そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)
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イカロスがやって来て初めての夏を迎えようとする桜井家のある日。

 

(なんだこれ……)

 

桜井智樹はいつものように朝起きてイカロスのいる居間に行ってみるとスイカを抱えるイカロスと見たことない幼女がいた。

 

(だ、誰だ?)

 

その幼女は修道服のようなものを着ていて、髪の毛は長い黄緑色をしていた。

 

「イカロス! その子は誰だ!?」

「はい、分かりません」

「分からないーーーーー!?」

 

智樹はイカロスの頭をぐりぐりする。

 

「とにかく帰ってもらえ! てか帰して来い!」

「そんなこと言われましても〜」

「ねえねえお兄ちゃん」

 

するとその幼女は智樹の服を引っ張る。

 

「うん?」

「お兄ちゃんといると楽しいの?」

「は?」

「ねえ楽しいの?」

「…楽しいかどうか分からないけど、とりあえずおうちに帰ろうね〜」

 

智樹が幼女の頭をなでる。

 

「やだやだ、ここにいる〜」

「そんなこと言ったって……」

 

幼女が嫌だと手を大きく振っているとその手が智樹に当たり、智樹は天井を貫きそのまま外へと放り出される。

 

「あらあら、今日もにぎやかね。桜井君の家は……」

「そうだな」

「てかあいつ、イカロスにでもぶっ飛ばされたのか?」

 

外に飛んでいく智樹を玄関前で見ていた見月そはら、守形英四朗、五月田根美香子、秋山総司郎。

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「へぇ〜、あなたもそのエンジェロイドなのね」

「うん、第二世代型エンジェロイドなの」

「名前は?」

「カオス」

「カオスさんって言うんだ。よろしくねカオスさん」

「うん」

 

カオスは早速そはら達と仲良くなる。

 

「そういえばカオスちゃんもエンジェロイドなら羽があると思うけど…」

「それならね…」

 

カオスが言われると背中から羽が現れる。

その羽はかなり鋭く天使の羽と言うよりは鋭い刃物と言った方が正しいものであった。

 

「私の羽って折りたためて、背中に隠せるんだよ」

「便利ね〜」

「………」

 

そんなカオスを黙ってみる秋山。

 

「どうしたんだ? 秋山」

 

そんな秋山に守形が声をかけてくる。

 

「いや、ちょっとな」

「あのカオスが怪しいのか?」

「怪しいとは少し違うな」

「違う?」

「ああ」

「それはなんなんだ?」

「悪いが俺にも言えんことはある」

「そうか……」

 

守形はそれ以上追求しなかった。

 

(カオス……この世界だとこんなに早く来るなんてな………)

 

実はこの秋山は少し前にこの世界とはよく似た世界にいたことがあり、現在はその前にいた世界をある事情でしばらく離れることにしていたため、似た世界であるこの世界に来たのだ。

 

(ニンフやアストレアよりも前に来るなんて、やっぱ平行世界って色々違うんだな)

 

秋山は改めて平行世界を認識した。

 

(今のあいつは敵対性は0%、危険性は40%か……。別の世界とはいえ、カオスは心に負の感情があったからな。

下手をしたら危険性は上がる。一応注意はしておくか。まあ育て方とか接し方が悪くなけりゃ、悪い奴にはならないのはよく分かってるけどな…)

 

秋山はカオスを見てふと笑みを浮かべる。

 

(とりあえずは俺や智樹が温かく見守る必要があるな)

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それから数日が経った桜井家の朝。

 

「………」

「本日のニュースです。……」

 

智樹が居間に行ってみるとスイカを持っておろおろしているイカロス、座ってテレビを見ているカオス、そしてテレビをつけたと思われる青い髪で透き通った羽を生やした少女がおかしを食べていた。

 

(増えてる。未確認生物、増えてる〜)

 

桜井家に未確認生物が三人もいた。

 

