魔動少女ラジカルかがり A.C.E. -第八話-
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「はやてさん、今度友人と遊びに行くのですけど一緒に来ませんか」

 

「なんやカガリちゃんてあたし以外の友達こっちにいたんか……いやいやそんな怖い顔せんでも」

 

「はあ、誘った私が馬鹿でした」

 

「なんやあちょっとした冗談やんかー」

 

「ちなみに友人というのはミッドに停泊中のエース艦のお偉いさんでして」

 

「またこの前の教会みたいなコネがどうこうっちゅう話か。もっと子供をいたわって欲しいわー」

 

「ヤマト・ハーヴェイという人なんですけどね」

 

「すいませんでしたぁーっ!」

 

 本場の土下座というものを見せつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第八話『パイロットキッズ』

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

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 結局はやてさんは付いてきた。

 

「ヤマトさんかぁー。そういや前の一件でこっち来てるんやったなー」

 

 何でも、艦丸ごとミッドチルダで少し長い休暇に入っているらしい。

 闇の書事件以来エース艦という名目で引っ張りだこだったのだろう。

 

 ヤマトさんからはプラント制圧の翌日から連絡が入っていたが、私の方が報告書だのアインハンダーの解析だのテロだので忙しくて会えなかったのだ。

 

「ちゃんと立っているとこ見せたらどういう反応みせるかなー。よく頑張ったね、なんて頭撫でて貰ったりしてなあなあなあ」

 

 身体をくねくねさせながら私の肩を叩くはやてさん。

 酔っぱらってもいないのにこういうことをする人が現実にいるとは思わなかった。

 

 ちなみにはやてさんはまだ脚に補助器をつけたままだ。

 筋力の問題よりも正確に歩くための原始自転車の補助輪のようなものか。

 

「ああん、もうなんて挨拶するんがええんかなー。あ、カガリちゃんあたし格好変や無いよね? もうメロメロレベル?」

 

「はやてさん。何だかすごいうざいですよ」

 

「なんやぁーあたしとヤマトさんとの仲に嫉妬かぁー?」

 

「それはありえません。ご安心を」

 

 人間は私の恋愛対象にならない。

 いや、そもそも初恋だとかそういうのもまだなのだが。

 どうせ数百年生きるわけだから、がっつくつもりもない。

 

「海の戦艦がクラナガンに停泊しているせいかずっと職場がピリピリしてますからね。友達誘って気を晴らしたいんです」

 

「陸とか海とかあたしはまだよう解らんけどなー。まあ理由はどうあれヤマトさん誘ったのはグッジョブや」

 

 戦艦というものは今の時代、魔法機械の中でも最も強大な兵器の一つだ。

 地上から大気圏外、星間、果ては次元世界まであらゆる場所を自由に行き来し、高出力の駆動炉を使って大規模儀式魔法を行使する。

 さらに本局に眠る主砲を換装すれば質量兵器戦略爆弾顔負けの魔導砲を使用できる。

 そんな超兵器が地上本部と目と鼻の先の距離にずっと停泊しているのだ。本局の挑発行為と感じても不思議ではない。

 

 しかも、停泊している艦はアースラだ。

 

 ただのエリート見習いであるヤマトさんはどうでもいいが、根っからの本局派のハラオウン提督がミッドチルダに留まっているというのが少し不穏である。

 レジアスおじさんが八神一家を地上本部に引き入れたときはハラオウン派を徹底的に叩きのめしたと言うし。

 

 そんな経緯もあって、平日隊にいても、休みの日に局の工房にいても、どこか空気が淀んでいるのだ。

 

「ちなみに遊びに行くってどこに向かうん?」

 

「R's MUSEUM」

 

「またかいっ!」

 

「いや、ヤマトさんはダライアスの発掘隊に参加したりした人だから悪くないチョイスだとは思うんですが」

 

 はやてさんはヤマトさんがいるというだけで付いてくると即答したので、行く場所をどうこういう権利はないのだ。

 

 展覧会は現在ミッドチルダの南部地方都市で開催されている。

 南部地方はヴィータさんの配属地域だが、今日は呼んでいないらしい。呼ばない理由はまあ深く追求するまでもないだろう。

 

