GROW4 第一章 反則なしの殺戮ショー(ノットクレルマグルタ・ベリックジェノザイド) |
1
本選第一回戦、第一試合。
出雲阿国業平(今井1年)VS黒雲紅葉(中尊寺学院二年)
本選の巨大アリーナでの第一試合の面子である。
中尊寺学院といえば、シグマーさんの所属する学校である。
連れてきた6人は、すべて俺の親父クラスらしい・・・
その一人、黒雲紅葉。どんな実力なのだろうか。そしてそれに対抗する出雲阿国業平の
実力とはいったい・・・
周りのフィールドが変化する。フィールドの選択権は主催者の気まぐれらしいのだが、
この大会の旧主催者であるエイミーさんではなく、現最高取締役会長の平泉ってじいさんがやるらしい。
現在のフィールドは巨大な岩が立ち並ぶ岩のフィールドといったところか・・・
その中で向き合う二人の距離は5m程だ。
「本選第一試合、試合開始っ!」
審判の合図がフィールド全体に響き渡る。
「暗黒の帳(とばり)よ来たれ、黒き紅葉(こうよう)咲き乱れん」
何かを唱える紅葉。すると紅葉の周りに巨大な木々が立ち並び、黒い落葉を永遠と降らせ始める。
黒い着物に身を包み、和紙で造られた漆黒の紅葉模様の傘をさしているその様は、まさに芸術といえる。
対して業平も動こうとするが、なぜか身動きが取れないのか、あたふたしている・・・
「ふふふ、せっかくのご登場申し訳ないが、既にこの空間の支配権はわたしのものよな。
五月雨五町(さみだれごちょう)」
手を業平に翳(かざ)す紅葉。なにかが業平を襲い、業平が血だらけになった。
「ほう、あれをくらってまだ立ってるのか。武道派閥とは無駄に頑丈よな・・・」
シュラッ
「なんだと?」
一瞬消えたかとおもわれた紅葉が、業平の前に姿を現す。
「くっ、罪戦(ざいぜん)、怒号(どごう)の顕(あらわ)れ!」
ぐぐっ
「無駄な抵抗よな・・・
葉松雲月(はまつうんげつ)」
「ぐぁぁぁぁぁっ」
業平の攻撃をあっさりと跳ね返す強力ななにか。それが何なのかまったく理解できないまま試合は
終わってしまった。
「わたしの支配の及ぶこの空間において、貴様程度の実力者など、一端(いっぱし)の技を使う
価値もない・・・」
ドサァァァ
「勝者、黒雲紅葉」
「こんなのがこの学校にまだ6人もいるのか・・・」
「怖気づいたかおにーさん。紅葉のあの術の正体が分からないとまず勝てないだろうな。
まっ、反対側のおにーさんにはあまり関係ないんじゃないかいww」
「そうかもしれないが、おれもけっこう早い段階で当たりそうなんだよな、中尊寺と・・・」
なぜかシードという俺だが、一回戦で上がって来たどちらかとなんだが・・・
「天馬のやつか・・・
あいつが上がって来た場合は用人することだ・・・」
「分かっていたさ、本選が異常なことくらい・・・」
「ははは、おにーさんは覚悟が決まったというよりは吹っ切れたみたいだね。」
「笑うなよまったく。エイミーさんは大丈夫なの?」
「さあな・・・」
そう言ったエイミーさんの目線は、遠くのほうを見ていた。
(この本選に安全な戦いなんてないのだ)
2
一試合目はほとんどフィールドの意味をなさなかったせいか、フィールドがそのままになって
いる。
二試合目は落葉手鞠(聖1)VS辰頭傷英(冷門2)だ。
聖の人、サッカーウェアみたいな半袖短パンな格好の、随分とまあボーイッシュな感じだな。
対して冷門の人は頭が辰だーーーーーーーーーーーーwww
見かけで聖(勝手な決め付けだが)を上回るとは何てヤロウだ・・・
いやいや頭が辰って普段なに食べてんだよww
「辰の旦那ぁ、悪いけど一分も遊んであげられないんだよ」
そう言う手鞠。一分以内での勝利宣言に辰頭は返す。
「べるんべるん、わいの身体に傷を負わせるのは不可能だぎゃーー、ぎゃーボーイっ!!」
「う、うぜーーー。見かけ以上にうぜぇよこいつww」