「おい、イカロス」

「はい、マスター」

「あいつは誰だ? 今度こそお前の知り合いか…」

「あ…の…知りません」

「ならカオスか?」

「ううん」

「嘘だ! どう見たってお前達の知り合いだろ! あの羽といい、首輪といい……とにかくだ、人ん家を勝手に未確認生物の寄合所するんじゃない!」

 

イカロスの頭をぐりぐりする智樹。

 

「ねえそこの人間(むし)」

「(聞き間違いだったらいいな〜)はい? 今なんと?」

「地蟲って言ったら人間のことでしょ。あんた以外の誰がいるの?」

「………今すぐ帰ってもらえーーーーーー!!」

 

イカロスとカオスに対して怒鳴る智樹。

 

「これ以上俺の日常を荒らされてたまるかーーーーーー!!」

「あらあら、やっぱり今日も桜井君の家はにぎやかね〜」

「またなにかあったらしいな」

(時期的に見て……ニンフか)

 

秋山はすぐに事態を把握した。

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智樹達一同は電車に乗っていた。そのメンバーには青髪の少女とカオスもいた。

 

「なんで連れてきちゃうんだよ?」

「あら、いいじゃない〜大勢いた方がにぎやかで楽しいわ」

「そういう問題じゃなくて…」

(本当なら智ちゃんと二人っきりで海に行くはずだったんだけどな〜)

 

一人黄昏るそはら。

その理由は2日前に遡る。

2日前、そはらは智樹と海に行きたいと思い、商店街の福引の特賞である「ペア日帰りの海水浴旅行券」を手に入れようと何度もチャレンジした結果ようやく当てることに成功し、そはらは大喜びしたのだが、そはらが当てた直後に守形、美香子も当ててしまい、結果的に3組となったのだ。

旅行券の組み合わせはそはら+智樹、守形+イカロス、美香子+謎の少女となった。

 

「それにペア券的に考えても連れてくるべきだろ。もったいないだろ」

 

ちなみに秋山とカオスもいるのだが、この二人は自腹(秋山持ち)である。

 

「すまないな見月」

 

ため息をついていたそはらに守形が声をかける。

 

「え? 何がですか?」

「いや、本来なら智樹とのペア旅行のはずなのに…」

「やだ先輩別にいいんです、そんなの」

 

そはらが手を横に振って否定する。

 

(そうだよね、いつまでもむくれてちゃダメ。せっかく海に行くんだから……)

 

気持ちを切り替えようとするそはら。

 

「ねえ、名前なんていうの?」

「ニンフ」

「そう、ニンフちゃんって言うのね」

「あ、そうだ。朝ごはんにおにぎり作って来たんだ」

 

そはらがおにぎりを入れた弁当箱を開け、皆に渡す。

 

「しかしなぜ今頃になってまたエンジェロイドがもう一体…」

「増えてたんだよ! 朝起きたらカオスみたいに普通にいたんだよ! ……」

 

智樹が色々言ってる間にそはら達がニンフと会話する。

 

「うわぁ〜、ニンフさんの羽って七色に光ってて綺麗〜」

「イカロスちゃんやカオスちゃんのとは違うのね」

「アルファーとカオスは私とは別のタイプだから」

「アルファーって?」

「この子のこと」

 

ニンフがイカロスのことをさす。

 

「ちなみに私はベータでカオスはイプシロンよ」

「そうなの?」

「うん」

「それじゃあ、イカロスちゃんの後継機なのね」

「そうね」

「三人で並ぶと姉妹みたいね〜」

「一人、二人増えたところで同じだ。まとめて面倒を見てやれ」

「同じじゃない! 俺の平和を返せーーー!」

「そういえばカオスさんは自分を第二世代って言ってたけど、ニンフさんも?」

「ううん、私もアルファーと同じ第一世代で第二世代はカオスだけ」

「まあ、いろいろあるってことでいいんじゃないか? それに時間からしてそろそろ着くころだぜ」

 

そして一同は海へと着く。

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「うお! 海だーーーーー!!」

 

智樹ははしゃぐがはだしなので熱い砂浜で飛び跳ねる。

 

「あちゃ、あちゃ」

「そりゃ熱いだろ」

 

