双子の吸血鬼 第11章;激動の始まり
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 その日はエヴァの誕生日の数日前だった。ヴァンは毎年とは言わずともたまの年くらいにはプレゼントをエヴァに贈っていた。

そして、前日ラーからの電波を受信したらしいチャチャゼロから「アル ムラニ イッテキテモライタイ」と言われ丁度その近日中にエヴァの誕生日があり、せっかくなのでその村で

 

誕生日プレゼントを買い、プレゼントしようという。話になっている。

もちろん、ヴァンはエヴァに対しこの事は内緒にしているのだが、兄の行動には機敏なエヴァはこのことには気づいていた。だが、兄のその姿を見ていることにしたのか気づかないふ

 

りをしていた。

 

 ヴァンは城の広間に立ちチャチャゼロの言う町へのゲートを作っていた。

その傍らには心配そうな顔をして、見つめるエヴァと光のチャチャゼロがいた。今回、エヴァは留守番。チャチャゼロは留守番兼エヴァの護衛である。実際問題護衛などなくてもエヴ

 

ァに敵うものなどそうそういないので心配する必要も無いのだが、そこは妹馬鹿なヴァンの強引な意見によって決まった。

 

「ふぅ・・・・・・」ゲートを作るための詠唱を終え、目の前に炎のゲートができるとヴァンは息をついた。

そして、ヴァンはエヴァの方を向くヴァンはエヴァの表情が硬い事に気づいた。

「どうしたんだ? キティ」

そんあエヴァにヴァンは尋ねた。

「な、なんでもないわ」

だがエヴァは意地をはって何でもないという。本当に何でもないのならそんな顔はしないというのに・・・・・・

「じゃあ、行ってくるから留守番は頼んだぞ」

そんなエヴァにヴァンは困った顔をしながら自分はその炎のゲートをくぐった。

 

 すると、直ぐにそのゲートは消えてしまった。エヴァはその消えてしまったゲートがあった位置を見つめ続けている。

「ドウシタンダヨ ゴシュジン? ダンナノコトガ シンパイナノカ?」

そんなエヴァに向かってチャチャゼロは話しかける。ちなみにエヴァの事はご主人、ヴァンの事はだんなと呼んでいた。

「だって、今兄さまが行った所はこれから長期の大戦が始まるきっかけの所でしょう? 心配しない方がどうかしてるわ。妹としても、女としてもね」

振り返り、エヴァは言う。そう、今ヴァンが行った所はこれから連合と帝国の大戦が始まる一番最初の戦場なのだ。

いくら、最強とうたわれている兄であったとしても心配は拭えない。

そんな想いを胸にエヴァとチャチャゼロは城の奥へと戻っていった。

 

 ヴァンはゲートで少し村から離れたところに出て、ほんの少し歩きその村に足を踏み入れていた。

「ふぅ、先ずはお金を稼ぐ事からだな・・・・・・」ヴァンは独りでに呟いた。

ヴァンはとりあえず村長がいるところに行こうと思い、側をあるいていた村民に話しかける。

「そこの者、村長はどこに行けば会えるのか・・・・・・」

そうヴァンは聞くとその者はある方向を指差した。

「あぁ、村長様ならあちらの方へと行けば会えると思いますよ」

そう言った者をヴァンはよく見てみると顔がやつれている事に気がついた。

「顔がやつれているがどうしたんだ?」

そして、ヴァンはその事を尋ねると、この近くによく賊が出るんだと語った。

その事にヴァンは何も言葉を返す事が出来なかった。

「あぁ、すまない。そんなつもりで話したのではないんだ。すまないね」

その者はそう言うと、一人で向こうへと歩いていった。

 

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 ヴァンは教えてもらった道を歩いていた。

ふと、ヴァンが傍らを見ると外を出歩いている者は少なく、いたとしても周りをひどく警戒し、精神的に疲れていそうだった。

「はぁ、嫌な村だねぇ・・・・・・」それを見て思わず愚痴がその漏れてしまう。

そして視線を前へと戻す。その村の様子を視界にとどめておくのが嫌だったからだ。

 

 そんなこんなしながら、ヴァンは村長がいるといわれた、建物に着いた。

それは、他の家から比べたらほんの少しだけ大きいだけで対して変わらないように見えた。

入り口付近には見張りの兵が二人ほどいた。

ヴァンはそのうちの一人に話しかける。

「すまない、ここで仕事を探しているのだが・・・・・・」

そういうと、その兵士は渋い顔をした。すでにここにいる村民達だけで手一杯だからだろう。

よそ者に食わせる飯はないと言っているように見えた。

「俺には少々武の心得がある。だからそれを生かせるものを願いたいのだが」

言うと、兵は未だ渋々ではあるものの村長に話をしにいってくれた。

そうしてしばしそこで待っていると・・・・・・

「おい、そこのお前村長が話があるそうだ」

兵が戻りそう言ってヴァンは部屋の一室に招待された。

 

