Sweety Citric Acid Moon #1 |
アネットの10歳の誕生日。
彼女はどんなにこの日を待ち侘びただろう。
多分、それはあのレモネードを飲んだ日からずっと。
「おはようアン…、あらもう起きてたの?」
ママが改めて大きくドアを開けると、鏡の前でお気に入りのワンピースを身に纏い、
とびっきりのスマイルを練習するアネットがそこにいた。
「おはようママ。今日はレディ・アンのお店の開店祝いよ!ママ、準備は出来てる?」
はち切れんばかりのウズウズと背中まであるロングヘアーをリボンできつめに結い、
さも落ち着きを取り戻したかの様にママに尋ねるアネット。
「フフフ、あの頃のママと同じ。 はいはい、ちゃんと準備は出来てるわよ。
紙のお花と風船で飾った机に、アンが頑張って描いた看板も。 みんな揃ってる。」
「そしてママのレモネード!」
「あら、アン。 もう"ママ"のじゃないわ。 "アン"のレモネードよ。」
「そうだったわ、今日のこの日から私のレモネードになるんだったわ!」
「そう言う事。 さあ、おめかしも良いけど着替え直して降りてらっしゃい。
肝心のレモネードが無いと折角のお店も何も始まら…」
ママの窘めを遮る様にアネットは手早く着替え、矢継ぎ早に階下のキッチンへと向かった。
「ちょっとアン! 洋服はちゃんとクローゼットに…!」「ママ早くー!」
ママはやれやれと言った顔で軽い溜息と共に脱ぎ捨てられた服をハンガーにかけ、
アネットの後を追ってキッチンへと向かった。
マイヤーズ家の女性に代々伝わるレモネード。
どこにでもある普通のお手製レモネードと言ってしまえばそれまでなのだが、
ここマイヤーズ家では、その家の女の子が10歳になるとその作り方を母から習い、
毎年、自分の誕生日を始め、ちょっとしたお祭りやお祝い事、そして休日になると、
ガレージの前に簡素な屋台を出し、近隣の住人に振舞うと言う慣例行事がある。
あくまでも「商売」では無く、「振舞う」と言う以上は原則お金を取らないルールなのだが、
近隣では小さな名物ともなっているこの行事、近隣の住人の楽しみともなっているが故に、
グラス一杯に対してのそれなりの「ご祝儀」を置いてゆく人も又、慣例となっている。
と言っても、25セント以上は払ってもいけないし、貰ってもいけない暗黙の了解がある。
美味しくて、誰もがハッピーになれるレモネード。 それがマイヤーズ家自慢のレモネード。
因みにその「ご祝儀」はと言うと、そのレモネードを造った女性の物になるのもマイヤーズ家の慣わし。
おっと、別にマイヤーズ家が生活に困っている訳じゃあ無い事を知っておいて欲しい。
ともあれ、その「ご祝儀」は年頃の女の子にはとんでもないご褒美に見える事だろう。
だが、それは「美味しく作られたマイヤーズ家のレモネードだからこそ」と言うのを、
これ迄見ている事しか出来なかったアネットが、直にキッチンで身を身って知る事になる。
「シロップの作り方はこれでお終い。どう?」「それでママ、この残った皮はー?」
「聞いてるのアン? ママがやってるでしょ、それは割る時に少し入れてあげるのよ。」
さてさて、今年のマイヤーズ家のレモネードは美味しく出来るかな?
説明 | ||
8月2日の朝7時前に思い付いた妄想をそれっぽくしてみました。 思い付いた妄想なだけに続くかどうかも解りません。 続いたら楽しいなあ。 |
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