ほむほむ2用サンプル |
奇跡。
奇跡が本当にあるのならば、人間は何を願うだろうか?
手を伸ばせば、それが手に入れられる奇跡ならば、手を伸ばすのだろうか。
その代償として、人間として“大切なモノ”をなくすとしても、人間には叶えたい奇跡があるのだろうか。
……あるのだろう。
それがあるから、この悲劇という現実が存在しているのだ。
だけど、魔法少女たちには、それを知る術はない。
“魔女へといずれ至る少女たち”。
それは、抗うことのできない運命。
例え、それを知ったとしても……、それに気づくときには遅すぎる。
その遅さは、どうしようもない。もう何もかもが、全て最悪な状態に陥っている。
誰であっても、どうすることもできない。
それは、魔法少女にしかわからなく、魔法少女なら、最後に至る道。
そして、魔法少女以外にその苦痛はわからない。
……魔法少女、それは契約を交わす代わりに、魔法の力を得た少女。
魔女と戦う使命を課された存在。
契約は、願い。
それは、何でも叶う願い。例外はない奇跡。
契約によって、生み出されるのは少女たち……“宝石”。
宝石、それは魔法少女である証であり、源。
その名は、ソウルジェム。それは、少女たち“そのモノ”である。
もはや、少女たちは人間ではなく宝石である。
だが、そのことを少女たちは知ることはない。
契約。
……元凶がなくなるまでは、契約はなくならない。
元凶。
それがわかっていたとしても、一体何ができるのだろうか。
鹿目まどか。
あなたは、一体何を……願うのだろうか?
「……もう、私は決めてしまったから」
後戻り、そんなことができるのなら……そう考えてしまう私は、すごく弱い。
「……」
巴マミがいなくなれば、必然的に美樹さやかが魔法少女になる。
そして、美樹さやかは魔女へ必ず至る。
そのことには例外なく、たとえ邪魔をしても必ず起きた。
彼女の性格上、私が何を言っても全て無駄。だから、起きる。
そして、それはまどかが魔法少女になってしまう原因となった。
杏子に限っていえば、美樹さやかと仲良くしたいと考えていることは、杏子の行動から明らかだった。
そのため、杏子が美樹さやかを守ろうとするのも、偶然ではなく必然。
まどかを守るためには、それを利用しなければならない。
それが一番の重要事項。
もう、なりふり構ってはいられない。
誰に頼っても意味はない。もう、誰にも頼らない。
だからこそ、私は一人でやると決めた。
そう、あのときもそうであった。
× × ×
かつて、生きることを拒絶された少女は、魔法少女となって、生きることを獲得した。
だが、それは新たなる生の拒絶だった。
ただ、もう一度だけ自分の足で歩いて生きたかった。
でも、目の前に差し出された希望は、生きる絶望だった。
「ボクと契約して、魔法少女になってよ。君にはなる資格もなれる想いあるだろう。さぁ、ボクにその祈りを教えてご覧。そうそれはエントロピーを凌駕するだろう」
あのときのキュゥべぇは、まさにそんなことをいっていた。そして、私という人間という肉体はなくなった。
私が手に入れたのは自由に動かせ、いくらでも修理ができる作り物の身体と、それを形あるものにできる魔法と呼ばれる力だった。ただ、生きたいと願うのは愚かのことなのだろうか。
私は、間違ってしまっているのだろうか。誰かに答えて欲しかった。でも、誰も私の周りにはいなかった。
魔法少女まどか☆マギカ〜Unshaken feelings〜
? ? ?