 ヴァンはその部屋に置いてあった長いすに腰を下ろす。

そして、もうしばらくすると、扉から一人の老人が現れた。

「そなたが仕事を探しているというお方かな?」

その老人は気さくな感じでヴァンに話しかけてくる。それに対してヴァンは肯定をした。

「ふむ、そして武術の心得があると・・・・・・」

「まぁ、武術といえるかどうかは怪しいがそこそこ実力はあるつもりだ」

まるで、バイトの面接のようだ。実際問題これは本当に仕事の面接なのだが・・・・・・

「ほう、それは心強い。実はこの村の近くで少し前に賊が住み着くようになりましてね・・・・・・

村の若者達が、それを討つべく結成しているようですが、勝てるか、と聞かれたら答えるのにつまります。

そこで私としてはそなたにその結成された集まりの長をやっていただき、指導してくれると助かるのだが・・・・・・

勿論メシも寝床もこちらで用意しよう」

「ありがたい」

村長がそういうとヴァンは立ち上がって礼をする。

「では、これから頼む。一先ず君にはどのように賊の狩りかた。を説明しておかなければなるまい。

恥ずかしい話だが、この村は情報伝達をはスムーズに行う事ができないのだ。

よって、君はその場その場の自分の判断で動いてもらう事になる。」

「俺がきちんとやっているかどうか、どうやって判断するのだ」ヴァンは疑問を口にする。

「あぁ、そのことだが。それは完全に君を信じるしか他あるまい。

実際問題この村は賊に対して猫の手も借りたいくらいなのだよ」村長は深々とため息をつく。

このことに関してかなり頭を悩ましているようだ。

「まぁ、俺はきちんと仕事はするからそこは安心してほしい」と、ヴァンは言う。

 

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「ならよい。これでお主の仕事内容は分かったな?」

「あぁ」

「よし、ではこの者にお前の部屋へと案内させる。この者についていくがよい」

村長は側にいた兵士を呼んで案内役とさせた。

「では着いてきてくれ」

兵士が言うヴァンは立ち上がりそれについていった。

 

 村長と話した部屋の扉を抜けて、たいして長い距離では無い廊下を歩き。玄関を出外へと繰り出していた。

「これから、よろしく頼むな」案内役に買われた兵士が気さくにヴァンに話しかける。

「あぁ、よろしく頼む」それに対してヴァンは短く応えた。

難しい人であればそのような短い返答で気を悪くする人もいるが、この兵士はそれにあたらなかったようだ。

「なぁ、お前さんは「ヴァンで良い」・・・・・・そうか、ヴァンはこの村を見てどう思う?」

兵士は賑わっているとは決していえない、辺りを見渡して言う。

「俺は色々な村や町を見る機会が多いが、正直言ってこの村は賊のせいだろうが酷い方に入っているな」

その辛辣なヴァンの評価に兵士は苦笑いをして言った。「はははっ、これは手厳しいな」

「だが、その通りだ。賊が来る前はこんなでは無かった。皆に笑顔が溢れ小さい村ながら活気に満ちていた。俺はそんな笑顔を取りもどすために兵に志願したんだ」

そう兵士は言うと前を向きキリッとした顔をした。

「ふむ、良い理由だな。俺は金のためだがね・・・・・・」ヴァンは悪戯げに微笑み言った。

「それでも、強いというならば俺達にとってはありがたいことなのさ」

兵士はヴァンの方を向くとそのヴァンの手を握り言った。

「この村を助けてくれ。頼む」

「まかせろ」

そう言ってヴァンはその手を振り払った。

 

