上条「救われぬ者に救いの手を」前編
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共同生活1日目

放課後

―学生寮 1F―

上条「ふふふ〜ん、ふふふ〜ん、ふ・ふ・ふ〜ん♪」

 

舞夏「ご機嫌だなー、上条当麻」

 

上条「お、舞夏か。やっぱ分かる?」

 

舞夏「不幸の塊の上条当麻が鼻歌なんて歌ってればなー。何かいいことでもあったのかー?」

 

上条「いやー、実は今日はサイフも落とさなかったし、タイムサービスの商品は買えた! なかなかいい日なんじゃないでしょうか!?」

 

舞夏「なんというか、普段の不幸さが身に沁みる一言だなー」

 

上条「学校でも殴られなかったし、スキルアウトに絡まれることも無かったんだぜ?」

 

舞夏「そもそも、私は両方経験したことないけどなー」

 

上条「おかげで、今日の上条さんは不幸指数0なんです。ハイ」

 

舞夏「それはよかったなー」

 

上条「やっぱ、ビリビリに捕まらなかったのが大きいのかな?」

 

舞夏「女の子に絡んでもらえて不幸っていうのは罰当たりなんだぞー?」

 

上条「ハハハ……」

 

上条(そりゃ、上条さんも普通の女の子なら大歓迎なんですがね)

 

舞夏「あ、そうそう。女といえば―――」

 

上条「なんかあったのか? インデックスが何か迷惑かけたとか?」

 

舞夏「いや、違うぞー? 兄貴のとこに綺麗なお姉さんが来てたんだよなー」

 

上条「土御門のところに?」

 

上条(なんだろう。もの凄く嫌な予感がする……)

 

上条「へえ。ちなみにどんなヤツだったんだ?」

 

舞夏「うーん、そうだなー……。ポニーテールで背の高い、妙にエロいお姉さんだったかなー」

 

上条(神裂か? まさか、また何かあったのか?)

 

舞夏「私から、兄貴を奪おうとするなんてとんでもないヤツだよなー、上条当麻」

 

上条「その心配はないだろ。あいつシスコンだし」

 

舞夏「だよなー。まあ、用心はするけどー」

 

上条「ははっ、それすら必要ないと思うけど」

 

舞夏「なんだー? 知り合いかー?」

 

上条「まあ、多分……」

 

舞夏「じゃあ、兄貴に手を出したら、ただじゃ済まないぞーって伝えておいてくれー」

 

上条「りょーかい。またなー」

 

舞夏「アディオース、上条当麻」

 

上条(荷物置いたら、土御門のところに行ってみるか)

 

 

―上条の部屋―

上条「ただいまー」

 

上条(そういえば、インデックスのやつは何か知ってるのか?)

 

上条「おーい、インデックス。神裂が来てるらしいんだけど―――」

 

 

土御門「お。おかえり、カミやん」

 

 

神裂「お、お邪魔しています」

 

 

上条(なんかもういるー!?)

 

上条「えーっと……」

 

土御門「あー、お構いなく。勝手に上がらせてもらってるぜい」

 

上条「お構いなくじゃねーよ!! なんで二人は、勝手に上条さんの家に上がってるんでせうか!?」

 

神裂「す、すみません! これには色々と事情がありまして……」

 

土御門「とりあえず、説明するからこっちくるにゃー」

 

上条「…………ハイハイ。今度は何人の魔術師を殴ってくればいいんでしょうか?」

 

土御門「事あるごとにカミやんに頼んでたのは、謝らなくちゃいけないかにゃー……」

 

神裂「まったくですね……」

 

上条「え? 違うの?」

 

上条「そういえば、インデックスはどうしたんだ? 見当たらないけど」キョロキョロ

 

神裂「あの子でしたら―――」

 

土御門「んー。その説明の前に、右手を前に出してくれ」

 

上条「右手を?」

 

土御門「実際に見てもらった方が、早いしにゃー」

 

神裂「そ、それもそうですね。それに、ここで解決してしまえば、それに越したことはありません」

 

上条「……? 要するに手を出せばいいのか?」スッ

 

神裂「いえ、普通に私に触っていただければ―――」

 

土御門「ま、手っ取り早く済ませちまうぜい」ガシィ

 

上条「え? 何? 何で手首掴むの!?」

 

 

 

土御門「こうするんですたい」グィ

 

 

 

上条「はい?」ムニュ

 

 

神裂「」

 

上条(なんか柔らかいものが手のひらに……)

 

神裂「――――――ッ!!」バシィ

 

上条「痛ぇ!?」ドサァ

 

土御門「にゃー。やっぱりダメか」

 

神裂「な、なぜ胸なんですか!?」

 

土御門「説明しやすいと思ってにゃー」

 

神裂「そんなことのために……」ブルブル

 

土御門「ぷぷっ、今のねーちんは、まったく怖くないからにゃー」

 

神裂「あとで、覚えておきなさい……」

 

上条「オイ、土御門! いきなり何させんだよ!?」

 

土御門「んー、カミやん。何か違和感は感じないか?」

 

上条「え? そりゃ違和感を感じるほど、でかかったのは確かだけど」ワキワキ

 

神裂「上条当麻!!」

 

上条「ひぃっ!? す、すいません!!」ドゲザ

 

土御門「そういうことじゃないんだけどにゃー……」

 

上条「違和感。違和感ねぇ……」

 

上条(あれ……。そういえば……)

 

上条「神裂にビンタされた割には痛くなかった……かな?」

 

土御門「それなんですたい」

 

神裂「うううっ……」

 

上条「ま、まさか……上条さんの防御力がついにその域まで上がっていたとは……」

 

土御門「まあ、最近のカミやんを見てれば、そう思われてもしかたないんだけどにゃー……」

 

上条「違うのか?」

 

土御門「あー……」

 

神裂「問題は、貴方ではなく私なのです……」

 

上条「神裂が問題? あの、話がよく見えないんですけど?」

 

 

 

 

土御門「実は、ねーちんが聖人じゃなくなっちまったんですたい」

 

 

 

 

上条「は?」

 

神裂「そういうことなんです……」

 

上条「神裂が聖人じゃなくなった……?」

 

土御門「カミやんに聖人がどんなものか説明したことあったっけ?」

 

上条「すごいパワーとスピードを持った超人じゃなかった?」

 

神裂「まあ、結果的にはそうなのですが……」

 

土御門「聖人って言うのは、生まれながらに『神の力を宿せた人間』のことを指すんだ」

 

神裂「いわゆる偶像崇拝の理論です。神様に似せられてデザインされた人間には『神様の力』が宿るという」

 

上条「んー……。『天使堕し(エンゼルフォール)』のときに言ってたやつか? よく覚えてないけど」

 

神裂「聖人は『聖痕(スティグマ)』を解放した場合に限り、一時的に人間を超えた力を使うことができるんですよ」

 

土御門「普段の状態でも、相当の力はあるんだけどにゃー」

 

上条「それで、聖人じゃなくなったっていうのは……」

 

神裂「先日、イギリスで事件を片付けている時に、謎の術式を受けてしまいまして……」

 

土御門「ねーちんが油断してるからだにゃー」

 

神裂「ぐぅっ……。ひ、否定はできません……」

 

上条「謎の術式って……」

 

神裂「どうやら、聖人の所以である『神様のレプリカ』としての構造を意図的に変質させるものらしいのです」

 

土御門「それのせいで、偶像崇拝の恩恵を受けられなくなったねーちんは、ただの人間になっちまったって訳ですたい」

 

上条「神裂がただの人間にねえ……」

 

神裂「はは……お恥ずかしながら……」ポリポリ

 

上条「それで、元に戻るのか?」

 

神裂「実は、術式の構造が解析されていないので、まだなんともいえないのです」

 

土御門「禁書目録には、術式の解析のためにイギリスに行ってもらってるんだぜい」

 

上条「ということは、インデックスにも分からなかったって言うのか?」

 

神裂「ええ。私の体に魔術の痕跡が残っていないので、直接現場に行って確かめてもらっています」

 

土御門「なんでも、同じ効果を持つ術式が数種類あって、それぞれ解呪の方法が違うんだとさ」

 

上条「そ、そうなのか……」

 

土御門「カミやんの右手なら手っ取り早いと思ったんだが、肩透かしだったって訳だにゃー」

 

神裂「その……さきほどはすみません……」

 

上条「いや、それはいいんだけどさ……」

 

神裂「はい?」

 

上条「神裂に魔術の痕跡が残ってないなら、幻想殺しの効果はないって分かってましたよね?」

 

神裂「!!」

 

土御門「あれぇ〜? そうだったかにゃ〜?」ニヤニヤ

 

神裂「つ、土御門ぉ!!」ギリギリ

 

土御門「ぷぷーっ! ねーちんが油断してるのが悪いんだにゃ〜」

 

神裂「くぅっ……」

 

上条(まあ、俺的には役得でしたけど)

 

神裂「それで……、というか、ここからが本題なのですが……」

 

上条「本題?」

 

土御門「ここにねーちんを連れてきた理由は、幻想殺しに触れさせるってだけじゃないんだぜい?」ニヤニヤ

 

上条(なんだろう。土御門がこの笑い方をするときは碌な目に遭ってない気がする)

 

土御門「効果がないって分かってるのに、わざわざ護衛を付けて連れてくるほど俺たちもヒマじゃないからな」

 

神裂「また貴方に借りを作ってしまうのは心苦しいのですが……」

 

上条「え? え? 俺を置いて話進めないでくれますか!?」

 

土御門「あー。実は―――」

 

上条「実は?」

 

 

 

 

 

 

土御門「しばらく、ねーちんをここで匿って欲しいんだぜい」

 

 

 

 

 

 

上条「はい?」

 

上条「いやいや、待てよ、土御門。意味が分からないんですが」

 

土御門「な〜に、簡単なことだぜい。ねーちんが聖人の力を発揮できないってことは、まだ知られちゃいないが時間の問題だろう」

 

上条「それで?」

 

土御門「他の魔術勢力は、力が戻る前にねーちんの排除をしようとするはずだ。何せ、聖人は核兵器クラスのシロモノだからな」

 

神裂「ここに来るまで襲撃を受けなかったのは幸運でしたね」

 

上条「ん? 匿うだけなら、イギリスでもいいんじゃねーのか?」

 

土御門「それはダメなんだ。教会内にもスパイがいる可能性がある。俺が言うのも何なんだけどにゃー」

 

上条「まさか……」

 

神裂「ありえない話……ではないんですよ。信頼できる天草式は、方々に散っているため、彼らに厄介になることもできませんし……」

 

土御門「そういう意味で、魔術師の侵入しにくい学園都市は好都合なんですたい」

 