 本来なら空港を使わなければ行けない距離だが、管理局員と嘱託である私たちは局の転送施設を予約して使うことが出来る。

 ヤマトさんとはその転送施設で待ち合わせだ。

 

 浮かれたままのはやてさんを連れて管理局の敷地へと入る。

 

 世間共通の休日と言えど、待機員の常駐が必要な管理局とあってか制服姿の局員さんが多く見られる。

 私服姿の私たちを見るたび、局員さんたちが手を振ってきたり挨拶をしてきてくれたりする。

 私の顔が知られていなければ親に会いに来た子供などに勘違いされているところだ。

 

 敷地を奥に進み転送施設前の広間へと出る。

 道の脇に備え付けられた休憩用のベンチ、その真ん中にヤマトさんが座っていた。

 携帯端末を両手で持って一心不乱に指を動かしている。またゲームでもやっているのだろう。

 

「おはようございますヤマトさん。また地球のギャルゲーですか」

 

「いや白昼堂々外でそんなのしないよ!? ああ、カガリちゃんおはよう」

 

 半分冗談の挨拶を交わす。そういうゲームをやらない事自体は否定していないようだが、これでも付き合いが長いのですごい今更だ。

 

「やー久しぶりだね。シグナムに斬り殺されかけたんだってね。大丈夫だった」

 

 言いながら私の頭に手を伸ばしてくる。

 

「見ての通りぴんぴんしてますよ」

 

 反射的に髪に触れる前に叩き落とす。

 

「こっちはあれからいろんなところに引っ張りだこでね。闇の書事件はまた日本に行けて楽しかったんだけど」

 

 今度は逆の手を伸ばしてくる。

 

「相変わらず日本好きですね。ハラオウン提督とお茶について和解は出来たんですか」

 

 振り払う。

 

「いや、やっぱりだめだよ。和の心は日本人じゃないと理解できないね」

 

 フェイントをかけて手を中空で止めてくる。

 

「髪の毛灰色のミッドチルダ人が何を言ってるんですか。私から見たらどっちもどっちです」

 

 手首を掴んで動きを止める。

 

「仲ええなあ二人とも……」

 

 そんな私とヤマトさんの攻防の横で、はやてさんが何やらすねていた。

 そこにヤマトさんが今更はやてさんの存在に気づいたとばかり声をあげた。

 

「あ、はやてちゃん来てたんだ」

 

「来てたんだ、やないわー!」

 

 叫びと共にはやてさんの見事な上段回し蹴りがベンチに座るヤマトさんの頭に突き刺さった。

 

 心地よい殴打の音が響き、ヤマトさんがベンチと共に後ろに倒れていく。無駄に補助器の性能が高い。

 ちゃんと立っているところを見せるどころか、華麗な蹴り脚を見せてどうするのだろうかはやてさんは。

 

「や、ごめん。はやてちゃんが来るなんて聞いていなかったからさ」

 

 ヤマトさんは逆再生するかのようにベンチごと起き上がり、蹴られたことには何も文句を言わずに謝っていた。

 さすがヤマトさん。女性からの理不尽な暴力を振るわれ慣れている。

 

「聞いていなくても視界に入っていたやん! 乙女心ブロークンやわ」

 

 先ほどと全く同じ軌道ではやてさんの蹴りが飛び、全く同じ挙動でヤマトさんが転倒した。

 はたから見ているとコンビ芸人の舞台を見ているようだ。

 

「本当にごめんね」

 

 ヤマトさんは何事もなかったように再び起き上がり、はやてさんの頭を撫でていた。

 

「あ、ううん、まあーそこまで言うなら許してあげるわ」

 

 口ではそんな強気なことを言いつつも、顔をにやけさせて身体をくねらせているはやてさん。

 もう駄目だこの人達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わった世界の古い戦いの歴史。

 古き、良き時代……、歴史を駆け抜けた男たちがいた。

 

 以前クラナガンでこの展覧会を訪れたときよりもずいぶんと人の入りが増えているようだった。

 また受付で会ったユーノくん曰く、口コミで広まっているのだとか。

 異形の生命との戦いが記録映像で見られるという、普通の歴史博覧会にはない臨場感が評判なんだとか。

 

