Sweety Citric Acid Moon #2
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 八時を告げる鐘の音と共に時計台から鳩が飛び立つ。

 

 

 「ハーイ、マデリーン。」ロイド眼鏡をかけた細身の優男が軽く手を振る。

「ハイ、イアン。」「あの…さ…、」「来週日曜の事?悪いけど他を当たって頂戴。」

余計に足を速めて教室へと向かうマデリーンを目で追う事しか出来ないイアン。

「参ったねどうも。」溜息混じりに壁にもたれ掛かると共に無情に鳴り響く始業ベル。

イアンは焦っていた。彼女をデートに誘った回数は数知れず、断られたのも数知れず。

だが、来週の日曜は絶対に決めたかった。と言うのも、隣町の「奇跡」を信じていたからだ。

どんな「奇跡」かって?所謂、縁結びさ。隣町にある、ごく普通の家で出されるレモネード。

古くはイアンのお爺さんの頃から既に噂があって、沢山の恋人達がそこで成就したって話さ。

事実、彼のお爺さんもその「奇跡」のお陰で、お婆さんと恋に落ちたって言うお墨付きでね。

勿論マデリーンもその話を知らない訳じゃあない。かと言って、イアンが嫌いな訳でも無いんだ。

じゃあ、何が問題かというと、イアンが生真面目過ぎるって所がどうも目に余るらしい。

彼女が「少しワルっぽい人が好み」って聞くと、慌ててモーターサイクルの免許を取ったり、

「ロックを良く聞く」って聞くと、有名所のレコードを見せ付ける様に買い漁ってみたり。

好みに合わせてくれるのは悪い気がしない。でも、好かれようとするその様がお気に召さないって。

マデリーンはちょっと強引でもその手を牽いてくれる王子様を待っているんじゃないかな。

「どうしたのママ、手がお留守よ?」「ん?ううん、何でもない。ちょっと考え事。」

「変なママ。それよりも早く早く!パパを呼んで外にテーブル出して貰わないと!」

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 風見鶏が小気味良く、優しい風を見据える。

 

 

 「ああ、今日の天気は申し分無し、上々だ。」天を仰いでジョセフは呟いた。

昨晩は散々だった。強い通り雨に隣の家の夫婦喧嘩、そして酔っ払いの家間違いだ。

日頃は人当たりの良い、温厚な紳士で通っている彼も流石にこれは怒りを露にしたね。

「やあ、ジョセフ。今日は朝からそこに?」「いや、もっと早くに一回りしてきたさ。」

馴染みの顔との朝の挨拶。「ほう、健康的だな。」「まだ眠いがな、悪くは無い。」

「そうそうトビー、これから公園に向かうかね?」「まあ足の向く儘と言う所だな。」

「ヒューイに会ったら伝えてくれ、右側の横6マスの所はマフィンだってな。」

「ははは、意地が悪いな。伝えておくよ。」遠ざかるトビーを遠めに軽く空腹を感じる。

昨晩の雨の所為か草いきれも一層。ジョセフは軽く水を含み、ガーデンベンチに腰掛ける。

そこにけたたましい声が。「ママ!風船膨らませてー!」「もう!自分でやりなさい!」

そうか、今日は久し振りのあの日だったか。それも今回はいよいよアンの初舞台と来たもんだ。

「ふうん、どうなるもんかね。」ジョセフは横目で我関せずと言った様な素振りを見せる。

が、そうも暢気には構えていられない。何せアネットがジョセフの毎日のご飯当番だからさ。

「ちょっとアン、ちゃんとジョセフにご飯あげたのー?」天の声だ。「あー、まだー!」

いつもそそっかしいアネットが余計に忙しくドッグフードボウルを持って駆け寄ってくる。

「おはようジョセフ、遅れてごめんね!そうそう、今日はあたしのお店の用心棒よろしくね!」

成る程、だから今日はウェットフードが多く入っている訳か。「申し分無し、上々…だな。」

説明
前にボンヤリと綴った物の続きの様です。
今回は続きましたが、その後も続くのですかね。
続いたら楽しいなあ。
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