上条「イギリスが危ないってのは分かったけどさー。俺のところに匿うのはなんでなんだ?」

 

土御門「この件に関しては、学園統括理事長からは許可をもらってる」

 

上条「統括理事長に?」

 

土御門「そうだ。あいつにもいろいろと思惑はあるんだろう。とにかく、ねーちんが学園都市に入っていることは問題ない」

 

神裂「……問題は、私が魔術サイドの人間、ということでして」

 

上条「ん? 要するに、俺が監視役をしろってこと?」

 

土御門「ま、そういうことですたい。洗濯機もまともに使えないねーちんがどうこうするとは思えねーけどにゃー」

 

神裂「な、なぜそれを土御門が……」

 

上条「あれ? それって、土御門じゃダメなのか?」

 

土御門「カミやん、良く考えてみろよ。俺はスパイなんだぜい?」

 

上条「うん。監視の意味ないな」

 

神裂「そういうことらしいです……」

 

土御門「あと、ねーちんがこっちにきた理由は、名目上護衛ってことになってる」

 

上条「護衛?」

 

神裂「あなたがまた魔術師に狙われている、という筋書きです」

 

土御門「実際には、カミやんがねーちんの護衛になる訳だがにゃー」

 

上条「え? 俺が護衛すんの?」

 

土御門「今のねーちんは、一般人に毛が生えたようなものだからな。ほとんど戦力にはならない」

 

神裂「ははは。七閃くらいなら使えるのですが、戦闘となると、身体能力の低下が激しいもので……」

 

土御門「そのくせ、反射神経は変わってないもんだから、とっさに動こうとして、肉離れになりそうになってるんだぜい? ぷぷーっ」

 

神裂「技術面は変化ないのが、逆に厳しいんですよ。身体がついていかなくて」

 

上条「そういえば、刀も持ってないんだな」キョロキョロ

 

神裂「ええ。最初はカモフラージュのために持ち歩いていたのですが……」

 

上条「ですが?」

 

 

 

神裂「その……、一日持ち歩いていたら、筋肉痛になってしまいまして……」ハハハ

 

 

 

上条(なにこの人。かわいいんですけど!!)キュン

 

土御門「難しい話はそのくらいでいいかにゃー? 要するに、カミやんのところに女の子一人置いてくれって話ですたい」

 

上条「まあ、別にいいけど」ポリポリ

 

神裂「本当にすみません……」ペコ

 

上条「困ったときは互い様だろ? 何回も助けてもらってるし、そのくらいなんでもねーよ」

 

神裂「毎回助けてもらっているのは、こちらなのですがね……」

 

土御門(んー、ちょっと予想外だったにゃー……)ボソ

 

上条(は? 何が?)

 

土御門(てっきり、カミやんは断るもんだと思ってたんだけどにゃー)

 

上条(困ってる人は放っておけないだろ)

 

土御門(そうじゃなくてだにゃー……。しばらく、禁書目録は帰ってこないんだぜい?)

 

上条(それはさっき聞いたぞ)

 

土御門(ってことは、だ。カミやんはこれから色気ムンムンの年上系美女と一つ屋根の下……)

 

上条「あ……」

 

土御門(服装のセキュリティが低い上、聖人の力もねーから、無理やりにでも押し倒せる……)

 

上条「なんてこったい……」

 

土御門(カミやんはこの拷問みたいな毎日を乗り切れるかにゃー?)

 

上条「ふ、不幸だ……」

 

神裂(やはりご迷惑でしょうか……?)

 

神裂「その……どうしてもダメなら、イギリスに引き返しますので」

 

上条「え?」

 

土御門「まー、安全性は低くなるけど、取れない選択肢じゃないにゃー」

 

上条「いやいや、一度引き受けた以上、断ったりはしませんよ?」

 

神裂「で、ですが……」

 

土御門「ねーちんは何をそんなに引っ込み思案な訳?」

 

神裂「それは……その……」

 

土御門「今までの借りを返せてない上に、また借りを作っちまうーとか考えてるのかにゃー?」

 

神裂「うっ……。そ、その通りです……」

 

土御門「だとよ、カミやん。なんか言ってやれ」

 

 

 

上条「…………救われぬ者に救いの手を」

 

 

 

神裂「え?」

 

上条「たしか神裂の魔法名だったよな?」

 

神裂「ええ。そうですけど?」

 

 

上条「貸しとか持った憶えはねーけど、たまには神裂が救われたっていいんじゃねーの? 上条さんは見捨てたりしませんのことよ?」

 

 

神裂「はは……。あなたには救われてばかりの気もしますけどね」

 

土御門「じゃあ、これで決まりってことでよろしく頼むぜい」

 

上条「おう」

 

 

上条「って言ったのはいいけど、何するればいいんだ……?」

 

土御門「カミやんは特になにもしなくていい。外からの魔術師たちはオレたちがなんとかするから、普段通りの生活をしてくれ」

       ・ ・

神裂(オレたち? 誰か他に補助者がいるのでしょうか?)

 

上条「そんな危ないマネを土御門たちだけに押し付ける訳にもいかない」

 

土御門「にゃー。カミやんは勘違いしてるぜい」

 

上条「勘違い?」

 

土御門「外の魔術師をどうにかするってのは、何も戦うだけじゃないんですたい。情報の隠蔽なんかをメインに立ち回ってりゃ時間は稼げるからにゃー」

 

上条「じゃあ、護衛っていうのは……」

 

土御門「この街には、能力者やスキルアウトもいる。カミやんの護衛ってのは主にそっち方面になるにゃー」

 

上条「そういうことか」

 

神裂「その……人払いの術式は苦手でして……」

 

土御門「そもそも、ねーちんはできるだけ魔術は使わないようにしてくれ。外で感知されたら、隠蔽してる効果が薄くなっちまうからにゃー」

 

神裂「分かりました。緊急時以外は使用を避けましょう」

 

土御門「じゃ、この辺で事務連絡は終了ってことでー」

 

上条「あ、おい。どれくらいの期間かかりそうなんだ?」

 

土御門「まだなんともいえないにゃー。少なくとも2〜3日、長ければ数ヶ月ってところか」

 

神裂「数ヶ月……ですか……」

 

土御門「それでも、力が元に戻るかは分からないけどにゃー」

 

上条「そ、そうなのか……」

 

土御門「それじゃあ、何かあったらケータイにでも連絡してくれ」

 

上条「え? もう行っちまうのか?」

 

土御門「情報の隠蔽や偽情報を流すのは、早ければ早いほど有効なんだぜい? ま、あくまで時間稼ぎだけどにゃー」

 

上条「そうなのか」

 

神裂「そちらはよろしくお願いします」

 

土御門(このチャンスにいろいろ恩返しするチャンスだから頑張ってくれよ、ねーちん)ボソボソ

 

神裂(そ、そんな! また大きな借りを作ってしまって、それどころでは……)

 

土御門(でかい借金もコツコツ返していくしかないんだぜい? 一発で返そうとするから何もできないんだにゃー)

 

神裂(そ、それに今の私にできることなんてたかが知れて……)

 

土御門(聖人の状態だろうと、カミやんにできることは大して変わらないだろ? それなら、今のうちにポイント稼いどくのが利口だ)

 

神裂(ぽ、ポイント稼ぎなんてしません!)

 

土御門(ま、いろいろサポートはしてやるからにゃー)ポンポン

 

神裂(余計なお世話です!!)

 

土御門「では、良い週末をー!!」ノシ

 

上条「あ! おい!」

 

神裂「言うだけ言って、行ってしまいましたね」

 

上条「本当に大丈夫かな……」

 

 

上条「とりあえず、日用品なんかは明日そろえるとして……」

 

神裂「上条当麻」

 

k枚条「ん? なんだ?」

 

神裂「ここにお世話になる間、私はあの子と同じ扱いで構いません」

 

上条「ええっ!?」

 

神裂「あまり客人として意識して欲しくはありませんから」

 

上条「同じっていうと、神裂さんは一日中ゴロゴロして、食事なんかも食べる係オンリーってことですか……?」

 

神裂「………………はい?」

 

上条「いや、普段のインデックスはそんな感じなのですが……」

 

神裂「その、なんというか……すみません……」

 

上条「あ……、うん……」

 

神裂(なんだか雪だるま式に借りが増えているような気がします……)

 

神裂「と、とりあえず、家事全般はお任せください!」

 

上条「!? い、今なんと?」

 

神裂「ですから、家事はお任せくださいと……」

 

上条「ということは、上条さんが一日ゴロゴロして、食事なんかも食べる係オンリーってことですか!?」

 

神裂「居候をさせて頂く身ですから、そのくらいは当然かと」

 

上条(なんだろう……。神裂から後光が見える気がする……)

 

神裂(なぜ、上条当麻は泣きそうな顔をしているのでしょうか?)

 

神裂「そうですね。もういい時間ですし、夕食の準備をしましょう」

 

上条「よ、よろしくお願いします!!」

 

神裂「」ビクゥ

 

神裂(ここまでテンションの高い上条当麻は見たことがありません)

 

上条「って、言っても冷蔵庫に大したモノは無かったと思うけど」

 

神裂「では、その辺も明日そろえるとして、今日はあり合わせで済ませてしまいましょう」

 

上条「そういえば、洗濯機がどうのこうのって言ってたのは?」

 

神裂「ええと……、機械全般は苦手でして……。炊飯器くらいはなんとかなるのですが……」

 

上条(今日は、神裂の知らない一面がどんどんでてくるなー)

 

神裂「とりあえず、あちらでお待ちください」

 

上条「お、おう」

 

 

数十分後

―――

神裂「簡単なものしかできませんでしたが」

 

上条「………………」

 

神裂「ど、どうかしましたか?」

 

上条(お、女の子(?)の料理だ……)

 

神裂(なんでしょう? 今、一瞬イラっときました)

 

上条「いただきます」

 

神裂「はい、どうぞ」

 

上条「パクッ」

 

神裂「お口に合いますか?」ドキドキ

 

上条「そりゃもう! 上条さんが作るのとは大違いですよ!!」

 

神裂「それは良かったです」ホッ

 

〜〜〜

 

上条「ごちそうさまー」

 

神裂「お粗末様でした」

 

上条「それにしても、神裂は料理もうまいんだな」

 

神裂「その……、和食は自信あるのですが、それ以外はからきしで」ハハハ

 

上条「いやいや、得意分野があるのはすごいと思いますよ?」

 

神裂「あ、ありがとうございます」

 

―――

上条「それで、身体能力が落ちてるって話だったけど、どれくらいになってるんだ?」

 

神裂「……そうですね。分かりやすい例ですと」

 

上条「うん?」

 

神裂「今までは、軽く流しても50mを1秒かかりませんでしたが」

 

上条「時速150kmオーバーかよ!?」

 

上条(聖人ってのは、音速も出せるんじゃないか?)

