真・恋姫†無双異伝 天魔の章 第二章 黒の猟兵団 第二話 |
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5 さっそく一騒動
黒の猟兵団が軍事顧問団として董卓軍に身を置いてから、早いものでもう1週間が経った。
その間、団員達は思い思いに羽を伸ばしつつ、代わる代わる董卓軍の兵士達に稽古をつけたり、書類仕事が出来る者は文官の仕事を手伝ったり、また新人文官の育成を行ったりと、充実した日々を過ごしていた。
おかげでこの一週間、傍目にはそれほどではないものの、依然と比べれば董卓軍将兵の練度は急速に向上し、また文官の質も劇的とまではいかないものの、大幅な質の向上が見られ始めていた。
さらに、一刀は部下達と共に、董卓軍の組織改編にも手を貸していた。
政治に新しい風を送り込むためにと、有力豪族や商家はもちろん、民間からも優秀な人材を募って教育しており、また、いったん作業を全て中断させてまで、人員の配置換えや、机の大型化や書棚の配置換えと言った部屋の模様替え、さらには一室に収まる文官の数の削減等によって文官達の仕事の効率化を図ると同時に、新兵訓練や街の警備体制の強化及び改善、さらにはそう言った警邏関連の仕事を統括する新組織の設立など、忙しく働いていた。
そのおかげで、特にこの三日間ほどは、以前では考えられなかったほどに各方面の作業が効率化され、作業停滞の遅れを取り戻すどころか、逆に早くも追い抜かんばかりにまで達しつつあった。
そんなある日、一刀は猟兵団副長の沖田宗平と、参謀長高杉信三の二人と連れ立ち、天水の街を散策していた。余計な厄介ごとを避けるため、現代のジャージとランニングを着込んだ上から、詠に手配してもらったこの時代の庶民の服装を纏っている。
宗平:「おっちゃん!麻婆豆腐と白ご飯頂戴!」
信三:「ならば自分はラーメンと黄酒をいただこう」
一刀:「んじゃこっちは炒飯と点心と緑茶ください」
店員:「へいッ!少々お待ちくだせぇ!」
彼らは今、散策の途中で見つけた食堂にいた。
日本では大衆食堂の部類に入るだろうその店は、構えは少々みすぼらしくとも、店の前にも美味しそうな匂いが漂っている。
食い気一点張りの宗平が匂いにつられて入店したため、ほかの二人もやむを得ず店に入ったのだが、思いのほか落ち着いた雰囲気でゆとりのある店内だったため、折角だからと言うことで少し早目の昼食をとることにしたのである。
やがて、三人がそれぞれ注文した料理が運ばれてきた。
宗平:「おぉッいい匂いだ!」
信三:「ほぅ、確かにな・・・」
一刀:「ふむ。大衆食堂と言うからどれほどのものかと思っていたが、なかなかどうして」
料理を見た三人は三者三様の反応を示した。
宗平の注文した麻婆豆腐は、盛り付けは雑だが、唐辛子特有の食欲をそそる刺激臭を漂わせていた。食べてみるとこれがなかなかご飯に絡んで、言葉に出来ない旨さを生み出す。残念なところと言えば、辛さの割に餡が水分過多気味でとろみが物足りないと言ったことくらいであろう。
信三の注文した拉麺(ラーメン)はと言うと、チャーシューが少し薄い気がするが、メンマは通常の1・3倍ほど入っており、半切りにした煮卵が二つ入っている。黄身がとろっとしていて、宗平が今にも横取りしそうになっているのを視線と左腕で牽制しながら、これまた度がきつい(酒好きの信三にはこれでもまだ物足りない)が、よい風味の黄酒をお供に麺を啜っている。ただ、茹ですぎたのか粉が悪いのか、麺は少しべちょっとしていて、小麦粉の味がとてもよくわかる仕様になっていた。
そして、一刀の注文した炒飯と点心は、残念ながら油が悪かったのだろう。炒飯は正直言ってご飯粒とは思えないほど激しく光沢を放っているし、点心の方は蒸しすぎて皮はべちょべちょ、味もやや薄い。
だが、不思議なことに旨い。影の国随一の腕前を持つ綾崎ハヤテや鳴海歩らの料理で舌が庶民より遥かに肥えている一刀からしても、大衆食堂と言うレベルにしては上出来と言う評価を下せるほどにいい出来だった。
一刀:「ふむ、まだまだ改良の余地のありそうな料理だな。味の方は悪くないが、欲を言えばもう少し濃い味の方が俺は好きだな」
そう言いながら一刀は何かを考え込んでいる。しっかりと料理は口に運びつつも、彼は内心、信じられないことを計画しているのだ。
信三:「?指揮官、どうなさいましたか?」
突然独り言を言いながら考え込み始めた上官を不審に思い、信三がそう声をかけた。宗平の方は無心に麻婆豆腐を丼風にして豪快に掻き込んでいるが。
一刀:「・・・」
信三:「・・・指揮官?」
一刀:「よし、決めたぞ!」
