えている。

 なのはさんもそうだが、第97管理外世界の人は鳥の羽が好きなのだろうか。

 

 魔法の砲身となるであろう剣十字をあしらった黄金の杖は、なるほど古代ベルカの魔導師の姿だ。

 髪の色が茶色から飴色に変わっている。ユニゾンの影響というやつだろう。

 

 武装局員の中にはバリアジャケットの錬度が足りず、管理局から支給される装甲服を着る魔導師も多い。

 だが、はやてさんのこの騎士甲冑は感じる魔力もバイザーからの解析結果も完璧と言えるほどの完成度で顕現していた。

 夜天の書の能力だけでなく、生来の魔力資質も高いのだろう。いや、魔力資質が高いからこそ闇の書の転生先に選ばれたのか。

 

 準備は完了。転送の前に、一言言っておこう。

 

「対中解同作戦における私とはやてさんの基本運用は、先遣部隊。誰よりも早く現場へと駆けつけることです。つまり普通に考えると、任務上の死亡率は半端ではないということです。高ランク魔導師だからこそ任される厳しい現場です」

 

 死亡、という言葉を聞いてはやてさんの顔が引きつったのが解る。

 

 だが、凶悪犯罪者を相手にする魔導師組織などそういうものなのだ。

 貴重な人材を使い潰さないためにも、最も生還率の高い私たちが先陣を切って進まねばならない。

 

「高ランク魔導師である私たちがその役目をすることで、後続の人たちの死亡率を下げることができるとも言い換えられます。私たちのすることは、皆を助けること。誇ってください」

 

 そやな、と力強くはやてさんが頷く。

 そしてはやてさんが持つ魔導書からリインフォースさんの声が響いた。

 

「転送魔法エミュレート開始します。主はやては魔法に集中を。カガリ殿は展開する魔法陣の中央へ」

 

 やれやれ、はやてさんの魔法運用について考える前に事件が起きてしまったか

 はやてさんの初出動の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はやてさんをシップに乗せ、二人で空を翔る。

 二人で並んで飛ぶより、私がこうしてはやてさんを運ぶほうが速い。

 アースラの誰かは私を地上本部最速などと持ち上げていたか。

 

 テロの区画に到着するまではまだ少し距離がある。支部からバイザーに登録してもらった通信機能を確認しながら、はやてさんと会話を続ける。

 魔力障壁のおかげで声は良く通る。

 

「管理局の魔導師のお話です。シグナムさんのようなAAAランク以上の魔道師は管理局全体で見ても5%弱。これをどう思います?」

 

「え、ううーん、シグナムみたいなすごいんが5%か……」

 

「思いのほか多いんですよね、AAAランク以上の魔道師って」

 

 AAAともなれば、地方世界の防衛機構が貧弱な都市程度なら単独で制圧できる。

 そんな強力な魔導師を時空管理局は多く抱えている。

 

「でも、地上本部の武装部門の平均魔道師ランクはC−です。低いんですよ」

 

 今のはやてさんに魔導師ランクの話をしても理解は仕切れないだろう。

 だが、今の彼女に伝えておきたいことがある。

 

「高ランクの魔道師が必要な現場は、武装部門、教導部門、都市結界維持部門くらいでしょう。補助部隊は少ない魔力で動く機械が発達していますしね。魔法研究員に高ランク魔道師なんて必要ありません。そもそも、研究員は魔道師資格より研究関連の資格をとりますからね。多数派であるデスクワークの方なんて、魔道師がいてもたいていが低ランクですよ。そんなに魔道師が余っているわけではありませんし」

 

 一気に局員で無いと理解できない単語をまくし立てる。

 はやてさんが理解できなくとも、デバイスの一部であるリインフォースさんが覚えていてくれるだろう。

 

「つまり、5%の多くは武装関連部門に固まるわけですね。それでも地上本部はC−なんですよ」

 

 本来なら5%を遥かに超える数のオーバーAAA魔導師が武装部門に固まるはず。

 第97管理外世界の教育水準は知らないが、はやてさんは解っただろうか。

 

「知ってます? 空を飛ぶためには、先天的な魔法の才能か高ランク魔道師になれるほどの特殊訓練が必要なんです。低ランク空戦試験はただの消化過程なんて揶揄されているほどです」

 

「そうなんか。私もすぐに飛べたし、ヴィータたちもなのはちゃんたちも飛んでたから知らんかったわ」

 