 それから少し歩いて一つの家の前に着く。それまで、二人はなんとなく話し合う雰囲気ではなくてあれ以来一言も言葉を発していなかった。

「ここだ、ここがお前の家だ。必要なものは家の中にあると思うが他に必要なものがあると思ったら、このお金で買い足してくれ」

しかし、それも家の前についたことで破られた。

兵士はそう言うと、自らの懐からそこそこの大きさの袋を取り出す。中身に入っているのはどうやらお金だが、外からその袋を見るに多額の金が入っている事がうかがい知れた。

ヴァンはそれを一瞥し兵士から受取る。すると、ずっしりと言う擬音が似合う質量を持っていた。

「すまないな」ヴァンが言う。

「なに、これは村長からのほんの少しの気持ちだ」

「それでも、このような小さな村では金はどんなにあっても足りないようなことはないだろう?」ヴァンはその袋を見ながら言う。

「まあな」その男も別段その事実を隠そうとはしなかった。

この盗賊に襲われているという時期にいたってはどんなにお金があってもたりることは無いのだ。

そして、それから二人は少し話して兵士がふと空を見上げた。

「おや、もうけっこうな時間ですな」空はもう既に暗くなり始めていた。

「私はこれで・・・・・・」兵士はヴァンにそう言って一礼してから先ほどまで歩いていた道を戻っていった。

 

 

(※注意 ここでのヴァンの家およびこの村の家々は昔の日本の家のように藁などではなく、どちらかというと西洋風な家を想定しています。

     ゆえに玄関という表記がありますが靴を脱ぐという動作はありません)

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 ヴァンはその兵士が帰っていく姿を見送って自分はあてがわれた家に足を踏み入れていた。

(こんな時間では何か買いに行くのは明日だな・・・・・・)ヴァンは廊下を歩きながら一部屋一部屋確認しつつ考える。

そして、リビングと思われる場所に着いたとき、ヴァンの腹が空腹を訴えた。

(ふむ、そういえば何も食ってないな・・・・・・)

そう思った、ヴァンはリビングらしき場所で辺りを見渡す。

そして、食物が入っていると思われる甕(かめ)を見つけそれに近付いていく。

(さて、何がはいってるのかなっと)ヴァンは甕のふたを手に取りどけた。

(まぁな、乾物ばかりだよな・・・・・・)そして、中身を確認すると乾物ばかりが入っていた。

冷蔵庫など無いこの時代保存できるものといえば乾物が主だ。

ヴァンはその甕の中に手を突っ込む。そしてその流れでヴァンが右を向くと。

(おや? これはワインか? 気が利いているな)そこにはワインが入っていると思われる。瓶が数本並んでいた。

ヴァンはその甕から干し肉を数切れとりだし、一つ口にくわえるとその瓶が並んでいる所に向かい、その中から一本取った。

そして、椅子へと座り、瓶をテーブルに置く。肉は汚れないようにと手で持っていた。

そして勢いよく干し肉を次々と噛み砕き飲み干していった。

全部食べ終わると、喉が詰まっているためかワインのコルクを開け一気に飲みだした。

「ゴクッ、ゴクッ、ふぅ・・・・・・。 今日は良い月だな。キティも見ているのだろうか」

そして、傍らにある窓から遥か上空にある月を覗き込む。そこから見た月は雲に覆われる事無く優しい輝きでこの地を癒していた。

 

 ヴァンは、軽い夕食を済ませた後湯浴みをしようと思ったが予想以上に身体に疲れが残っており湯浴みをするのを中止し清める為の魔法を自身に施し、床についていた。

「今日も中々な一日だった・・・・・・」ヴァンはそう呟き考えている事は愛しき妹の事。

(今年のキティの誕生日は何にするか・・・・・・)誕生日プレゼントのためにこの村へと出稼ぎに来ているのだが、そのプレゼントを何にしようか中々決まらないでいた。

 

 

 

 

 

 大きな叫び声と共にヴァンの持つ鋭い刃が賊へと襲い掛かる。

ヴァンがこの町にたどり着いてから数日間ヴァンの仕事は賊狩りとなっていた。

あの日の翌日早朝に目を覚ましたヴァンは一人村の外に出て、村を中点とし半径数十メートルの魔法の円を描いた。

その魔法の円は昨晩寝ているときに考えたものでありヴァンはその円をその名の通りサークルと名づけた。

それを踏み越えたものがいるとヴァンが察知するというなんとも都合の良い代物である。

そして、ヴァンはそれを感知しこうして賊狩りへと赴いているのである。

どこからこんなに沸いて出たといいたくなるほど大量な賊を前にしてヴァンは獲物を構える。

そんなヴァンの右手に握られている刃は朝凪、以前中道に譲り受けた日本刀である。

「てぇぇええい!」

そんなヴァンが何故得意分野である、魔法を使わずに剣術で闘っているかというとただ単に魔法を使ってしまうと面白くないというのがヴァンの言う事である。

「おらぁぁあああ!!もっと骨のある奴はいねぇえのか!!」

ヴァンの怒声が辺り響く、その声を聞いただけで周りの賊たちの足はすくみヴァンから距離のある者逃げようとしていた。

しかしそんな逃げるという事をヴァンが許すはずも無く逃げた者達の前まで飛び立ちはだかると即座に切り伏せた。

その圧倒的な力はこの場を確かに言葉の通りに蹂躙していた。

 