秋山はいつものようにスリッパ(サンダル)を履いている。

智樹は急いでサンダルを履く。

 

「ところで守形先輩もそうだけどなんであんたもいつもの格好なんだ?」

「これしか持ってないからだ」

「泳ぐ気がないからだ」

「てか暑くないのか? 黒い長袖の上着なんか着て…」

「これはかなり薄いぞ」

 

秋山が着ている黒い上着をさす。

そんな時であった。

 

「おまたせ〜」

 

そこにようやく水着に着替え終えた女性陣がやって来る。

 

「ほぅ〜。皆似合ってるじゃないか」

 

秋山が客観的に見る。

イカロス、美香子はビキニタイプでイカロスは黒、美香子は赤。

ニンフはピンク色のセパレーツタイプ。

カオスは普通のスクール水着タイプ。

そはらは緑色のワンピースタイプであった。

 

「お前達…水着あったのか」

 

智樹の言うお前達とはニンフとカオスのことである。

 

「会長が用意してくれたんだよ」

「イカロス、背中の羽はどうしたんだ?」

 

守形が指摘する。よく見るとイカロスは上着を羽織っていた。

 

「あの、この翼は可変式となっておりまして……」

 

イカロスが上着を脱いで背中を見せる。

そこにはいつもと比べてかなり小さくなった羽があった。

 

「ここまでならなんとか小さくすることが出来ます」

「私は翼を見えないようにできるの」

「で、カオスは折りたたんでいると…。便利なものだな」

「あっちにパラソルを置いてあるから、思う存分楽しみましょ」

(ニンフやカオスのことは気になるが…せっかく海に来たんだ。遊ぶぞ〜〜)

 

智樹はとりあえず二人のことは置いといて遊ぶことにした。

智樹&イカロス&ニンフ&そはらでビーチバレー、カオス&秋山で砂遊びをしていた。

 

「ビーチバレーはやめだ!」

「何かあったのか?」

 

何故かご立腹の智樹に秋山が尋ねた。

 

「ニンフの奴が俺目がけて全力でボールをぶつけて……ってなんじゃこりゃーーーー!!」

 

智樹が見て驚いたのはカオスと秋山が作っていた砂の像はあまりに精巧でなおかつ、巨大だった。

全長は約2メートルほどであった。

 

「巨大宇宙人ヒーローを模して作ったんだが、これくらいが限界なのが悔やむ所だ」

「充分だろ」

「いや、まだ身長が足りない。だが小さくなったという設定を利用するしかないな…」

「はぁ〜……」

「ねえ、智ちゃん、ボート乗ろうよ」

「ああ、いいけど…」

 

そんな時どこからともかく歓声が聞こえていた。

 

「なんだ?」

 

智樹達が歓声のする方に行ってみるとそこには大食い大会をしており、それに参加していた守形が他の選手を突き放すほどの食べっぷりを見せていた。

 

「頑張って〜守形く〜〜〜ん」

 

守形にエールを送る美香子。

 

「あれはいいや。あれはほっとこう」

「うん……じゃあ私、ボート借りてくるね」

「ああ」

 

ボートを借りに走っていくそはら。

智樹が辺りを見回してみると一人ぼっちで陰で座っていたニンフを見かける。

 

「……」

 

智樹はホットドックを持っていき、ニンフに渡そうとする。

 

「食うか?」

 

ニンフはホットドックをもらう。

 

「こういう時はありがとうって言うんだ。ほら、言ってみ」

「人間(むし)のくせに命令しないで」

「す、すみません」

 

その様子を少し離れたところで見ている秋山は思わず笑ってしまう。

 

「どうしたの? 秋山お兄ちゃん」

 

笑っていた秋山に声をかけるカオス。

 

「いや、あれを見てな…」

 

秋山がニンフを指す。

 

「ニンフお姉様がどうしたの?」

「いや、あいつのあの態度見ててな……」

 

秋山は平行世界とはいえ、この後のニンフのことを知っているのでそれと今のニンフとのギャップを思い出し、笑ってしまったのだ。

 

