魔動少女ラジカルかがり A.C.E. -第七話-
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 誰かと心がすれ違うたび、ぶつかり合うたび、ずっと思っていました。

 言葉が、気持ちが、想いの全てが人と自分は少しずつ異なった存在なのだと。

 

 だけど、言葉も、正しさも、願いも見えぬまますれ違う人がいる。

 

 必要なのは、言葉じゃなくて強い力。

 嘘も迷いも理解せぬまま、心を決めた真っ直ぐな瞳で私達は立ち向かう。

 

 

 魔動少女ラジカルかがり A.C.E. 始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第七話『鉄と魔法の一大スペクタクル!!』

 

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

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 兵器生産プラントから帰還し地上本部に戻った深夜遅くのこと。

 私は地上本部での残業に勤しんでいた。

 

 プラント内のホストマシンから入手した情報の分析、ではない。

 突入捜査の報告書作成のためでもない。

 アインハンダーの解析結果の詳細分析だ。

 

 本来なら後回しにされるであろう第三勢力の兵器の解析結果。

 それを今こうして急遽手を入れているのは、アインハンダーのパイロットが人工機人であると判明したためだ。

 

 

 人工機人とは、人体に機械部品を組み込み一歩進んだ種へと人を進化させようとする試みの元、生まれた人工生命だ。

 機械を身体の延長として追加接続することが出来、身体そのものの強度も高い。

 主に医療の分野で部分的に人を機人化させる研究が進められている。いわゆるサイボーグというものだ。

 

 機械の出力を上げれば人よりも遙かに強靱な身体能力と機械兵器の精密運用が可能になるが、倫理的な面から軍事利用、いわゆる戦闘機人の研究と製造は管理法で禁止されている。

 例外的に戦闘機人の研究が認められているのは、すでに種としての機人を確立している生命体くらいだ。アルピーノ捜査官が召喚したような装甲機人種、そしてダライアス一族のような。

 

 ダライアス一族は中心世界で検挙されている戦闘機人研究の何世代も先を行く人類種だ。

 かつてダライアス星の人々は、強靱でより機体と合一化できる戦闘機乗りを生み出そうと、人の身体に鋼の箍を打ち込んだ。

 人体への負荷は高く、当時の戦闘機乗りは長く生きられなかった。

 そこで、遺伝子レベルからの改良を施されるに至った。

 完全な軍事利用での戦闘機人の誕生。斑鳩の時代の戦闘機史だ。

 

 遺伝子レベルで人から外れてしまった戦闘機乗りたち。だが、それでも人類種であることには代わりはなく、人との交わりで機人の子が生まれた。

 次第に増えていく新人類。それに抵抗を覚えなかったダライアスの人々は、同時に研究されていた魔法科学技術である聖霊機関と非侵食性バイドをも取り込み人として新たな段階へ次々と進んでいった。

 

 その結果、今の管理世界で私たちは第二種監視指定共通人類種などという区分けをされている。

 人との交配により感染し人類の存続を脅かす病原体を持っているため、所在に関して厳しい監視が必要である、というものだ。

 管理世界における私たちは人間ではない。

 

 ダライアス種とミッドチルダ種の子はダライアス種が生まれる。

 

 少しずつ人としてのあり方を変えてきた私たちと違い、ミッドチルダ種の人から見れば自分たちの種が急に人から化け物に変わってしまうのだから恐ろしいことこの上ないのだろう。

 

 それだけではなく、ミッドチルダの人々は人が人でなくなるのを恐れる。

 それは遅々として進まない医療機人研究であったり、人工魔導師を初めとするクローン技術の禁忌扱いといった倫理観に現れている。

 

 戦闘機人で大騒ぎしている現状は何とも面倒なものだ。

 別に私の文明が機人技術で繁栄したから過去があるからといってこの現状を下に見ているわけではない。

 

 魔法第一主義の兵器運用の弊害、とでも言うのだろうか。

 質量兵器を捨てて個人の天性が全てを左右する魔法などというものに頼るようになったならば、機械の方ではなく人間を兵器として開発する人達が出てくるのは当然の流れなのだ。

