魔動少女ラジカルかがり A.C.E. -第九話Aパート- |
「対企業テロ戦における
もっとも有効な攻撃、
それは魔法機械をもって、
魔法機械を制することである」
−時空管理局地上本部レジアス・ゲイズ少将の緊急陳述会演説より−
――――――
テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.
第九話『超過激進化型魔法戦闘伝説!!』前編
原作:アインハンダー
原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ
原作設定:日本製シューティングゲーム各種
――――――
五月のある日、地上本部の自席で魔動機械のメンテナンス器具の購入申請を書いている最中のことだった。
「カガリ、ゲイズ少将から呼び出しだ」
「あ、はあい」
先ほどまでどこかと通信をしていたオーリス姉さんに声をかけられた。
レジアスおじさんからの呼び出しか。
こんな時間に茶飲みや酒飲みに付き合えということもないだろうから、ダライアスの何かに関しての話だろうか。
書きかけの書類を保存し、端末をロック。早歩きで部屋を出る。
レジアスおじさんは前線に出ない文官で、その代わりにさまざまな資格と役職を負っている。
地上本部長ではないのだが実質的な最高司令官として陸に君臨しており、部屋も建物の高い場所にある。
魔導師絶対主義のこの時空管理局の中で、魔法資質を持たずにここまでのし上がったというのは凄い話である。
それだけの成果を残していると言うことだが、魔法に頼らず偉くなったという人が珍しいということこそ危ういのかもしれない。
組織は戦闘能力ではまわらない。補助魔法で人の管理は出来ない。検索魔法で作戦立案は出来ない。
皮肉なものだ。地上本部は本局に優秀な魔導師を奪われたらこそ、ゲイズ親子などの優秀な文官が育つ下地が出来たのだ。
現場レベルでもそうだ。
魔法が使えない局員は、本局などに魔導師としてスカウトされてエリートになるなどという半端な幻想は持っておらず、魔法に頼らない様々な技能を伸ばしている。
本局志向の魔導師と生粋の地上部隊の局員とでは温度差が激しかったりするのだが、そういう本局ばかり見ている魔導師はむしろ陸から追いやられるように本局へと推薦される。
単に本局に魔導師を奪われているだけではなく現場の摩擦を無くすために本局に魔導師を放出しているというのは、何というかまあ難しい現状である。
私は局員ではないのでそのあたりで頭を悩ませる必要はないのだが、逆に部外者とあって何かにつけて色々な人に愚痴を聞かされる。
これから会うレジアスおじさんも話のついでに海がどうのこうのと言ってくるのだろうか。言ってくるだろうな。
昇降機に乗り上の階へ。直接行くのは久しぶりの気がするが広い本部内でも道を忘れていることはない。
廊下の奥の一室、ノックをして入室する。
「失礼します」
部屋に入ってまず目に入ったのは本とバインダーに埋め尽くされた壁一面の本棚。いつ見ても壮観だ。
そして、部屋の中央。備え付けのソファーに二人の人影。来客とかぶってしまったのだろうか。
一人は貫禄のある体型にひげ面の熊のようなおじさん。レジアス・ゲイズ少将。
もう一人は、いかつい顔の長身長髪の男性。この人は……。
「主任ちゃんじゃないですか」
ダライアス自治区多次元交流プロジェクトミッドチルダ方面主任。
私の一族のお偉いさんの一人だ。
「いかつい顔とひげもじゃ顔の暑苦しい二人が密室で何やっているんですか?」
「久しぶりだというのにいきなりだなカガリ……」
一般人が見たら恐怖で震えるであろう表情でにらんでくるのを無視して、昔のように主任ちゃんの膝の上に飛び込む。
会話の途中であろうが良いだろう。
「いてっ。うお、重たくなったなぁ」
「最近は自治区に帰っても出ずっぱりでしたからねぇ。こうするのも久しぶりです。というか髪の毛うっとうしいので切ってください」
主任ちゃんの膝の上に座り、正面のテーブルのわきに置かれたチョコレート菓子に手を付ける。
ここにお菓子が置かれているのは私が来たときに食べられるようオーリス姉さんに要望をあげたからだ。おじさんが甘いものに目がないというわけではない。
こうして主任ちゃんの膝の上でお菓子を食べるのも何年かぶり。まだまだ若いというのに昔を思い出してしまう。
「大きくなったら私のお嫁さんになるとか言っていたお前さんがまあ成長したもんだ」
「管理局のど真ん中で堂々と捏造発言をするとは図太くなったものですね。しょっ引きますよ」