「前来たときは場内音楽は無かったなー。これもカガリちゃんとこの音楽なん?」

 

 ミュージアム内に流れるBGMをさしてはやてさんが訊ねてきた。

 

「そうですね。私たちの一族で昔から聞かれていたRezというジャンルの曲です」

 

 独特の軽快なビート音が心地よい。

 展示内容ごとに曲目も変わっていき、よりバイド戦の世界へのめり込めるようになっていた。

 

 はやてさんは二度目の来場だというのに、初めて来たときのようにはしゃいでいた。

 今度は自分で展示パネルの文字を読んでいる。すでに文字をマスターしているのか。早いものだ。

 

 ヤマトさんは、そんなはやてさんを子供を見守る大人のような目で眺めていた。

 彼は時々年齢不相応の大人びた雰囲気を帯びることがある。付き合いは長いが未だに把握しきれない部分も多い。

 

 一人パネルの文字の前でじっと考え込むはやてさんの後ろで、私はヤマトさんに今日聞いておきたかったことを訊ねた。

 

「アリシア・クローンさんは確かアースラで何人か教育を受けているのですよね? どんな状況ですか?」

 

「ああ、六人引き受けているけど……すごいね。もうみんな別々の個性を持ち始めてる」

 

 保護されたクローン達への初期記憶や知識は、全員共通のものが植え付けられたはずだ。

 それが個性を別個に持つというのは興味深い話だ。

 

 プレシア・テスタロッサが死んだ子をクローン再生しようとして、結局最後は時間移動に頼ろうとしたのも納得の結果だ。

 記憶を受け継いだところで多感な幼児時代ならばすぐに違う成長をしてしまう。

 

「安定性とかは大丈夫ですか? 乱造クローンのはずなので、健康面とか」

 

「そのあたりは問題ないかな。医療班はいろいろ本局とやっているみたいだから詳しくは知らないけれど」

 

「戦艦の中で教育プログラムを受けさせるというのはちょっと変わってますよね。フェイトさんが嘱託魔導師の講習を受けるなら解るのですが」

 

 

 地上本部でもアリシア・クローンの受け入れは行われている。

 いずれも高い魔法資質を持つ人造魔導師だ。同じく高い魔法資質を持ち暴走の危険性のある孤児達の入る養育施設に預けられているようだ。

 

 その性質上、カウンセラーや魔法指導者なども常勤しており、養育が終わった後の将来は職業選択の自由もある。

 まあその多くが時空管理局にそのまま勤めるようになるのだが。クローンともあれば世間での風当たりも強く、局に入らざるを得ないだろう。

 

 

「それとリンディ艦長があの子達に名前をつけてあげようとしたら、お母さんに付けて欲しいって言い出してね。フェイトちゃんは懐いてくれたのにって艦長がすねてすねて」

 

「名前、ですか。それは良い情報を聞きました」

 

「良い情報?」

 

「いえ、こっちの話です。っと」

 

 展示を読み終わったはやてさんがまたこちらをじっと見ていた。

 細かい話は後で通信ででも聞くことにしよう。

 

「そうだはやてちゃん。ミッドチルダに住んで働いているんだって?」

 

 またはやてさんの機嫌が悪くなる前にヤマトさんは当たり障りのない話題を振った。

 

「ええ。学校に通わせてもらって午後は局でお仕事みたいな感じやね」

 

 はやてさんはヤマトさんに特に敬語を使って話さない。

 闇の書事件の時に仲が良くなったのだろう。

 会っていた期間はそんなに長くはないのだろうがそこはあれだ。ヤマトさんだし。

 

「リンディ艦長に全部任せてくれれば日本でのんびり暮らせたのにね」

 

「それは……」

 

 はやてさんはヤマトさんの言葉に返答に詰まっていた。

 オーリス姉さんが言うには、はやてさんの処分にはハラオウン派も介入しようとしていたらしい。

 私自身、はやてさん達は本局に持って行かれるものとばかり思っていた。

 

 だが、その政治的事情を今のはやてさんの前で直接言うのはいただけない。

 