 

神裂「今では、全力でも7秒くらいはかかるかもしれません」

 

上条「へー。それでも、平均女性から比べれば、だいぶ早い方なんだな」

 

神裂「足はまだいいのですが、腕力の方が厳しくてですね」

 

上条「さっき言ってたやつ?」

 

神裂「は、はい。まさか七天七刀をまともに振るえないとは思いませんでしたよ」

 

上条(あれ2mくらいあるしなぁ……。上条さんでもフラフラになるかもしれませんよ?)

 

神裂「とにかく、現在の私は、そこそこ動ける一般人レベルでしかありません」

 

上条「なるほどなー。日常生活で不便だったりはしないのか?」

 

神裂「ええ。仕事以外ではそこまで不自由することはありませんね」

 

上条「そりゃ良かったよ」

 

神裂「心配してくれたのですか? ありがとうございます、上条当麻」

 

上条「あ、ああ」

 

上条(それにしても、フルネームで呼ばれるってのはむず痒いな……)

 

上条「あのさ、神裂」

 

神裂「はい。なんでしょうか?」

 

上条「その『上条当麻』ってフルネームで呼ぶのは、できればやめて欲しいんだけど」

 

神裂「気になります?」

 

上条「フルネームで呼ばれるとむず痒いというか、妙に恥ずかしいというか……」

 

神裂「それもそうかもしれませんね。それでは、なんとお呼びしましょうか?」

 

上条「その辺は神裂の好きな呼び方でいいよ。フルネーム以外なら」

 

神裂「そうですか。…………それでは、『当麻』と呼ばせて頂きましょう」

 

上条「ええっ!?」

 

上条(いきなり名前ですか!? 確かに、神裂に上条って呼ばれるのは違和感ありますけど!!)

 

神裂「お気に召しませんか?」

 

上条「いえいえ!! そんなことないのでございますよ!?」

 

神裂「なぜ、オルソラのような口調に?」

 

上条「そそそそ、そんなことないぞ?」

 

神裂「はぁ、そうですか」

 

上条(無邪気なインデックスと違って、こう……グッとくるものがあるな……)

 

 

神裂「では、よろしくお願いします、当麻」ニコ

 

 

上条「おぅふ」

 

神裂「?」

 

上条「ふ、風呂入るだろ? そろそろ沸くから、先に入ってくれ」

 

神裂「あ、そうですね。では、お先に失礼させていただきます」

 

上条(よし、この隙に一旦落ち着こう。落ち着けッ! 落ち着けッ!!)

 

神裂「そうそう。覗いたりしたら……分かってますね?」

 

上条「か、上条さんはそんなことしたりしませんのことよ?」

 

神裂「そうですか? たしか海の家では―――」

 

上条「す、すみませんでした―――ッ!!」

 

神裂「ふふっ、冗談ですよ。その程度にはあなたを信頼しているつもりですから」

 

上条「お、驚かせるなよ……」

 

神裂「すみません」ニコ

 

上条(一日目からこんな風で大丈夫だろうか……)

 

神裂「それでは」ガチャ

 

上条「ああ。ごゆっくり」

 

 

数分後

―――

上条「そういや、着替えとかどうするんだ? 見た感じ持ってきてないみたいだけど」

 

<ドサッ

 

上条(今、ベランダの方で音がしたような……。気のせいか?)

 

prrrr

 

上条「ん? はい、もしもし?」

 

土御門『あ、カミやん? ねーちんの着替えベランダに置いといたからよろしくにゃー』

 

上条「…………土御門。お前何か仕組んでるだろ?」

 

土御門『いきなりキツイご挨拶だにゃー。この土御門元春が、何のために、わざわざ方々を駆け回ってると思っているんだ?』

 

上条「それにしちゃタイミングが良すぎるだろ!」

 

土御門『言いがかりはやめて欲しいぜい』

 

上条「本当に?」

 

土御門『別に、情報操作をカミやんに手伝ってもらってもいいんだぜい?』

 

上条「え?」

 

土御門『ここ二日ほど、まともに寝てないから、カミやんが手伝ってくれれば、少しは寝れるかにゃー……』

 

上条「その……疑ったりしてすまん」

 

土御門『今までのことを考えれば仕方ない。そんなことより、ねーちんは頼むぞ』

 

上条「任せとけ」

 

土御門『それじゃ、また何かあったら連絡する』

 

上条「ああ、よろしく頼む」ピッ

 

 

―――

上条「―――と土御門を信頼していた時期もありましたよ……」

 

上条(着替えってこれかよ……)

 

【堕天使エロメイドver2!!】※ver1とは白と黒の配色が逆になってます

 

上条「こんなの出したら、俺が殺される……」ガクガク

 

上条(大体、こんなの着て寝られるか! チクショウ! 土御門を信用した俺がバカだった!!)

 

上条「仕方ない、押入れにでも隠しておくか」ガサガサ

 

 

神裂「当麻、何をしているのですか?」

 

 

上条「!?」ビクゥ

 

上条「は、早かったな! って、あれ?」

 

神裂「ああ、すみません。適当に着れそうな服をお借りしました」

 

上条(おおぅ!? 上条さんの体操着じゃないですか!? いつのまに持っていったんだ!?)

 

上条「あ、ああ。勝手に使ってもらって構わないけど……」

 

上条(なんかコスプレっぽいです……)

 

神裂「?」

 

上条(仕方ないとは言え、サイズの合ってないやつ着てるもんだから、あっちこっちが……)

 

上条「な、なんか微妙に丈が足りてないな」ハハハ

 

神裂「あ、あんまりジロジロ見ないでください」///

 

上条「ご、ごめん」

 

上条(いつもより、上半身の露出は減ってるくらいなんだけど、妙にエロいな……)

 

上条(そ、それに……)

 

上条「ゴクリ」

 

神裂「?」

 

上条(服装のこともあるけど、なんか湯上りで色っぽいな!!)

 

神裂「どうかしましたか?」

 

上条「な、なんでもないです!」///

 

神裂「怪しいですね……。その後ろに隠しているのは何ですか?」

 

上条「えっ!? い、いや、これは……」

 

神裂「大人しく見せたらどうですか?」ジリジリ

 

上条(ち、近い! 近いです、神裂さん!!)

 

神裂「観念してください」ズイズイ

 

上条「だ、ダメだッ!」グィ

 

神裂「え!?」

 

上条「うぉっ!?」

 

ドサッ

 

上条「…………………あれ?」

 

神裂「ええと、その……」

 

神裂(お、押し倒されてしまいました……)

 

上条「す、すまん。つい、力を入れすぎちまった」///

 

神裂「い、いえ、お気になさらず」///

 

上条(なんかいい匂いする……)

 

神裂「それで、あの……、いつまでこの体勢で……」

 

上条「うおっ!? すぐ退きます!!」サッ

 

上条「…………………」

 

神裂「…………………」

 

上条(な、なんか変な空気に……)

 

神裂(なってしまいました……)

 

上条「と、とりあえず風呂入ってくる!」

 

神裂「そ、そうですね! ごゆっくりどうぞ!」

 

上条「先に寝ちまってもいいから! それじゃ!」

 

神裂「は、はい!」

 

―風呂場―

上条「落ち着け、落ち着くんだ。上条当麻……」

 

上条(神裂は無防備なだけで、俺に気があるとかではないんだ! 断じてないッ!)

 

上条「…………なんか悲しくなってきた」orz

 

上条(インデックスだとそんなこと気にしたことなかったんだけどな。なんでだろう)

 

上条「やっぱり、神裂は上条さんのストライクゾーンなんだろうか?」

 

上条(年上で、お姉さんっぽさもあるし……)

 

上条「い、いかん。意識したら、この先もっと辛くなるだけだ」

 

上条(のぼせそうだ……。さっさとあがろう)

 

―――

―上条の部屋リビング―

上条「…………………」ドキドキ

 

神裂「…………………」ドキドキ

 

上条(結局、風呂から上がってから会話がない……)

 

上条「じゃ、じゃあ寝るか……」

 

神裂「そ、そうですね。今日は妙に緊張してしまって、疲れました……」ホッ

 

上条「神裂はそこのベット使ってくれ。上条さんはいつも通り風呂場で寝ますから」

 

神裂「お風呂場で、ですか?」

 

上条「インデックスのやつは人の布団にもぐりこんでくるから、カギ付きのところじゃないと安心して寝られないんだよなー」

 

神裂「そうなんですか?」

 

神裂(あの子にそんな癖あったでしょうか?)

 

上条「じゃあ、そういうことで」

 

神裂「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

上条「ん?」

 

神裂「私は居候の身ですから、床で十分です。あなたがベットを使ってください」

 

上条「いや、そう言うわけにもいかないだろ」

 

神裂「なぜですか?」

 

上条「いやいや、男の子は女の子の前では格好つけたがるもんなんですよ」

 

神裂「ですが、私は―――」

 

上条「いいから、家主の言うことは黙って聞いとけって」ポン

 

神裂「…………はい。ありがとうございます」

 

上条「じゃあ、そういうことで……」イソイソ

 

神裂「ですから、あなたは、布団を持ってどこへ行こうというのですか?」

 

上条「だから、風呂場に……」

 

神裂「私は特に布団に潜り込む癖もないので、ここでいいではないですか?」

 

上条「なんっ!?」

 

上条(神裂は無意識なんだろうけど……。なんだかなー……)

 

神裂「どうかしましたか?」

 

上条「神裂さんは、男と同じ部屋で寝ても気にならない訳?」

 

神裂「え? ええ。まあ、あなたでしたら……」

 

神裂(信頼していますし)

 

上条(あれ〜? もしかして、上条さんは男として見られてません?)

 

上条「そ、そうですか……」

 

神裂(なぜ落ち込んでしまったのでしょうか?)

 

上条「でも、久々に足が伸ばせるっていうのもいいな……」

 

神裂「ご迷惑をおかけします……」

 

上条「じゃあ、電気消すからな」

 

神裂「はい」

 

上条「じゃあオヤスミ」

 

神裂「おやすみなさい……」

 

 

数十分後

―――

上条「………………………」

 

神裂「………………………」

 

上条(やべぇ……。全然寝られねえ……)

 

上条「………………………」

 

神裂「………………………」

 

上条(く、くそー。別のことを考えないと……。イノケンティウスが一体……、イノケンティウスが二体……、イノケンティウスが三体……)

 

神裂「…………………グスッ」

 

上条「……え?」

 

上条(今のはすすり声? 泣いてるのか? あの神裂が?)

