Sisiter Horn(仮)
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Sister Horn

 

玄関のドアを開けると、海の匂いがした。

「ただいま」

靴と一緒に靴下を脱いで家に上がる。

打ちっ放しのコンクリートは微かに帯びた熱で足の裏をくすぐる。

僕らがまだ小さかった頃に敷き詰められていたプラスチックの敷物の分だけ低くなった床に、ところどころ水たまりが出来ている。

うちの家は、変だ。

「プールみたいですね」

来客はみんなそういう。

その反応のあながち間違ってはいない。

リビングへと続くドアを開けると、海の匂いは一層濃くなったように感じる。

ドアから一歩踏み出せば、そこは水だ。

丁寧に塩素を抜いた水に、比重を上げるための塩が混ぜてある。

海の匂いがするのはそのせいだ。

その巨大な水槽の中にいるのは―――

「あー、おかえりなさい〜」

真っ白な髪を水に濡らしたまま、陸を歩くよりも早く足下へとやってくる。

「姉さん……また早退したの?」

「だってー、午後は陸上だけだったんだもん。無理だよ〜」

水中にいるからといって、人間の足がないわけじゃない。現に毎朝、僕と一緒に学校へと通っている。

「見学してればいいじゃないか」

「やだよ〜……だってほら、今日は重力がいつもよりひどくない?」

「……ない」

「つらかったんだもん! しょーがないじゃない!」

「そこにあるふたば書房の紙袋は?」

「あー、えーと……」

それに、水中にも関わらず、眼鏡をかけたままだ。

「そうえば、今日は新刊発売日だったっけ?」

「あうう……」

水槽の真ん中にある、浮きの上には、開いたままの本が置いてあった。

「だってはやく読みたかったんだも〜ん」

姉さんはぐるんと仰向けに倒れる。

「うわっ、ちょ……!」

ざばっ! っと大きな飛沫が僕の裾を濡らした

「あはは、ごめんごめん」

姉さんは悪びれた様子もなく、首を左右に巡らせる。

その度に、大きな角が水面を揺らし、僕の足を濡らした。

「ほらほら、もうズボンぬれちゃったんだしいいでしょ? 入ってきなよ〜」

角。そう。僕の姉さんには角がある。

「……着替えるから良い」

子供じみた挑発をする僕の姉、『なー』には大きな角がある。

頭蓋内を貫通するかたちで生えた奥歯が一対、額よりやや上から天を仰ぐように突き出している。

内部は空洞で、高度な感覚器官であるらしいその角は、なー姉さんが現生人類ではない証拠だった。

「もしかして、怒ってる?」

「怒ってないよ。呆れてるだけ」

「ぶー、弟のくせに生意気な〜」

僕が産まれた時にはすでにこの家の長女におさまっている彼女が、なぜただ一人社会にいるのかは謎のままだ。

だが、なー姉さんが僕の姉であることには変わりがない。

「ならば、こうしてやる〜たいだるううぃぶ〜!」

激しくヘッドバンギングをするなー姉さん。

「ちょ、姉さん?」

「ふはは〜降参しろ〜!」

なー姉さんは角を攪拌棒代わりにして、大きくかき混ぜる。

「いや、そんなことすると……」

「ふはは命乞いか〜!」

ざばざばと泡立つ水面。その浪は水槽全体に広がって。

「いや、あれ……」

僕の視線の先で、浮きが激しく上下に揺れている。

「ん〜? あ、あああ!」

僕らが見ている前で浮きの上に乗った高そうなハードカバーが水中に没するのと―――

「いやあああああああああああ!! まだ最初しかよんでないのに〜〜!」

リビングに姉さんの絶叫が響くのはほぼ同時だった。

 

説明
エロいなにかのパイロット版。ゲームにするかなんにするか。
角の生えてるおねーちゃんといちゃいちゃするだけのお話し。
キャラ原案は明音先生
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