地球のルールブック
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 彼女はまた最初から数え始める。今度は声を出して一つひとつ確実に。

「やっぱり足りない」

 ふーむ、そうかと答えて、彼女の父親はパイプをふかした。

「逃げ出した…… ってことはないかのう」

「ニュースになるでしょ」

 娘は即答する。大体、これまで一度だって脱走なんて起きていなかったのだ。あの男が居候するまでは。

「絶対あいつに決まってるわよ。いいわ、あたしが言ってくるから」

 博士の返事を待たずに、彼女はさっさと上の階へ向かった。何となくみんなが怖がっていて遠慮して言えないみたいな空気があるのだけれど、我が家に居る以上は、最低限のルールは守ってもらわなきゃ、と彼女は思っている。

 いないって可能性もあったわね。

 ドアの前に立ってから、そのことに気づいたが、幸いなことに本日の彼は、ちゃんと自分の部屋にいた。同居してからしばらくは、ふらりとどこかに行ってしまうので、このまま帰ってこないんじゃ? と思ったものだが、最近では放浪癖は変わらなくても、拠点をここと定めたらしい。

「ちょっと! ベジータ!」

 着替え中だったらしい彼は、上半身裸のまま、じろっと彼女を見やった。足下にはぼろぼろの服がある。戻ったばかりのようだ。

「あ…… ごめん」

 ぱっと目をそらしたブルマだったが、逃げられてしまうかもと気づいて、ずかずかと部屋のなかに入っていった。とりあえず、見なきゃいいのだ。

「なんだ」

「あんた、うちのペット食べたでしょ!」

「…… 豚なら食っていない」

 ウーロンのことだ。彼女は首を大きく振った。

「あれは一応家畜じゃないし、豚じゃなくて!」

「じゃあ、猫か。猫は、さほどうまくないからいらん」

 プーアルのことだ。猫…… プーアルが知ったら、いろいろな意味でショックを受けるだろう。彼女は、またもや首を振った。

「あれは猫じゃないし…… といっても食べないでよ! あれも家畜じゃないんだから。そうじゃなくて一階で飼ってる恐竜よ」

「ああ」

 ベジータは黒いシャツをするりと着込んだ。

「旨かったぞ」

 やっぱり! 悪びれる様子もないあたり、余計に腹が立つ。彼女の注意を理解していなかったのだ。ブルマはテーブルをばんと叩き、それが予想以上に痛かったので、いたっと呟き、手をぶらぶらと振った。

「あれは父さんのペットなのよ。勝手に食べたりしないでよ」

 ベジータはソファに沈み込んで、ちらっと彼女を見た。

「面倒だな。家畜を食うのに、許可がいるのか?」

 家畜じゃないし、許可なんて出ないし! …… というのをこの男にどうわからせればいいのだろう。彼女は頭痛を覚えた。ウーロンやプーアルを食べようとしないだけ、まだマシだと解釈するべきだろうか? いや、数が多くて大きいから獲物として選んだだけなのかもしれない。根本的なところで、ズレが起きているのが問題なのだ。

 数?

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 彼女は、はっと気づいた。

「あんた、ナメック星の人たちには手を出してないでしょうね!」

 昔、悟空からピッコロ大魔王の分身がうまかったらしいと聞いたことがある。悟空自身は食べていないとはいえ、そんなことを言い出すこと自体どういう悪食だろうと思ったものだが、彼らがサイヤ人であるとわかった今なら納得できる。

 ましてや、サイヤ人の本能を失っていないベジータなら。

 彼はテレビのリモコンを取って、スイッチを押した。テレビ番組に興味を持っているというわけではなかったが、異なる惑星の文化や科学はそれなり物珍しい。

「旨いのか?」

「知らないわよ。ピッコロの分身は美味しいとか聞いたけど……」

 ふーんと、彼がまともに聞いていることに気づいて、ブルマは釘を刺した。

「ちょっと! だからって味見しないでよね」

 彼は少し考えた。残すな、という意味だろうか?