薄暗い通路の中で一人の少女が立っていた。
少女、暁美ほむら。
「……」
暁美ほむらは、弾を撃ちつくしたサブマシンガンを目の前の壁に、乱暴に投げ捨てた。『バンッ』という音とともに壁に叩きつけられたサブマシンガンの銃口からは、白い煙が空へと向かって上がっている。それは、殺風景なビルの裏手で、少し異様に見えた。
そこには人もいない。動物もいない。風もない。街灯の光すらない。
何もなかった。あるのはビルの壁とその中心点にいる少女。
「……?」
サブマシンガンを投げ捨てた指先に違和感があるのか、ほむらは自分の手を見つめた。その手はいつもの手と変わりないほむらの手。
「……何回目だろうか」
赤く染まった空を見上げると、ふいに目を閉じた。
「……」
思い浮かぶのは、数えきれないほど救えなかった生命。そして、後悔の想いと絶望。思い出には、それしか残っていなかった。希望を感じたこともあった。でも、最後は結局絶望。夢も希望もなかった。
そんなものを思い出と呼ぶのか、ほむらは一瞬戸惑いを感じたが、あまり深く考えないことにした。
考えたところで何も変わらない。何も変わらなかった。
「……ふぅ」
彼女を救うために、彼女を殺す。彼女を殺すために、彼女を救う。
それは果たして正解なのか? それとも、不正解なのか? 誰もその回答を知る者はいない。それは、暁美ほむらが魔法少女になった理由とは、かけ離れていた。
「……」
理由そのものである彼女、“鹿目まどかとの出会い方”を変え、鹿目まどかに守られる自分ではなく、鹿目まどかを守れる自分になりたかった。それだけの想いで、キュゥべぇと契約したのだ。たったそれだけであったのに、それだけの想いがあっても結果は、いずれも失敗だった。
失敗、不正解、不合格。
終わってしまえば、全てそうと言い切れる。
後悔と、絶望。その度に、何度も何度も何度も繰り返す。
「……私の戦場はここじゃない」
そう何度もつぶやく、たった一つのゴールを目指すため……
そう、それは、笑ったまどかと“ワルプルギスの夜”を超えた未来へ行くため。
そう、ほむらが繰り返した過去の中に、その未来はなかった。
「くっ……」
ほむらは、唇を噛みながら思った。
あぁ、どうして……こんなにもうまくいかないのだろうか。
うまくいくというのは、結局、どういうことなのだろうか。
何度繰り返しても、誰も私のことを聞いてくれないし、あいつを引き離そうとすればするほど、あいつはまどかに接近する。
あいつ、キュゥべぇ。いいえ、インキュベーター。
あいつだけは、絶対に許さない。
「まどか……」
あぁ、どうして……私の言葉を誰も聞いてくれないし、信じてくれないのだろうか。私は“本当のことをただ伝えているだけなのに”。本当のことというのは、本当のことなのだろうか? たとえ信じてくれたとしても、もうそれは何もかもが遅すぎるときであった。だから、私は……もう誰にも頼らないと決めたんだ。
彼女……、“彼女”と別の出会い方をすれば、まどかと同じように友達になれたかもしれない。それは、さやかや杏子たち、他の魔法少女にも言えることだ。
別は、別だ。でも、私はこの出会い方しかしなかった。私の友達は、まどか。そして、私はそれを選んだ。
「……っ」
それに私は、人間ではない。そう、魔法少女なのだから。だから、選ばないことなんて、私にはできなかった。
選ばないことなんて、私にはできなかった……か。あの時感じた絶望を、希望という光に変えて、まどかと一緒にただ、笑い合いたかった。まどかの笑顔が見たかった。悲しみ顔なんて見たくなかった。
「さようなら、ほむらちゃん。元気でね」
そんな言葉聞きたくなかった。彼女の別れ際の言葉を思い出す。
私はずっと一緒にいたかった。ずっとずっとずっと……いつまでも友達でいたかった。
「……」
魔法少女。そう、人間ではない少女。
だから、“彼女”は魔法少女になる前に、殺さなければならない。
それが人間ではなくなった私ができる、彼女への最後の人間としてのアプローチなのかもしれない。厄介な人物、
「さくら……」
さくら。それが“彼女”の名前だった。
さくら、そうキュゥべぇが呼んでいたから私も呼んでいる。苗字はわからない。それは、漢字で桜なのか、ひらがなのさくらなのかまた、それ以外なのかはわからない。だから私は、勝手にひらがなのさくらとして認識した。本当はそんなことどうでもよかった。だって、モノには、本当は名前なんて、ただの飾りなのだから。
私も暁美ほむらではなく、人間ではなくただの魔法少女と呼ばれるモノ。さくらが魔法少女になる統計的データは、決して高いものではない。それは、キュゥべぇが間に合わなかったケースつまりは、死んでしまうケース、彼女が奇跡的に助かるケース、そして、私が殺したケース……。
“彼女”が魔法少女になった場合、最悪な魔法少女になることは統計的にみて、ほぼ間違いない。
それに、彼女は壊れてしまっている。それは、私と違って確かに、これ以上魔法少女が増えるのを、食い止める手のうちのひとつかも知れない。だけど、そのためにまどかが巻き込まれるのは……私が絶対に許さない。
「許さない……。あなたを殺さなければ、あなたは、まどかを殺す。そんなの私が許さない。だからこそ、これは仕方がないこと」
「……」
壁に寄りかかって座る彼女は何も答えない。ぐったりと下をむいて、両手足は無気力に放り出されていた。
「……まどかは私の全てなのだから」
それに答えるかのように、さくらの肉体は、光る粒子になって空中へと消えていった。初めからそこにないように。
まどか、私のたった1人の友達。私の生きる希望。
「今度こそ、救ってみせるあなただけは……」
そして、暁美ほむらはさくらがいた場所に落ちていた“グリフシード”を手にし、その場を後にした。
説明 | ||
「暁美ほむら中心魔法少女まどか☆マギカオンリー ほむ☆ほむ2」イベントのサンプルです。2011年9月18日に大田区産業プラザで開催予定なのです。 ブログにあるものとほぼ変わりありません。 | ||
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