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しばらくして戦闘が終わったときその場に立っていられたものはヴァンただ一人だった。

 

「ふぅ、助かったぞ。ヴァン殿、迅速な対応ご苦労」

戦闘が終わりヴァンは一人村長がいた例の部屋にいた。今回の出撃の報酬を貰うためだ。

「いや、たいした事じゃない」ヴァンはこともなげに村長に返す。

ヴァンは今下手側にあるそこそこ大きな椅子に座り、村長は窓の近くに立っていた。

その村長を輝かしい太陽が照らす。村長は先ほどから・・・・・・ヴァンがこの部屋に入ってきた時にヴァンの事を確認したとき意外は窓から町を見ていた。

「今回は賊を打ち払った報酬を受取りにきた」ヴァンは切り出す。

「ふむ、そうじゃなそういう約束じゃった」村長はやっとこちらを向く。

「しかし、今は昼時じゃ。一緒にめしでもどうかの?」するとヴァンの方に歩んできて、テーブルを挟んで向かいの椅子へと座った。

「そうだな、頂こうか」ヴァンはその事を聞いて右手で腹をさすり、状態を確かめるとそう応えた。

 

 その言葉を聞いた村長は手を二度パンパンと合わせた。おそらくそれは食事をもってこいという指示の合図なのだろう。

「これで、食事がやってくるぞ」村長がそう得意そうに言うので

「俺は、食にはうるさいぞ」ヴァンはそう言うと

「大丈夫じゃて・・・・・・」そう言って村長はニヤリと笑った。

しばらくして、この部屋に続々と料理を乗せた皿がここに雇われているのであろう侍女達が持ってやってくる。

そして、最後まで運ばれ皿が並べられたテーブルを見るとそこは色とりどりな料理があり、一目でおいしいものだという事が分かる。

それを見たヴァンの口内では多量の唾液が分泌され、ヴァンの脳内ではこれは上手いものだ。早く食べろという命令が出されていた。ヴァンはその料理に釘付けになっていた。

「ではいただこうぞ」

そんなヴァンの心情を察した村長は言った。

同時にヴァンは側に置かれたスプーンを手に取りそれをがっつくように食べ始めた。

 

 その後たんたんと食べ続けついに最後の一口がヴァンの口の中にほうりこまれた。

「うまかったな」ヴァンは傍らに持っていたスプーンとナイフを置いて言った。

「満足してもらえたようで、満足じゃよ」村長はナプキンで口を拭きながら言う。

「で、報酬の話だが・・・・・・」

「わかっておるわ。家来の者に用意させておる。帰るついでに受取っとくのがよいじゃろう」村長はナプキンをテーブルの上に置く。

そして、その話を聞いたヴァンは立ち上がり帰る為に後ろを向いた。

「だれか、ヴァン殿がお帰りだ! 送りに出てくれ!」村長が大きめな声を出す。

ヴァンが部屋の扉を開けるとそこには一人の侍女が待っていた。

(呼びかけから来るのが早いな)ヴァンはその事に少しばかり感心した。だがたまたまここの近くにいたと考えれば普通の事だ。と思い直した。

侍女はヴァンに向けて上品にお辞儀をする。

「では、ヴァン様出口はこちらでございます」

お辞儀から直りそう言うと踵を返し扉の方へと歩き出した。

そして、扉に近くなるとヴァンは更にそこに違う侍女がいることに気がついた。

(何だ?)ヴァンはそう思ったが、その疑問は彼女の持っている物を見て解消された。

(なるほど、彼女が報酬を持っているのか)

彼女が持っていたものはそこそこな大きさの袋だった。それは中身の重さで少し下に垂れていた。持っている侍女も顔には出ていないが重そうだ。

そのことで、どれだけ中身が入っているのかが分かってしまう。

(ふむ、なかなかだ。これなら早くキティの元へプレゼント持って行ってやれそうだ)

そこでヴァンは袋を受取りこの場を後にした。

 