 

神裂「あ! す、すみません……。起こしてしまいましたか?」

 

上条「いや、それよりどうしたんだ?」

 

神裂「い、いえ。なんでもありませんから」グスッ

 

上条「そんな訳ないだろ? 泣いてるのに放っておけるかよ……」

 

神裂「………………その」

 

上条「なんだ?」

 

神裂「少し不安になってしまいまして……」

 

上条(…………そうか。聖人としての力を失っちまって、その上、命まで狙われてるんだもんな)

 

上条(その不安を、今まで表に出さないでいたっていうのかよ……)

 

神裂「す、すみません……」グス

 

上条(まったくすごいよな、神裂は。……俺にもできること何かないか?)

 

上条「………………手」

 

神裂「はい?」

 

上条「手、出せよ」

 

神裂「ど、どういうことですか?」

 

上条「不安なんだろ?」

 

神裂「は、はい……」

 

 

 

 

上条「寝付けるまで手を握っててやるからさ。神裂は安心して寝てくれ」

 

 

 

 

神裂「………………ありがとうございます」ボソ

 

上条「ん。このくらいいいって」ギュッ

 

神裂(あっ……。当麻の手、温かい……)

 

神裂「ふふっ……。これは安心できますね……」

 

上条「そりゃ良かった。今度こそおやすみ、神裂」

 

神裂「はい……。当麻」

 

 

-2ページ-

共同生活2日目

―――

上条「んっ……」

 

上条(朝か……。なんかいい匂いがする……)

 

神裂「あ、起きましたか? おはようございます」

 

上条「あれ? 神裂なんでここに―――」

 

上条(ってそうだった。昨日から居候してたんだっけ。服装もいつものに戻ってるな)

 

上条「おはよう。朝飯作ってくれたのか?」

 

神裂「はい。粗末なものですけど」

 

上条「朝起きたら、飯ができてるって素晴らしい……」

 

上条(朝食が一番作るの面倒くさいと思うんですよねー)

 

神裂「その、昨日はありがとうございました」ペコ

 

上条「昨日? って言うと寝るときのあれ?」

 

神裂「はい。おかげでぐっすり眠れましたので」

 

上条「そりゃよかった。あんなことでよければ、上条さんはいつでもOKですけどね」

 

神裂「はは、また借りを作ってしまいました」ポリポリ

 

上条「またそれかよ。朝食作ってくれたんだし、チャラでいいって」

 

神裂「そういう訳にもいきません」

 

上条「神裂の気がすまないって言うならいいけどさ……」

 

神裂「そうなんです。では、朝食にしましょう」

 

上条「そうだな。冷める前にいただくとしますか」

 

 

朝食後

―――

上条「それで、今日は神裂の身の回りのものを揃えたいと思います」

 

神裂「と言っても大したものは必要ありませんけどね」

 

上条「必要なものっていうと……」

 

神裂「衣類のスペアがないのでその類でしょうか」

 

上条(押入れのやつは黙っておこう……)

 

上条「服ね。あとは?」

 

神裂「ですから、衣類の類を……」

 

上条「え!? それだけ!?」

 

神裂「はい。おかしいでしょうか?」

 

上条「いやいや、化粧品とか」

 

神裂「特に使っていません」

 

上条「シャンプーとかそういうのは?」

 

神裂「なんなら石鹸でも大丈夫です」

 

上条「あれ? 女の人は、いっぱい必要なもんがあると思ってたんだけどな……」

 

神裂「そうでしょうか? 着の身のまま現地入りすることも多いですから、そんなことを考えたことはありませんでしたけど」

 

上条(そういえば、普通の女性ではないんでしたねー)

 

上条「じゃあ、今日は、学園都市の案内がてら服を見て回るか」

 

神裂「はい。よろしくお願いします」

 

上条「といっても、神裂のその格好は目立つよな……」ジー

 

神裂「魔術的な意味合いも込めていますので……」

 

上条「でも、学園都市じゃ、魔術は極力使わないんだろ? だったら、風景に溶け込む衣装にするべきなんじゃないか?」

 

神裂「うっ……。一理ありますね」

 

上条「土御門の話じゃ、今日明日、敵が攻めてくるような話じゃなさそうだし、今のうちに準備もしておかないとな」

 

神裂「そう……ですね。そうしましょうか」

 

上条「じゃあ、とりあえず服からなんとかするか。服といえば、あそこだよな」

 

神裂「はい?」

 

 

その日の午後

―――

―セブンスミスト―

上条「と言う訳で、セブンスミストまでやってきました」

 

神裂「やはり、この格好は目立つのですか。注目されてしまいました……」

 

上条「自覚なかったのか……」

 

上条(服装だけじゃなくて、容姿もモデル並みってのもあるんだろうけどな)

 

上条「とりあえず、目立たない服を買っちまおう」

 

神裂「そ、そうですね」

 

上条(そういえば、神裂に服のチョイスを任せて大丈夫か?)

 

―――

神裂「ど、どうですか? おかしくないでしょうか?」

 

上条「お、おう……」

 

上条(黒のタートルネックにジーンズだと……? シンプルなチョイスなのに、妙な色気がありますよ!?)

 

上条「い、いいんじゃないか? はは、神裂がちゃんとしたジーパン穿いてるってのもなんか新鮮だな」

 

神裂「なんだか変な感じがします」

 

上条「じゃあ、それすぐに着れるようにしてもらうか」

 

神裂「丈はちょうど良さそうなので、値札だけ取れば大丈夫ですね」

 

上条(足が長いっていいですねー。上条さんは10cmくらい裾あげてますよ? ハハハ……)

 

上条「ところで金あったかな……」ゴソゴソ

 

神裂「ああ、それなら大丈夫です。資金の心配はありません」

 

上条「はぇ? そうなの?」

 

神裂「ええ。自分の給与がほぼ手付かずで残っていますので」

 

上条「あ、『必要悪の教会(ネセサリウス)』って給料出てるんだ?」

 

神裂「一応、公務員のような扱いになりますからね。忙しくて使ってる暇もないので、どんどん貯まってしまうのです」

 

上条(うらやましがるべきなのか、激務に同情するべきなのか微妙だな)

 

神裂「あなたも将来どうです? やってることは今と大して変わらないと思いますよ」

 

上条「え、英語を勉強しなくて済むなら……」

 

神裂「それは厳しいですね……」ハハハ

 

上条「ですよねー」

 

―――

上条「さて、会計も済ませたしこれからどうする?」

 

神裂「もう少し中を見て回りませんか?」

 

上条「それもそうだな。何か必要なものも見つかるかもしれないし」

 

神裂「和服のコーナーはないのでしょうか?」キョロキョロ

 

上条「うーん……。他のデパートならいざ知らず、ここにはないんじゃないかな?」

 

神裂「そうですか……」

 

上条「神裂は和服の方がいいのか? 普段は、ウェスタンっぽい感じの服装だけど」

 

神裂「いつもあれを着ている訳ではありませんよ? 部屋着は浴衣ですし」

 

上条「浴衣かー。風情があっていいかも」

 

神裂「ただ、そのまま外出をしたときには大いに注目されてしまって……」

 

上条「まあ、珍しいから仕方ないんじゃない?」

 

神裂「日本でも珍しいというのに、イギリスで浴衣ですからね」

 

上条「あ、そっか」

 

神裂「あれはちょっと恥ずかしかったです……」

 

上条「神裂らしいよ」

 

神裂「ははは……。そうでしょうか」

 

上条「んー、そうだな。」キョロキョロ

 

神裂「どうかしましたか?」

 

上条「せっかくだし、神裂も女の子らしい格好してみないか?」

 

神裂「へ? 私が……ですか?」

 

上条「普段の神裂は、こう……ボーイッシュみたいな服装じゃん? 今だってジーンズだし」

 

神裂「それはそうかもしれませんが……」

 

上条「だから、いろいろ試してみようぜ」

 

神裂「いえ、ですが……」

 

上条「気に入らなかったら、買わなければいい話だろ?」

 

神裂「あの……」

 

上条「それとも何か着れない理由でもあるのか?」

 

神裂「その……」

 

上条「?」

 

 

神裂「わ、私には似合わないんじゃないかと……」ボソボソ

 

 

上条「え? なんで?」

 

神裂「そういった服を着たことはありませんし……」

 

上条「そう聞いては、ますます着せたくなってしまいますよ?」

 

神裂「あぅ……」

 

上条「はいはい、行きますよーっと」

 

神裂「お、押さないで下さい」

 

上条「もう諦めて、チャレンジしてみろって」グイグイ

 

上条(普段なら力で振り切られるんだろうけど、今は女の子の力だしな)

 

神裂「わ、分かりました。自分で歩きますから、押すのは止めてください!」

 

上条「本当だな?」

 

神裂「武士に二言はありません」

 

上条「今の神裂は武士じゃないだろ」

 

神裂「ははは……。そうでした……」

 

上条(あ、ヤベ。気にしてたんだっけ……)

 

上条「…………よし」ガシ

 

神裂「はい? なぜ手を?」

 

上条「神裂が逃げないようにするんだよ。ほら、さっさと行くぞ」

 

神裂「うううっ……。変でも笑わないでくださいよ?」

 

上条「心配ねーよ」

 

神裂「え?」

 

 

上条「神裂なら何着たって似合うから安心しろ」

 

 

神裂「そ、そうでしょうか?」///

 

上条「ああ、保障してやる」

 

―――

神裂「ど、どうですか?」///

 

上条(な、なんかヒラヒラしたのがいっぱい付いてますよ!? それにスカートだし!!)

 

神裂「や、やはり、似合いませんよね……」シューン

 

上条「そ、そんなことないって! スゲー似合ってる!」

 

上条(スカート姿の神裂……。……ありだな)グッ

 

神裂「ほ、本当ですか?」

 

上条「ああ。こういうことでウソはつきませんのことよ?」

 

神裂「あ、ありがとうございます」///

 

上条「それでどうする? どうしても、神裂が気に入らないなら―――」

 

神裂「いえ……、こういった服も一着くらい持っておいてもいいかもしれません」

 

上条「素直じゃないなー」

 

神裂「ち、違います! 素直とか素直じゃないとかではなくてですね」///

 

上条(なんだ神裂も女の子っぽいとこあるじゃん)

 

神裂「着替えて会計を済ませてくるので、その辺で待っていていください!」

 

上条「はいはい」

 

神裂「まったくもう」ブツブツ

 

―――

上条「しかし、婦人服売り場で男一人っていうのも、居心地悪い……」

 

御坂「うわ、本当にいた……」

 

上条「あれ? 御坂か? こんなところで何やってんだ?」

 

御坂「それはこっちのセリフでしょうが。ここ婦人服売り場よ?」

 

上条「そういや、そうでしたね……」

 

上条(なぜか御坂に神裂のことを知られたら、面倒くさいことになる気がする……)

 

御坂「何? また誰か案内でもしてきたの?」

 

上条「え、えーっとですね……」

 

上条(またってことは、前にもここで会ったことあるのか?)