 いくら法で規制しようとも、AAAランク魔導師一人で都市一つを更地にできる現実がある以上、人の開発は止まらない。

 

 

 ミッドチルダは人の開発を忌避する倫理を持ちながら、人の開発を必要とする文明という矛盾を抱えた若い世界なのだ。

 

 私はそのあり方に反発や拒否をするつもりはない。

 管理法で戦闘機人が違法とされているなら捜査に参加するし、管理法でクローンも人と定められているならアリシア・クローンも保護する。

 そして、アインハンダーのパイロットは詳細解析が必要な人工機人であった。

 それも、ただの機人ではなく、二年前の違法戦闘機人事件で摘発された研究内容と一致する部分が多く見られている。

 

 多くの資料を押収したものの、首謀者と戦闘機人そのものを取り逃がした一連の事件。

 その資料の骨格規格と私が内部解析したアインハンダーのパイロットの体内データは共通点が多すぎる。

 

 今まで中解同と敵対する第三勢力と思われていたアインハンダーだが、ここにきて怪しい影が見えるようになった。

 あの戦闘機人事件で機人研究を行っていた犯罪組織は未だ未判明の事項が多い。例えば研究資金であったり、研究者を集める顔の広さであったり。

 背後に中解同に狙われるようなミッドチルダの大企業がいたとしたならば、つじつまが合ってくる。

 

 

 だがそれならば何故、捜査の手を逃れたの機人が再び姿を現したのか。

 確かに高度な対魔法解析プロテクトは施されていた。

 それでも管理局は魔法技術の最先端を担う組織の一つであり、何度も管理局の前に姿を現すのは危険極まりない。

 結局のところ魔法技術で解析は突破できずに、地方世界の純科学技術というジョーカーを用いてようやく判明したのだが。

 

 もしかすると、早くにばれると想定していたのに反して、何度姿を見せてもばれなかったために今回のプラント強襲のような余裕を持った動きを見せてきたのではないだろうか。

 だとすると、管理局が戦闘機人の正体に気づいたとアインハンダー側に知られる前の段階なら、彼女を捕縛することも可能か。

 

 彼女は魔導師であると同時に高機動の戦闘機でもある。

 非殺傷の高出力広域魔法を無差別に叩きつけるか大規模結界の中に捕らえる方法が取られるだろうか。

 だが、アインハンダーが姿を見せるのは中解同のテロに対応している最中だ。

 

 広範囲の魔法を使う以外の方法だと、私のような高い機動力を持つ武装局員を当てなければ捕まえることは難しい。

 

 今回の解析データからアインハンダーの戦闘能力の詳細も出ることだろう。

 

 アインハンダーは機械部品と機械装甲で埋め尽くされた巨大なデバイスだ。

 今まではただひたすら機能の増設を繰り返して出来た魔法の杖のなれの果てに見えていたが、乗っているのが機人となっては見方が変わる。

 デバイスと機械化した人体を融合させてたどり着いたのがあの機体か。

 着想がより機動小型戦闘機に近く見えてくる。

 

 アインハンダーが現れたのは私が嘱託魔導師になって二年が経ってからだ。

 その短い期間でアインハンダーの機体の誕生に影響を与えたのかどうかは解らない。

 

 だがダライアスの魔動機械技術は機人技術の行き着く一つの到達点であることには違いはない。

 技術の漏洩や模倣、というものに気をつけていかねばならない時期に来ているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中解同のプラント制圧から明けて五月。

 ミッドチルダ東部地方での企業テロが発生した。

 

 そろそろ出動にも慣れてきたはやてさんを乗せてシップを駆る。

 現地ではシャマルさんと合流することになっている。

 

 シャマルさんは直接的な殺傷能力を持たない守護騎士だが、古代ベルカの補助魔法に長けた人のはずだ。

 守護騎士達はその全員がAAランク相当以上の技量を持つと推定されている。

 

 例え傷つこうが死に至ろうが本体は夜天の魔導書で動いているプログラムであるので、無限に再生し歳をとることもない。

 これもまた人としての進化の一つのあり方だろうか。

 

