習作:僕のいない日常 replay |
先輩との講習会の帰り、ヨドバシカメラに寄って母と祖母と合流することになっていた。
着いたよ、と言う旨のメールを母に送る。すぐさま四階に来て――との返信があった。
日曜日と言うこともあって人が多い。おじいさんにその子であろう男性が付き添っていたり、おばあさんが一人で洗濯機売り場を歩いていたり……生活家電売り場と言うこともあって子供の喧騒とは無縁そうでなによりだった。
しかし、二人が全く見当たらない。空気清浄器だのエアコンだのの稼働音が低く唸るように聞こえてきた。――そんな小さな不安に答えるように、ポケットの携帯が震えた。
「もしもし」
『今どこ?』
母だった。
「エアコン売り場」
『掃除機売り場に来て』
お使いイベントじゃないのだから……。ゲームの主人公になった気分だった。
掃除機売り場は丁度真反対だった。通路をカウンター待ちの列が塞いでいる。溜息が漏れた。隙間をすみませんと声をかけつつ通り、掃除機売り場にたどり着く。しかし、二人の姿はない。奥の方かと行ってみるも、やはりいない。……通路側だろうか。速足でエリアを抜けると、二人が電池の売り棚の前に立っていた。足元に大きな段ボール箱が置いてある。
「お待たせ」
声をかけると、母が顔を上げた。
「ありがとね」
箱には大きく、食器洗浄機と書かれていた。社名はパッと見わからない。
――重いよと祖母が言った。持ち上げてみる。なんというか重いと言えば重いのだが、機械独特の浮くような重さが腕にかかった。
「今って便利ねぇ」
ヨドバシからの帰り道、祖母が口を開く。
「携帯でどこどこにって連絡が出来て」
「そうね。『吉祥寺に』って言っておいて、着いてから合流できるし」
……それは面倒じゃないか? 最初から『ヨドバシ四階、掃除機売り場』の方が楽だろう。……などとは言えず、巨大な箱を前かごに乗せた自転車を、黙々と押して家へ向かった。
日常は続く
説明 | ||
自分の日常を小説化していこうと思います。 ……まぁ、描写力とか向上目当てです……。 |
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