帰ってきた魔法少女は止まらない! 
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 昨日はとんでもないのがきた。

 今から考えると本当に魔法少女だったのか真偽はわからないが、あの選択は間違っていないとおもう。 しかし、まだ引っ越しの後片付けは終わっていない。今日もこれからはじめるか。

 

 ピンポーン

 

「おや、今度は誰だろう。まさかまた魔法少女ってわけはないよね」

 ガチャリと玄関を開けると、そのまさかだった。

 だが、昨日のような魔法少女の姿ではない。なんかどこのお店にお勤めのお姉さんですかってくらいブランドもの全身をかためていた。

「はぁ〜い。待ったぁ?」 

「チェンジ」

 僕は玄関を閉めようとした。だが、またもや足がガッと入って閉まるのを防ぐ。

 必死に僕は体をねじり込んでくるミーコを出そうとした。

「うぐぐぅ、ちょっと何で閉めるのよ! 超絶美少女ミーコ様が冴えないあんたの部屋にお出ましになったってのに!」

「呼んでねぇ! 帰れ!」

 ぐりぐりと一進一退の攻防となったが、ミーコが「だっしゃああー!」と気合いを入れて全力を出すと、僕はあえなく破れた。

「何しにきたんだよ! 僕は契約なんてしないからな?」

 僕は怒りの目でミーコをにらんだ。

 ミーコはでかいクロエのサングラスを外しながらいった。

「ああ、あれならもういいのよ。別に契約者見つけたし」

「はっ?」

 僕は思わず間抜けなカオになった。

 契約者が見つかった? なら、なんでここにいる?

 するとミーコはカラカラと笑った。

「いやだ。また契約のセールスにきたと思った? そんな白くて可愛いけど裏でとんでもない秘密を抱えている異星人じゃないんだから、安心していいわよ」

 僕はミーコが何を言っているのかわからないが、あまり触れない方がいいと直感した。そこをいじると多くの人を敵にしそうだからだ。

「ほら、私は毛が魔法の源っていったでしょ。それで考えたの。髪の毛は確かに目立つところだからいやがるけど、いらない毛、見えないところの毛ならどうかって。――男の子にはわからないだろうけど、女の子はいろいろ大変なのよね。むだ毛処理。それで年頃の女の子と契約していらない毛を処理する代わりに契約をってしたら、もう入れ食い状態。特に女子高生、女子大生はすごいわね。それで、ちょっとお小遣い稼ぎに一契約千円って料金とったら見ての通りよ」

 ブラブラとプラダのバックを揺らした。

 僕はあきれつついった。 

「……おまえ、魔法界を救うために契約者を探していたんじゃないのか?」

「だってぇ、王女の私がいきなり家から追い出されてこんなところにきたのよ。ちょっとくらいご褒美があってもいいと思わない?」

 何も言えなかった。

 いや、言うのもばからしい。

「ともかく、僕に用がないなら帰ってくれ。僕も忙しいんだ」

 すると、どこからともなく音楽が聞こえてきた。

 なんかゲームでデートシーンとかにかかっているようなBGMだ。

「なんだ。……どこから?」

 うろたえる僕。

 だが、ミーコはすっと神妙なカオになると潤んだ眼で僕を見た。

「ねぇ、あなたの名前、教えて?」

「名前? そういえば言っていなかったか。僕は青木誠一郎だ」

 今置かれている状況がわからずますますうろたえる。これはもしかして、何かのフラグが回収されようとしている?

 ミーコはバックを床に落とすと僕に一歩近づいた。

「誠一郎、昨日あなたに蹴り出されてから、ずっとあなたのことが忘れられないの。王女の私に今まであんなひどいことをした人はいないわ」

「そ、それは……」

 弁明しようとした僕の唇を、細く柔らかいミーコの人差し指がふさぐ。

「いいの。だって私が悪かったんだもの。だから、気がついたの。本当に大切な人は、私のご機嫌を取るんじゃなくて、私が間違ったときにしかってくれる人だって……」

「ミーコ……」

「好き。誠一郎」

 好き、という言葉を聞いたとき、僕の心臓は止まるかと思った。

 常識外れな言動をするミーコ。だけど静かにしていれば本人がいうように超絶美少女。僕がこれまで出会った中で一番可愛い。

――これは、もしかすると大学デビューと同時に彼女ゲットォォォッ!?

「ミーコ、僕も君のことが……」

 僕はミーコを抱き寄せると、口を近づけた。

――キッス! KISS! ジーン・シモンズ!(KISSつながり)

 僕の心の声は迷走していた。

 目を閉じてそのチャンスがきた! と思ったら、唇に触れたのは無機質な紙きれだった。

「?」

 僕は目を開けると、慌てて口元に手をやる。

「……請求書?」

 ミーコを見るとミーコは舌を出して「てへぺろっ♪」とおどける。

「だってぇ、お店でいいなって思ったのを全部買ったらお金がなくなっちゃったの。っていうよりも、足りなかったのよねぇ。ねぇ、私のこと好きなんでしょ。私の告白OKしたよね? ってことは私たちは恋人同士、恋人同士なら、彼女にプレゼントくらいは当然よね♪ ってことで、それよろしく、はぁと」

「出いけぇ! 僕の純情を返せ!」

 一瞬でもその気になった僕が馬鹿だった。

 ミーコをたたき出すと、僕はそっと涙を拭いた。

 

                           (続く)

説明
ポッと頭に浮かんだコメディ小説です。魔法少女は出てきますが、萌えはありません。だから、怒ってものをディスプレイに投げないでください。
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