 古代ベルカの王侯貴族は様々な延命魔法を使用していたという。

 

 この魔導書を起点とした人格プログラムもその一つではないかと思える。

 自分自身をプログラム化して永久に保存する。古代ベルカの魔法技術では不可能ではないだろう。

 もしかすると、夜天の魔導書の守護騎士さんたち四人も元ははるか昔に生きていた騎士だったのかもしれない。

 

 ……根拠のない仮定だが、これをはやてさんに言うのは止めておこう。

 人と変わりのないプログラム生命というものに未来を見いだしているのだ。

 人の保存技術などという生々しい話は今はまだ話すべきではない。

 

 

 シップの複座に乗るはやてさんをカメラアイで見る。

 この前、魔導師ランクの試験を今度受けると言っていた。本格的に魔導師となるのだ。

 

 中解同さえ壊滅してしまえば、このような危険な現場に狩り出されることもなくなり、魔法研究者としての道を歩めるだろう。

 

 全ては今の戦いを終えてから、か。

 私としても最近の過激化するテロのせいで復帰以降技術職としての任務に支障が出始めている。

 戦う理由が正義のためでないのは世間での私のイメージとはかけ離れているのだろうけれど、まあ口に出さなければ問題ない。

 

 

 はやてさんの肉体に負荷がかからないよう慣性制御の出力をわずかに上げ、東部へと飛ぶ。

 転送魔法より飛んだほうが速いという判断の元だ。増援もすぐに到着するだろう。

 

 

 遠くに見える戦場が高速で近づいてくる。

 

「……なんかすごいいっぱいにみえるんやけど」

 

「敵兵力従来の三倍ってところですか。在庫処分かやけかは解りませんけど、中解同も本気になったということですね」

 

 プラント内に兵器格納庫の座標情報でも残っていたのだろうか。

 局に検挙される前に急いで使っておこうとでもしたのか、今回のテロ対象地区は企業都市ではなく娯楽施設や繁華街の多い場所。

 大企業よりもミッドチルダの地方中小企業で栄えた都市だ。

 

 これだけの戦力を投下するには中解同としても益が少ないだろうに。

 だが人口は多く、あれだけの数の兵器が無差別に攻撃を開始すればどれだけの被害が出るかも解らない。

 

「リイン転送!」

 

 突如目の前からはやてさんの姿が消えた。

 転送魔法だ。無詠唱なのでさほど遠くへは飛んでいないだろう。

 

 登録魔力をサーチ。都市部外周、都市結界の外だ。

 バイザーの望遠機能で魔力反応の導く方向を見る。

 

 視線を向けると同時に爆炎が立ち上った。

 

 はやてさんは質量兵器のミサイルの降り注ぐ真っ直中に転送していたのだ。

 わざわざ危険の中に飛び込むなんて。

 

 煙が晴れ、はやてさんの姿が見える。

 

 緑に輝く防壁魔法の光。

 その後ろには、逃げ遅れた一般人が倒れていた。

 

 あの人を助けるために咄嗟に転移したのか。

 正確な転送と瞬時の防壁展開。はやてさんの魔導師としての才能と成長が垣間見られた。

 

 私もはやてさんの元へと向かう。

 衝撃波で一般人を吹き飛ばしてしまわないよう上空で停止し、自由落下で地面に降り立つ。

 

「はやてさん、とりあえずこの人を避難区域へ転送……」

 

「ほな、行きます!」

 

 避難を頼もうと声をかけた瞬間、私の言葉を無視してはやてさんはテロ機の群れへと飛び出していった。

 前言撤回。まだまだ成長と言うにはほど遠い勇み足だ。

 

「ええと……」

 

 逃げ遅れた人の方へと振り返る。

 ビジネススーツ姿の女性。仕事での移動の途中にテロに巻き込まれたのだろう。

 はやてさんの援護に向かいたいが、この人を放っておく訳にはいかない。

 

「乗ってください。安全な場所まで運びます」

 

「は、はい。魔動少女さんですね! よろしくお願いします!」

 