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 そして、その村で生活し始めてしばらく経った頃。

ヴァンは賊退治だけでなく、軽いお使いまでも頼まれるようになった。

それは、村長から頼まれるものではなく少しだけ活気を取り戻した村民からの依頼なので勿論金銭的な報酬は無く全て物品で賄われていた。

それにブツクサ言いながらもヴァンは頼みごとを断ることなくこなしていた。

そして今日も村の一人に頼まれ村から少し離れた林に獣肉と食用の草を鳥に来ていた。

「何故、俺がこんな事をやらねばいけんのだ・・・・・・」

ヴァンは自分があの村で良いように使われているパシリなのではないかとか思いつつも側を走り抜けた猪を仕留めていた。

 

 ヴァンが草と肉を求めその林を歩いていると少し開いた所に出た。

「おぉ・・・・・・」その光景に思わず声が漏らす。

そこは、近くに川があり視線を右へと向けるとそこには滝が流れ落ちていた。

川の中を見ると透明に近いまで澄んでおり。さまざまな魚がいた。

「キティにも見せてやりたかったな」

ヴァンはその川に歩み寄り靴を脱いで足をそのにつけた。

冷たさがヴァンの足に伝わる。

ヴァンはその冷たさを感じ取り目を閉じた。そしてその場に横たわる。

「くー・・・・・・」何時しかヴァンは眠りに落ちていた。

 

(ピーーーン!!)

「ハッ!」

先ほどまで気持ちよさげに眠っていたヴァンは突然目を覚ました。

そして自体を把握するために辺りをキョロキョロと見渡す。

「そうか、俺は村から離れていたんだ・・・・・・村が危ない!!」

ヴァンはそう言うと持っていた肉や草を放り出し急いで靴を履くと地面をすべるように村へと向かっていった。

先ほど書いたこの(ピーーーン!!)は村の周りに書かれた線を外部のものが越えると発するものである。

そして先ほどヴァンがこれを感じ取った事実。それすなわち村が賊に襲われているという事である。

ヴァンが村にいたのならば問題はなかったが、今ヴァンは村から離れた林に来ている。

一刻を争う自体だった。

 

「おい!ヴァンはどうしたんだ!!」

賊を迎え撃っている兵士の一人が叫ぶ。

周りで闘っている兵士達は奮戦しているものの賊に押され始めている。

あきらかにヴァンが来た前と後で兵士達の力は弱くなっていた。

いつも盗賊がでたときはヴァンがいち早くかけつけ、兵士がつくころにはもう粗方終わっていたためだ。

「どうやら、村の奴に言われて近くの林まで出かけているらしい!」

別の兵士が叫んだ。

そして、最初に叫んだほうの兵士は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ言った。

「くっ、ちょうどヴァンがいないときに・・・・・・」

その兵士も段々と押され始めていた。

 

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 兵士達は闘い続け段々と賊達に村の内側へ内側へと追い込まれてき、方々では村人たちの鳴き声や叫び声、怒声などで溢れかえっていた。

そんな時村の一角で大規模な爆発現象が起こった。

「なんだ!?」その爆発に驚いた兵士達は皆その方向を向いた。

そこには大きな土煙が舞い上がっていた。

その土煙は猛烈なスピードで村の中心部・・・・・・兵士達がいるところへと向かってこようとしていた。

「うわぁあああああ。なんだぁ!?」慌てている兵士が言う。

既にその場は強行状態になっていた。

そして、その土煙が兵士達の付近に来たとき「バッ」とそれは空へと飛び上がった。

「ゲホッ、ゲホッ・・・・・・」その時に舞い上げられた土で賊、兵士関係なく咳き込んでいた。

 