信三:「何をです?」
突然意気込んで猛然と飯をかっ込み始めた上官に呆気にとられつつ、信三はそう問うた。
一刀:「後で言うよ。まぁいいから早く食え。まだ街見終わってないだから」
信三:「はぁ・・・わかりました」
渋々と言った感じで、信三は食事を再開した。
ちなみにその間宗平は、青椒肉絲(チンジャオロースー)と棒棒鶏(バンバンジー)を特盛で、同じく特盛ご飯を添えて追加注文していた。
昼食を終えた一刀らは街巡りを再開した。
宗平:「ふぅ〜食った食ったッ!」
信三:「食った食ったではないわ!馬鹿者ッ!結局あの後火鍋やら肉まんやら山ほど追加注文しおって。おかげで懐が真冬の北海道並に冷え切ってしもうたわ!!」
たらふく平らげてご満悦の宗平とは対照に、三人の財布を預かる信三の顔色は優れない。先程の食費だけで、今回彼らが持ってきた軍資金の7割は飛んで行ったのだ。これがもし大衆食堂ではなくちょっとした高級料亭だったら・・・。
と、そんな不穏な妄想は捨て置いて、三人は和気藹々(?)と盛り上がりながら、いつしか薄暗い路地裏に来ていた。
一刀:「さて信三。確かこの辺だったよな」
声を潜めて一刀は言った。
信三:「ええ。確かに出そうな感じはひしひしとしますね」
信三も低めの声で答えるが、そう言いつつ三人は油断なく周囲の様子を窺っている。
宗平も、先程までの気の抜けた表情は何処へやら、黒の猟兵団副長の肩書に恥じぬ凄味のある武将の顔になっていた。
宗平:「出そうっていうか、もうすぐそこまで来てるみたいではあるけどね」
そう彼が言い終わらないうちに、三人を取り囲むように数人の屈強な男達が現れた。
男1:「おぅ兄ちゃん、随分といい恰好してるじゃねぇか」
一刀達の前に現れた集団の先頭に立っている男が、下卑た笑みを浮かべながら意地が悪そうに言った。周囲の男達も似たような顔をしている。
男2:「ところで、ここいらじゃ、この路地を通るときは俺様たちに通行料を払わなきゃならねぇことになってるんだよなぁ」
今度は背後の集団の先頭の男が言った。脅しのつもりだろうか、手には匕首のような短い刃物を持っている。
男1:「ま、そういうわけだ。死にたくなかったら身包み全部置いて消えな」
そう言うと先程の男も短刀を構え、一刀らに切っ先を向けてそういった。
いや、ほかの男どももみな短刀を構え、いつでも襲い掛かれる体勢をとっている。
一刀:「・・・はぁ」
それを見た一刀は、心底憐れむように溜息を吐いた。後ろの二人もため息こそつかないが、痛いものを見る目で彼らを見ている。
それと同時に、いち早い警備専門部隊の稼働開始の必要性も一層強く感じていた。正規軍が警備を行っているとはいえ、これほどの人数が裏で犯罪を働いているのを取り締まれていないということは、非常に大きな問題だ。
男1:「?どうした、ビビったか?」
一刀:「いんや、ただ、どこに行ってもお前らみたいな屑はいるんだなぁ、と思ってさ」
男1:「・・・んだとゴラ」
そう言うと男は急に凄むように歯を剥き出しながら一刀を睨み付けるが、それを見た一刀は一層痛ましげに溜息を吐くと、命じた。
一刀:「はぁ・・・もういいや、話す価値なさそうだし。信三、宗平、遠慮はいらん。一瞬で片をつけろ」
信三&宗平:「「承知!」」
そう言うと二人は、一斉に身をひるがえし、後方の集団にかかっていった。
男2:「アンだこらぁ!てめぇらが俺らに敵うとでも思って『おせぇよデカブツ』ぐびゃあああ!!」
男3:「なっ、兄貴『よそ見をしている暇があるのか?』何ぃげばらあああッ!!?」
最初に声を張り上げた男は宗平の手刀平突きで顔のど真ん中を貫かれて悲鳴を上げのたうった。それに気を取られた男は、信三の中段正拳突きで一撃で撃沈された。
いともあっさり二人が陥ちた様を呆然と見ていた残りの男達も、勢いそのままに二人が自分達に向かってくるのを見て慌てて身構えるが、黒の猟兵団副長と、文武両道の参謀長にいいようにあしらわれて瞬く間にその数を減らしていく。
一方、後ろで一方的な撲闘劇が繰り広げられている頃、前方の集団と対峙している一刀も、行動に移ろうとしていた。
男1:「ちぃッ役立たずどもめがッ!」
眼前の惨状を目にして、頭目の男が歯軋りしながら唸る。
一刀:「安心しなよ。そう遠くないうちに、君らもその役立たずの仲間入りをすることになるんだからさ」
頭目:「あ゛ぁ゛ッ!?調子こいてんじゃねぇぞガキがぁッ!」
そう言いながら一刀に向かって、総勢10人ほどのゴロツキどもは突進していく。
だが、全く避けようという素振りを見せない一刀を見て、手下の男達は勝利を確信するが頭目の男だけはわずかな不信感を抱いていた。