 死ぬ一歩手前だったためか妙にテンションが高い。

 はやてさんが降りてそのままだった複座に女性を乗せ、都市郊外の陣営へと向かう。

 本来ならここでシャマルさんと合流するはずだった。思わぬハプニングだったが一人の命が救えたので僥倖と言えるか。

 

 陣営へと降り立ち、女性を局員へと引き渡す。

 彼女は感涙きわまった様子で最後まで私に手を振っていた。死の恐怖をそうやって紛らわせているのだろう。

 魔導師と一般人の溝は深い。それは武装が出来るということよりも、身を守ることが出来ないというのが一番大きいのだろう。

 

 ミサイルの爆撃など一般人では生き延びる可能性などゼロなのだ。

 管理局員ならば例え魔導師ランクがEであろうとも、汎用装甲服と防壁魔法を使えば軽傷で済ますことが出来る。

 

 企業テロとの戦いには、管理局員の死傷者よりもはるかに多くの無関係な一般市民の死が横たわっている。

 企業対企業、中心世界対地方世界などという大局的な話に関係なく、何の関係もない人々の死がそこにはある。

 

 私は管理局員ではない。

 正義で動くつもりもない。

 私はこの世界において人間ではない。

 人の尊厳についての倫理も異なる。

 だが、それでも戦うことで一人でも多くの命を救えるなら、それはきっと素晴らしいことなのだろう。

 

 手を振り続ける女性へと手を振り返し、シャマルさんの元へと向かう。

 

 シャマルさんは戦いによって負傷した局員への治療を手伝っていた。

 彼女にははやてさんの大魔法詠唱時の防護に入って貰うはずだったのだが、肝心のはやてさんが居ない。

 

「急いで向かいましょう。数の暴力にはやてさんが対応しきれる保証はありません」

 

「は、はい」

 

 シャマルさんは少し気圧されるように弱々しく返事をした。

 はて、どこか気合いのスイッチが入ってしまったのだろうか。

 これがはやてさんの以前言っていたアチョー状態か。

 

 シャマルさんを連れて、都市都市結界の上へと向かう。

 航空魔導師隊の一部が到着したのか、上空では戦闘が開始されていた。

 

「はやてさんの姿が見えませんね。だいぶ奥まで行ったようです」

 

「あわわ、はやてちゃん大丈夫かなぁ」

 

「リインフォースさんの援護があるので無茶をしなければ……と言いたいところですが危険ですね」

 

 戦場において魔力の高さは重要だ。だが魔力さえ高ければ無敵というものでもない。

 実際、武装局員の全員が空を飛べる熟練者揃いの航空魔導師隊も、中解同との戦いで負傷者は後を絶たない。

 

「シャマルさん、はやてさんに念話で引くように言ってください」

 

「あ、はい。私が言っていいんですか」

 

「私が言うよりシャマルさんが言った方が命令無視に気づくでしょう」

 

 超長距離砲で魔導師隊の援護射撃をしながらシャマルさんに言う。

 魔法機械兵器の数は多い。

 少しずつ確実に減らしていかなければならないが、都市結界が保つかどうか。

 

 重要拠点を守るのとは違い、都市全体を狙った大規模爆撃をする中解同のテロから街を守りきるのは難しい。

 リインフォースさんの援護で緻密な広域魔法を使えるはやてさんが打開の鍵なのだが、

 

「はやてちゃんこっちに引き返すそうです。進んで合流しましょう」

 

「了解です」

 

 二人の間でどのような会話がなされたのかは知らないが、頭を冷ましてくれたようだ。

 このほんわかお姉さんオーラが効いたのだろうか。

 実際のところはお姉さんどころか数百歳のお婆さんなのだが。

 

 私とシャマルさんははやてさんの魔力反応のある方向へと向かって飛ぶ。

 当然その進路にも空を埋め付くさんとばかりの魔法機械が待ち受けている。

 

 R-GRAY2のロックオンレーザーを放つ私の横で、シャマルさんが魔力の糸で繋がれた菱形の錘を構えた。

 彼女のデバイスだ。

 

「戦うんですか?」

 

 デバイスを構えるシャマルさんにそう声をかけた。

 