「ボーイ、なに引いてんだぎゃ。ぐべべっべべぎゃぎゃぎゃぎゃ」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
あまりの気持ち悪さに悲鳴を上げる手鞠。可愛いよ手鞠・・・
「おにーさんってあんなショタみたいな娘もストライクゾーンなんだ、へー」
「違う、違うんだよ・・・」
「何が違うか説明したらどうだい?」
「ほ、ほら、試合が始まるよ」
「・・・・・」
その無言が恐ろしいですエイミーさん・・・
「第二試合目、始め」
「ぎゃぎゃぎゃ、この頑丈な肉体は絶対に傷つかないぎゃ」
「うっとうしいから10秒で消してやんよ旦那ァっっ!手鞠(ケルトボール)」
「そんな布切れみたいな玉で、わいの身体に攻撃するとは笑止だぎゃ」
辰頭に手鞠を構える手鞠、その顔面に蹴りこんだ。
ゴシャァァァァァッ
「ぐぐぐっ、なんて威力だぎゃ・・・」
思わず数歩下がる辰頭、そこに追撃を入れる手鞠。
「今ので粉々にならないなんて、頑丈を売りにしているだけはあるね。僕の蹴りの速さは本気を
出すとね、光速の5倍まで出るんだ。しかも威力は100tだよ・・・」
ニッコリと笑っているが、黒いオーラが出てきている。
「消えろっ、光速の蹴り(オーバーライジング・クーロドアチェニック)」
ボッ
一瞬手鞠の右足が消えたかと思うと、辰頭が周りの岩を砕きながら、100mくらい吹き飛んだ。 「ぐぐぐ、まだだぎゃ・・・」
立ち上がろうとする辰頭。それに対し手鞠は手を挙げて言った。
「流聖群(りゅうせいぐん)・・・」
ドドドドドドドドドドドドドドド
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
辰頭と100m以上も離れた位置から攻撃をしたのか?
「ばかな・・・・ぎゃ・・・」
「僕の攻撃範囲はここの大きなフィールドすべてに及ぶ。どこにいても射程範囲ないさ・・・」
「勝者、落葉手鞠」
「ふふふ、肉眼では見えない連続気弾攻撃こそが流聖群さ。避けられるはずがないよ・・・」
3
一試合目も二試合目もあっさりと決まってしまう。その勝者のどちらも女子だ。
どこの女も強いんだなwww
「さっきまでの試合は実力の差が激しすぎてあっさり終わったが、今度の試合は更に速く
終わるよ・・・」
「どーゆうことだよ?」
「反則級(クレルマグルタ・クラス)レヴェルの奴が出てくる。今井の本能寺歌麻呂、奴は
相当危険な奴だ。下手をすると、対戦相手に死人が出てしまいかねない・・・」
「なんでそんな奴が・・・」
「純粋に強いからだろう・・・
それにルールなんてないこの大会だからこそだ・・・」
「そんな・・・」
「一回戦第三試合、始め」
今井高校の本能寺歌麻呂を相手取るのは、辛羅高校1年の御波奈乃だ。
「はじめるでごじゃるよ小娘、反則なしの殺戮ショー(ノットクレルマグルタ・ベリックジェノザイド)」
ズズズズ
ウエストタウンを模したレトロなフィールドが一変。肉塊や死臭が漂うどす黒い古戦場と化した。
「領域(フィールド)魔法ですか・・・
せっかくいい感じの雰囲気漂う空間でしたのに。主催者さんを冒涜するような行為です・・・」
「小娘状況が分かっておるのかのう。今から小娘は麻呂に狩られる立場なのでこじゃる」
「“この程度”で奈乃を狩る?残念ですが狩られるのはあなたですおじゃる麻呂。」
「小娘が舐めやがってぇぇぇぇぇぇっ!拘束(ギャムレイド)リングっ!!」
グオングオン
巨大なリングが奈乃の周りを取り囲むと、縮んで両腕ごと拘束する形になる。
「これで両腕が使えなくなったでごじゃる。次は足じゃ。そして動けなくなったところを・・・」
ミシミシミシミシ
ガキャァァァン・・・ゴシャァ
「おじゃぁぁっ!?鋼鉄製最高使用、インド象や熊ですら、拘束すればピクリともできない
特注品の拘束具が・・・」
歌麻呂をギラリと睨む奈乃。
「ひっ」
「やり方がキタネェんだよジジイ」
(口調が変わった?)
「こんな鈍(なまくら)細工でわたしを捉えられると思ったのか?