もちろんそんなことはこれっぽっちも言っていない。
私の夢は今も昔も戦闘機技師とテストパイロットだ。
「で、レジアスおじさん。なんでこの駄目97オタクが地上本部の重鎮の部屋に来ているんでしょう」
「あ、ああ……」
私と主任ちゃんの様子をぽかんとした顔で見ていたレジアスおじさんが私の言葉に正気に返り、咳払い一つに説明を始めた。
「前にお前が大怪我をしたときがあっただろう。そのときから技術協力で色々やりとりをしているんだ」
「あら、それは知りませんでした」
「お前は基本的に純粋戦力として見ているからな。この主任殿に今まで渡りをつけていてもらったんだ。今回は話が本決まりになって現場に関わってきそうだから一応知らせて思ってな」
「本決まり、ですか?」
もったいぶった話し方だ。
医療提携でパイプが太くなりダライアスの技術力に目を付けた、という話だろうか。
「ああ、ダライアスの技術力には注目している。搭載魔力炉を使った非魔導師用でも使える兵器。中解同の劣悪な田舎兵器とは一線を画している」
そのように言うレジアスおじさんに、主任ちゃんがフォローするように続いた。
「私は安全確保に魔法障壁使える魔導師を使うのが良いかと。運用方法が質量兵器みたいだなんて言われたら我々も困りますし」
「アインハンダーのような、ですか」
と割り込んでおく。主任ちゃんは何のことだと首をかしげるが、レジアスおじさんは、むう、と唸った。
戦闘機人の乗るデバイスと同じだと言われては反論もしにくいか。
「まあでも戦力の底上げには確かに良さそうですよね。人材の育成費とどっちがお得かという話もありますが」
「海に奪われる高ランクを少数育てるよりは全体の戦力増強だ。陸は広い。それに無理な訓練を課して兵を疲弊させるよりもマニュアル化した高度な武具を渡す方が、多少金はかかっても現場への負担は少なくてすむ」
なるほど、確かにダライアスの小型化された魔動機械ならば外部魔力炉を付けても、デバイスとさほど大きさが変わるわけでもなく運用に難も少ないだろう。
ダライアスの機械が全てが全て体内のクリーンフォースの魔力で動かすものだというわけでもない。
「生産施設とかは足りるんですか主任ちゃん?」
「いきなり大量に納入するわけじゃないから今の工場で年内はなんとかな。カガリが頑張ったおかげで試験運用期間は短いんだが。まあどちらにしろそろそろ手を広げるつもりだったからなんとかな。クラナガンの郊外に良い物件融通して貰えそうだし」
「え、郊外って……」
「前に潰した中解同のプラントだ」
横からレジアスおじさんが注釈を入れてくる。
プラントと言えば、先月アインハンダーと一緒に地下の駆動炉を封印したあのプラントだ。
「あの土地は書類上で架空の企業の所持になっていたのでな。我々が押収した。内部を全て調べ終わったら使える部分は全て再利用する。来年にはとりかかれるだろう」
「それは何とまあ捜査も終わっていないのに豪胆な計画で……」
テロ組織の工場を奪って自分たちの戦力増強に使うなど、そうそう思いつくものでもない。
数々の改革を成し遂げてきたレジアスおじさんらしい豪快な選択だ。低予算で中解同のプラントをダライアスの工場に改造できるのかどうかはともかくとして。
私はチョコレートを食べつつそんな二人の大人の悪巧みを聞き続けたのだった。
BRIEFING
Communication mode
SIMULATE MISSION
RANK B
識別コードを入力せよ
PLAYER1
HYT
これよりシミュレータによる仮想演習を行う。
君の実力を最大限に発揮し、より高いランクをめざせ。
試験では成績が優秀な者にのみ、魔導師の資格が与えられる。
一面に広がる荒野。その上空に一人の魔導師が浮かんでいる。
白と黒で構成されたコートに身を包み、右手に黄金の杖、左手に一冊の本を抱えていた。
吹き付ける風の中、頭に載せられた帽子はピンで固定でもされているのか吹き飛ばされることはない。
杖を構え、前方へと飛翔する。
魔導師の向かう先、そこには戦車の大軍があった。
いずれも装甲と簡易の魔力障壁に守られた魔法兵器だ。
戦車の群れへ目がけ、魔導師が杖の先を向けた。
漆黒の魔力光が煌めく。そして、杖の先からは闇色の光とは正反対の青白い魔力の矢が発射された。
魔力の矢は一発では収まらず、さながら機関銃のごとく止まることなく撃ち出されていく。
魔法兵器の一体一体がさほど強固な守りではないと見抜いての魔法使用だろう。
最小の魔力で構成された矢が戦車の群れへと飛んでいく。
