幸せの国と不幸な国
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 ある所に幸せの国と不幸の国がありました。

 

 幸せの国はとても恵まれていて、太陽は温かく、大気と水は澄み渡り、食べ物は美味しくて、犯罪なんて大ニュースになるぐらい平和で、国民は穏やかに暮らしていました。

 

 不幸の国は荒れきった大地と痩せた作物、風がとても冷たく、犯罪なんて日常茶飯事。国民は日々生きる事に疲れながらも、懸命に生きていました。

 

 幸せの国が幸せになったのは、王様が賢者だったからです。

 神様のような知恵を持った王様は、次々と民に素晴らしい恵みをもたらし、素晴らしい統治により国民一人一人が分け隔てなく暮らせるよう、日夜努力していました。

 

 不幸の国が不幸になったのは、王様が悪者だったからです。

 悪者は悪知恵がよく働き、あっという間に国のトップになり王様として君臨すると、自分だけは贅沢三昧、逆らう者は反逆者として処刑していきました。

 そんな国が未だに存続できているのは、やはり悪知恵のおかげでした。

 悪者はテレビや新聞を乗っ取り、自分達の国はとても清らかで、不幸なのは幸せの国が幸せを奪っているからだと教えました。そして警察や軍隊など、力を持つ者は側近として贅沢をさせ、逆らわないようにしました。

 

 しかしいよいよ不幸の国も崩壊寸前となりました。

 不幸の国の経済はとっくに破綻しており、物や人を売ったり、犯罪で稼いでいるのも限界になったからです。これ以上やればいよいよ国民の目も欺けなくなる、悪者の勘が外れたことはありません。

 悪者は側近に命じて、ある計画を進めることにしました。

 

 悪者は自分の長男、長女、次男、を呼び出しました。

 彼らは悪者によく似ていてとても頭が良く、三人でまとまって悪知恵を働かせれば父親ですら超えられると言われる程でした。

 

「長男や、おまえにはカリスマがある。このボロ切れをまとって幸せの国に行きなさい」

 長男はそれまで来ていた綺麗な服を脱ぎ捨てボロ切れをまとうと、幸せの国に向かいました。

 

「長女や、おまえには美貌と美声がある。この異国の綺麗な服を着て行きなさい」

 長女が服を着ると、まるで遠い異国のお姫様のようでした。

 

「次男や、おまえにはペテン師の才能がある。この偽造証明書と服とお金と持っていきなさい」

 次男はそれらを持って行きました。

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 長男は幸せの国に辿り着くと、人々の前で乞食を始めました。

 幸せの国の人々は皆優しく、長男の目の前にはあっという間にお金が集まってきました。

 しかし長男は金に目もくれず、金をやる人々をじっと見つめました。

 人々は不思議に思い、

「どうしたのですか? 何か言いたいことでもあるのですか?」

 尋ねられた長男は、まるで老人のような語り口ででたらめを話し始めました。

 それは幸せの国での幸せな生き方を遠回しに批判するもので、しかし巧みに甘い言葉の中に隠されたそれは、人々の中に深く染み込んでいったのです。

 次の日には、前より多くの人々が集まりました。

「どうしたのですか皆さん、このような乞食の所へ」

「いやいやご謙遜をなさらなくても。我々は真実に目覚めたのです、貴方様の教えで」

 あとは簡単でした。ハツカネズミが子供を生むより多くの人々が長男の下へ集い、やがて彼らは長男の教えを真実の言葉とする宗教を名乗るようになりました。

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 長女は聡明な頭を持っていて、幸せの国の言葉も淀みなく話すことが出来ます。

 しかしわざと不慣れな少女のフリをして、あるテレビ局にかけこみました。

 テレビ局の偉い人は、長女の美貌を見ると度肝を抜かれ、彼女を雇うことにしました。

 テレビ局が全面的にプロデュースをした結果、長女は歌姫として幸せの国をあっという間に熱狂の渦に巻き込みました。

 こんな人気者を他のマスコミが逃す手はありません。なにしろ彼女の写真が一枚あれば、新聞が飛ぶように売れ、視聴率は鰻登りです。彼女はやがて雑談として、不幸の国がとても素晴らしく、幸せの国がとても怠惰だと言うようになりました。彼女の言うことを怪訝に思った人々もいましたが、マスコミの偉い人はお金儲けばかりに目が眩み、さらに、彼女に貢ぐことで物に出来るかも知れないと考えていました。

 やがて長女は自分がプロデュースするようになり、彼女は自分の言うことに従う人々を増やし、そうした人々を積極的に人気者として取り上げました。本当は人気が無くても、サクラを集めたり関係者にグッズを買わせたりして、人気者として売り上げさせるのです。そうした事態を本当は批判する立場のマスコミは、長女の美貌と自分達の金に屈するばかりではなく、やがて彼女の諭す考え方に心酔するようになっていきました。