「後でもう少しきちんとした説明でもしてやるか」

「?」

 

カオスは秋山の言っている意味が何なのかよく分かっていなかった。

秋山達が見ていたニンフはホットドックを食べておいしいと感想を漏らす。

 

「なんだ笑うとかわいいじゃん」

 

智樹がニンフの横に座ろうとするが……。

 

「勝手に座るな!」

「すみません!」

(今とは別の意味だろうな…)

 

やはりニンフの反応を見て笑う秋山。

智樹は少し離れた場所に座る。

 

「お兄ちゃ〜ん」

 

そこにカオスがたまらなかったのか、ニンフと智樹の間に入って来る。

 

「ありゃ、行っちゃった」

「カオス」

「お兄ちゃん、それ頂戴♪」

 

カオスが智樹のホットドックを要求する。

 

「あ、ちょっと待ってな。すぐに新しいの…」

「それでいいよ」

「え? ……はい」

 

智樹が持っていたホットドックをカオスに渡す。

 

「あむ……おいしい」

 

カオスが笑顔で感想を言う。

 

「そうか……ところでさ、お前達、何しに来たんだ?」

「別に下界がどんな世界か興味がわいただけ」

「…あ、もしかしてイカロスのことが心配で見に来たのか? 友達なんだろ?」

「ま、そんなところね。あんたには全然興味ないから」

「そうですか」

 

がっかりする智樹。それを見てやはり笑う秋山。

 

(全然興味ない対象がかなり興味のある対象……)

「ちょっと、さっきから私を見て何笑ってるの!?」

 

ニンフが秋山を指す。

 

「いや、色々あってな……」

 

秋山がニンフ達のところにやって来る。

 

「色々って何よ?」

「さあてな」

「そういや、イカロスどこ行った?」

 

イカロスがいないことに気づく智樹。

 

「「「あそこだ(よ)」」」

 

秋山とニンフとカオスが海を指す。

イカロスは三人の言う通り海の底にいた。

 

「ね、いたでしょ?」

「何やってるんだあいつ〜〜〜!」

 

智樹は潜ってイカロスを止めようとする。

その間にその場にはニンフとカオスと秋山の三人だけとなった。

 

「あんた、何者なの?」

「何者?」

「地蟲と同じ反応なのに地蟲とは雰囲気が違うように感じるんだけど…」

「ああ、俺は人間超えた人間さ」

「人間(むし)を超えた人間(むし)?」

「ああ。お前達と二人だけに話したいことがあったんだ。

ちょうど今はお前達以外はいないから話しておくか。

俺はな、こことはよく似た世界にいたんだ」

「は?」

「平行世界って奴で、俺はさらに別の平行世界から来た人間で少し前にこことよく似た世界に滞在してた」

「ここによく似た世界って?」

「お前達やイカロスにあの智樹達もいる世界のことだ。

だから俺はお前達のことは知ってるし、お前達が何の目的で来たのかも知ってる」

「なっ!」

 

ニンフは思わず身構えようとする。

 

「安心しろ。あいつらに言う気はない。ただ俺がいた世界でこの後何が起こるのか要点だけを教えてやろうと思ってな」

「この後起こること…」

「それとこの世界と俺がいた世界との違いだな。まずはそっちから話してやるか。

カオス」

「?」

「お前は、俺が知ってる以上に早く来たな。俺が知ってる限りじゃお前が来たのはアストレアの後だぞ」

「デルタの? デルタも降りてくるの?」

「ああ。アストレアが降りてくる理由はこの後起こることにつながるから少し後に話してやる。

そんでお前は命令無視してな……。てか、正直今のお前も命令無視してるだろ。

お前もイカロス奪還が命令じゃなかったのか?」

「うん。でもね、なんでイカロスお姉様が帰ってこないのか興味がわいたの」

「それで智樹達と一緒に過ごしてみようと?」

「うん♪」

「感想は?」

「お姉様が帰ってこない理由が分かった気がする」

「はあ? 何が分かったの? アルファーは私達のこと忘れてるだけでしょ?」

「そうだけど、イカロスお姉様、楽しそうだった。お兄ちゃん達と一緒に居て、なんか楽しそうだった」

「そうか…。それで任務を忘れて一緒に楽しむと?」

「忘れてないけど、別にいいかなって」

「そうか……」

 