矢は障壁を削り装甲へ突き刺さる。
続けて届いた矢が機体の内部へと侵入し戦車は小さな爆発と共に動きを止めた。
止まることなく矢を撃ち出しながら魔導師が前へと進む。
緻密な魔力出力制御によって生み出された弾幕が戦車をなぎ倒していく。
荒野の中を進むと、戦車の群れに中型の装甲戦車と空を行く戦闘機が混じるようになる。
中型の装甲戦車は矢の雨にさらされながらも砲撃の手を休めない。
魔法の狙いで動きを止めていた魔導師に戦車の砲弾が迫る。
それに気づいた魔導師は咄嗟に回避体制を取る。
砲弾がバリアジャケットをかすめる。
展開していた魔力障壁が大きく削られた。
装甲の強度とは釣り合いの付かない強烈な砲撃であった。
魔導師が回避で攻撃の手を休めるうちに、戦車と戦闘機はさらに前へと進軍していた。
魔導師を狙う攻撃が次々と繰り出される。
大きな動きでそれを回避しながら、魔導師は矢の放出だけでは足りないと思ったか、二つの魔力スフィアを作り出す。
杖を再び前へと構えると、魔力スフィアからも青白い光の矢が飛び出した。
上空から地を這う戦車へと次々と矢が襲いかかった。
戦車の群れが一掃される。
だが、地上に目を向けている間に高速で飛来した戦闘機が眼前に迫っていた。
自らを砲弾とした体当たりだ。
魔導師は身をひねって戦闘機の翼の下に回り込む。
が、高速飛行により生まれた衝撃波により、魔導師は大きく弾かれた。
飛行魔法で慣性を殺しきれず曲線軌道を描いて吹き飛ぶ魔導師の行く先に、新たに現れた戦車と戦闘機が一斉射撃を開始した。
魔力弾と物質化魔力砲弾が飛来する。
魔導師は防御することでなく、さらに飛翔魔法の加速を重ねることで凶弾を逃れようとする。
魔導師の通った軌跡に交わるように魔力弾が通過する。
加速をもって弾雨を回避。
だが、その動きを読み撃ち出されていた数発の魔力弾が高速で動く魔導師に衝突する。
魔力の光が爆発を起こす。
動きを止める魔導師。そこに戦車の砲身がまたしても向けられる。
今にも集中砲火が開始されようとした瞬間、いつの間にか左手の本を開いていた魔導師が杖を大きく横に薙いだ。
辺り一面を光で覆い尽くすほどの閃光が走り、魔法兵器の群れの中央が突如大爆発を起こした。
詠唱省略された広域魔法の行使。
精神力の消耗が激しいのか、魔導師は肩で大きく息をしていた。
魔導師の周囲からは爆発に全て吹き飛ばされたのか、魔法兵器の姿が消えていた。
大地には焼け跡だけが残り、機械の残骸すら残っていない。
魔導師一人だけになった荒野。突如、どこからともなく警報が鳴り響いた。
けたたましい警報の音に混ざり、金属同士がこすれあうような重厚な音が地から響いてくる。
魔導師が視線を遠くに向ける。
視線の先、巨大な岩が土煙を上げながら動いていた。
いや、岩ではない。荒野の土に合わせた保護色に塗装された、大型の装甲戦車だ。
その重量を支えるキャタピラが大地を削り、その進路に二本の太いわだちを残していた。
魔導師が再び杖を構え、前進した。
正面から魔導師と装甲戦車が対峙する。
魔導師は大きく動きながら杖と魔力スフィアから魔力の矢を連射。
対する戦車は前面に搭載されている魔力機関銃を魔導師へと向ける。
戦車には中央に二本の砲身、後方にミサイルポッドに機関砲と多くの兵装が搭載されており、起動を始めたのか装甲の中から砲門を露出し始めている。
魔力の矢が左の機関銃へと命中し、小さな爆発と共に破壊される。だが、既に銃弾は撃ち出されている。
魔導師は飛行を続けることでそれを回避。
さらに右の機関銃へと矢を向ける。
機関銃が破壊されると同時、ミサイルが撃ち出され機関砲が回転を始める。
魔導師は回避を続けながらも、矢を撃ち続ける。
だが、装甲戦車の厚い守りを貫けない。
魔導師の顔に焦りが浮かんだ。
魔力スフィアを収め、足下に剣十字の魔法陣を展開する。
大魔法の詠唱。小さな矢が通じないならば大きな一撃で一気に仕留めるつもりなのだろう。
戦車の銃撃音が響く中、魔導師の詠唱が続く。
魔法陣が漆黒の魔力光で強く輝き、魔導師は杖を前へと向ける。
しかし、魔導師の眼前には複数の追尾ミサイルが迫っていた。
魔導師の身体を覆う魔力障壁にミサイルが激突する。
爆風が魔導師の全身を包んだ。
BRIEFING
Communication mode
SIMULATE MISSION
RANK B
戦闘結果データを報告する。
1P SCORE 不合格
「あーもー、Bランクはきっついわー」
「おつかれさまです」
幻影魔法で作られたシミュレーションエリアから汗だくではやてさんが出てきた。