「レジアス中将が裁判に手を出してきたんだって? まるで子供を道具扱いじゃないか。何を考えて……」

 

「ヤマトさん」

 

 虚空に向かって説教を始めようとするヤマトさんの言葉に途中で割り込む。

 このまま言うに任せていたら、彼の説教癖では何を言い出すか解らない。

 

「これははやてさんが選んだ道です。将来の希望もあります。それ以上の発言ははやてさんの思いをおとしめるだけです」

 

 何も知らないくせに、という言葉はぐっと飲み込んでヤマトさんをにらみつける。

 確かに彼女が陸で働いているのは、私が誘いレジアスおじさんが力を振るった結果だ。

 

 しかし、はやてさんはこの待遇に納得し、魔導師の道を歩むことで夜天の主としての未来を見据えている。

 それを海の一方的な独善で汚して欲しくなかった。

 

「う、ご、ごめんなさい」

 

 にらみ続ける私にヤマトさんがひるむ。純粋な感情の押しつけにヤマトさんは弱い。

 少しは人慣れしたようだが、強気に出られるとすぐうろたえるところは変わっていないようだった。

 どこかちぐはぐな人だ。

 

「それとレジアスおじさんは中将じゃなくて少将です」

 

「お、おじさん!?」

 

 どうせ海にいて何も考えずにレジアスおじさんへの批判に同調していたのだろう。

 ミッドチルダ人としての自覚が薄い人だからまあ仕方がないけれど。

 

「陸も陸なりに色々あるんです。解りましたかヤマトちゃん」

 

 いつものお返しとばかりにヤマトさんの頭を背伸びして撫でてあげる。

 

「は、はい」

 

 学生時代先生に叱られたときのように項垂れるヤマトさん。

 はやてさんはそんな私たちの様子を見て笑っていた。

 

 しまった、今度は私がコンビ芸人になってしまっている。

 しかも今度は人通りの多い展示会場の中。人の目が痛い。

 

 ヤマトさんの頭から手を離して順路を前へと進む。顔が赤くなっていないか心配だ。

 

 そのまま雰囲気も悪くなることなく、三人で展示を見て回った。資料や模型に混じって映像もところどころに配置されている。

 その中の一つ、バイドの巣を叩いて帰還した機体がバイドに侵食されてしまっており、かつての仲間達に敵として狙われるところなど何とも言えない気持ちになる。

 

 

 

「そうだ、なのはちゃんとフェイトちゃんのことなんだけどさ」

 

 展示も終わりに近づいたときのこと。

 思わぬ友達の話題に、私とはやてさんは二人同時にヤマトさんに振り向いた。

 

「二人がどうかしましたか?」

 

「フェイトちゃんは鳴海の小学校に転入して、なのはちゃんとフェイトちゃんの二人は管理局に入局したよ」

 

「……は?」

 

 何を言われたのか理解が出来なかった。

 いやまて、二つの全く別の話を同時に言われたのではないか?

 

「えーと、まず、フェイトさんが鳴海の学校に転入」

 

「うん」

 

「不干渉のはずの管理外世界の学校に管理世界の魔導師が入学したのですね」

 

「う、うん」

 

「そしてその管理外世界の学校に通っているはずの二人が管理局で働くのですね」

 

「そうだね」

 

「……冗談にしてもちょっと吹っ飛びすぎですよね」

 

 うん、冗談にしか聞こえない話だ。

 

「あー、日本にも管理局の支部あったんかー。知らんかったわ」

 

「ほらヤマトさん! 適当なこと言うからはやてさんが真に受けちゃったじゃないですか!」

 

「嘘じゃない! 本当だよ本当! 知ってるだろ第四陸士訓練校。留学って名目でそこで短期訓練したあと、海鳴の学校に通いながら転送使って局勤務するんだ」

 

「転送って……」

 

「リンディ艦長の計らいで海鳴に転送施設を作るんだ。あっちに住みたいって言っていたしね」

 

 ……うん、冗談にしか聞こえない話だ

 

「えー、あー、もー、どこから突っ込んで良いか解らなくなって来ました」

 

「あたしも教えて貰った管理法とか管理外世界とかわからんようなってきた……」

 