そして、その思いは時を置かず実現する。なぜならば、気づいた時には一刀は目の前から消えていたからだ。
一刀:「無様だな。身の程を弁えろ下郎」
そして、何故か背後から聞こえた一刀の声に驚愕しながら振り向いた彼が見たものは、棒立ちのままで右手を水平に横に凪いだようないて立ちのまま静止する一刀と、ほぼ同時に側頭部や頭頂部などを凹ませながら地に倒れ伏してゆく手下達の姿だった。
頭目:「ひっひぃぃッ!!?」
一瞬だったが、あまりにも無残なその光景に、頭目の男は思わずへっぴり腰で後ずさる。
だが。
信三:「これ。後ろに我らがいることを忘れたか?」
その声にハッとして振り返ると、こちらも10人ほどの手下を撃破した二人が、薄笑いを浮かべながら立ち塞がっていた。
頭目:「ヒッすすすっすまなかった!もうあんたらに声は掛けねぇ!!だから、だから頼む!見逃してくれぇ!!」
自分に勝ち目がないことを悟った頭目は、そういって地に頭を擦り付けて、顔面を涙と鼻水と脂汗でぐちゃぐちゃにしながら謝った。
宗平:「別にいいよ」
頭目:「ほっ本当かッ!?」
宗平:「うん、この一発で勘弁したげる」
頭目:「は?『ボグッ!!』グハァ・・・ァ」
一瞬喜びに目を輝かせた頭目だったが、その直後に宗平から放たれた腹への一撃で泡を吹いて倒れ伏した。
信三:「宗平よ。指揮官の見せ場を問答無用で掻っ攫うな」
あまりの手の早さに一瞬呆然とした信三は、我に返ると宗平を窘めた。
一刀:「いいよ信三。むしろ手間が減って助かった」
信三:「はッあ、いやしかし・・・」
しかし、一刀にそう言われ、なおも何か反論しそうになるが、適当な言葉が浮かばずに彼は閉口した。
一刀:「ま、とりあえずこいつらはまとめて憲兵に引き渡そう」
宗平:「しかしお頭、そうはいっても縄がありませんぜ?」
一刀:「そこはほら、スルチンの鎖でも引っ掛けときゃ代わりにならないか?」
宗平:「おぉ、そいつぁ名案ですね!んじゃさっそく掛けまさぁ!」
言うが早いか、彼はそういって手近なゴロツキに片端から鎖を巻きつけて縛り上げていく。
そんな彼の様子に軽く呆れながらも、信三も同じように袖の中から鎖を取り出してほかのゴロツキを縛り上げる。
やがて、三人はすべてのゴロツキを縛り終え、大通りを堂々としょっ引きながら城門前で無事憲兵への引き渡しを終えた。
その際、鎖は私物と言うことで返却してもらったが。
一刀:「さて、捕り物も終えたし、また歩き回るか」
宗平:「へ〜い!俺今度はあの酒屋行きたい!」
信三:「お前は食う以外にやることないのかッ!?」
一刀:「まぁまぁ、いざとなりゃ城につけときゃいいんだし、気にするなよ信三」
信三:「あなたまで・・・もぅ、後でどうなっても知りませんぞ?」
そう言って頭を抱える信三を引っ張って、三人は再び天水の街へと繰り出した。
この世界に来てから常に気を張り続けていた彼らに、ようやく平穏な時間が訪れたのである。
余談だがこの後、宗平が行く先々で飲み食いしまくり、城への請求がとんでもない額に膨れ上がり、三人が(信三は巻き添え)詠によって城中追い回されるという事件があったそうな。
あとがき
はい、というわけで、真・恋姫†無双異伝 天魔の章 最新話をお送りしました。
冒頭でも述べましたが、書けば書くほど内容が酷くなっていっている気がしますが、ある程度進めば少しはマシになると思いますので、これからも変わらずご支援くださると嬉しいです。
ただ、やはり自分は文章を考えるのが苦手なのと表現のボキャブラリーが少ないこと、さらに、最近は風邪も加わって苦しんでいるので、次話の投稿もまたかなり時間がかかるものと思われます。
ですが、何とか完結には持っていきたいと考えておりますので、何卒応援のほど、よろしくお願いします。
あと、アドバイスなどもいただけるなら幸いです。
では、今回はこの辺で失礼します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
説明 | ||
懲りずにやってきました。海平?と申す者です。 最近、他の作者様方の作品を見て勉強中と言いましたが、どうも書けば書くほど質が落ちて行っている気がしています。 なので、こんな駄作でも読んで下さるという方は、先へお進みください。 原作キャラの崩壊が多くなると思われますので、原作のイメージを破壊されたくない、という方などは戻るボタンをクリックされることを推奨します。 では、最新話をどうぞ。 |
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