「空高く浮かぶ太陽よ、我が求めに答えその力を我に与えよ、その力我の力となり、我を拒むもの全てを灰へと変えろ 太陽(レイ)!!」

そして、その土煙は丁度良い高さで止まり左手を空の太陽へと掲げ叫んでいた。

「おぉ!! ヴァンだぁ!! やっと来てくれた!!」

その姿を見て確認したものその声を聞いて確信したもの様々であるがそのヴァンという存在は味方の兵士には希望を敵の賊には絶望を与えた。

ヴァンにとってはここで、賊を一掃することは赤子の手をひねる事よりも簡単な事であったが、この村の未来を考えたときそれではいけないという考えを持った。

たとえここでこの賊を落ち払ったとしても、ここまで踏み込まれていては村の被害の方も尋常ではないだろう。

このままでは遅かれ早かれこの村は全滅してしまう。

だから、ヴァンはここ最近考えていた新魔法をここで実践してみる事にした。

ヴァンの手のひらの上には大きな魔法で作られた擬似太陽があった。

「固定(スタグネット)掌握(コンプレクシオー)術式兵装(アルマティオーネ)太陽神(ラー)!!」

ヴァンはそれを魔法でとどめ口を開けその擬似太陽を飲みこんでいった。

その神秘的とも異様ともいえる状況にその場にいた、賊と兵士はその光景に声も発せられないでいた。

それらは本能的にそこにいるものを理解しているのだろう。それを敵にしてはいけないという事を。

そしてその太陽が全てヴァンに飲み込まれる。そして、身体中から炎が噴出す。

そしてそれは段々身体を形作っていき最終的にはかなり大きな人型の姿となった。表面は太陽のように燃え盛っている。

「聞け!! 賊たちよ!!」

ヴァンは声を発した。その声はとても大きく雷のようだった。

「私はこの村に遣われている者である。この村の長(おさ)には多大なる恩がある。よってこの村を襲うお前らを決して許しはしない!!

しかし、お前達にも生きたいという願望があるであろう。ならば!! この村に生き! この村に死ね! さすればお前達を我は許そう

この提案に是の者は頭を垂れよ。否の者はそのままでいるがいい。私が聖なる炎で焼き尽くしてくれよう!!」

ヴァンは言う。

すると、その場にいた賊の者達が次々と頭を地に着けていった。

その事でヴァンにも兵士にも村民の心にも安堵が戻った。しかし、

 

「うわぁああああああ!!」離れたところで悲鳴が聞こえる。

その声で安堵に浸っていた者たちの顔には緊張が走る。

「ふざけるな! 何が許そうだ! 偉そうに! 俺達にはここで生きようが最後には死しかないんだよ!」

そう叫んだ賊の男。その手にはナイフが握られ、それは赤毛の少年に突きつけられていた。

その少年の顔は涙で濡れていた。

 

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その賊の男はここで生き延びたとしてもこの村の者達に捕らえられ罪を問われ死罪にされてしまうことをいっているのだろう。

「そこのお前! 俺がお前らを許そうといった事にはちゃんとした大きな理由が一つある。

それはお前達がこの村を蹂躙したお蔭で、この村の人口が極端に減ってしまったからだ!!

この村はずいぶん前から賊に悩まされていた。その賊のせいで年々人口が減ってしまう。何故か、それはお前らが連れ去ってしまうか殺されてしまうからだ。

だからこれは取引である。お前達はこの村を復興するために全力を尽くせ! そして、賊が再び来たとしてもお前達の力で跳ね返せ!

その代わりこちらからはお前達の生活を保障し、今この場で命を取る事を預けておこうというわけだ!!

俺は村の代表者ではないがこの事は未来を見据えても必要な事である。村長もうなづくであろう」

ヴァンは普段の口調に戻し優しげにそう言った。

そして、その優しさに触れたその賊は足元に崩れ落ち、そして咆えた。

「うわぁああああああああ!!」

ナイフを突きつけられた少年と同じようにその顔は涙で濡れていた。

 

(※ここでの考えを解説。先ず、第一にこの村は幾度か賊に襲われているという事を理解してください。そして、その影響(賊による誘拐や殺人等)で人口を減らしていたのです。

なので、ここでこの賊たちを改心させ村に取り込む事でその今襲っている賊たち(この戦いで兵士より強い事は分かっている)に人口が減った分の所に収まってもらい。

更にその兵士より強いという事から村の防御にもかって出てもらう。みたいなかんじです。)

 

 

「すまない。腕には自身があると言っておきながら」

あれから、その場はヴァンの活躍もあり直ぐに騒動は終わりを迎えた。

そして、襲ってきた賊たちも改心するようでヴァンの提示した条件を飲み全員がこの村に下った。そして賊達は今、村の壊した所を修理しにいっている。

そして、ヴァンは自ら村長のところへ赴き頭を下げた。

「賊は襲ってこないという思い込みが今回の結果を招いた」

今回最後だけはファインプレーを見せたヴァンであったがこのことについては終わりよければ全てよしとなるわけでもなく。

ましてや、今回襲われてしまった事によって死んでしまった人がよみがえるわけでもなく。

そればかりは完全にヴァンの落ち度だった。

「いや、今回はヴァン殿のせいだけではあるまい。ヴァン殿は村の者に言われ使いでていたのであろう?」

そんなヴァンに慰めの言葉を掛ける村長。

「そうですが、しかし・・・・・・」それでもなお良い下がろうとしないヴァン。

「ええて、ええて、終わりよければ全てよしという言葉もある。確かに今回命を落としてしまった者たちのことは残念ではあるが・・・・・・それだけにとらわれて未来をも壊してしまって