 はやてさんと二人で頭を抱える。ヤマトさんは一人きょとんとたたずんでいた。

 海との溝が妙な部分で深まったような気がしたそんな休日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休日が終わり、嘱託としての仕事が変わらずにやってくる。

 

 今日はオーリス姉さん機動二課の統括であるオーリス姉さんとアインハンダーについての情報のまとめを行っていた。

 機人事件の新展開と言うことで主に動いているのは捜査官や執務官だが、中解同のテロに関係ある存在ということで私たち蒼穹紅蓮隊も捜査に加わっている。

 

 アインハンダーについて判明していることは未だ少ない。

 そのほぼ全ての情報が機体一機とパイロットによるもの。あの指令通信を聞けたのは奇跡と言っても良い。

 

 デバイスを拡張した青い機体。地方世界の兵器規格ガンポッドの武器を操る左腕。戦闘機人のパイロット。

 

 他はアフターバーナーを守るように取り付けられた右翼の装甲に書かれている、EN.03というミッドチルダ文字くらいだろうか。

 対透視魔法プロテクトがかかっており、何を聞いても許可されていないと答えるアインハンダーのただ一つの「本当の名前」を示すものだ。

 アインハンダーは時空管理局が付けた呼称。ギンガというパイロットの名前はただの愛称。通信で聞いたハイペリオンという言葉は組織名なのか個人名なのか地名なのかも解らない。

 

 アインハンダーが現場に残したヘルメットや装甲の欠片は全て管理局が回収した。

 ヘルメットには血が付着しており、オーリス姉さんが持ってきた資料によるとやはり二年前の機人事件の資料とデータが一致したらしい。

 これから捜査は本格化するであろう。

 

 オーリス姉さんの資料と私の出した機械解析資料を並べて情報を整理していく。

 

「アインハンダーの通信、念話ではなく非魔法的な音声通信を行っていました。音声って今回みたいに他人に拾われる危険があるのに何故でしょうか」

 

「いや、逆だ。最新の魔法解析を使えば念話は傍受が簡単なんだよ。管理局やミッドチルダの組織では高度な純科学通信を使われると逆に傍受も逆探知も出来ない」

 

 なるほど、確かに未熟な術者の念話など簡単に割り込める。

 覚えたての念話で授業中私語をしていたら先生の喝が入るなどというのは、魔法学校時代によく笑い話に上がったものだ。

 

「科学的な通信でもヘルメットを残していったから通信方法は割り出せるのだろうが……。逆探知はリアルタイムで無いと行えないから現場に純科学世界からの協力部隊を向かわせるというのが必要だな」

 

「私シップに捜査官ドラマな逆探知機能なんて付けてませんよ」

 

「盗撮機能があるのに使えないやつだ」

 

「解析機能は盗撮機能じゃありません!」

 

 確かにあの解析機能を使えばスリーサイズから偽乳証拠まで全て赤裸々に暴くことができるけれど。

 質量兵器と同じで正式な許可あっての代物だ。

 

「でも魔法使った通信していないんですよね。魔法を使わないと世界を超えられないわけですから、範囲はミッドチルダ内に絞れる?」

 

「魔法中継器経由だったらどうしようもない。アインハンダーが出動しているであろうミッドチルダ世界近辺の拠点は確実にあるだろうが。テロ発生から出現までのラグはそんなに遠い次元世界じゃない」

 

「空から降ってくるわけですから、案外開発衛星のどこかに拠点があるのかもしれませんね」

 

 ミッドチルダの本星の周囲には、多くの天体衛星が公転している。

 これらの月は特殊な魔力を帯びており、豊富な魔力素と相まってミッドチルダの魔法文明の発展に大きく貢献したと言われている。 月の魔力の謎を解明するためにミッドチルダの企業は近年宇宙開発に乗り気だ。ダライアスのテラフォーミングライセンスは売れるだろうか。

 

「これだけ何度も現れているというのにどこから来ているかも解らないとはな。便利な介入者扱いしていたのが裏目に出たか」

 

「テロ対策に忙しいからってちょっと無頓着すぎでしたよね」

 

