かんけいせい/しんてきがいしょう(トラウマ)
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 とん、と背中を軽く押された。

 

「きゃ!」少女がその勢いで階段から落ちそうに???なった寸前。

少し寸足らずな長袖から伸びた細長い手が、少女の腕を掴んだ。

 

「そんなにびっくりせんでも…」

 むしろこっちが驚いた、と背の高い青年は、表情ひとつ変えずに言い放つ。

 

「神通さん酷いです、あたし、落っこちるかと思って、怖かったんですからね!」

 

 少女が怒ったように少し声を荒げると、神通と呼ばれた青年は、ほんの少しだけ眉を動かして「悪ィ」と小さく呟いた。

 ちょっこしじゃれとったつもりやったっちゃね、と後ろで松川が笑って。

 

 

 

 それで、この件はおしまい。

 

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 しゃきん、と鋏の音がした。

 

「何して…」聞こうとした、その肩を引かれる。振り返ると、カンカン帽を目深に被り、着流し姿の長身の青年。

「あのっさんは、今までもこれからも、ずっとあんなんや。えらい目にあったししゃあないんやけどな」

 触れんといてあげっぜ。な、と庄川は静かに語る。

 

 しゃきん。切り落ちたそれは、古い写真。

 白黒のフレームの中、硬い表情で写る人々。

 

「神通の中で消えた、いのちの姿や。」

 岩瀬の知らない、彼の辛く哀しく、悔しい、過去。

 

「消したても消せん。一番はがやしいがは神通自身やぜ」

 

説明
【かんけいせい/1P】「昼の階段」で登場人物が「怖くなる」、「長袖」
【しんてきがいしょう(トラウマ)/2P】『目深にかぶる』『いのち』でハサミ

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掌編 富山 河川 擬人化 日常 

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