 

御坂「……誰かの付き添いで来てるとかじゃないわよね?」

 

上条「えっ!?」

 

御坂「な、何よ? まさか、女の子と来てるとか言うんじゃ―――」

 

 

神裂「お待たせしました」

 

 

上条(神裂さぁん!? それ最悪のタイミングです!)

 

御坂「えっ!?」

 

神裂「おや? そちらの方はお知り合いですか?」

 

上条「ええ。まあ、はい……」

 

御坂(び、美人で年上!? そして何より『巨乳』!! く、くそー。そんなにデカイのがいいのか、こいつは!?)

 

御坂「ちょ、ちょっと! 誰なの!? 説明しなさいってば!!」

 

上条「ええと……」

 

神裂「?」

 

上条(なんて説明すればいいんだ? 魔術師というわけにもいかないし、ましてや昨日から居候してるともいえない……)

 

神裂「どうかしたんですか、当麻?」

 

上条「なっ!?」

 

御坂「へえ〜。名前を呼び捨てするような関係ねえ〜……」ビリッ

 

上条「というか、御坂さんは何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか!?」

 

御坂「んなっ!? お、怒ってなんかないわよ!!」

 

上条「そうは見えませんけど……」

 

御坂「べ、別にアンタが誰とデートしようが、私には関係ないんだからぁぁぁ!!」タタタ

 

上条「ええっ!? 全力ダッシュ!?」

 

神裂「………………」

 

上条「はぁ……。なんかすまんな、神裂。あとで説明するからさ」

 

神裂「………ト」ボソ

 

上条「はい?」

 

 

神裂「こ、これはデート……というものなのでしょうか?」

 

 

上条「ど、どうなんだろうな」ハハハ

 

―――

神裂「………………………」

 

神裂(うううっ……。で、デートというのは何をすれば……。そういった経験をしたことがないので良く分かりません……)

 

上条「………………………」

 

上条(御坂に会ってから、神裂の様子がおかしいぞ)

 

神裂「………………………」

 

神裂(い、意識したら、もの凄く緊張してきました。ど、どうすれば……)

 

上条「あのー、神裂さん?」

 

 

神裂「ひゃぃっ!?」ビクゥ

 

 

上条「え?」

 

神裂「なななな、なんでしょうか?」

 

上条「いや、なんか様子がおかしいな、と思ってさ」ポリポリ

 

神裂「いえ、別に何もおかしいところなんてありませんよ? ええ、私はまったくおかしくないです」

 

上条「そうかな……?」

 

上条(怒ってるのかと思ったが、そう言うわけじゃなさそうだな)

 

神裂「そ、そうです」///

 

上条「それならいいけどさ」

 

上条(なんか神裂の顔が赤い気がする)

 

神裂「つ、次はどこに行きましょうかね!!」

 

上条「え? うーん、そうだなー。荷物もあるし、この近くを案内したら、今日は帰ろうぜ」

 

神裂「そ、そうですね! そうしましょう!」

 

 

―学生寮―

―――

上条「すっかり、日が落ちるのも早くなってきたよな」

 

神裂「そうですね……」ボー

 

神裂(ここまで意識してしまうのはおかしいのですよね? もしかして、私は彼のことを―――)

 

上条「神裂?」

 

神裂「そうですね……」ボー

 

神裂(いやいや、違います! 確かに恩はありますが、そういう感情は持っていないはずです!)

 

上条「神裂さ〜ん?」

 

神裂「え!?」ビクッ

 

上条「本当に大丈夫か? すごく顔赤いけど」

 

神裂「だ、大丈夫です。少し考え事をしていただけですから」

 

上条「そうか? ならいいんだけど」

 

神裂(そもそもこれは、デートとだったのでしょうか?)

 

上条「た、ただいまーってインデックスは今いないんだったなぁー」

 

神裂「そうですね……」ボー

 

上条(うううっ……。この反応はどうすれば……)

 

夕食後

―――

上条「ごちそうさん」

 

神裂「お粗末様です」ボー

 

上条(まだ、神裂は考え事してるのか?)

 

上条「なあ、神裂」

 

神裂「あ、はい。なんでしょうか?」ハッ

 

上条「その……神裂は今日楽しかったか?」

 

神裂「え?」

 

上条「いやー、お恥ずかしながら、上条さんは女の人と二人で出かけたことなんてあんまりないものですから」

 

神裂「そうなのですか?」

 

上条「ん、まあな。それで神裂を退屈させちまったのかと……」

 

神裂「それは―――」

 

上条「ははは。これで、つまらなかったとか言われたら立ち直れませんよ?」

 

 

神裂「ふふっ、そんなことありませんよ。すごく楽しかったです。貴重な体験もできましたし」ニコ

 

 

上条「そりゃよかった」ホッ

 

神裂「はい」

 

上条(あれ? いつもの神裂に戻ったのか?)

 

神裂(そうですよ。二人でいて楽しかったということでいいじゃないですか)

 

神裂「それでは家事を片付けてしまいますね」テキパキ

 

上条「ああ、頼む」

 

―――

神裂(今日は、あっという間に時間が過ぎてしまいました)

 

神裂「♪〜」カチャカチャ ※洗い物中

 

神裂(服を見て回ったり、手を引かれたり……。彼の知り合いの少女に会ってからのことはあまり憶えていませんが、とても充実していた気がします)

 

上条(なんだか、いきなり機嫌が良くなったな)

 

神裂「あ、そういえば」

 

上条「ん? どうかしたのか?」

 

神裂「明日も休日ですが、どうやって過ごしましょう?」

 

上条「うーん。そうだなぁ……」

 

上条(今日一日は気を抜きすぎたか? 土御門から連絡もなかったし、やばいことにはなってないと思うけど……)

 

上条「とりあえず、様子見かな。明日あたり、インデックスから連絡くるかもしれないし」

 

神裂「そうですね。あまり外を出歩くというのも得策ではないでしょう」

 

上条「土御門もインデックスも大丈夫かな……」

 

神裂「あの子はともかく、土御門の心配は必要ないでしょう。あれはタフさだけが取り得ですから」

 

上条「ま、そうなんだろうけどさ」

 

上条(何日も寝てないとか言ってたしな)

 

神裂「それよりも、今日はいろいろ緊張しすぎて疲れたので眠りたいのですが」

 

上条「そうだな。慣れないことばっかりで疲れたよな。まだちっと早いけど寝ますか」

 

神裂「はい」

 

上条「それじゃ、電気消すぞー」

 

神裂「あ、あの……」

 

上条「ん? どうかしたか?」

 

神裂(もう不安はありませんけれど―――)

 

 

神裂「…………また手を握ってもらえませんか?」

 

 

上条「えっ!?」

 

神裂「そうしていると、すごく安心できるんです……」

 

上条「お、おう。……これでいいか?」ギュッ

 

神裂「はい」ニコ

 

神裂(やはり、彼の手は温かいですね……。それにすごくドキドキします)

 

上条「じゃあ、おやすみ」

 

神裂(こういった気持ちになったことはありませんでしたが―――)

 

 

 

神裂「はい。おやすみなさい」

 

 

 

神裂(―――意外と悪くないかもしれません)

 

 

-3ページ-

共同生活3日目

―――

???「―――てください。起きてください、当麻」ユサユサ

 

上条「んっ……? ……神裂?」

 

神裂「おはようございます」

 

上条「ふぁ……。一体、どうしたんだ?」

 

神裂「ええと、先ほどからそちらの……」

 

上条「?」

 

prrrr

 

上条「あ、ケータイか。起こしてくれて、サンキュー」

 

上条(今は……、7時ちょっとか。こんな時間に誰だ?)

 

上条「はい、もしもし?」

 

土御門『お目覚めかにゃー? カミやん』

 

上条「土御門か! 何かあったのか!?」

 

土御門『落ち着け、カミやん。ちょっとした報告だけだ。特に何か起こった訳じゃないぜい』

 

上条「そ、そうか」ホッ

 

土御門『ちょっと前に、禁書目録から連絡が入ってな』

 

上条「インデックスから? 何か分かったのか?」

 

土御門『それがぜーんぜん。普通の魔術を使用した形跡だけで、聖人の力が失われるような魔術が使われたとは考えられないとさ』

 

上条「そ、そうなのか……」

 

土御門『ちょっとばっか、長期戦になることも覚悟しておいた方がよさそうだにゃー』

 

上条「おいおい。そんなのんきに構えてて大丈夫なのか?」

 

土御門『そんなに気負いすぎなくても大丈夫だ。今の時点じゃ、ねーちんのことは噂にもなってないんだぜい?』

 

上条「噂にも?」

 

土御門『真実を知ってるのは天草式の連中の一部と俺らの3人だけだからな』

 

上条「え? そうなの?」

 

土御門『長期間ねーちんの行方がハッキリしないとなれば、感づくヤツもでてくるかもしれないが、現時点で外に漏れる心配はないですたい』

 

上条「でも、万が一―――」

 

土御門『この学園都市に、魔術師が攻め込んできたらどうする、だろ?」

 

上条「今までにも、魔術師たちが入ってきてるからな。そう安心はできないんじゃないか?」

 

土御門『カミやんは心配性だにゃー。この学園都市は、魔術師が入ってきてもすぐ分かるようになってるから大丈夫なんだぜい?』

 

上条「は? すぐに分かる?」

 

土御門『魔術師一人くらいが侵入しただけじゃイエロー止まりではあるが、感知はされてるんだにゃー』

 

上条「ってことは、今までのやつらのときもイエローはでてたのか」

 

土御門『ま、そういうことだ』

 

上条「じゃあ、お前からその警告があるまでは、普通に生活してて大丈夫なのか?」

 

土御門『ああ。それに良く考えてみろよ、カミやん。禁書目録って魔道書図書館よりも普通の聖人一人の方が、どう考えても重要度は低いだろ?』

 

上条「そ、それもそうだな。ふぅ、ちょっと安心したよ。あ! それはそうと、土御門の方は大丈夫なのか?」

 

土御門『こっちも交代要員が来たから、明日は普通に学校に顔出せると思う』

 

上条「分かった。じゃあ、またそのときにな」

 

土御門『そうそう、カミやんはこのチャンスに頑張ってねーちんを落とせよ〜。応援し―――』プッ

 

