機械音痴な蓮子さん。
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「だ、駄目だ....分からないわ.....」

そう言って本を片手に、パソコンの前で突っ伏している蓮子。

本の表紙には『猿でも分かる!!0から始めるPCライフ!!』と書かれていた。

 

 

 

私、宇佐見蓮子は機械類にめっぽう弱い。どのぐらい弱いかというと、予約録画も自分一人では出来ないぐらいに。

私が電子手帳ではなく、アナログな手帳を愛用している理由はそこにある。

一応大学に入ったからにはパソコンぐらい使えるようにならなければ。と思ったものの、結局買って未だに1回しか使った事無い。今じゃ埃を被っている。

OSの設定だか、ネットワークの設定だとかは全て店頭でやってもらったものの、そこからが問題だった。

まず手始めにネットでも見ようかと考えて、パソコンを起動してブラウザ(って言うんだっけ?)だかを探すのに30分程かかり、キーボードの操作に四苦八苦し、一緒に買った初心者向けの本を読みながらやっても全く持ってちんぷんかんぷんな事ばっかり。

ドロップ&ドラックって何よこんちくしょーと叫びたくなったのを抑えつつ、頑張ったものの結局は何も出来ず、気がついたら空が赤く染まっていた。

それ以来もうやりたく無くなった。時間を無駄にしているような気がしたから。

 

 

 

そんな苦いパソコンの思い出から、気がつけばいつの間にか1年も経とうとしていた。

時間の流れは早いわねぇなんて思いつつ、メリーと喫茶店でお茶を飲んでる時にメリーがこう一言。

「蓮子って、パソコン....いえ、機械音痴なの?」

ズバリと言われて内心吃驚しながら、何時もどおりに答えたはずだったのだが声は震えていたらしく、

「図星ね」

と言われて何も言えなくなってしまった。そのときメリーが浮かべていたとっても素敵な笑みからは、『今時パソコンの一つもロクに扱えないなんて』という、如何にも「馬鹿にしている」というメリーの心が読み取れた。あの笑みは絶対に忘れない。

その後、何か変わったことは無かっただとか、そんな事を話して、メリーと別れた後、メリーを見返すべく書店へと向かった。

そうよ、あの本が悪いから出来なかったのよ。なーんて自分の機械音痴を棚に上げ、二冊目となるパソコン初心者向けの本を買って帰路を急いだ。

....まあその後の事は言わずもがな。結局ちんぷんかんぷんのままで、結局パソコンは使えないまま。

くそう機械音痴で何が悪いのよパソコンなんて使えなくてもいいじゃないー....なんて思ったけど、やっぱりこのままじゃ癪に障るし、何より社会に出てから大変な苦労をするだろうと思うと、やっぱりやるしかない。

突っ伏していた体制を建て直し、再びパソコンに挑む。そしていきなり出てくるエラーメッセージ。

何よパソコンまで私をバカにする気?機械音痴だからって舐めんなよこんちくしょー。意地でも使いこなしてやるわー!!!

 

.....カァカァと鴉が鳴いている。ああ、もう夕方なのね。夕飯の準備しなくちゃ。

そうして私はエラーメッセージで埋め尽くされたパソコンのコンセントを無理矢理抜き、買い出しに出かけたのであった。

 

 

 

「で、結局パソコンは使えるようになったの?」

次の日、メリーと喫茶店で話していたらいきなりこの話題を突きつけられた。結局使えませんでしたよあんな物。

「ふーん」

何よ何よその変な目は。そんな目で私を見るのは辞めてよ。

「教えてあげようか?」

何よそのニヤニヤした顔は!!メリーの馬鹿ぁ!!!

 

はぁ.....はぁ....つ、疲れた.....喫茶店から自宅まで全力で走るのはやっぱり疲れるわ.....

メリーを喫茶店に置いてきちゃったけど、いいわよね。メリーが悪いんだもん。あんなニヤニヤした顔で言われたら腹が立ってどーしょーも無いわ。

.....あ、代金もメリーに払わせた事になるのか。まあいいや。

....はぁ、仕方ない。パソコン使えるように頑張ってみるか......

自宅に入り、パソコンのコンセントを指し直し、起動ボタンをポチッとな。

そして起動するのを待っていると、いきなり画面が青く染まり、白文字が出てくる。

.......何これ。ちょっと、なんか怖いんだけど。本にこんなの書いてなかったわよ。

くそう、どうなってるのよ。こんちくしょー!!

 

.....ああ、カラスが鳴いてるわ。もうこんな時間なのね。夕飯の準備しなきゃ。

私は青い画面のまま固まっているパソコンに蹴りをぶち込み、買い物バックを片手に買い出しに出かけたのであった。

 

 

 

 

「で。結局パソコンは?」

「ストップ。私の前でパソコンの話はしないで頂戴」

翌日。メリーとまた喫茶店で話していたらパソコンの話。知るかあんなもん。

「教えてあげても」

「だが断る」

パソコンなんか使えなくたっていいのよー。私はアナログな人間なのよー。産まれる時代を間違えたのよー。

「いい、蓮子。パソコンっていうのは....」

アーアーキコエナイーパソコンなんてものは存在しないー。

「はぁ....どうしてパソコンの一つや二つ、使いこなせないの?バカなの?死ぬの?」

「五月蝿い!!どこぞの饅頭みたいな喋り方するな!!」

そう言い残して喫茶店からダッシュで出て行く。もうメリーなんか知るかばかやろー。

.....あ、またメリーに代金払わせちゃった。まあいいや。

 

自宅に戻り、部屋に入ると、とてもとても奇妙な形にひしゃげてるパソコンが見えた。

ああ、そういえば昨日思いっきり蹴ったわねーなんて思いつつ、試しに電源ボタンを押してみる。

....が、電源はつかない。まあ壊すつもりで蹴ったんだから別に良いのだけれど。

私はパソコンに『粗大ゴミ』と書かれた紙と、メリーの写真を貼って、とある気持ち悪い目をもつ親友を思い浮かべながらパソコンを殴り飛ばしたのだった。

 

 

 

「蓮子、パソコンは?」

「捨てた」

「売ればよかったのに」

「売れない」

「なんで?」

「ひしゃげたから」

「?」

頭にハテナマークを浮かべたメリーを横目に、私はコーヒーを啜るのだった。苦い。

説明
以前ブログで公開していたもの。
テスト目的で投稿してみました。

秘封倶楽部の二次創作。
ギャグテイストでお送り致します。
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