「腕一本、触手一本だって食べちゃだめよ」

 サイヤ人の扱い方を心得てきた彼女は、急いで付け加えた。彼はちっと舌を鳴らす。

 地球人たちの生活は、あれをしてはだめだ、これをしてはいけないと細かくてうるさい。ルールだらけだ。でかい恐竜は食料として優れているし、ナメック星人は単為生殖の民族だ。多少食ったからといってなんでもないだろう。また増やせばいい。

 そもそも、家のなかにこれだけの食料を確保しておいて食うなというのはおかしな話だ。それなら、何のために動物と暮らしているのか? 彼にはさっぱりわからない。

「腹が減るんだから、仕方ないだろう」

 彼らは大食いの種族だ。そのことはブルマもよく知っている。わざわざ業務用冷蔵庫まで追加してやり、金持ちとはいえ、CCのエンゲル係数が一気に跳ね上がってしまったというのに。

「ご飯のときに、ちゃんと来て食べればいいじゃない」

 彼は鼻を鳴らした。間抜けな顔をした地球人と家畜と雁首並べてか? バカバカしい。肉の生産牧場じゃあるまいし、ブザーがなったからといって餌をもらいになどいけるか。

「うるさい女だな。要は、この建物にいる動物は食わなければいいんだろう」

 煩わしくなって、ベジータは話をまとめることにした。とても大雑把に。

 ブルマはほっとして、そうそう、と頷いた。

「別に構わん。外には地球人どもがひしめいてるしな。まあ、食えんこともないだろう」

 ブルマはほとんど悲鳴に近い声で問い質した。

「あんた…… まさか地球人を食べる気? っていうか、あんた共食いするの!」

 彼は眉を顰める。失礼な女だ。

「地球人は、サイヤ人ではな……」

「そんなことわかってるわよ!」

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 ブルマは叫んだ。

「でも、ほとんど同じじゃない! 子どもだってできるのよ! 共食いみたいなもんじゃない!」

 ますます失礼な言葉に、ベジータは憮然とした。どれだけ鍛えても戦闘力が一万も行かないようなやつらと一緒にされたのではたまったものではない。彼の不機嫌を置き去りにして、ブルマは、ああ、いやだいやだ! なんでこんな野蛮なんだろう、信じられない、と騒いでいる。

 やかましい。

 帰っては来たが、これでは昼寝もできない。彼は再び出かけることにした。立ち上がった彼に目敏く気づいて、ブルマは糾弾を重ねた。

「どこ行くの」

 知るか。彼は、地名など覚えていない。

「気軽に地球を破壊しないでよね! あんた、最近南の砂漠で何かやったでしょ!」

 したような、していないような。彼は、トレーニングの内容もいちいち覚えていない。

「謎の大陥没が起きたってワイドショーで言ってたのよ? あんたでなきゃ誰なのよ」

 最初に見たときは無口な女だったのに、このうるささはどうしたことだ。いや、彼女だけではなかった。やたらと甘いものを勧めては、彼のことを“ちゃん”付けで呼ぶ彼女の母親も、どう拒絶しようと懲りずに話しかけてくる。そのしゃべり方がまたふわふわとして、どうも落ち着かない。

 少し前には、彼の服をどうするかということで、この二人の女に引っ張り回されたことを思い出し、彼はうんざりした。

 二本足で歩く珍しい豚や飛ぶ猫は、彼のことを遠巻きに見ている。小さな目には怯えがある。それが正しい。それが本来の姿だった…… なのに、肝心の家主たちには気配すら感じられないのだ。