上条「ったく何言ってんだかアイツは……」

 

 

―土御門の部屋―

土御門「よーし、こんなもんかにゃー」

 

???「これで、少しは面白くなってくれないと困るのよな」

 

土御門「こんな手の込んだイタズラしてるのに、ガチガチになられてもつまらないしな」

 

???「しかし、女教皇様(プリエステス)も、もっと積極的に攻めなきゃいかんのよ」

 

<ピンポーン

 

土御門「ん? はいはーいっと」

 

???「お邪魔します。あ、いたいた。探したっすよ、教皇代理」

 

建宮「香焼か。そっちの方はどうなってんのよな?」

 

香焼「今のところ、教皇代理と女教皇様が学園都市に来てることはうまく隠せてますが、そろそろ他のメンバーにも気付かれそうっす」

 

土御門「天草式の五和さえ押さえておけば、他の連中には、ばらしても構わないけどにゃー。まったくカミやんばっかりもててずるいぜい」

 

建宮「まあまあ。今は女教皇様を応援するのが一番なのよ」

 

香焼「ところで、教皇代理たちは何やってんすか?」

 

建宮「ん? そういや説明してなかったのよな。今、現在進行形で、壮大なドッキリ大作戦を実行中なのよ!!」

 

香焼「ドッキリ……っすか?」

 

建宮「女教皇様の聖人としての力を封印して、他の魔術結社から身を狙われているって設定なのよ」

 

土御門「そういう口実でカミやんのところにお世話になってるわけだにゃー」

 

香焼「ってことは、女教皇様もグルっすか?」

 

 

土御門「いや、ねーちんは、実際に聖人としての力を封印されてるぜい? この男によってにゃー」

 

 

建宮「だははは」ブイ

 

香焼「え!? 何やってんすか、教皇代理……」

 

建宮「先行して、女教皇様に術式を設置! そして、タイミングを見計らっての、術式の起動! 見事な作戦だったのよな」

 

土御門「天草式十字凄教仕込み禁書目録監修の術式だったから、ねーちんにも不審がられることなく、カミやんの右手対策もバッチリなんだにゃー」

 

建宮「しかし、術式を構成するのに1週間もかかるとは思ってなかったのよ」

 

香焼「いや、そんなことは聞いてないっすよ! 大体、そんな聞いたこともない術式使って、女教皇様は大丈夫なんすか!?」

 

建宮「聞いたことがない? いやいや、今回の術式は、我らの考案した『聖人崩し』の応用形でな」

 

土御門「すぐ力は戻る。解呪の術式を発動させるか、ねーちんが魔術を使えば、すぐに元通りにって寸法だにゃー」

 

香焼「『聖人崩し』ってあれはまだ実験段階だったじゃないすか。それをぶっつけ本番でなんて……」

 

建宮「そのための禁書目録って訳なのよな。いろいろ調整して持続力を持たせたのよ」

 

香焼「はあ……」

 

土御門「禁書目録は豪華5泊7日のイギリス旅行、それに料理は食べ放題って言ったら、即OKだったにゃー」

 

建宮「しかも、費用はステイル持ちで経費も0。あの男も相当なヤツなのよな」

 

香焼「女教皇様が安全だってのは分かったすけど、清教側には何て報告するんすか?」

 

土御門「それの心配もいらないにゃー」

 

建宮「最大主教(アークビショップ)に計画の内容を話たら、面白そうだからGOと了解も出たわけなのよ」

 

香焼「だいぶ軽いっすね……」

 

土御門(あの女狐のことだ。聖人一人を餌にして、幻想殺しが手に入れば儲け物とでも考えているんだろうけどにゃー)

 

建宮「だから、危険なんてなーんにもなし。ただの同棲生活ってわけなのよな」

 

土御門「カミやんが間違いを犯さないように監視してるだけで、楽しもうとだなんて全然思ってないぜい? もっとも、そうなっても止めないけどにゃー」

 

建宮「そんなわけで……。じゃーん! 上条当麻の部屋には監視カメラが5台設置してある訳なのよ」

 

香焼「それ、バレたら殺されますよ?」

 

建宮「はっはっは。むしろ、うまくいったら感謝されるに違いないのよ」

 

香焼「そうなった場合は五和に殺されるっす」

 

建宮「あ……」

 

土御門「……お前のことは忘れないぜよ」

 

建宮「よ、要するに、普通に女教皇様と上条当麻がくっついたことにすればいいのよな!」

 

香焼「五和が、二人になれ初めを気かなければいいっすけどね……」

 

建宮「ぐぅっ!?」

 

土御門「ん? そんなことしてる内にカミやんが出かけるみたいだにゃー」

 

建宮「何ッ!? 映画館? 水族館? はたまた遊園地かーッ!?」

 

 

上条『くそーっ!! 休みの日にまで補習とかマジかよ!?』

 

 

神裂『はは、お気をつけて』

 

 

土御門「学校だにゃー……。さすがにこれはいつも通りすぎるぜい」

 

建宮「だぁ――っ。つまらんのよ」

 

香焼「俺は帰りますんで、ほどほどに」

 

建宮「なんだ、お前さんは見ていかないのか?」

 

香焼「巻き添えはゴメンすから」ハハハ

 

 

―――

土御門「さて、カミやん追いかけるよりも、ねーちんの様子見てたほうが面白いに決まってるにゃー」

 

建宮「それはそうなのよな。はたして、気になってる御仁の部屋に一人取り残された女教皇様の取る行動とは!?」

 

神裂『……………………』ソワソワ

 

土御門「なーんか、妙にそわそわしてるにゃー」

 

建宮「どんな奇行をするか楽しみなのよ」

 

土御門「俺は、オーソドックスにカミやんの洗濯ものの匂いを嗅いだりすると思うにゃー」

 

建宮「いやいや、まず、女教皇様は健気に家事をこなすに違いないのよ。奇行はそれからだと思うのよな」

 

神裂『………………お、落ち着きませんね』ソワソワ

 

土御門「お。アクションに移りそうだぜい?」

 

建宮「ん? 何してるのかさっぱりなのよ」

 

土御門「あ、あれは…………」

 

神裂『ふむ。ここにはありませんか』

 

 

土御門「カミやんのお楽しみ本を探しているに違いない!!」クワッ

 

 

建宮「な、なんだってー!? そんなバカなッ!?」

 

土御門「いやいや、落ち着け。ねーちんだってまだ18。そういうことには敏感な年頃だ」

 

建宮「そ、そうだったな。たまに女教皇様は年上に感じるときもあるが、18だったのよな」

 

神裂『持っていないということは考えにくいのですが……』

 

土御門「さすがに俺でもカミやんのお楽しみ本の場所までは知らないにゃー。というか知りたくない」

 

建宮「それには同感なのよ」

 

神裂『あまり物色するのは気がすすみませんが……』

 

土御門「とかいって、探す気まんまんだにゃー。しかも、ねーちんのことだ。何かしらのモノは見つけ出しちまうはずだぜい」

 

建宮「上条当麻の嗜好によっては、五和にも報告する必要もでてくるのよな」

 

神裂『次は、そうですね……』

 

土御門「にゃー。カミやんはコスプレ好きだった気がするぜい」

 

建宮「それはお前さんの趣味なのよ」

 

土御門「俺の嗜好はメイドオンリーだにゃー。カミやんはオールオッケーなんですたい」

 

建宮「ふむ。上条当麻はコスプレ好きっと……」

 

土御門「あ、そういえば……」

 

神裂『押入れでも探してみましょうか』

 

建宮「どうした?」

 

土御門「あそこには―――」

 

神裂『な、なんですかこれは……』

 

建宮「?」

 

 

 

神裂『だ、堕天使……エロメイド……?』

 

 

 

建宮「おおっ!! これは面白そうな展開なのよな!!」

 

土御門「カミやん。もっと奥に仕舞っておくべきだったにゃー」

 

神裂『以前、土御門の言っていたものでしょうか……?』

 

土御門「にゃー!? 予備知識を与えてしまったのは失敗だったか――ッ!?」

 

建宮「これじゃ、上条当麻の私物だと思われないのよ」

 

神裂『まったく土御門のやつは……』ハァ

 

土御門「それでもねーちんなら……。ねーちんなら何かしてくれるはず!」

 

建宮「まさか――――」

 

神裂『…………いや、それとも、当麻はこういうのが好きなのでしょうか?』チラ

 

土御門「キターッ!!」

 

建宮「お、落ち着くのよな。まだ着ると決まったわけじゃないのよ」

 

神裂『しかし、これは……』ピローン

 

建宮「これはまた……。お前さんもいい趣味してるのよな」

 

土御門「なんなら、メーカー紹介してやろうか?」キラン

 

建宮「五和に教えてやるのも面白そうなのよな。ぜひ頼むのよ」

 

土御門「これでメイドさんが増えるなら、万々歳にゃー!」

 

神裂『こんなの着れるはず……。いや、しかし……』

 

土御門「ねーちんも、もう一息なんだけどにゃー……」

 

建宮「なに? 大精霊チラメイド? これはすごいのよな……」フムフム

 

 

数時間後

―――

神裂『………………………』

 

土御門「結局、ねーちんはずっと固まったままか」

 

建宮「着なくても、上条当麻がこの場に帰ってくれば面白いのよ」

 

土御門「俺としては、是非ねーちんにメイド服を着てもらいたいんだけどにゃー」

 

神裂『と、とりあえず着るだけ着てみましょうか?』

 

土御門「それでこそねーちんだぜい!!」グッ

 

建宮「女教皇様も年頃だから仕方ないのよ」

 

神裂『しかし、これは―――』

 

 

ガチャ

 

 

上条『ただいまー……』

 

 

神裂『!!?』ビクゥ

 

 

土御門・建宮「!?」

 

上条『疲れたー、ってあれ? 神裂、どうかしたのか? そんな隅っこに座り込んで』

 

神裂『なななな、なんでもありませんよ?』

 

土御門「カミやんタイミング最悪だにゃー……」

 

建宮「どうせなら、着替えてる最中に帰ってきて欲しかったのよ」

 

神裂『そ、それよりだいぶお疲れの様子ですね!』

 

上条『そーなんですよー……。体育の補習で一日中走らされてましたよ』フラフラ

 

土御門「カミやんは無事進級できるのかにゃー?」

 

建宮「できなかったら、少しだけ罪悪感を感じちまうのよ」

 

土御門「まー、そのときはそのときだ」

 

神裂『一日中ですか?』

 

上条『ああ。だから上条さんの体力はもう限界なのです』フラフラ

 

建宮「これじゃあ、今日はもう面白い展開は期待できないのよな」

 

土御門「カミやんのことだ。倒れ掛かって、ねーちんの胸を揉むくらいのことはやってくれるはずだぜい」

 

建宮「ふむ。なるほど」

 

上条『だから、少し横に―――って、うぉっ!?』グラ

 

神裂『え?』

 

土御門「カミやんお得意のラッキースケベキター!?」

 

建宮「あの男、何もないところで転んでるのよ」

 

ドサッ!!