 もはや打ち合わせでも会議でも何でもなく雑談になってきている。

 アインハンダーそのものへの解析は進んだが、背後の組織を絞り込むのは捜査官達の成果を待つしかない。

 中解同に真っ向から敵対するのはどこか。このレベルのデバイス開発を出来るのはどこか。戦闘機人事件に関わり合いのある組織はどこか。

 

「いつの時代も事件は足で解決するもの、か。カガリ明日は頼んだ」

 

「そうですね。望み薄ですけど行ってきますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。ミッドチルダの時空管理局の保養施設である人物と面会していた。

 世の中ではジュエルシード事件、PT事件などと言われており個人的にはストーンライク事件などと呼んでいる辺境世界でおきた事件の真犯人であり被害者である、プレシア・テスタロッサ婦人との面会だ。

 

 あの事件の直後には治療に長い時間がかかるなどと言われていたが、会ってみると普通に受け答えができるほどまで回復していた。

 自己紹介をすると「あのニュースでやっていた魔動少女さんね」と喜ばれたり、事件の解決の際にフェイトさんと友達になったことを話すと「フェイトとはビデオレターで文通しているの」などと感情もしっかり戻っていた。

 そして、フェイトさんをアリシアとは違う、自分が作り出した娘であると受け入れているようだ。

 

「アリシアが逝ったときにきっと私も壊れたのでしょうね。そしてあの赤いロストロギアに粉々にされた。今は……何なのかしらね。自分一人の時間が戻って周りが変わったままの気がするわ」

 

 そう言うテスタロッサさんはもう五十を越える年齢だろうに、ミッドチルダ人の二十半ばと言えるほどに若々しい。

 彼女は時の庭園で石のような物体の魔力を一身に受けていた。生命進化の力の副作用だろう。もしかすると不老不死にでもなってしまっているのかもしれない。

 

「私の時間は戻ったけれど、アリシアの時間は戻らない。死んだ人は蘇らない。そんな当然のことを何で理解できなかったのでしょうね。結局アリシアの身体をいじくり回して、死を冒涜していただけなのに」

 

 私は本当に大切な人の死というものを目の当たりにしたことがない。

 テスタロッサさんの言葉には何と返すのが正しいのか解らない。

 

「テスタロッサさん」

 

「プレシアでいいわ。言いにくいでしょう?」

 

 優しい顔でにっこりと微笑んでくる。かつて憎悪に表情を染めてヤマトさんと戦っていたときとは別人だ。

 フェイトさんの記憶にあった優しいお母さん。きっとこれが本当の彼女なのだろう。

 

「はい、プレシアさん。アリシアさんは、その、お墓に入ったのでしょうか」

 

「ええ、アルトセイム地方に、あの子が好きだった別荘地があるの。そこにお墓を建ててもらったわ」

 

「よろしければ、その、時の庭園で保護されたクローンの子達を連れてお墓参りに行きたいのですが」

 

 地上本部に保護されたクローン達からの要望だ。

 死と宗教を知った子供達は死者を敬う文化を知り、自分たちのオリジナルの墓へ行きたがっているという。

 

「あら……そうしてくれると嬉しいわ。アリシアも妹達が来てくれて喜ぶでしょう」

 

 妹達。それはつまり、プレシアさんがあのクローンの子達を自分の子供として認めているということだ。

 だとすると、こちらとしても話がしやすい。

 

「その子達とはまた別の子達なんですけれど、プレシアさんがお母さんだと知って、フェイトさんみたいにお母さんに名前を付けて欲しいと言っていまして」

 

「あら、そんなことを。ふふ、全員の名前を考えるだけで大仕事ね。今思うとフェイトって名前もちょっと安直すぎるわね」

 

「今更改名ってなっても、もうフェイトさんで定着しちゃっているので困惑しそうですけどね」

 

 ヤマトさんとオーリス姉さんから仕入れたフェイトさんとクローンの子達の情報を話していく。

 実は一作日ヤマトさんと遊びに出かけたのも、ここで話す情報を仕入れるためだったりする。

 

 プレシアさんと話して感じるのは、落ち着いた物腰と若い容姿のちぐはぐさだ。

 まるでダライアスのお偉いさんを相手にしているようだ。あの人達も若い見た目で八十歳だの九十歳だの老成している。

 