「この程度の相手なら直接の攻撃魔法を使わなくても応用でどうとでもなります」

 

 シャマルさんが右手を振るうと、錘が撃ち出され、空を飛び交う魔法機械の装甲に突き刺さった。

 錘はまるでそこには何もなかったかのように機械の後部から飛び出すと、さらに次の機体へと突き進んでいく。

 十体の小型魔法機械を連続で串刺しにすると、シャマルさんは右手を払い逆再生するかのように錘を手元まで引き戻した。

 

 貫かれた魔法機械は、動きを止め都市結界へと落下していった。

 

「今のは……」

 

「転移魔法の応用ですよ。障壁の隙間から入って中身をこうかりかりと。優秀なんですよこの子」

 

 左手の指輪型デバイスをこちらに見せながらシャマルさんが言った。

 

 彼女に戦闘能力がないと私に言ったのは誰だったか。

 恐ろしい。攻撃魔法が不得手なのになおも戦いに身を投じようとする魔導師はこのようなトリッキーな技巧を駆使してくる。

 彼女の場合はデバイスの精度と高い魔法操作能力を使った内部破壊だ。

 

 魔力障壁出力の高い大型機相手では厳しいだろうが、小型機を相手にする分には強力だ。

 精神的な疲労の激しそうな戦い方だがはやてさんと合流するまでの間なら保つだろう。

 目の前に立ちふさがる機体をなぎ払いながら前へと進む。

 

 後方でも武装局員の砲撃が小型機を次々と撃ち落としていた。

 

「しかし、こういう魔法機械テロの対応現場を見ていると、魔法の安全性って何なんだろうなーって思いますね」

 

 バイザーで中型機の関節部をロックオンしながらシャマルさんと私語を交わす。

 銃撃を狙う必要がない分、ロックオンは楽なものだ。

 

「中企戦の魔法機械は質量兵器とか使われていてグレーゾーンのような……」

 

「いえ、多額のお金を使って作られたであろう機械を魔導師が軽々と打ち砕いていくのを見ていると、一技術者としてなんだかなぁ、と」

 

 厳重に管理される戦略質量兵器と才能のある一個人が感情に任せて都市破壊魔法を撃てる魔法技術のどちらが安全でクリーンなのか、という極端な話はよく議論に上る話題だ。

 少し学べば銃と同じ威力の魔法を覚えられる先天魔導師と、武装の使用ではなく所持自体を禁じられた一般人。両者の溝は想像以上に深い。魔導師と非魔導師は違う生命体だ、などと言う人までいる。

 

 魔法中心の世界になってまだ二百年も経過していないのだ。抱えた矛盾を社会的に解消して行くにはまだまだ長い年月が必要となるだろう。

 それまで今の時空管理局とミッドチルダ中心の世界のあり方が存続していけるかどうかは誰にも解らないが。

 

 まあそれを古代ベルカの騎士であるシャマルさんに今言っても仕方がないか。

 お酒の席でぐだぐだ愚痴るべき話題だ。そういえば幹部さん達と最近飲んでいないな。

 

 そんな戦場に似つかわしくないことを思考の端で考えていると、登録魔力反応をシップが警告してくる。

 

「来ましたね」

 

「はやてちゃんですか」

 

「いえ、アインハンダーです」

 

 はるか上空から真っ直ぐに魔力の塊が降下。

 恐怖と絶望に包まれた街に可憐な天使が舞い降りる。青と黄色に彩られた機体。アインハンダーだ。

 

「シャマルさん、アインハンダーは現在中解同と同等の捕縛対象です。隙があれば捕らえてください」

 

「え、正義の味方じゃなかったんですか」

 

 アインハンダー側への情報の漏洩を危惧して、アインハンダーが戦闘機人であるという情報は地上本部内でも広められていない。

 捕縛の場合はAAランク以上の魔導師が当たること。私は空戦AAランク。捕縛の義務がある。

 

 アインハンダーの降下先は湾岸部。魔法機械を吐きだしている海上空母の方向だ。

 はやてさんとの合流経路でもある。

 

「このままいくとはやてさんとアインハンダーがばったり出くわしますね」

 