 

は仕方あるまいて」

「今回は完全に俺の落ち度。けじめとして俺はこの村を出て行こうと思う。元々そろそろ帰ろうかと思っていたし、それに今回頂いた報酬・・・・・・全額とはいえないがあるだけはお返し

 

しましょう」

そういってヴァンは持っていた袋をどっさりと村長へと明け渡す。

村長はしばらくヴァンの瞳を見つめていた。

そして、

「ふむ、取り消すつもりはないんだな」

「あぁ・・・・・・」

「よかろう」

そう村長は短く言うとその袋を持ち上げた。見た目以上に重いはずなのだがそれを軽々と持ち上げてしまう辺りこの人の筋力は相当なものなのだろう。

 

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あるいは、魔法か何かで補強しているのだろうか。

「いままで、世話になった」

ヴァンは頭を下げる。

 

 

「では、入ってまいれ」

ヴァンが頭を上げたときを見計らって村長が言う。

すると、ヴァンの位置からすると後ろに位置する扉が開く。

(・・・・・・?)突然の事に良く分からないような顔をするヴァン。

そしてそこからタタタっと元気のよさそうな駆け足の音が聞こえる。

その音はヴァンを回り込むと村長の隣に立つ。

「この子は今回、君が最後に助けた子だよ」村長はその子の肩に手置いて言う。

その子は最後に自棄になった賊に人質に捕らえられた子供だった。

「あの時はありがとう! にいちゃん」その子供は輝かしい笑顔を見せつつお礼をする。

ヴァンはその子に歩み寄りその子の赤い髪の毛を生やしている頭を無造作に撫でる。

子供はニシシ・・・・・・と笑っていて撫でられている事を嫌がっている様子はなっかった。

「俺、大きくなったら兄ちゃん見たくなるんだ! 困ってる人がいたら助けるんだ!」

ヴァンはそれを聞き少しばかり微笑む。

「なれるかな?」そういうと子供は少しばかりシュンとした顔になった。

「なれるさ」ヴァンは言う。そして、撫でている手を少し強めた。

すると、子供はパァ!と顔を輝かせる。

 

 

「ヴァン殿、確かに今回は多くの者がなくなってしまったが、お主はこうして若き芽を一つ助けだのじゃ。

だからの、これは受取ってくれんかの?」

村長はヴァンの顔に先ほどまであった陰りがなくなったのを確認すると手に持っている先ほどヴァンに渡された金の入った袋を差し出す。

そしてヴァンは少しだけ考えた後少しだけといって銀貨三枚分を貰ってその場を後にした。

 

 

(うーむ、キティへの誕生日プレゼントはどうするか・・・・・・)

ヴァンは貰った銀貨三枚を懐で遊ばせながら雑貨が多く並んでいる道を歩く。村の復興はどうやらかなり早く進んだようだった。

(絵に家具に骨董品に人形に、なんでもあるな・・・・・・)

そのあまりの量にヴァンはどれにしようか迷っていた。

エヴァの好みを考慮して買わなくてはならい。そのことはかなり高度な技なのである。

何を買ってあげたとしてもエヴァは喜ぶのだが、その時の喜びようが違うのである。

見当違いのものを買ってきてしまった時の喜んでいるものの落胆さが隠しきれていないあの表情はなんとも・・・・・・

そんな訳でヴァンは毎年エヴァの誕生日に頭を悩ませているのである。

そして、しばらくヴァンはその通りを歩いていると何やら可愛い人形がたくさん飾ってある店を見つけた。

気になったヴァンはその店に入ってみた。

 

「いらっしゃいませー」店番の方の元気そうな声が響く。

 

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ヴァンは辺りを見渡すと人形という人形が所狭しと並べられて、所によってはつまれていた。

ヴァンが辺りをキョロキョロしていると店番の方が声をかけてくる

「どうしたんですかー? おにいさん? どういったものをお求めで?」

可愛く首を傾げるその娘はヴァンに尋ねてくる。

「あぁ、妹への誕生日プレゼントなんだ」

「ほうほう、妹思いの良いおにいさんですねぇ・・・・・・ご予算は以下ほどで?」

「銀貨三枚」

「あぁ、それならー。こんな感じなんかどうですかー? 可愛いですよー」

そうヴァンは答えるとその店番は辺りをごそごそと探ると一つの人形を出してきた。

確かにそれはヴァンから見ても可愛いといえるものだった。

「ありがとう。じゃあそれを頂くよ。いくら?」

「そうですねー。ほんとは銀貨五枚なんですけどー、大負けに負けて銀貨二枚でーす」

にこやかに言う店番にヴァンは銀貨を二枚手渡すと、代わりにその人形を頂いた。

「またのご利用をお待ちしていまーす」

その店番の娘はにこやかにヴァンを送る。

そしてヴァンは店を出、人通りの少ない路地裏へと行くとゲートを作り出しその中へと姿を消した。

 

