【黒子のバスケ】夕日の照らす教室で【二次創作】
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「日向君……」

 自分の名を口にする相田リコの様子に、日向順平は胸を高鳴らせた。

 特別綺麗というわけでもなく、高校生女子としては男勝りの面もあって女子に対するトキメキなど普段は感じない。だからこそ、今のようにしおらしい態度で接してくる普段とのギャップに惑わされているだけだと頭を振る。

 時刻は夕刻。部活もテスト期間のため休みでしばらくは学生の本分の一つである勉強を頑張る時期。他の仲間も早々に図書館や視聴覚室など勉強場所を確保している。そんな中、日向は自分の教室でリコに捕まっていた。

「あの、あのね……こんな時だから言うんだけど」

 リコは制服の腹部付近で両掌を合わせ、もじもじとしている。彼女にしても今回の用事というのは言うために覚悟がいるのだろう。夕日の角度でリコの顔は赤らみ、瞳も潤んでいるように見える。

(……でも、ここまで何の期待も感じないっていうのはもうアレだよな)

 このリコの様子を、おそらく何の面識も無い男子ならば愛の告白とでも捉えただろう。だがそうならないことを、誰よりも日向は知っている。付き合いが長いからこそ分かるのか、普段の様子を知っているからなのか自分でも分かっていないが。

「早く言えよ。俺だって勉強したいんだ。眼鏡だから勉強出来るとか抜かすアホがいるからな」

「それ、火神君でしょ。今回も頑張ってるでしょうね」

 バスケしか出来ない後輩の話が出てリコは笑う。場の雰囲気が和み、日向もようやく肩の力を抜いた。

(って、俺もなんだかんだで意識してたのかもな)

「バカガミはいいよ。なんだよ用事って」

「うん。日本史教えて」

 さらりと言うほうがリコらしいと日向は改めて思った。

 日向は自分の席に。リコは目の前の席に体を逆向きに座る。今回のテスト範囲の初めとなるページを開いて日向は言う。

「でも、学年二位のお前が俺に聞くか?」

「その学年二位から一位に這い上がるために必要なのよ。この前、一位との差は日本史の点数だったんだから。二問分」

「だアホ。お前、俺は戦国武将好きなだけでその二問を補えるとはおもえないだろ」

「可能性は何でも試す。無理なら無理で別を考えるだけよ」

 その言葉を最後に、二人は勉強に入る。日向は戦国武将について熱く語り、リコは熱弁が続きそうになったら話を打ち切り、次を促す。それに文句を言いつつも、次の話に進む日向。

 時間が経つにつれて落ちていく夕日の中、橙色が教室の隅に追いやられたところで会話が止まる。

「っと。そろそろ帰ろうかな」

 腕時計に目をやって、リコは鞄に自分のノートを入れる。そこには日向の薀蓄が丁寧にまとめられている。まとめる様子を見ていた日向は感嘆の息を漏らす。

「さすがだな。相変わらずすげー。役に立ったか?」

「んー。役に立つかは分からないけど、良かったわよ」

 何が良かったかを聞き返す前にリコは席を立って離れていく。同じ体勢でいたことで固まった背中の筋肉を伸ばしてほぐす。唸っている間に日向へと顔を向けて、呟くように言った。

「たまには、こんな感じで勉強するのも、良かったわよ」

 夜の黒に落ちようとしている教室。

 その中で、リコの頬は少しだけ赤く染まっているように、日向には見えた。

 

説明
黒子のバスケ二次創作。青春編その1
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ほっこり、和ませていただきました(о´∀`о)(armeria)
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黒子のバスケ 夕焼け 青春 教室 日向順平 相田リコ 

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