「ええっ! それ大丈夫なの!?」

 

 アインハンダーは今のところ時空管理局に敵性を持っていないはずなので問題ないはずだ。

 はやてさんに捕縛の通信を入れようとも思ったが、ここは三人そろってからの方が良いだろう。

 

 魔法機械兵器の群れで出来た壁を少しずつ削りながらはやてさんの元へ向かう。

 

 だがその途中でまたしてもシップから高出力の魔力警告が発せられた。

 未登録魔力警告。パターンは中解同の大型機のものだ。

 アインハンダーがこれに向けて降下したのか、アインハンダーの出現に中解同が出動させたのかは解らないが、魔力値推定AAAの機体だ。まだはやてさんが単独で相手にするには危険だ。

 

 小型機の群れと魔力弾の雨のせいで視界には収められない。

 魔力反応を頼りに進もうと目の前の敵機をひたすらに撃ち落とし続ける。

 

 空を行く私たちの元へとあらゆる方向から敵機が向かってくる。

 急な増援だ。

 

 全方位から撃ち出される魔力弾を回避、回避、回避、そして被弾。

 私は中解同の重要標的の一つにされている。はやてさんの元へと向かおうと撃ち落としているうちに多くの魔法機械に狙われてしまったようだ。

 このまま無理に突破してもはやてさんの元へ敵の群れを率いていくだけになってしまう。

 

 魔力残滓をかき集め、R-GRAY2からビックバイパーへと一瞬で換装。

 オプションを生み出し全方位への火力を上げる。

 

 

『((DOUBLE|ダブル))』

 

 

 機銃とオプションのショットを直角の二方向射撃へと切り替える。

 敵機の多さに対応するためにオプションとショット拡張で撃てる魔力弾の数を増やすのだ。

 魔力の大きさと才能が戦場を支配するこの時代でも、数は暴力。

 

 流れ弾に巻き込まないようにシャマルさんの位置をカメラアイの一つを使って固定する。

 彼女もデバイスを振り続けており、少しずつ疲労が蓄積していっているのが解る。

 

 

 狙われている私がここで敵を引きつけてシャマルさんをはやてさんの元へ向かわせればいいのか。

 いや、駄目だ。シャマルさん一人で向かわせるのは危険だ。

 

『カガリちゃん大変や! アインハンダーが!』

 

 はやてさんからの念話が届く。

 情報が断片的すぎて何が起きているのかは解らないが、良くない事態になっているようだ。

 

 だがこちらも容易には突破できる状況ではない。

 そのときだ。

 

「援護に入る! あんたは大型機の方へ!」

 

 私たちの苦戦を察知したのか航空魔導師隊の分隊が援護に駆けつけてきてくれた。

 

 魔導師さん達は一斉に捕縛魔法の糸を空間に張り巡らし魔法機械の動きを食い止めた。なんて頼もしい。

 

「ありがとうございます! 帰ったら一杯おごります!」

 

「ばっきゃろう。おごるのはこっちだ! お酌させまくってやる!」

 

 私は彼らに一瞬だけ振り向き、フレームの貼り付いた手でサムズアップ。

 そして視線を前に戻しアフターバーナーの火を噴かして加速した。

 

 後ろから慌ててシャマルさんがついてくる。

 オプションを前方に並べ、穿つようにして進む道を切り開く。

 

 海が見えた。

 

 一人の魔導師が大型の装甲ヘリと魔力弾の撃ち合いをしている。

 白と黒の騎士甲冑に身を包んだはやてさんと、緑色に塗られた機体との戦い。

 アインハンダーの姿は見えない。

 

 魔力を探知すると、魔力出力が極端に落ちた状態で地上部に落下しているのが解る。

 カメラアイを向けると、港の一角で砕けた青い装甲と共にパイロットの女の子が倒れて動かなくなっていた。

 

「シャマル三等空士、アインハンダーの確保を!」

 

「はい!」

 

 シャマルさんとは所属も違い、私が命令を発しても彼女にはそれに従う義務はないのだが勢いで押す。

 