秋山はこの世界のカオスと接してみて思った。カオスはあくまで子供なだけであった。

子供ゆえに残忍なことをしていたりしたが、あくまでそれは環境が悪かっただけで環境が悪くなければ善くなれるのだと…。

 

(カオスは変わってるようで変わってないんだな。出てきた時期はかなり違うけど…)

「けど、私はアルファーを連れて帰る気よ」

「……さっき言ったこの後に繋がることになるが言うぜ。お前のそれ、失敗するからな」

「なっ? なんでよ!?」

「それは言えん。言ったら、お前が警戒するからな。俺がどうにかしてやれんこともないがやめておく」

「くっ…」

 

ニンフが秋山を殺そうかと考えるが…。

 

「言っておくが俺は殺せんぞ。特定の存在じゃない限り俺は死なない体になってるからな」

「特定の存在…」

「この世界にはいない存在さ」

 

そんな時、智樹を抱えたイカロスが海から上がって来た。

 

「智樹の奴、ダウンしたな」

 

秋山が智樹達のところに行こうとする。

 

「ちょっと!」

「さっきも言ったろ。お前達の目的、あいつらに言うつもりはないって」

「信じていいの?」

 

カオスが尋ねる。

 

「ああ! 言うつもりもなければ伝えようとするつもりもない」

 

秋山が智樹達のところに行く。

 

「ニンフお姉様、いこ♪」

「そうね」

 

ニンフとカオスも秋山の後を追ってった。

 

「大丈夫ですか? マスター」

「人工呼吸の必要なしと」

「あんたが焦らなくてもアルファーにとっちゃこの程度の浅瀬なんてな〜んの問題もないのに…」

「せめて人並みに浮かんでろ〜! 人に見られたらどうする?」

「はぁ〜、ですが羽が水を吸って重くなってしまうので、どうしても沈むんです」

「カオスもか?」

「うん」

「ばっかみたい。私みたいに羽を水につけなきゃいい話でしょ」

「でもイカロスお姉様の羽、もう濡れちゃって乾くのに時間かかりそうだよ」

(ダメだ、このまま放っておいたら大騒ぎになるかもしれん)

 

智樹はイカロス達を放置できないと判断。

 

(俺が泳ぎを教えてやる!)

 

智樹はひとまず海に入るイカロスに泳ぎを教えることを決断した。

 

「智ちゃ〜ん、ボート借りてきたよ。智ちゃ〜ん」

 

そはらがボートを持ってやって来るも、智樹はイカロスに真剣に泳ぎを教えていた。

 

「違う! バタ足は足を伸ばして! ………」

「智ちゃん…」

 

そはらはその場を去ってしまう。

 

「………」

 

それを黙って見ていた秋山。

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そはらは一人でボートを漕いでいたら、昔のことを思い出す。

それは昔智樹と一緒に海に行ったときに泳げないと言ったことである。

 

(智ちゃん、忘れちゃったのかな……)

 

そはらが黄昏ているといつの間にかかなり流されていることに気づく。

 

「! オールが……」

 

オールが流されてることにも気づく。

 

「帰らなきゃ……」

 

その頃智樹達は浜辺でくつろいでいた。

 

「少し曇ってきたわね」

「そはらは?」

「そういえばさっきボートで乗ってるとこ、見かけたわ」

「え? あ!」

 

智樹はそはらとボートに乗ることを忘れてたことに気づく。

そして智樹達は海の方でそはらを探す。

すると海でオールを取ろうとして海に落ちてしまうそはらを目撃する。

 

『!』

「そはらーーーーー!!」

 

智樹はそはらの元へと急ぐが波は思ったよりも強く、なかなか進まない。

 