 

上条『イテテ……。あ、す、すまん!』///

 

神裂『い、いえ。こちらはなんともありません』

 

土御門「ねーちんの胸にダイブ……だと……?」

 

建宮「これはうらやまけしからんのよな」

 

神裂『それより大丈夫ですか?』

 

上条『だ、大丈夫ですのことよ!?』///ワタワタ

 

土御門「ねーちんは無自覚だにゃー。カミやんの顔が胸に挟まってるっていうのに」

 

建宮「女教皇様はこの無自覚が売りの一つだと思うのよ」

 

神裂『どうかしましたか? 顔が赤いようですが』

 

上条『いえ、これはその……』///

 

上条(体がうまく動かねえ……。なんだかすごく体が重い……)

 

土御門「しかし、この男、一向に離れる様子を見せないぜい」

 

建宮「巨乳の女教皇様の胸の中。普通に考えて、離れたいと思う訳がないのよな」

 

神裂『やはり、どこか怪我したのですか?』

 

上条『そういう……わけじゃ……、ないんだけど……』

 

上条(それに眠く……なってきた……)

 

土御門「カミやんの体力も限界みたいだな。どんだけ走らされたんだか」

 

建宮「ははは。母性の塊に包まれてるせいで、眠気が襲ってきたに違いないのよ」

 

神裂『当麻?』

 

上条『Zzz……』

 

土御門「あちゃー。カミやん、完全に落ちちまったぜい」

 

建宮「まあ、これはこれで面白いのよな」

 

神裂『相当お疲れだったようですね』

 

上条『Zzz……』

 

建宮「頭を胸に突っ込んだまま寝るっていうのは、ちっと考えられないのよ」

 

土御門「それを慈愛顔で見てるねーちんもありえないと思うぜい。普通、もうちょっと慌てるだろうに」

 

神裂『ふふっ、起こさないようにしましょう』スッ

 

上条『んっ……』ゴロ

 

土御門「む、膝枕か。まあ、ねーちんならこんなもんかにゃー」

 

建宮「ご存知の通り、女教皇様は足のラインも一流なのよな」

 

上条『Zzz』

 

神裂『それにしても……。こうしてみると、なかなかかわいい寝顔ですね』クスクス

 

土御門「なんだか、ねーちんがお母さんみたいになってるぜい」

 

建宮「これで18なんだから、末が恐ろしいのよ」

 

上条『Zzz』

 

神裂『…………だ、誰も見ていませんよね?』キョロキョロ

 

土御門「おおっ!? 寝てる隙にちゅーくらいしちまえ、ねーちん!」

 

建宮「そうそう! 我ら以外には誰も見てないのよな!」

 

 

神裂『ちゅっ』

 

 

土御門「ひ、額?」

 

建宮「これじゃ、ますます母親みたいなのよ……」

 

神裂『お、思ったより恥ずかしいものですね』///

 

土御門「ねーちんは初心だにゃー……」

 

建宮「それも売りの(ry」

 

神裂『ふふっ。髪も意外にサラサラですね』ナデナデ

 

上条『Zzz』

 

土御門「これ録画して、後でカミやんに見せたら面白そうだけど……」

 

建宮「その場合は、我らの命も危ないのよ」

 

神裂『ふぁ……。私もこのまま寝てしまいましょうか……』

 

土御門「まだ夕方だってのに、お早い就寝だにゃー」

 

上条『Zzz』

 

神裂『Zzz』

 

建宮「しかし、昨日一昨日が手繋ぎで、今日は膝枕か」

 

土御門「少しずつレベルアップしてきてるな。この様子なら、1週間後には―――」

 

建宮「まあまあ。慌てなさんな。ここはじっくりと攻めるのが定石なのよ」

 

土御門「わかってるぜい。しかし、他の連中に気づかれる前に、なんとか一定の成果はあげたいところだにゃー」

 

建宮「ふむ。それなら、明日はちょいと細工をしかけてみるのよな」

 

土御門「作戦はあるのか?」

 

建宮「それには、お前さんの協力も必要なのよ」ニヤリ

 

土御門「これは面白くなりそうだにゃー」ニヤリ

 

上条・神裂『Zzz……』

 

-4ページ-

共同生活4日目

上条「ごちそうさん」

 

神裂「お粗末様です」

 

上条「いやー、本当に神裂さんが居てくれて助かりますよ」

 

神裂「そ、そうですか?」テレテレ

 

上条(家事のこともそうだけど、何より食費が大きいんだよな)

 

上条「ああ。神裂はいいお嫁さんになれるぜ」

 

神裂「お、およっ…!?」///

 

上条「ん? どうかしたか?」

 

神裂「い、いえ! なんでもありません! それより、時間の方は大丈夫ですか?」

 

上条「おっと、そうだな。じゃあ学校行ってくる」

 

神裂「はい」

 

上条「一応カギ渡しとくから、出かけるときは戸締りしておいてくれ」

 

神裂「分かりました」

 

上条「それじゃいってきまーす」

 

神裂「お気をつけて」

 

神裂(さて、私は家事でも済ませてしまいましょうか)

 

―学校―

土御門「いよう、カミやん。おはようだぜい」

 

上条「おう、土御門。そっちは大丈夫か?」

 

土御門「ノープロブレム。至ってぴんぴんしてるぜい」

 

土御門(寝てないってのは、大嘘だしにゃー)

 

青ピ「おはようさん。カミやんが遅刻せーへんなんて珍しいもんやね」

 

土御門「そりゃそうだろうぜい。今のカミやんにはねーちんがついてるからにゃー!」

 

上条「うおい! つ、土御門!?」

 

青ピ「何? カミやんの姉ちゃん?」

 

土御門「いやいや、カミやんの引っ掛けた年上の女の子ぜよ」

 

上条「ちょっとぉ!?」

 

ガヤガヤ マタカミジョウカ… ナンデアイツバッカリ… ガヤガヤ

 

青ピ「カミやぁん? それ、どこのどなた?」ユラ

 

上条(土御門! 言いふらしちまっていいのかよ!?)ボソボソ

 

土御門「この学校の生徒の裏は洗ってあるから大丈夫にゃー」

 

上条「だ、だからって―――」

 

青ピ「教育的指導ォォォ!!」バキィ

 

上条「ぐぉぉ!?」

 

青ピ「人の質問にはキチンと答えなあかんで?」

 

上条(今日の青ピは迫力が違うぞ……)ゴクリ

 

昼休み

―――

キーンコーンカーンコーン

上条「やっと飯か」

 

上条(朝、タコ殴りにされたところがまだ痛い)ズキズキ

 

土御門「カミやんは昼飯どうするのかにゃー?」

 

上条「そうだなー。購買でパンでも―――」

 

上条(ん? カバンの中に何か入ってる)

 

青ピ「どうしたん? ま、まさか、手作り弁当でもあるとか言うんじゃ……」

 

上条「そんな訳―――」ガサ

 

土御門「でも、それはどう見ても弁当箱だにゃー」

 

上条「んなっ!? いつの間に!?」

 

青ピ「カミやん、そろそろ本気で殴ってもええか?」

 

上条「な、なぜに!?」

 

土御門「世間じゃ、女の子にお弁当を作ってもらえるだけで万死に値するんだぜい?」

 

上条「チクショウ! 土御門は事情分かってる癖に!」

 

土御門「事情を知っているのと、それをどう思うのかは別問題だ」

 

青ピ「判決!!」

 

 

クラス男子「「「「「死刑!!」」」」」

 

 

青ピ「というわけで、安生せいや!! カミやん!!」グォォォ

 

上条「ふ、不幸だ―――ッ!!」ダダダ

 

昼過ぎ

―上条の部屋―

神裂「さて、家事もあらかた済みましたか」

 

神裂(洗濯機と掃除機の使い方は当麻に聞いておいた方が良さそうですね。手洗いや箒では限界もありますから)

 

神裂「それにしてもヒマですね。あの子はどうやって時間を潰していたのでしょうか?」

 

神裂(夕飯の買出しのついでに散歩でもしてみましょうか)

 

神裂「ええと、この辺りのスーパーは……」

 

神裂(そういえば、当麻はお弁当に気づいてくれましたかね?)フフッ

 

放課後 帰宅中

―――

上条「散々な一日だった……」

 

土御門「お疲れ様だぜい」

 

上条「これも、元はといえばお前の!!」

 

土御門「はっはっは。そう噛み付くなよ、カミやん。ねーちんと暮らして、悪い気はしねーんだろ?」

 

上条「うっ!? まあ、それはそうなんだけどな……」

 

土御門「それで、まだ手は出してないのかにゃー?」

 

上条「ばっ!? 何言ってんだよ! 出すわけねえだろ!?」

 

土御門「カミやんも、奥手だにゃー。今のねーちんなら、ガッといってそれで終わりだぜい?」

 

上条「あんまり無責任なこというなよな……。神裂は俺のことなんてなんとも思ってないだろうに」

 

土御門「それはどうかにゃー?」

 

上条「え?」

 

土御門「ねーちんは、カミやんのことを意識してると思うぜい?」

 

上条「またそんな……」

 

土御門「あのお堅い女教皇様が、なんとも思ってない男のところに厄介になるのをOKすると思うかにゃー?」

 

上条「それは……」

 

土御門「カミやんがどう思ってるから知らねーけど、ねーちんを落とすなら今が絶好のチャンスだぜい」グッ

 

上条「そんなもんかね?」

 

土御門「カミやんは鈍感だにゃー」

 

上条「しかし、あの神裂が俺を気にかけてるなんてことが……」

 

prrrr

 

土御門「っと悪い」

 

上条「いや、大丈夫だ」

 

上条(たしかに、神裂は綺麗でスタイルいいし、家事なんかのスキルも高い。それに、年上の割にかわいいところもあるし……)ブツブツ

 

土御門「もしもし?」

 

上条「う〜ん……」

 

上条(昨夜なんかも、膝枕してくれてたしな。起きたとき、神裂の顔がスゲー近くてびびったけど)

 

土御門「…………………………なんだと?」

 

上条(ん? 土御門の表情が変わった? もしかして、問題でもあったのか?)