 速度を落とさずにはやてさんの近くまで飛ぶ。

 

 はやてさんは目の前に大きな魔力の鳳を生み出し、そこから針のような緑色の魔力弾を無数に放出していた。

 彼女の蒐集魔法の中でも持続性に優れた射撃魔法の一つだ。

 

 彼女が撃ち出す魔法で巨大機の一部が大きく破砕し、瓦礫が海へと落ちていく。

 瓦礫に混じり、血を吹き出しながら落下していく人の姿も見える。

 有人機だ。

 機体の上部からは装甲服に身を包んだ兵身を乗り出し、ライフルをはやてさんへ向けて撃ち続けていた。

 

 はやてさんは銃撃を正面から防盾魔法ではじき飛ばす。

 人が落下していく様子を見ても揺るぎはない。

 いや、揺るぐほどの余裕もないのか。

 

 

「はやてさん、到着しました」

 

「ああ、ごめんなぁ。というかめっちゃ痛いわぁ」

 

 

 今にも裏返りそうな声ではやてさんが応じた

 甲冑を削られて肩から血を流している。彼女が戦いでここまで危険にさらされたのは初めてではないだろうか。

 このままではいけない。

 

 

「私が前に出ます。後方から決定打を狙ってください」

 

 

 まずははやてさんを下がらせる。はやてさんを狙った魔力弾は私が魔力障壁で受け止めれば良い。

 

 多少の被弾は問題ない。ビックバイパーには((強化魔力障壁|フォースフィールド))があるし、シップの装甲が削れようとも((中枢部と私自身|あたりはんてい))にさえ当たらなければ落ちはしない。

 

 

『((LASER|レーザー))』

 

 

 機銃をダブルモードから威力の高いリップルレーザーへと切り替える。

 

 

「カガリちゃん避けー!」

 

 後ろに下がったはやてさんがすでに魔法の発動の待機状態に入っていた。

 金色に光る球状の魔力が彼女の周囲に渦巻いている。

 

「てやぁーっ!」

 

 ディバインバスターに匹敵するかという砲撃が四発、大型機に向けて一斉に撃ち出された。

 

 

 

 

 

 

 

 二人がかりで魔力弾を撃ち続け、やがて大型機は搭乗員を乗せたまま海中へと沈んでいった。

 魔力に任せて連発したはやてさんの広域魔法に巻き込まれ付近の小型機は軒並み姿を消していた。

 

 救援通信も入っていないので、シャマルさんの元へと向かう。

 はやてさんは上空で魔力を回復させながら周囲の警戒を行っている。

 

 ひび割れ砕けたたアインハンダーの装甲。

 アインハンダーを象徴する大きなアームは半ばからへし折れていた。

 

 ランスター二等空尉は言っていた。デバイスは精密機械だと。

 先日の解析結果からも、アインハンダーの防御性能は低いと判明している。

 機体の一部が魔力障壁を持つ魔法機械と接触しただけで、大きな損壊を受けてしまうだろうと。

 

 アインハンダーは機動力だけでずっと中解同と戦ってきたのだ。

 

 パイロットの姿を見る。

 破けたスーツの隙間からは皮膚がえぐれ内部フレームが見えている。

 顔を隠していたヘルメットは大きく割れて、幼い表情を露出させていた。

 人と同じ赤い血が青い機体を赤く染めている。

 

「治療魔法をかけているけど……人と少し違うみたいだから上手くいかないわ」

 

「捕縛対象です。応急処置レベルでかまいません。万全になられて逃げられても困りますしね」

 

 アインハンダーの機体は損壊を出しつつもまだその機能を停止していない。

 アームが使い物にならなくなっている以上戦闘続行は不可能だろうが、飛行はまだ可能だろう。

 

「処置を終えたら本部まで転送しますね」

 

「シャマルさん、ちょっと静かに」

 

 半壊したヘルメットの奥に付けられたスピーカー。そこから小さなノイズが聞こえてきた。

 念話とは違う、一般人の使う科学的な音声通信だ。

 

『HYPERIONヨリ緊急指令』

 

 ハイペリオン?