 落ち着かないし、苛々する。

「きさまから先に食ってやろうか!」

 本気ではなかったが、脅すつもりで睨みつけた。ぎょっとした彼女は自分でぎゅっと身体を抱いて、ぶるぶると震える。

「あ…… あんた、やっぱりあたしの魅力に気づいてたのね…… この変態! いやらしいことしようったって、そうはいかないわよ!」

 もう…… なにもかもが萎えた。

 話すと疲れる。相手をせずに出ていこうと、彼は彼女を無視してドアに向かった。

「変なことしたら、孫くんに言ってやっつけてもらっちゃうんだから!」

 彼はじろりと彼女を睨みつける。目の光りにさきほどとは違うものを感じて、彼女の身体もびくりと反応した。

「ふん…… やつが生きていたら、そうするんだな」

 彼は出がけに壁をガンと殴ると、荒々しく部屋を後にした。

 ああいうところが無性にむかつく。騒々しいうえに、ずけずけと物を言う。相手の戦闘力をわかっていたら言えないはずだ。命が惜しいと思っていれば。

 細々と口うるさいのも気に入らない。どうせ破壊して出ていく星だ。今、多少豚が減ろうが、どうということはない。最終的にはみな死ぬのだから。

 彼は庭から勢いよく飛び上がり、雲と交わる高さまで上昇したところで、食事に戻ったはずだったことを思い出した。結局、何も口にしないまま出てきてしまった。

 今からCCに戻るのはバカらしい。彼は地上を見下ろした。たくさんの乗り物が行き交い、地球人たちがひしめき合っている。

 二、三人食ったところで、わかりはしない。

 が、今しがたの小言を思い出すと、その気もすっかり衰えてしまい、彼は空きっ腹を抱えたまま。北へと飛んだ。南がどうこう言っていたから、今度は北だ。そこなら海にでかい魚の一匹くらいいるだろう。

 結果として、その選択は悪くはなかった。厳しい自然は獰猛な野生を創り出し、過酷な環境は鍛える場としてもまず満足できた。

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 騒々しい女の声が一切しないのもよかった。耳をつんざく冷たい嵐の音や肌に叩きつけられる氷の粒。獰猛な動物たちの咆哮は、地球人と一緒にいるよりもよほど心地よい。

 永久に凍っているだろうと言われた土地が溶け、ゆるみ、変貌していくのを見ていると、少しだけ心が満たされた。破壊は彼の本能の一部だ。身体の奥からわき起こってくる欲求を叶えていると、彼はそこに自分自身を見いだすことができる。

 そうした生き方が、彼ら民族の宿命。

 だが、幾分か気が済んでしまうと、人と建物の多いあの街に行かねば、と彼は考えた。服がもたないということもあったが、いつカカロットが帰還するか知れない。どういう形で宇宙を渡るつもりなのか、彼には予想はつかなかったが―― 何しろ彼自身も神の力で地球にやってきたのだ―― 科学者たちのいるCCがいいアンテナであることは否定できない。

 あのふざけた髪をした女に会うのは気が進まなかったが。

 サイヤ人の女を、彼は知らない。異星人どもは自分たちと姿形が違いすぎて、女というよりも雌だった。地球に来て、随分似た外見の種族だとは思ったけれども、おそらく精神が違い過ぎているのだろう。とにかく、あの女は苦手だ。

 その苦手な女の方は、そのころ、ゴシップ紙を見て目が飛び出そうになっていた。

 はた迷惑な宇宙人が来てからというもの、怪しい超常現を真面目に報道するニュースまで確認するようになってしまった。UFOだ、怪物だ、何かの暗号だなんて話がでると、いい確率で彼の破壊活動の痕跡であったりしたからだ。

 インクも瑞々しい三流紙には、大きく“地球崩壊へのカウントダウン! 永久凍土が一夜で消失!?“とあった。犯人は言うまでもない。

「あいつー!」

 全然わかってない! わかる気もないんだ!

 それが怒りを燃え立たせる。言ってわからないなら、わかるまで言うだけよ!