 ともあれ、今日はこのような世間話だけをしにきたのではない。

 

「ええとですね、実はクローンさんたち以外にももう一つお話がありまして。お仕事の話です」

 

「あら……確かに今日は平日ね。管理局のお使いかしら」

 

「そんなところです。今追っている事件で参考までにお話を聞きたくて」

 

 ここからが本題だ。そも、この話を聞くために今回の面会が許されたようなものだ。

 

 私の雰囲気につられて真剣な面持ちになったプレシアさんに、話を切り出す。

 

「今、私達は違法戦闘機人を追っていまして。どうもジェイル・スカリエッティが関わっているようなので人工魔導師計画でご一緒した関係で何か聞けないかと」

 

「あら、スカリエッティに関してはこの前全部知っていること捜査官の人に話したわよ」

 

「ええ、ですので今起きている事件の資料から忘れていたことをが無いかの連想ゲームみたいになるのですけれど……」

 

 床の上に置いていた鞄の中から映像投射のバインダーを取り出す。

 アインハンダーについての情報がまとめてある捜査資料だ。

 

「最近起きている企業テロはご存じですよね」

 

「ええ。そこで貴女が活躍しているのも」

 

「……ありがとうございます。それでですね、私以外にもニュースで騒がれているアインハンダーというものがいまして」

 

「ええ、見たことあるわね」

 

「そのアインハンダーのパイロットなんですけれど……どうもジェイル・スカリエッティと繋がりのある戦闘機人のようなんです。詳しくはこちらの資料を」

 

 言いながらプレシアさんにバインダーを手渡す。

 

「気づいたことがあれば何でも言ってください」

 

 プレシアさんは管理局共通規格のバインダーを慣れない手つきで操作していく。

 

 空間に浮かび上がるカラーの資料映像。

 

 ときおり出る技術的な質問の他は真新しい発見を示唆する発言もなく時間が過ぎていった。

 

「この中にはスカリエッティに関係しそうな情報はないわ」

 

「そうですか……」

 

 落胆。初めから望み薄だったがやはり外れると気を落としてしまう。

 

「あら、そんなにがっかりしないで。私はスカリエッティに関する情報が無いっていっただけよ」

 

「……どういうことですか?」

 

「私の昔関わっていた仕事に関係しそうなものがいくつかあったの」

 

「教えてください!」

 

 思わず立ち上がり叫んでしまった。

 それでも長身のプレシアさんを見下ろす形にはならないのだが、それは置いておいて話を聞こう。

 

「私は昔エネルギー研究をしていたのだけれど、このデバイスの魔力炉でちょっと気になるところがあるの。それと、ハイペリオン……違うかもしれないけれどヒュペリオンなら心当たりがあるわ」

 

 唐突に光が見えた。

 機体の中枢と唯一の明確な名前。

 

「……私がエネルギー研究をしていたのはもう二十七年も前のことよ。全く関係無いかもしれない」

 

「いえ、かまいません。事件の焦点の中解同だって十三年くらい前から活動始まってますしね。時代が古くても有力情報は有力なままです」

 

「そう、なら話すわね。私は昔、ミッドチルダの中央技術開発局で働いていたの。そこで次元航行駆動炉の研究をしていたわ。当然魔力を使ったね」

 

 言いながらプレシアさんはバインダーを操作して資料を探している。

 彼女のプロフィールはジュエルシード事件のときにエイミィ執務官補佐らが調べたのを見ていたのでだいたい知っている。

 中央技術開発局は時空管理局への技術提供などもしていた組織だ。今はもう解散している。

 

「これね。アインハンダーの魔力炉」

 

 私が解析した機体内部の資料をこちらに見せてくる。

 

「魔力炉の設計って、自由度が高いせいか個人の癖がでやすいの。そして、これは私が二十七年前に作っていたものの癖が出ている」

 

「当時研究していたのは小さな魔力炉じゃなくて次元航行艦の駆動炉ですよね?」

 

「ええ。だから当時の駆動炉を小型化したんじゃないかって私は思うわ。何せ自分自身の癖だからそうそう見間違えないわ」

 

「うーん……」

 