めでてえ頭だな。虫湧いてんじゃねぇの?」
「なめやがって小娘ぇ!麻呂の本気を見せてやるでおじゃる。
殺戮武術、コマンドサンボ」
「何かと思えばロシアのサンボに殺人技をいくつも取り込んだ、対軍人用の武術か・・・」
「分かっておるならこの怖ろしさも分かるでおじゃろう。」
「一歩足点掌(いっぽそくてんっしょう)」
歌麻呂が無駄に喋っている間に鳩尾に攻撃を叩きこむ奈乃。
「何だこの威力は・・・」
あまりの威力に顔を歪ませている歌麻呂。
「動きに無駄が多すぎる。だから簡単にわたしの侵入を許す、攻撃を受ける・・・
燗亭崩幕(らいいていほうまく)」
一端真上に足を振り上げ、そのまま地面に踵(かかと)をつけると、強力な爆風が起こり、
歌麻呂が造り出した空間が吹き飛んで無くなってしまった。
「ば、ばかなぁ?何をしたでおじゃる・・・」
「フィールド全体に圧力をかけて、張ってた魔力の塊を無理やり吹き飛ばしただけですよ(^^♪」
(もとの人格に戻ったのか?てゆうか二重人格?)
「ふざけるなでおじゃる!どんだけ莫大な魔力が必要だとおもっておるのだ」
声をでかでかと上げる歌麻呂。確かにフィールド全体に張られた魔力の幕を吹き飛ばす魔力量
なんて、人間単体では物理的には不可能だが・・・
「こんな感じでしょうかーーー」
ブァァァァァァァァッ
「なっ?なんだこのばかでかい魔力は?貴様本当に人間か?」
なんてでかい魔力なんだ。魔力だけならあの治郎さん並みだぞ・・・
「これでだいたいはんぶんくらいですよ。」
「は、半分でおじゃるか!!??」
「残念でしたね麻呂介。奈乃に当たったことを後悔しながらやれてるといいですよ・・・
正直奈乃自身、さっきまで出ていた裏人格よりも遥かに強いので気をつけて・・・」
シュッ
「なっ!」
一瞬で後ろに回り込む奈乃。歌麻呂も目で追うのがやっとのことで、身体はまったくついていけ
ない。
「一撃で沈めてあげましょう!(^^)!」
「まだでおじゃる、仙道術虚空返し慟哭(せんどうじゅつこくうがえしおうとつ)」
「富岡一の陣、(とみおかいちのじん)音罐(ねかま)」
ゴゴゴゴゴッ
「麻呂の仙道術が押し戻される」
「連動情火粉砕(れんどうじょうかふんさい)」
片手一本の突きだけで、周りの建物ごと吹き飛ぶ歌麻呂。砲撃の後のように、100mほどが
一直線に、建物がえぐり取られた形になる。
「こんな弱い攻撃でやられるなんて、本選の一回戦の歯ごたえは全然足りないですね・・・
『まったくだ・・・』」
「勝者、御波奈乃」
4
「まさかあの歌麻呂があんなにあっさりとやられるなんてね」
エイミーさんは、顎(あご)の下に手を置いて言う。
「一年生に関して情報はないの?」
「ああ。まったく分かんないよ。それに二年、三年連中もかなり様変わりしていてほとんど
分かんないよ・・・」
「つまり去年まで出てた連中を負かして来た新たな面子ということか」
「そうなるな・・・
いずれにせよ次の試合はかなり派手になるぞ・・・」
試合フィールドに入る二人を眺(なが)めて言うエイミーさん。
「三尋さんと中尊寺の一年か・・・」
親父クラスの一人、三尋さんはどう戦う?
「ついに始まるようだな・・・」
この声は・・・
「親父っ!」
「よう、ひさしぶりだなアキ。たった一か月の修行で本選に出るたぁ流石だぜ。
だが気をつけな。ここの連中はかなりやばいぞ」
「試合を見る限りはまあそうだなって感じだ」
「ははん。しっかり鍛えてやってんのかエイミー?」
「撫でるな変態っ。しっかりとやっておるわ!この大会で余裕で優勝できるほどにな」
「ほう、実に楽しみだ。アキ、大会終わったら手合わせしようぜ」
「うるさいよまったく。抱きついてくんな。それより試合が始まんぞ」
一回戦第四試合、最縁我風(中尊寺学院)VS籠山三尋(流水学院)
果たしてどんな試合になるのだろうか・・・
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