 待ちかまえているのを察知したはずはないが、そういうときに限って彼の不在は長かった。その間にもゴシップは大いに盛り上がる。続報のおかげで、遠慮もせず彼が好き放題しているのが手に取るようにわかった。あまり熱心に彼女が読むので、母親には、読むご本が変わったわね、などと言われる始末だった。

 その日も怒りながら写真を眺めていると、彼女は毛色の違う記事に気づいた。取材班は、現地近くで、肉食獣の食い争った跡を発見したのだという。

 それは凄惨を極めていた。雪にどす黒く残る大量の血と、幾つもの獣の毛皮、肉の残骸…… しかし、彼らがそこに注目したのには理由があった。

 靴とシャツらしき切れ端、そして人間の骨と思われるもの……。彼女は鼻につくほど近くで紙面を読み…… それから、勢いよくテーブルに置いた。

 まさかね。

 この手の記事ではありそうな表現。仄めかして興味を惹きつけるのだ。それに、あの男がそんなことでやられるはずはない。

 そうは考えたが、次第に不安になってきた。

 怪我くらいならしないとも限らない。あんな寒い場所では傷の治りだって遅い。

 意地を張ってないで、帰ってくればいいのに。

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 そうしにくいのかも、とふと思った。振り返ってみれば、少し彼女は彼に厳しすぎたかもしれない。小さいころから侵略要員として多くの惑星に送り込まれ、平和な時間を楽しむことなんてなかっただろう。地球のルールになじめなくて当たり前だ。さらに、たったひとりのサイヤ人になってしまったかもしれないのに。

 融通利かせてあげてもよかったかも……。いやいや。そんなタイプじゃないでしょう…… でも、もしかしたら……。

 大丈夫だろうと彼女は自分に言い聞かせたけれど、罪悪感もちょっぴり感じたので、次には少し優しくしてあげてもいいかな、と思い始めていた。そう、ほんの少しなら……。

「大人しくしてるなら、ごちそうくらい出してあげてもいいわよ、うん」

 時計は夜と言っていい時間を刻んでいたが、彼女はこのまま、もうちょっとだけ待ってみようかなと思いつつ、頬杖をついた。

 自分がナメック星にいたときを思い出す。あのとき、ひとりぼっちで、怖くて寂しかった。もし、今野ベジータの立場に自分がいたら?

 自分なら、堪らない。

 もちろん、万にひとつもそんなことがあろうはずもないベジータの方は、着替えと様子を見るために、CCへの帰途へついていた。うるさい住人たちと顔を合わせたくなかったので深夜にしたのだが、居間に入ってみると、テーブルに突っ伏してブルマが寝ているのに気がついた。

 軽く食ってから部屋に行こうと考えていた彼は、急遽予定を変更して踵を返す。

「……? ベジータ?」

 悪いことは重なる。彼女は目覚め、彼を見つけてしまった。彼は軽く舌打ちをした。

「ねえ…… あんた、今回は北の方にいたでしょ?」

 やはり始まった。

「見たのよ、写真撮られてたわね。永久凍土が溶けたっていうの、あれ、あんたよね」

 また小言だ。ベジータは、放置して行ってしまおうかと一瞬考えた。が、そろそろ限界だった。余計な口がどういう結果を招くか、はっきり予告しておいた方がいい。

 いい加減にしろ! 彼は怒鳴りつけるつもりで、ぐるりと振り向く。

 そこには、青髭をつけた地球の女がいた。

「……」

 彼は、口を開けたまま停止する。額には、随分と勇ましい第二の眉毛までついている。

 …… こんな顔だったか?