 二十七年前の設計が未だに残っているものなのだろうか。

 

「ミッドチルダの魔法文明は発展し過ぎちゃっているの。だから十年や二十年では大きな技術革新は起きない。百年前のロストロギアデバイスが今の最新のデバイスと遜色ない、なんてこともあるでしょう?」

 

「ああ、言われてみれば確かにそうですね」

 

 最近技術部の方で流行のカートリッジシステムだって、古代ベルカ時代からあるものをただミッド式のデバイスに組み込んでいるだけだ。

 それに、研究のテーマで大型のものを小型化するというのは良くあるものだ。

 プレシアさんは敏腕の研究者だったというから、基本設計が受け継がれていたとしてもありえない話ではない。

 

「それとね。ヒュペリオンは、当事私が所属していた、次元航行駆動炉の開発チームの名前よ」

 

 バインダーの魔力炉に注釈を書き込みながらプレシアさんが言った。

 

「駆動炉だけじゃなくて、駆動炉を取り付ける航空機の開発も一緒にやっていたわ。私が聞いていた最終目的は、ミッドチルダを中心とした世界間航空産業の独占ね」

 

 ……航空機開発!

 何かが繋がりそうだ。

 

「小型機や戦闘機、あるいはデバイスの開発などはしていましたか?」

 

「戦闘機もデバイスも手は出していなかったけど……そうね、一般向けの小型艦の企画が出ていたはずだわ」

 

 駆動炉、小型艦、そしてミッドチルダ中心の産業。中解同と相対する組織の輪郭が見えてきたように思える。

 だが、この程度の情報ではまだ妄想の域を出ていない。必要なのは裏付けか。

 

「解りました。ありがとうございます」

 

「気になったところはこれに書き込んでおいたわ。頑張ってね、魔動少女さん」

 

 プレシアさんからバインダーを受け取る。ちょうど面会が終わる時間になっていた。

 プレシアさんは笑顔のまま退室する私を見送ってくれた。

 やはり一年前のあの人と同一人物とは思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「収獲あったようだね」

 

 私が施設から出ると、同行してきていた捜査官さんが声をかけてきた。

 

 本来は二人で話を聞くはずだったのだが、捜査官さんの判断で私一人で面会することになったのだ。

 子供をダシに使うというとあれだが、未だ治療中のプレシアさんを大勢で囲むよりは私のような小さな子供がフェイトさん達の話を手土産に持っていくほうが良かったのだろう。

 

「忙しい中お疲れ様です。機人とテロ両方追っているんでしょう?」

 

「いや、機人の方は元々何年も前から追っているヤマだしね。それに……」

 

 コートに身を包んだ若い捜査官さんとの会話。

 だがどこかその仕草はハードボイルドな熟練の捜査官っぽい。

 

「あのアインハンダーの娘さん、ギンガと言ったか。血液解析によると、どうやら私の遺伝子が使われているクローン体のようでね」

 

 そう、捜査官さん……クイント・ナカジマ捜査官がつぶやいた。

 

「勝手に私の身体を使って遊んでいる馬鹿どもは、殴ってやらないと気が済まないね」

 

 

 

――――――

あとがき:綺麗なプレシアさん。こういう救われない人はたまに救済SSとかありますね。彼女の過去に干渉して救済するのではなく逆に最悪の状況に追い込んで諦めさせる、このSSの第一部はそんな救済SSだったのでしょうか。

ヤマトに関しては説教シーンもそうですが、女性陣からの理不尽な暴力をごく自然に受けさせるのは難しいですね。ある種の才能が必要なんでしょうか。

 

用語解説

■右翼の装甲に書かれている、EN.03というミッドチルダ文字だろうか

この文を読んだあなたは釈然としない何かを感じたでしょう。

しかし、疑問に思ってはいけません。これは魔法少女リリカルなのはの二次創作SSです。

 

 

SHOOTING TIPS

■Rez

Rezは音ゲーとTPSを組み合わせたセガのSTGです。BGMと敵を撃ち落とす効果音が合致して独特の雰囲気が構築されます。

是非とも良質のヘッドホンを使ってプレイして欲しい一品です。

 

説明
■8/13
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