カノボク!悪魔と鍛冶師の救世物語 3 |
「なぁ――、今、欲しい物ってなんだ?」
夕焼けの公園のベンチに二人一組の少年と少女が座っている。お互い肩を合わせながら夕焼けを眺めている。
「う〜ん・・・・・・――がくれるなら何でも!」
「それじゃ困るんだよな〜・・・・・・なぁ、なんかないの?」
「う〜ん・・・・・・なら――!」
「俺って・・・・・・おまえなぁ」
「イタッ!」
なんともズレタ解答をした少女に少年は額を指で弾く。
「ぶ〜、私は、それがいいんだもん!」
「ハイハイ、そのうちな」
そういって少年は、少女の膝に頭を乗せる
「もぅ・・・・・・ねぇ、私の事好き?」
「あぁ?何言ってんだ?当たり前だろ」
それは少女の不安な時にいつも聞くこと
それを知っているからこそ少年も即座に彼女の求めている解答を答える。
「俺は、お前のもので、お前は俺のもの!だろ?」
「えへへ・・・・・・うん!」
「ん〜悪いけど少し寝るわ・・・・・・少ししたら起こして・・・・・・」
「うん、お休み――」
そういって少女は少年に微笑みながら額に唇を落とした・・・・・・
「・・・・・・ズ・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・おき・・・・・・・・・・・・だ・・・・・・い」
ん?だれ、だ?
「カズ・・・・・・さん、・・・・・・きて・・・・・・くだ・・・・・・い」
あぁ、そっか俺寝てたのか・・・・・・
「ん、今、起きるよ。ミ、ユ、・・・・・・?」
「ミユ?誰ですか?カズキさん寝ぼけてないで起きてください」
「ん?あ・・・・・・」
あれ?誰の名前を言おうと思ってたんだっけ・・・・・・?なんか懐かしくなる名前のような・・・・・・てか・・・・・・レイ、顔が近いです・・・・・・いい匂いがするから離れないで・・・・・・離れてください。
「おはようございます。カズキさん」
「ん〜・・・・・・おはよう〜レイ」
「朝ごはん出来ていますから、下に来てくださいね」
「ん〜・・・・・・」
レイがきてからなんだかんだで、一週間がたった。最初はギクシャクしていたが、4日目あたりからだんだんと慣れていったらしく、笑顔などを見せるようになっていった。
まぁ、慣れてくれるのは嬉しいのだけど、最近家事全般をやってくれているので、なんか良心に響くというか・・・・・・何度か、
「そこまでやんなくてもいいよ」
などと言ったら泣かれそうになったので、あまり強くは言えないでいる。生活が楽になったのだけれども、どうもねぇ?亭主関白じゃないんだけどなぁ・・・・・・とか思いつつも、最近生活リズムが規則正しくなっているのはレイのお陰であったりする。
「あ、カズキさん。いまお茶出しますね」
「あ、ありがとうレイ」
「洗濯はしておきますので、洗濯物があったら置いておいてください」
「うん、お願いね」
あぁ〜なんかすっごい完璧だからものすごく幸せを感じてしまうと共に罪悪感がぁ〜
「カズキさん?店の準備はいいんですか?」
「あ!やべ!サンキュ!レイ!」
「ハイ、今日も頑張ってくださいね」
そんな新婚みたいな挨拶をしつつも、今日はアイツが朝から来る日だった。アイツにはレイを見せられない・・・・・・絶対に!