私は用意してあったタオルを放って渡す。
今日の午後ははやてさんの戦闘訓練の監修だ。
今やってもらったのは空戦Bランクの魔導師試験対策用のシミュレートミッションだが、本来のはやてさんならば魔力に任せた力業で軽々と突破できてしまうものだ。
そうならなかったのは、魔力の大きさだけに頼るような戦い方にならないよう、リミッターをつけての訓練だからだ。
はやてさんは正規の訓練をなされた武装魔導師ではない。
ある日突然魔導書の主として選ばれ、生まれ持った強大な魔力で魔導師となっただけの素人なのだ。
民間の魔導師になるならば別にそれでも豊富な蒐集魔法でいくらでもやれることはあるが、ここは時空管理局。
日々増加する犯罪に対応するために、魔導師としての様々な能力向上が求められる。
今の段階のはやてさんならば、リミッターをしていなくとも私にすらかなわない可能性が高い。
私は先日AA+の空戦魔導師資格を取ったが、この程度の力量の犯罪者ならば次元世界に多く存在している。
「で、カガリちゃんから見て今のはどうやった?」
「そうですね……、防御を回避に任せすぎですね」
「そっかぁ。カガリちゃんの動きを参考にしたんやけど駄目だったかぁ」
「私は回避に有利な様々な機能が備わっているから回避頼みの防御をしているんですよ。はやてさんはちゃんと防壁魔法も防盾魔法も交えていきませんと」
「攻撃と防御の同時使用がなー。マルチタスクにはまだ慣れんわ」
マルチタスクとは、複数の行動を同時に行うという魔導師の持つ技術である。
簡単なものでは口での会話と念話での会話を同時に行え、高度なものになってくると複数の異なる種類の魔法を同時詠唱できるようになる。
ちなみに私は使えない。代わりに高速知覚や脳内演算、記憶検索などの体内チップを使った能力を得ているが。
はやてさんが最後に撃ち落とされたのは、大魔法の詠唱と砲撃の把握のマルチタスクに失敗したからだろう。
「それと、最後にあんな距離で大魔法に頼ろうとしたのは失敗ですね。他にも選択肢はあったはずです」
持参していた端末から、はやてさんの蒐集魔法一覧を出力した。
タオルで顔を拭いているはやてさんの横に立ち、端末を見せる。
「詠唱の長い魔法はディフェンダーの援護があってこそです。はやてさんは云わば何でも出来る万能型なんですから、一人で考えずに専門の人と相談しましょう」
「じゃあカガリちゃん一緒に考えてくれるか」
「いえ、私は専門外ですから他の人に頼んでください」
「そんなあーいけずー」
私の背中を叩きながら身をくねらせるはやてさん。
だが、無理なものは無理だ。
「教えてくれる人材を探すのも大事です大事。幼さは高魔力ランクの傲慢さを隠せる貴重な武器ですよ? 教官候補探して積極的にアタックしていきましょう」
「あたし、ヤマトさんがええなぁ」
今度は胸の前で手を握って身をくねらせ続ける。
立てるようになったからってリアクションが大げさすぎだ。
「そんなこと言っている場合ですか。魔導師試験も近いんですから、気を緩めているとリミッターなしでも失格ですよ」
「そやなー。カガリちゃんと一緒にランクアップせなな」
「いえ、私は先日受けて受かりましたよAA+」
「うわっ薄情っ!」
「日程調整とか色々あるんです。ほら、訓練続きやりますよ」
文句を言い続けるはやてさんをシミュレートエリアへと押し込める。
彼女は訓練のたびに力量を上げていっている。
まだ幼い駆け出しの魔導師だ。成長はまだまだ続くだろう。
――――――
あとがき:StS漫画版で何故ティアナやスバルがあっさり六課への推薦を貰えたのかの考察の巻。やっかい払いでもなければ災害担当が将来性の高い若きCランク魔導師なんて軽々と放出しませんよねー、と。
訓練を積んでいないはやてがそんなに強くないというのはStS漫画版のなのはとフェイトの訓練校でのくだりから。
SHOOTING TIPS
■識別コードを入力せよ
セイブ開発のSTG、ライデンファイターズJETよりゲーム開始のオペレート画面。ライデンファイターズJETは最新機のパイロット候補としてシミュレーター訓練を受け、成績を認められれば現実でのミッションに移行するというちょっと変わったステージ構成になっています。
訓練段階でコンティニューするような低成績者は、現実のミッションに就かせて貰えません。というか現実ミッション行ったことありません。
説明 | ||
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