 

「キティ! ただいま今帰った」

城の中にヴァンの声が響く、今ヴァンがいる所は城の玄関だ。

そして、そのヴァンの声を聞いてからか城の中がばたばたと騒がしくなる。

恐らくまだ帰ってこないと思って出迎える用意をしていないのだろう

「兄さま! お帰りなさい!」

しばらくして、身なりを整えたエヴァが階段から駆け下りヴァンに飛びついてくる。

その突然のタックルを受け止めたヴァン。

「ただいま」優しく微笑んでもう一度ただいまを言った。

 

 ヴァンは服を取り替えるために一旦自室へと戻った。

そして今いる場所はリビングである。

「さてさて、お待ちかねプレゼントだよ。キティ」

リビングにあるテーブルの上にリボンをあしらった箱が置いてある。

「わくわくしますわ。兄さま」

「じゃあ、あけて良いよキティ。今年も誕生日おめでとう」ヴァンは微笑む

「ありがとうございます!! 兄さま!!」

そういうとエヴァはリボンを解いていく。そして箱だけになると

「・・・・・・? 兄さま? 何やら箱がカタカタいっているのですが」

その箱はカタカタと音を立て振るえていた。

それを見て不審に思ったエヴァはヴァンに尋ねる。

「あぁ、まぁ良いだろう。出てきて良いよ」

そうヴァンが言うと、箱の中から可愛らしい人形が飛び出てきた。

 

-11ページ-

 

「キャァ!」可愛らしくエヴァが悲鳴をあげる。

「コレカラモ ヨロシクダゼ ゴシュジン」

なんとその人形はチャチャゼロが入った人形だった。

 

 その後エヴァは微妙な表情でそのチャチャゼロ人形を眺めていた。

ヴァンは何か失敗したかなぁと思いながらエヴァの誕生日の為のケーキやら何やらを準備していた。

そして、二人でご馳走を食べ、落ち着いた雰囲気で二人は今日の事を振り返っていた。

 

「兄さまも帰るなら前もって帰るといっていただけませんと少しびっくりしてしまいます」

食後にヴァンがお酒を用意したのでそれを二人は飲んでいる。

「まぁ、ちょっと向こうでもいろいろあったから早めに帰ってきたんだ」

「そうだったんですか」

「だからあまり気にしなくても良い」

「そういうなら・・・・・・それと、今年の誕生日ですけど見た目は可愛かったのにどうしてチャチャゼロなんて入れてしまったんですか?」

「あれは、思い付きだったんだけど・・・・・・まずかったかな?」

そうヴァンが聞くとエヴァはぷいっとそっぽを向いてお酒を一気に飲み干した。

そんなエヴァを見ながらヴァンはあぁ、キティのご機嫌取りがこれから大変そうだ。と思っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-12ページ-

 

 

 

あとがき

 

今回書いてみての感想というか反省というか。

この話急いで書いていたせいであとになればなるほど息切れをしているように感じました。

後で読み直して修正しなさいよ!!って感じですが。何故か読み直す事が出来ないんですよねぇ・・・・・・恥ずかしくて?

まぁ、後々修正していきたいとは思っていますけれどもね。

 

実際はもっとのんびり書いていきたいとは思っていたんですけど。

今日たまたまマガジンの原作の方を久しぶりに読みまして、何だこれは・・・・・・とあんまり好きな展開ではなかったんですよねぇ。

やっぱり私的には原作よりも二次創作派ですね。

そんな事もありまして、もうこれは自分の妄想を書くしかないと思いまして(笑)

 

そしてこれからナギたち原作陣が絡む物語に突入していきますが実際問題私ここらへんの話よくわからないんですよね。

だからあえて妄想ワールド全開でいきたいと思ってます。

 

 

これからも双子の吸血鬼の応援お願いします。                          帽子

説明
小説書き素人が無謀にも長編小説に挑戦
今作品は魔法先生ネギま!の二次創作です。
稚拙な文章ではございますが楽しんでお読みいただけたのなら
これ幸い。
では、「双子の吸血鬼 第11章;激動の始まり」をお楽しみください。
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