Sisiter Horn(仮) 4
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うちの弟はカワイイ。

そりゃもう超がつくほどカワイイ。

お父さんとお母さんに拾ってもらって、もちろんその事に感謝はしてる。

けどそれ以上に、てるくんを産んでくれた事に感謝してる。

まだ小さいうちから、いつも家の中でわたしの後ろを、よちよち歩きでついてきたてるくん。

この子がいなければ、わたしは外の世界に出られなかったかもしれない。

はじめて外に出て、まわりの奇異の目に気付いた時。

わたしの居場所は、ここじゃないことがはっきりとわかった。

自分が異物だって思って、何もかもいやになった。

でも家に帰ると、てるくんだけはこれまでどおりに、おねえちゃんって呼んでくれたから。

だから、わたしは人間として生きていける。

ううん、てるくんのおねえちゃんとして、生きている。

だから、本を読んだ。

せめて心だけでも、ちゃんとしたおねえちゃんにならなきゃって。

勉強をがんばると、お父さんもお母さんも喜んでくれた。

なにより、てるくんも褒められてるわたしをみて、喜んでくれた。

だから、がんばった。

てるくんは、がんばりやさんでやさしくて、でもちょっとさいきんはぶっきらぼうだ。

でもそれは恥ずかしがってるからなのはわたしにもわかる。

だって、こうやってわたしの角を支えてくる時のてるくんの指は、とってもやさしいから。

ざらざらとしてる角の表面。わたしはあんまり好きじゃない。

どうせ歯とおなじなんだから、つるっつるのぴかぴかだったらいいのに。

でも、てるくんはそんなざらざらしてるのが昔から好きだった。

「……なに? ねえさん」

「んとね……腕、疲れない?」

「まだ大丈夫。そんなに滑らないし力も籠めてないから」

わたしが角のこと気にしてるのを知って、そんなことを言う。

「……もう」

ちょっとだけいじわる。でも、そんなところもとってもカワイイって思う。

すささ……って、てるくんの手のひらが角を撫でる音がする。

こうやっていじわるのあとは、ゆっくりと角を撫でて、絡まる髪の毛を降ろしてくれるのだ。

いつもの右角に、わたしは重心を載せかえる。

てるくんは反対側の角の根元からさきっぽへと、軽く指で払っていく。

「ん〜……んふふふふ」

わたしの角に、いちばん心地よく響く音。

胸の奥がくすぐったくなって、ほくほくとした笑いがこぼれ出てしまう。

目を閉じていても、てるくんのほっそりとした指が丁寧に、流れるように筋目をたどっていくのがよくわかる。

さっ、と先端まで抜くように払いのけて―――

「ふっ!」

「ひゃんっ!」

敏感なさきっぽを、あったかいてるくんの吐息が通り抜けて、思わずびくん、と身体をすくませてしまう。

「大丈夫?」

「……うん」

最後に息を吹きかけて残った髪の毛を散らすのが、いつものやり方。

何回やっても……ううん、ここ最近とくに反応してしまう。

「じゃ、反対ね」

一本が終わると、もう一本。

「かゆいところはない?」

「んー、おしり〜」

「……自分でかくように」

「うう、おとうとがいじめる〜……」

いつものやりとり。

わたしの角に触れることに関しては、てるくんはふざけない。

それは、さっきみたいなわたしの反応に気を使ってるんじゃないかって思ってしまうのは、考えすぎなのかな。

ゆっくりとてるくんは角を撫でていく。

その指は、右角5分の4を過ぎて、もうすぐ終わりというところで止まった。

私の右角は、そこで終わっているから。

一瞬の躊躇いのあと。まるでその先があるかのように、てるくんの指は虚空へと這うのだった―――

 

説明
おねえちゃん視点に。
小説という形態ではともかくノベルゲー化とかするには同一場面上での視点変更は混乱の元なのでなんとか演出を考えたいところ。
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