星屑探し |
「天体観測?」
「そ。さっき調べたんだ」
瞳を煌かせ、身を乗り出したリンを宥めながら、レンは言う。
「この間、偶々そんな感じの曲、歌っただろ?冬は空気が澄んでて星が良く見えるんだって」
皆まで言わずとも。ニッと微笑ったレンを見つめて、リンはパッと笑顔を咲かせた。
***
「なぁ、リン。……やっぱり、帰った方が、」
「えーっ!レンが先に天体観測の話、したんじゃない」
ズカズカと先を行くリンの後ろを、「まぁそうなんだけど」という呆れ声とレンが続く。
「でも……、マスターに内緒で出てきて平気なのかよ」
俺たちはボーカロイドだから、さすがにマスターも捜索願いは出さないと思うけど、探しながら号泣はしそうだなぁ。そんなぼやきを聞いて、リンは少しだけ寂しそうに笑った。
「マスター、昨日は一日中、リンたちの為に曲を作ってくれてたし、夜も遅かったし……だから」
歯切れは悪いけど、まあ大方のことは伝わった。レンは努めて明るく告げる。
「しょうがないよな。また今度、眠くない時に、俺とリンとマスターで行けばいいよ」
「……うん」
二人は手を繋いで、夜道を歩き出した。暗い道に二人分の足音と、白い息が溶けていく。「家」から出来るだけ近く、出来るだけ高いところを目指して歩く道すがら。どうせ星を眺めるなら、見晴らしが良いところの方が、とレンが考えていたことを知らずに、その方が「星が近い」気がするよね、と無邪気にリンは笑った。
結局、二人は小さな神社の裏にある小塚に登った。一番上まで何とか歩いて。ごろりと寝転がり見上げた先に、広がる光の粒。結構見えるものだねと、二人の声は無意識に高揚した。
「星って、今こうして見えているだけが全部じゃないんだってさ」
暫く黙って星を見ていたレンが、思い出したかのように呟く。
「そうなの?」
「光が弱くて見えないのもあるんだ」
それとなく、「ふうん」と感心していただけのリンは、にまりと表情を綻ばせてふと振り向いた。
「なんか、それ、今のマスターみたい!」
「はぁ?何だよ、ソレ」
「だぁから!今のマスターはまだ見えない星なの!いつかきっと、キラキラ見える日がくるんだよ!」
リンは、そう笑いながら空を見上げて……倣って、レンも空を見上げる。たくさんの星が幾万と輝くように、たくさんの人が、輝いている。今は、その光が「誰か」の目に届かなくとも。
「うん、きっと」
そんな日が、来るよ。優しい声音に、リンは手を伸ばし、レンはそれをそっと握り返した。二人分の笑顔が、夜空の下で煌いている。
説明 | ||
リンとレンの話:ほのぼの。名前だけマスターが出てきます(笑) 凄く短い小話。 | ||
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