「ええ、そうですね。ヴィータさんたちは知らないですが、なのはさんもフェイトさんもヤマトさんも天才ですから簡単に飛んでます。でも、地上本部ではそうそう飛べる人はいません。他世界からの空中爆撃テロとかがあるのに、空の守りが薄いんですよ。ミッドチルダは」

 

 航空魔導師隊は、そんな貴重な空戦魔導師を集めた部隊だ。

 だからこそ、こうしてミッドチルダ中に駆り出され企業テロの飛行機械と戦い続けることになる。

 

「私の魔導師ランクは空戦AA。先ほどの5%にも入っていません。ですがはやてさん、あなたならAAAランクなど簡単に到達できる。……航空武装隊に居る間だけでも良いです。ミッドチルダの空の守りになってください」

 

 彼女が時空管理局に入ったのは、罪滅ぼしのためだ。罪をつぐなえるならば管理局でなくとも良かっただろう。

 

 だが、地上本部の皆は心に強い信念を持って世界の平和を守っている。

 例え本局に力を奪われようとも、自分たちの持つ信念で戦いを続けている。

 

 浮き世に絶対などというものは無く、理不尽な思いを胸にして途方にくれる時もある。

 それを乗り越える為には、確固たる信念と洞察、そして幾分かの行動力を持つ必要がある。

 

 斑鳩の物語に出てくる「信念」の一節だ。

 私は地上本部の皆ほど、ミッドチルダに対する強い思いは無い。だけれど、彼らの在り方をいとおしく思う。

 

 はやてさんにもミッドの空を守ると言うことについて何かを考えて貰いたかった。

 

「……この先が戦場なんよね」

 

 爆発の光が遠巻きに見えてきた。あの先ではこの都市の陸上警備隊と中解同の魔法兵器が戦いを続けているだろう。

 

「ああ、気分すごいアチョー入ってきたわ」

 

「アチョー?」

 

「何と言うかこう、脳天にキュッとくるような興奮っちゅーか気合っちゅーかそんなもんや」

 

 気合が入った、ということだろうか。だけれど、はやてさんの声は微妙に震えている。

 緊張か恐怖か。まあこれも予想の範疇だ。

 

「怖いですか?」

 

「あたしなー、夜天の主とか偉そうに言われておいて、魔法で戦ったことってないんよ。あははは……」

 

 なんとも乾いた笑いをするものだ。

 

「戦闘訓練は?」

 

「変な風船に魔法を当てたり、撃ってくる弾を避けたり防いだりで……実戦形式みたいんはまだ……」

 

「そうですか。では、私の初めての実戦訓練の時のお話をしましょう」

 

 はやてさんの不安の解消への助けになるか解らないが、私の経験を話してみよう。

 あれはもう懐かしい、五年近くも前のことか。

 

「魔法学校の転校生であった私は、放課後に模擬戦をしようということで同級生の人に相手をして貰ったのですが……」

 

「ですが?」

 

「容赦なしにずたずたのぼろぼろにされました。ちなみにその同級生はヤマトさんです」

 

「…………」

 

 機体のカメラアイに映るはやてさんの顔は、何とも微妙な表情をしていた。

 

「つまり、戦いに慣れていないなら、とにかくまずは防御と回避を第一に考えましょうということで」

 

 あれは戦いに慣れる慣れない関係なしの超弾幕だったわけだけれど。

 無理にヤマトさんのトリガーハッピーを伝えることも無いと黙っておく。

 

「……なるほどなー」

 

「大丈夫。本気で守りに入ったSランク相当の魔力の防御を抜ける兵器なんてそう多くは無いですよ。危なそうな相手が居たら私が言います」

 

「防御、防御、防御……」

 

 はやてさんは((防壁魔法|バリア))、((防盾魔法|シールド))、((魔力障壁|フィールド))と確認するように順に魔法を使っていった。

 魔法防御の基礎であるこの三種類を解っているなら、どうにかなるだろう。

 

「相手は機械で動作予測が付かないので、魔力障壁を基本にしていきましょう。それと」

 

 もう少しで戦場に付く。

 最後に指示を出しておこう。

 

「お仕事は犯罪者の捕縛ではなく、テロの鎮圧、魔法機械兵器の破壊です。余裕が無いなら非殺傷設定は外してください。非殺傷だと動力部の停止しか狙えません」

 

 はやてさんは一瞬押し黙ったが、やがてゆっくりと頷いた。

 