 

『援護部隊ハ結界妨害ニヨリ救助ニ間ニアワナイ』

 

 おそらくアインハンダーの背後組織からの通信だ。

 こちらの存在に気づいているのかいないのか。

 

『援護射撃ノノチ単独ニテ戦闘空域ヨリ離脱セヨ』

 

 通信の終了と同時に、パイロットが急にまぶたを開いた。

 気を失っていなかったのか。ということは今の通信は。

 

「いけない、上!」

 

 シャマルさんが私を抱きかかえ、球状の障壁魔法を展開する。

 それと同時に周囲の地面が火柱を上げた。

 

 咄嗟に軌道を計算。高空からの焼夷魔力弾だ。

 アインハンダーがいつも降ってくるという距離からの援護射撃か。

 

 炎と煙で視界が閉ざされる。

 魔力探知でアインハンダーの姿を探すが、すでに上空に飛び立っていた。

 はやてさんの待機する場所とは逆方向だ。

 

「シャマルさん、捕縛魔法は!?」

 

「応急処置の邪魔だから簡易のものしかかけていなくて……一瞬でバインドブレイクされたみたい」

 

 機人の生命力を甘く見ていた。それに相手はデバイスを身につけた高魔力を持つ魔導師なのだ。

 無力化しないと捕縛魔法は突破されてしまう。

 

 

 今回の中解同の主力兵器は私とはやてさんが破壊した。

 アインハンダーはもう戻ってくることはないだろう。

 

 捕獲は失敗。次からは警戒されてもうこのような機会も少ないだろう。

 

 追うか。いや、援護射撃を行う戦力が他にいるのだ。追いついても転送で逃げられてしまうだろう。

 

『名前』

 

「え?」

 

 気持ちを切り替えて中解同の制圧へと急いで戻ろうとしたところで、突如地面から声が届いた。

 

『この前あなたは私に名前を聞いた』

 

 そこに落ちていたのはアインハンダーのかぶっていたヘルメット。

 その内部スピーカーから声が響いているのだ。

 この声には聞き覚えがある。アインハンダーの女の子がヘルメットごしに発していた声だ。

 

『コードネームの開示は許可されていない。だけど……』

 

 響いてくる声は一拍の呼吸を置いた。

 身体が頑丈で治療が施されたと言っても大怪我をしているのには変わりはないはずだ。

 

『書類にも残らない私の愛称、これくらいなら許可が無くても言っていいと思う』

 

 何を思って私にこの言葉を伝えているのだろうか。

 

『ギンガ。私をそう呼ぶ人もいる』

 

 その声からは思いを読み取ることは出来なかった。

 

 

 

――――――

あとがき:旧ダライアス星の科学文明レベルってどれくらいなんだろう回。

まあ高い技術力イコール少年漫画的な戦闘能力などと安易に繋がるわけではありませんが。

アインハンダーの苦戦のお話のはずがはやての苦戦のお話に。あれ?

 

 

用語解説

■このようなトリッキーな技巧を駆使してくる

キャラを強く見せたくない。でも活躍させたいという場合に使われる戦闘キャラの表現方法。

でも某奇妙の冒険のようなオンリーワンの能力ものとは違い、学問として確立された魔法技術のような汎用性の高い能力でやると、「他の能力使いもそれ思いつくじゃん」という突っ込みが待っています。

舞の海への道は厳しい。

 

 

SHOOTING TIPS

■ほな、行きます!

エスプレイドの主人公の一人、美作いろりの出撃シーン台詞。いろりが十一歳だということを知る人は意外と少ない。

関西弁とSTGという関係だけで引っ張ってきただけで、別にはやては二重人格だったりでこっぱちだったりはしません。

ガードバリア発射のセリフって何て言っているんでしょうね。

 

■恐怖と絶望に包まれた街に可憐な天使が舞い降りる。

XBOX360版デススマイルズは2009年春発売予定です。

 

■魔力に任せて連発したはやてさんの広域魔法

辛いと感じた状況やボス戦ではボムを惜しまないのがSTG初心者の正しい攻略法です。

気合い避けはボムが全て尽きてから。

 

説明
■7/13
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