Sisiter Horn(仮) 3
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姉さんは親父の勤務先の大学の、付属学園に通う高校2年生。

白い肌に、白い髪……そして、深く蒼い瞳。

海外で拾われたから、と言うことで納得される位の身長だ。

名前を漢字で書くと、善春梛(よしはるなあ)。よく『みよしはるな』と間違えられる。

僕の名前は善春輝(てる)。よく「よしはれてる」なんていってからかわれる。

そんなこと、人の額を見ながら言う言葉じゃないだろう。まったくデリカシーがない連中だ。

……そして、同じ学園の中等部2年だ。

身長は、これから伸びる。と思う。両親を見る限り期待は薄いかもしれないけど……

成績は、ともに良好と言ってもいいはずだ。

大学で教授をやってる親父の顔に泥を塗るわけにはいかない。

お袋は教授ではないものの共同研究者で、二人とも海洋生物学が専攻だった。

その関係で、僕も自然科学にはそこそこ詳しくはなった。

なにより、姉さんのことを知るために。

「はー……乾くまでヒマだな〜」

一方、姉さんはと言うと理系には興味ほぼなし。

「前の巻読み直しちゃおっかな。ねえ?」

絵に描いたような文系、しかも文学少女だ。

その身体故、あまり外に出れなかったから……というのは関係ないだろう。

とにかく、なんでも読む。古典や神話関係はもとより、SF、ファンタジーからライトノベルまで。

あまり滑舌のよくない―――というのも水中生活前提により声帯と舌が若干短いのだ―――のに、すらすらと古典を諳んじる姿から、学園では変わり者で通っている。

まあ、変わり者扱いされているのは僕も同じだ。

けどそれには親父が大学の方で教授をやっているからって言うのもあるだろう。

僕はただ、姉さんのためにも出来ることをしっかりとやっているだけなのに。

「ね、てるくん」

『とぇ』と『てゅ』の間の『て』が耳をくすぐる。

水槽から上がってきた姉さんは気怠げに寝転がっていた。

「姉さん、行儀が悪い」

「いいじゃない。ね〜、アレおねがい」

姉さんは猫の様に頭をすりつけてきた。

ヒンヤリとした血の通わないとした角が、半乾きでぞりぞりと押し当てられる。

「いたい……いたいって……」

僕はその感触が―――好きだった。

感覚器でもあるその角は、普段は本人は髪がかかるのですら鬱陶しがっている。

よほどの事がない限りは、その角を隠そうとしない。

当然、人に触られるのはとてもいやがるのだ。

曰く「痛くはないけど歯の神経触られてる感じ」

だから、そこを憚りなく触ってくる子供は嫌いらしい。

そのせいで揉めたらしく、小学校時代は不登校だった記憶もある。

そのデリケートな部分を、姉さんは僕には委ねてくれるのだ。

この時は誰にともなく優越感に浸れる。

「しょうがないな……」

はやる気持ちを抑えて、僕は出来るだけそっと―――レコードに針をおとすように姉さんに触れた。

「ん……」

そっと、仰向けに寝転がる姉さんの角を腕で支える様に上半身を抱き起こす。

「はぁ……らくちん♪」

膝に肘をつくようにして支えるとちょうど良い角度になって、姉さんは立てた膝に本を置き、読み始めた。

僕は姉さんの額に顎を乗せて、一緒に本をのぞき込む。

まだ小さかった頃、一緒に絵本を読むために編み出した体勢だった。

一緒にのぞき込むには姉さんの角が引っかかり、当時はまだ短かった角も子供にはかなりの負担をかけていた。

「ん?」

一ページを読み終わると、姉さんは軽く首を上げる。

「うん」

僕も読み終わると、軽く頷く。

大きく動かなくても、互いのちょっとした動きは十分に伝わる。

これが、僕たちのいつものアレだった。

海水に似せた塩水の匂いに、微かに混ざる甘い匂い。

「ね、てるくん」

視線は本に向けたまま、ねえさんは囁く。

「この時間が、ずっと続けばいいのにね」

姉さんの舌足らずの声に、胸骨の裏側がくすぐったくなる。

「……ん」

腕が痺れるまでの、短くて長い時間。

僕は必死に平静を装うのだった。

説明
こっちはキャラ紹介パート。
明音先生の設定画載せておきます。
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