「……」

 

イカロスは羽がまだ水を含んでいるので使えなかった。

 

「ああ、もう!」

「お兄ちゃん!」

 

ニンフとカオスが出て行こうとするが……。

 

「俺が行く!」

 

秋山が走り出す。

その速さは尋常ではなく、海の上を完全に走っていた。

 

「ふん!」

 

秋山はまず智樹を引き上げる。

そしてそのままそはらの沈んでいった方に行く。

 

「智樹、行け!」

「そはら!」

 

智樹は何とか手を伸ばして、そはらの手をつかむ。

 

「そはら!」

(智ちゃん…)

「おらよっと」

 

秋山が転倒したボートを元に戻し、智樹とそはらをボートに乗せる。

 

「大丈夫か?」

「智ちゃん…。秋山さんも…」

 

秋山は普通に海の上に立っていた。

 

「まったく…」

 

秋山はそのまま浜に戻って行った。

 

(本当ならニンフが行くんだが、カオスがいるとカオスも行くんだな。

まあ今回は俺が行ったが、別に問題ないからな)

 

そう思いながら戻る秋山。

そして智樹達も浜に戻る。

 

「ごめんそはら、イカロスとカオスが騒ぎを起こしたら遊ぶどころじゃなくなるって思ってさ…。

それで、つい夢中になっちまって…ほんと、ごめん」

 

智樹が頭を下げるがそはらは反応がない。

 

「一人で沖に行くなんて絶対なしだからな。お前さ、昔っから泳げないんだから…」

「! (智ちゃん、ちゃんと覚えててくれてたんだ)」

 

感動のあまりに涙が出てくるそはら。

 

「よ〜し、気を取り直して遊ぶかって…夕日が…ごめん、そはら」

「ううん。もういいの、ありがとう智ちゃん」

「ちょっとそこの人間(むし)」

「え?」

「何かっこつけてんの? その子を助けられたのはこいつのおかげでしょ」

 

ニンフが秋山を指す。

 

「いや、そもそもお前やカオスが行こうとしたのを俺が止めただけだ。

本来ならお前達が助けるはずの出番を横取りしたんだ。俺は」

「そうだったのか…。ありがとな」

「感謝の気持ちが伝わらない。地蟲のくせに生意気」

「おい! イカロス! なんだなんだこいつは! 人のこと、むし、むしって……」

「まあまあ」

 

智樹をなだめる秋山。

 

「そうだ、今のうちに今日のおさらいだ、イカロス」

「はい」

 

智樹と海に入るイカロス。

 

「違う違う! だからバタ足は足を……」

 

そこに智樹の手をつかむそはら。

 

「泊まってく」

「は?」

 

そはらの体から紫色のオーラが流れる。

 

「やだやだ! イカロスさんばかり、ずるい〜!!」

 

そはらがチョップの連打を智樹に浴びせる。

 

「う〜む…」

 

そんな時、守形が大食い大会の副賞でもらった海の家の宿泊券を見せる。

 

「六人分だが」

「じゃあ俺とカオスの分は俺が出すわ」

 

こうして智樹達は泊まることになった。

その晩に眠れないイカロスと夜を付き合うことにした智樹。

それを宿泊先の屋根の上から見守る、秋山。

 

(俺が知ってるのとは少し違ってくるかもな……。さっきニンフだけじゃなくてカオスまで出ていっちまったし……)

 

智樹とイカロスが浜辺を歩いていると、突然ニンフとカオスの声が聞こえてきた。

 

「あっちの方だ」

 

智樹達は二人の声がする岩場の方へ行ってみる。

するとそこには複数の男達と何か揉め事をしていた二人がいた。

 

「ニンフ! カオス!」

 

智樹が走って二人の方に駆け寄る。

 

「離しなさいよ、地蟲」

「ニンフ! すみません、こいつ言葉遣いが悪くて…。ほら、いくぞ。お前達」

 

智樹が謝りながらニンフとカオスを連れ出そうとするが…。

 