「無事だったのね。その、今回のもどうかと思うけど…… あたしも言い過ぎたと思うのよね…… きつすぎたっていうか……」

 雄壮なメイクを施した彼女は視線を床で泳がせ、もじもじしながら恥ずかしそうに続けた。

「あんたの立場も考えてあげるべきだったかなあって…… つまり、うまくやりましょ、ってこ……」

 ベジータの様子がおかしい。彼女もさすがに彼の反応に気づいて、目を上げた。

「な、なによ、こっちが譲歩してるのに、そんなにびっくりすることないじゃない」

 そんなに意外だったのかと思うと、むっとした。ベジータは、いや…… と口ごもり、視線を逸らそうとして、結局彼女に戻した。

「それは、なにか…… きさまらの新しい流行か何かか?」

 はあ? と、彼女は顔に触れる。別に何も変わっていない。いつも通りの服、髪…… しかし、広げた彼女の手のひらは、指先が黒く汚れていた。

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「なにこれ」

 ブルマは慌てて鏡のある戸棚に向かう…… だが、その途中、夜を背景にしたガラス窓に自分の顔を発見した。

「いやーっ!」

 口元にべったりと黒いインクが移っている。額にも、しっかり二本の眉毛が描かれていた。はっと思い当たって、彼女はテーブルを見た。

 ゴシップ紙の一面、一部の印刷が消えていた。

「なにこれ! この変な眉! いやーっ! っていうか」

 彼女は口を押さえた。

 印刷のミス? なんでこんなにしっかりついちゃってるの!

「よだれ? なによ、もう! やだあ!」

 後の祭りではあるが、せめて二度と見られたくはない。彼女はベジータを背にして、じりじりと戸棚に移動した。ウエットティッシュを何枚も引き出し、顔をごしごしふいていると、ふっと背後の気配が緩んだ。女は嘲笑に敏感だ。

「ちょっと!」

 彼から顔が見えないように注意しつつ、そちらを窺うとすでにいない。

 やだ、口止めしなきゃ!

 ブルマはひょいと廊下に顔を出した。彼はさっさとエレベータホールの前まで移動している。

「忘れなさいよね! その、事故なんだから!」

 これまでの彼なら無視しそうなものだが、ベジータは足を止めて振り返り、とんとんと額を指差した。

「残ってるぞ、一本」

 きゃあ、と悲鳴を上げて、ブルマは引っ込んだ。

 エレベータに乗り込んだ後で、彼は腹ごしらえを忘れたことを思い出した。戻るか? と検討しはじめたところでブルマの顔と狼狽ぶりが鮮明に蘇り、ぷっと吹いてしまう。すっかり気がそがれてしまった。しばらくは大騒ぎしているだろう女と同じ部屋にいるのも煩わしい。明日で構わないだろう。

 暴露を心配したブルマだったが、冷静になってみると、誰とも会話をしないベジータなら口外の恐れはないと予測した…… が、翌朝、朝食のテーブルについた彼の姿には、ぎょっとせずにいられなかった。

「まあ、珍しい」

 驚く母親は、嬉しそうだ。

「昨夜、飯の予定が狂ったからな」

 そう言うと、彼女にちらりと視線を投げ、口の端でにやっと笑う。

 ブルマの顔は、かあっと赤くなる。

 なによ! 彼女は膨れた。人が心配してあげたり、待ってあげたりしたのに、あの言い方! もう二度と面倒なんか見てあげないんだから!

 不機嫌な娘に比べ、彼女の母親は、たくさんお食事持ってこなきゃ、と楽しそうだ。

「これで、全員揃ったわね」

 その言いぐさも、結果的にまんまと食卓につかされたのも気に入らなかったので、彼は軽く鼻を鳴らした。

 皿が並ぶと、先に手をつけようとするベジータをブルマが止めた。

「挨拶をしてからでしょ」

「また、ルールというやつか」

 うんざりした顔で彼は言う。

「ルールっていうかマナーだけど、その方が美味しいんだから」

 サイヤ人にとって味が変わろうはずもない。だが、地球のルールを知らない彼にとっても、温かな料理はずっと美味しく感じられた。

―― 少なくとも、ひとりで食べた北方熊の肉よりは。

説明
mさんのリク「ベジータの笑顔」で作って寄贈したものです。ベジータ×ブルマのラブコメ。ドラゴンボール二次、ベジブル。
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ブルマ ベジータ ベジブル ドラゴンボール 

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