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 次男は偽造証明書で難なく幸せの国の国民になりすましました。

 次男は幸せの国で一番の大学に入ると、サークルを立ち上げました。

 サークルは政治を研究するというとても真面目な物で、他の学生達は試しにと入っていきました。次男はそうして入った人達を言葉巧みに洗脳し、洗脳された人々はさらに他の人々を誘うようになり、どんどんサークルの人数は増え、やがて大学の域を超えて一般市民も入る政治団体となりました。

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 すべてのタイミングが揃い、長男、長女、次男は行動を開始しました。

 

 長男と長女が仕込んだ思想の種を、ここで二人が一気に煽りました。

 幸せの国がとてもダメで、不幸の国がとても素晴らしいと、信者達は各地で広報活動を行い、長女は自分のシンパやマスコミで大々的に取り上げさせ、あたかも国民のほとんどが賛同しているようにあおり立て、世論を形成する中立の立場にいた人々をどんどん洗脳していきました。

 そして次男はその風に乗るようにさっと登場し、まるで救世主か英雄のように人々を率い始めました。

 

 この事態に驚いた政治家達は王様にどうするべきか相談しました。

 王様はこの裏に不幸の国があると見抜き、早速各種対策を行うことにしたのです。

 しかし時は王様が思ったより早く進んでいました。

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 不幸の国がある日、報道しました。

 それは幸せの国から攻撃を受けたというもので、幸せの国の悪い政治家が仕組んだ卑劣な行為だと非難しました。

 幸せの国では当然これを大々的に報道し、率先して政治家達を糾弾しました。

 このままでは暴動になってしまうか殺されてしまうと考えた政治家達は次々と辞職していき、やがて選挙が行われました。

 次男はこれに自身を初めとする候補者を大量に送りつけ、圧勝しました。

 国民はこれでこの国がようやく変わると、とても喜びました。

 

 やがて次男は、王様を非難し始めました。

 幸せの国では王様があまりにも有能だったため、王様がたくさんの権力を持っていました。

 次男はこれを独裁だと非難して、王様からどんどん力を奪っていきました。

 

 王様の発言力が無くなり、権力も無くなってしまえばあとは簡単でした。

 次男は平和な国を訴え、幸せの国の軍隊や警察などの力を解体しました。国民はとても素晴らしい事だと喝采し、次男はますます偉くなり、まるで神様のように扱われました。

 

 やがて次男は不幸の国にたくさんの援助をするようになりました。

 これまで幸せの国は不幸の国から幸せを奪っていたと次男が言うと、国民は皆涙を流し不幸の国にたくさんの援助をし、中にはお詫びのために不幸の国へ行く人々もいました。彼らは不幸の国で本当に不幸な民に会わされることはなく、映画のセットのように作られた町を巡り、人々から歓待され。そうして帰ってきた人々は不幸の国が本当に楽園に天使がいるようだと伝えました。

 

 王様は何も出来ませんでした。

 自分が何かを言っても、最早聞いてくれる人々も、そもそも聞かせるスピーカーも無かったのです。

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 やがて不幸の国が豊かになってくると、幸せの国が今度はどんどん貧乏になっていきました。

 次男はここで、不幸の国に占領されてしまおうと言いました。

 国民は最初、とても驚きました。しかし素晴らしく天国のような不幸の国の姿と、どんどん苦しくなっていく自分達の生活を見て、やがて納得していきました。

 

 こうして幸せの国に不幸の国の軍隊がやってきて、幸せの国は占領されました。

 しかし人々の生活は、むしろ苦しくなっていくばかりでした。

 ここで次男は言いました。

「王様が何もしてくれないからこうなったのだ」

 人々は王様のことを久々に思い出し、そして怒りました。

 それまでの恩も忘れて怒りました。

 王様は投票により追放されることになり、遠くの島へ流されました。死刑にするという話もありましたが、元幸せの国の国民達は、さすがにそれは可哀想だとして、追放にしたのです。

 

 こうして名実ともに滅亡した幸せの国は、名実ともに不幸の国になりました。

 悪者の一族はより豊かな暮らしを手に入れ、人々は皆、不幸になりました。

 

 一方、追放された王様は嘆きながらも知恵がとても働く人でした。

 こうして嘆いていても仕方が無いと、流された島を探検し始めました。

 王様はやがて、原住民の人と出会い、彼らと仲良くなりました。

 そして王様は彼らに知恵を授け……

 

 おわり

説明
駄文。政治成分あり。
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タグ
駄文

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