「ちょっと待てよ。まだ話は終わってない」

「こんな小さい子供が二人で心配だから声かけたんだけど…」

「ほっといてよ、地蟲のくせに近づかないで」

「何!?」

「ニンフお姉様…」

 

カオスがニンフをなだめようとする。

 

「お前、こいつの知り合いか? なんで俺達が蟲呼ばわりなんだよ」

 

男の一人が智樹の腕をつかんで問い詰めようとすると…。

 

「マスターに何をしているのですか?」

 

イカロスがその男の腕をつかむ。

 

「ああ?」

「……アルファー」

「イカロスお姉様」

 

ニンフは薄ら笑い、カオスは少し心配そうな顔をする。

 

「私のマスターに何をしているのかと聞いているのです」

 

イカロスはつかんでいる男の腕を強く握り上げ、翼を大きく広げる。

するとイカロスの翼が青く光だし、イカロスから衝撃波がらしきものが流れ出す。

その衝撃波は恐ろしいことに近くの岩場を粉砕し、木々をなぎ倒す。

それだけでなく、イカロスの目がいつもの緑色から赤色へと変化していた。

 

「これって……」

「……」

 

ニンフとカオスはこれがイカロスがどんな状態なのか分かっていた。

 

(もしかしてウラヌス・クイーンモード……)

(そうね、このままだったらアルファー何をするのかしら)

(やばい!)

 

遠くから見ていた秋山が急いでイカロス達の元に近づこうとする。

 

(俺が知ってる時以上の被害になってないか?)

 

秋山が知ってる限りではイカロスが智樹を助けるために記憶が封印されてる状態にも関わらずウラヌス・クイーンモードになろうとしていた。

そこまでは今の状況は同じだが、その余波で岩場などが破壊されるなどは別の世界ではなかった。

 

(とりあえず智樹が止めるとは思うが、念のため近づいた方がいい)

 

秋山はそう思い、イカロス達の元に向かっていた。

 

『うわあああああ!!』

 

男達は余波に耐え切れず、吹っ飛ばされる。

しかし何とか高速移動した秋山が男達を受け止める。

 

「大丈夫か?」

「なんだよ、あいつ」

「死にたくなければさっさと行け」

「ひぃいいいい」

「それとこのことは誰にも言うな。言ったら、俺がお前達を殺す」

『ひぃいいいいいいい!!』

 

男達はその場を逃げ去って行った。

智樹はカオスのおかげで何とか踏ん張れていた。

 

「大丈夫?」

「イカロス……やめろーーーーーー!!」

 

智樹の言葉を聞いてイカロスは冷静さを取り戻し、いつもの状態になる。

 

「お前……そんなんじゃないだろ!」

 

イカロスは何のことか分かっていなかった。

 

「帰るぞ」

 

智樹はイカロス、ニンフ、カオスを連れて宿に戻る。

 

(イカロスお姉様……)

 

カオスは少し暗い顔をし、下を向きながら歩いた。

 

(カオスがいても結果は変わらないか。いや、下手をすればカオスが来たから俺が知ってる以上の被害が出たのかもな……)

 

秋山は冷や汗を流しそうになる。

 

(とりあえず俺は見守ってみるしかないな。

変な事態にならないように……)

説明
この話はアニメ『そらのおとしもの』の話を基に「もしもニンフよりも先にカオスが来ていたら」を考えたものとしています。
しかしカオスの性格は作者解釈により原作やアニメとは少し違う性格となっている部分が見られます。そのことをご了承ください。
また作者(BLACK)の分身のオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
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コメント
より魅せる方法としてニンフを出さないでカオスだけにした方がより違いが鮮明になったかもしれませんね。その方が原作と思い切って違う展開にいけたかも(枡久野恭(ますくのきょー))
カオスの登場が早いと細かい所で違いが出てくるものですね。いっそ智樹が最初に遭遇したのがカオスだったら… 問題がさらに大きくなっていただろうなぁ(汗(tk)
タグ
そらのおとしもの 桜井智樹 イカロス ニンフ カオス 秋山総司郎 

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