 はやてさんがまだ幼くて良かった。

 強力な非戦の倫理観が構成された後の年齢になってから戦闘魔導師への道に進むと、かたくなに非殺傷設定を外さない使いどころの難しい魔導師になることがある。

 日本はあの97サブカルチャーのフィクション世界とは打って変わって、現実での戦いに拒否感を持つ文化なので少し心配だったのだ。

 

 

 視界に高い建造物が増える。ようやく都市圏に入った。

 指揮本部がテロの標的にならないよう離れた支部からの飛行となったが、これだと後続の部隊の到着は少し遅れるだろう。

 

「……見えてきたなー。魔法機械か。ちっちゃな飛行機みたいやな」

 

 魔法で視力を上げているのだろう。敵の形状まで見えているようだ。

 私も一部のカメラアイを望遠モードにして敵影を見る。

 

「うわ、なんやあれ。えらい他と違うでっかいのがおるで」

 

 はやてさんの視線の先を追う。

 

 他の魔法機械とは遥かに違う巨大さを持った機体があった。

 肌色の装甲。見えているのは側面だろう。円形の機体には、まるで顔のような模様が浮かび上がっている。

 上下には魚のひれのような機械翼がついていた。

 

「あ、あれは……」

 

「なんやカガリちゃん。知ってるんかあれ?」

 

 あの姿には見覚えがあった。

 魔法学校時代、図書室でふと手にした本の挿絵に描かれていた異形の姿。

 中解同に何故このような機体があるのだろう。

 

 

「あれは、((幻想世界|ファンタジーゾーン))アルハザードに生息するという伝説の砂獣……コバビーチ!」

 

 

 

――――――

あとがき:一個人の魔導師の気分で都市壊滅が出来る設定の一方で、質量兵器は危険で魔法は比較的クリーンとか言ってしまうあたりがアンチ管理局のアニメ視聴者が増える一因なのかなーとか思った5%考察。

でもアルカンシェルとか作る魔法科学力で質量爆弾作ったら地球破壊爆弾程度簡単に生まれてしまいそうです。このあたりを独自設定でどうにか解釈するのがSS作家のお仕事なんでしょうか。

 

Aパート丸々使った前置きが長くなりましたが、次回ようやく対中解同戦です。

なお、首都航空隊、首都防衛隊、航空魔導師隊、名前がややこしいですが全て別物です。航空魔導師隊はStS本編でも陸なのか海なのか不明な部隊ですが、ミッドチルダにある部隊のようなので地上本部直属という設定にしています。

 

 

用語解説

■On-the-Job Traning

研修を終えた新入社員をさっさと職場に叩き込んで、トレーナーをつけて実際に仕事を体験させることで身をもって覚えさせるという職業指導手法。

嘱託魔導師といいますか派遣社員にトレーナーをさせるというのは何かが間違っている気がしますが派遣だらけの人手不足の職場ではままあること、らしいです。

今回の場合は、オーリスさんがカガリを成長させたいと思って配置した裏がありますが、きっと彼女は気づかない。

 

■なのはさんもそうだが、第97管理外世界の人は鳥の羽が好きなのだろうか。

天使とか堕天使とか片翼とかそういうサブカルチャー知識はあってもとっさには思いつけない、そんな世界間カルチャーギャップ。

ヴォルケンリッターの甲冑デザインははやて画伯によるものですが、きっとそういう感じの小説が好きなのでしょう

 

 

SHOOTING TIPS

■アチョー

アドリブでの非パターン避け、いわゆる気合避けをしているときに至る精神状態。あるいは気合そのものや、気合避け、気合避けプレイヤーなどを指すSTG用語。アチョー避けとか言います。

STGをやらない人に説明するのは難しい言葉ですが、ブルースリーの「アチョー!」が語源で、あんな状態だと言えば感覚的に理解してもらえるやもしれません。

 

■ファンタジーゾーン

ファンタジーゾーンは、セガの発売した独特でファンシーな世界観が売りの横方向任意スクロールSTGです。

敵を倒して得られたコインでお店からパワーアップアイテムを買うという、ちょっと変わったシステムがあります。買い溜めも出来ますが死んだらアイテムリセット。

セガのネットゲームであるPSOやPSUにセガのマスコットキャラソニックやファンタジーゾーンの自機オパオパを出すという微妙なファンサービスを見ていると、ソニックチームどうなってしまうんだろうと不安になります。

 

説明
■4a/13
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