 

土御門「ああ、分かった。こちらでなんとかする」ピッ

 

上条「何があったんだ?」

 

 

 

土御門「どうやら、ねーちんがスキルアウトに絡まれてるらしい」

 

 

 

上条「スキルアウトだって!?」

 

土御門「買い物に出た先で絡まれてるそうだ」

 

上条「分かってるなら、なんで助けないんだよ!?」

 

土御門「協力員が魔術師だからな。この街で面倒に関わる訳にもいかない」

 

上条「そんな!!」

 

土御門「まだそう時間は経ってない。今から行けば、余裕で助けられるだろうよ」

 

上条「くそっ!! 場所はどこだ!!」

 

土御門「○×マートの路地裏だ。まったく、ねーちんもあんまり揉め事を起こさないで欲しいぜい」

 

上条「んなこといってる場合か! 行くぞ!」ダッ

 

土御門「へいへい」

 

上条(無事でいてくれよ、神裂!)

 

連絡の入る少し前

―――

神裂「ふむ。こんなところですか」

 

神裂(この辺りの地理は大体把握できましたね。そろそろスーパーへ向かうとしますか)

 

スキルアウトA「お! そこのねーちゃん」

 

神裂「え? 私ですか?」

 

スキルアウトB「こりゃスゲー美人だぜ」

 

スキルアウトC「さすがリーダーは目の付け所が違うねえ〜」

 

神裂(なんでしょうか、この人たちは?)

 

スキルアウトA「これから俺らと遊ぼうぜ? なに、退屈はさせねーからよ」

 

神裂「お断りします。今、急いでいますので」

 

スキルアウトC「ぎゃはは!! ソッコーで断られてやんの!! だっせぇー!!」

 

スキルアウトA「う、うるせえ!!」

 

神裂「それではこれで失礼します」スタスタ

 

スキルアウトB「ちょっと待てよ、ねーちゃん。いくら何でもそっけなさすぎじゃねーの?」

 

神裂「ですから、急いでいますので」

 

スキルアウトA「まーまー、そういわずにちょっと付き合ってくれよ」

 

神裂「お断りします」

 

スキルアウトC「ひゅー。いいねえ、こういう気の強い女」

 

神裂(しつこいですね……)

 

神裂(かと言って、腕力にモノを言わせるのもどうかと思いますし……)

 

スキルアウトA「チクショウ……。舐められたまま引き下がれるかってんだよ」

 

スキルアウトB「おう。ねーちゃん、ちょっと顔貸せや」

 

神裂(相手にしていられませんね)ダッ

 

スキルアウトC「ダッシュで逃走とか、マジ拒絶じゃん」

 

スキルアウトA「あ、オイ! 待てや、コラァ!!」

 

神裂(くっ、追いかけてきますか。体が思ったように動けば、こんなことには……)タタタ

 

―――

―路地裏―

神裂「はぁ……、はぁ……。行き止まり……ですか」

 

スキルアウトA「手間……かけさせやがって……」ゼイゼイ

 

スキルアウトB「ここなら人目にもつかないから、やりたい放題って訳だ」

 

神裂「仕方ありません。ここは実力行使をさせていただきましょう」

 

スキルアウトC「ん? お前、能力者なの?」

 

神裂「そのような質問にお答えすると思いますか?」

 

スキルアウトB「なに。相手は女一人だ。びびることはねえ!!」ダッ

 

神裂「七閃!!」ギュガッ

 

スキルアウトB「ぎゃあ!?」ブシュ

 

スキルアウトA「何しやがった?」

 

スキルアウトC「チッ! こりゃワイヤーだぜ」

 

神裂(威力もスピードも酷いものですね。こんな相手に初見で見破られるなんて……)

 

スキルアウトB「」チーン

 

神裂「できれば、おとなしくそこを通してもらいたいのですが」

 

スキルアウトA「オイオイ。仲間一人がやられてるのに、簡単に通すわけねーだろ?」

 

神裂「そうですか……。では、あなた方を排除して通させていただきます。―――七閃!!」ギュガッ

 

スキルアウトC「おっと」サッ

 

スキルアウトA「危ねえ」サッ

 

神裂「なっ!?」

 

スキルアウトC「タネが割れりゃ、大したことねーな」

 

スキルアウトA「これなら、その辺の能力者の方がよっぽど厄介だぜ」

 

神裂「くっ!!」

 

神裂(まだ近接戦闘なら……)ビュン

 

スキルアウトA「接近戦なら得意分野ってなぁ!」バチン

 

神裂「かはっ!?」

 

神裂(で、電気?)

 

スキルアウトC「ははっ。痺れたか? リーダーは発電能力者(エレクトロマスター)のレベル2なんだぜ!」

 

スキルアウトA「接近戦でしか使えねーし、スタンガンみたいなもんだけどな」

 

神裂「くっ」

 

神裂(街の不良相手でこのザマとは不甲斐ない)

 

スキルアウトA「へえ。これで気を失わねーのか」

 

スキルアウトC「ねーちゃんも意外とタフだな〜。ま、意識あった方が、楽しみは増えるってもんだけどな! ぎゃはは!」

 

神裂(ま、マズイですね。思ったよりも足にきています)

 

スキルアウトA「大人しくしやがれ!」ガシッ

 

神裂「がはっ!!」

 

神裂(動きが封じられては勝負になりません! こうなったら―――)

 

スキルアウトC「おっと妙なマネはするなよ? こいつが見えない訳じゃないだろ?」

 

神裂「な、ナイフ」ゾク

 

神裂(くっ! わずか20cm程度の短刀に、これほどの恐怖があるものなのですか!?)

 

スキルアウトA「へえ。胸も結構デケェじゃねえか」

 

神裂「だ、誰か……」

 

スキルアウトC「ぎゃはは!! こんなところに都合よく誰か来るわけねーだろうが」

 

???「そうでもないんだにゃー」

 

???「神裂を離しやがれ!!」バキィ

 

スキルアウトA「ぐはっ!? ち、チクショウ!! 誰だ!?」

 

 

上条「誰だっていいだろうが! 女の子一人相手に大人数で囲むなんて、男のやり方かよ!!」

 

 

神裂「と、当麻!!」

 

上条「大丈夫か、神裂!!」

 

神裂「ご、ご迷惑をかけてすみません」

 

土御門「俺はスルーですかい?」

 

スキルアウトC「チッ! こいつら、この女の知り合いかよ。上等じゃねえか」

 

スキルアウトA「構うもんか。やっちまえ!!」

 

上条「くっ!」

 

土御門「おーっと。お前らの相手は俺がしてやるぜい」

 

スキルアウトA「ああん?」ピキ

 

スキルアウトC「2対1でやるって言うのか? おもしれえ」ピキ

 

上条「土御門!?」

 

土御門「カミやんはねーちんを安全なことに連れて行ってやれ」

 

上条「で、でも、お前は!」

 

土御門「この辺のザコなら、俺一人で余裕だにゃー。今はねーちんを優先するべきだろ?」

 

スキルアウトC「舐めやがって……」

 

上条「そ、それは……」

 

土御門「ほら、早く行った、行った。あちらさんもいつまでも待ってくれるわけじゃないんだぜい?」

 

上条「す、すまん! 後は任せた! 行くぞ、神裂!!」ガシッ

 

神裂「あ……。は、はい!」タタタ

 

土御門(さーて、ここからどうなるか楽しみだにゃー)ニヤニヤ

 

 

―上条の部屋―

上条「はぁっ…はぁっ…。なんとか……、逃げ切ったか……」

 

神裂「はぁっ……、どうやら……、そのようですね……」

 

上条「怪我とかないか?」

 

神裂「だ、大丈夫です。電気を少々あびただけで、外傷はありません」ガタガタ

 

上条「ちょっと震えてるぞ? 本当に大丈夫か?」

 

神裂「あっ! いえ、これは……その……」ガクガク

 

上条「神裂」

 

神裂「い、いえ、だから違うんですよ! これはですね……」ガタガタ

 

上条「神裂」

 

神裂「その……」ブルブル

 

上条「神裂!!」

 

神裂「」ビクゥ

 

 

上条「安心しろ! もう大丈夫だから!」ギュッ

 

 

神裂「え?」

 

神裂(あっ……。当麻の体、温かい……)

 

上条「怖かったなら、無理に押さえ込まなくていいんだ」

 

神裂「と、当麻……」ポロ

 

上条「もう大丈夫だから……」

 

神裂「当麻ぁ……」ポロポロ

 

上条(こんなに、震えるほど怖かったのかよ……)

 

上条「大丈夫……。もう大丈夫だ……」

 

神裂「怖かった……、怖かったですよぉ……」

 

上条「安心しろ。俺が守ってやる」

 

神裂「ぐすっ…ぐすっ…。とうまぁ……」ギュッ

 

上条「落ち着くまでそばにいてやるからな」ナデナデ

 

神裂「あ、ありっ…、ありがとう…ございます…」

 

上条「よしよし……」ナデナデ

 

〜〜〜〜〜

 

上条「落ち着いたか?」

 

神裂「はい。お恥ずかしいところをお見せしました」

 

上条「いいって。神裂が無事だったんだ。それくらいなんともねーよ」

 

神裂「ははは……。いつもあなたには頼りっぱなしですね」

 

上条「こっちも結構助けられてるしな。お互い様だよ」

 

神裂「そんなことありません……」

 

上条「そんなことあるって」

 

神裂(ああ……。インデックスやオルソラは、こういう気分だったのでしょうか?)

 

神裂(あの二人とはスケールは違うかもしれませんが、こんな気持ちになってしまうのは、仕方ないのかもしれません)ギュッ

 

上条「それで……、あの……」

 

神裂「はい?」

 

上条「落ち着いたなら、放してもらえませんでせうか?」

 

上条(胸が押し付けられて、非常に幸せなんですけどね! なんというか理性が!)

 

神裂「………………」

 

上条「あの……。神裂さん?」

 

神裂「―――です」

 

上条「はい?」

 

 

神裂「嫌です、と言ったんです」ぎゅー

 

 

上条「はい?」

 

神裂「まだ怖いので、今日はこのままでいさせてください」

 

上条「はいぃぃっ!?」

 

神裂「ダメでしょうか……?」ウワメヅカイ

 

上条「ううっ!? そ、その……ダメじゃないです」

 

神裂「ありがとうございます」ニコ

 

神裂(こうしているとすごく落ち着きます。やはり、私は当麻のことが―――)

 

上条(ち、チクショウ!! こんな拷問、不幸だ―――ッ!!)

 

 

 

神裂(―――好きなんでしょうね)

 

 

【中編に続く】

 

説明
上条さん×神裂さんのイチャラブものです。前編。
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とある魔術の禁書目録 上条当麻 神裂火織 

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