「うは! カズキ! いつからこんな美人な彼女と暮らしてんの!? 結婚前の同棲ですか!? くぁ〜うらやましいな〜おい!」
遅かったな・・・・・・てかいつのまに・・・・・・本当、虫みたいにわいてくる奴だな。
「朝からうっさいぞ馬鹿! んでレイ、こいつは、ヴァカって名前だ」
「おい!違うだろ!俺は、ヴァンだって!レイちゃんっていうの?俺は、ヴァン・ターレンっていうんだ!宜しく!」
「え?あ、はい、宜しくお願いします・・・・・・」
「あ〜気にしなくていいからな、レイ。ヴァン!こっちこい!仕事しに来たんだろ!」
「ちょ!レイちゃ〜ん、またね〜」
たっく、これだからこいつに見せたくなかったんだ!綺麗な女なら誰彼構わず声をかけるような馬鹿だけど、やるときは、やる奴なんだよな・・・・・・いつも真面目ならかっこいいのに・・・・・・いや、それはそれで、想像できないな、うん。
「さて!んじゃ今回の素材は鉄鉱石200テラに赤銅鉱石が100テラにその他諸々で、大体30銀貨でどうだ?」
「15銀貨」
「いやいや無理だって!27銀貨」
「17銀貨」
「む、26銀貨50銅貨」
「18銀貨」
「むむ・・・・・・えぇい!25銀貨!」
「買った!いや〜、いい買い物した!」
「たっく、もともとこの値段で買う気だったろ」
「正解!」
「はぁ、まぁいい!本題はこれだ」
「ん?他に何かあるのか?」
「あぁ、ちょっと不思議なものが手に入ったんでなこれをお前に買ってもらいたい」
そういってヴァンは荷物の中から大切な物を取るように大きめの黒い宝石箱を出した。しかも鍵がついている事からかなりの物なんだろうな。
そして、その手に持っている宝石箱の蓋を開けると緑色に輝く人の頭程の大きさがある半透明な石があった
「なんだ、これは・・・・・・」
ただ単に綺麗な緑色の石なら宝石でもあるが、これは自ら光を放っている。そんな石は、聞いたことがない。
「俺も結構仕入れとかで、洞窟とかに入ってはいるが、こんなものは見たことがない。そこで、お前に頼みたいことがある」
「俺にこの石を買ってもらい、調査をしてくれ・・・・・・だろ?」
「そのとおりだ。あまり判らない物は売らない気質なんだが、今回ばかりは別だ。頼む」
これは、面白いものが来たもんだ。自らが光る石?それを調査?いいじゃん!好奇心が湧き出てくる!これは買えずにはいられない!
「買った!いくらだ!」
「え?いいのか?こんなものを・・・・・・」
「あぁ!こんな好奇心そそられるものがあって売らなかったらそれこそ恨む!」
「ハハ・・・・・・これはお前に見せて正解なのかもしれないな・・・・・・で、いくらだ」
「は?それは、お前が決めることだろ?」
「いや今回ばかりは、お前に任す。お前が思った値段で売ろう」
「そうか・・・・・・」
この石の値段か・・・・・・うん、俺が買うならこの値段だな
「わかった、金貨2枚出そう」
「金貨2枚だな・・・・・・って金貨2枚!?正気なのか?」
「あぁ、そんな気がする。そんな価値がこいつにはある」
おれは確信が迫った目で緑色に光る石を見ている。そんな俺を見てなんとなくだが判ったんだろう。その後は、何も言わずに金貨2枚を受け取ってくれた。
「一応言っておく、これは借りにしておく。返してほしくなったらいつでも言ってくれ」
「あぁ、また頼むよ」
「あぁ、そんじゃまいどあり」
さて、こいつをどうしようか。叩いてみる?砕いてみる?溶かそうか・・・・・・うは!いろんな調べ方があるな!まぁ、とりあえず削って調べてみるか!あぁ〜なんか調べるに便利な能力ないかな〜・・・・・・んな都合の良いものあるわけないか・・・・・・
「カズキさん、ヴァンさんと一緒にお茶でもどうですか?」
「ん?あぁレイ、あいつは帰ったよ。一応あいつも商売人だからな。ゆっくりはしていけないんだと」
「そうですか・・・・・・あれ?わぁ・・・・・・綺麗な石ですねぇ・・・・・・宝石ですか?」
「いや、わからない。今から調べるところなんだ」
「そうなんですか・・・・・・」
「そういや、レイって種族は悪魔だったよな?」
「ハイ、そうですけど・・・・・・なにか」
「いや、知り合いにさ、こう何かを調べるというか解析が出来るような能力持ってる悪魔っていないかな〜って思って・・・・・・」
「え・・・・・・」
「?どうした?もしかして知ってるのか?」
「あ、いえ。えっと・・・・・・出来る人は知っているんですけど・・・・・・」
「ん?なんか歯切れが悪いな?その人と仲が悪いのか?」
なにか悩んでいるように下を向いていたが、なにかしらの決心がついたのだろう。こちらを真剣な目で見つめている。
「あのカズキさん。魔眼ってどう思いますか?」
「魔眼?ん〜便利なものや凶悪なものがあるって聞くけど・・・・・・それが?」
「私、魔眼持ちなんです」
「え?レイが?魔眼持ち?」
「ハイ・・・・・・気持ち悪いと思いますか?」
「う〜ん凶悪な奴だったらちょっと注意が必要かなと思うぐらいだけれど・・・・・・レイ自体にはそんな思いとかは、抱かないよ」
「・・・・・・本当ですか?」
「うん。だって魔眼ってなんかこうカッコよさそうだし・・・・・・特に気持ち悪いとかは思わないよ」
俺があっさりそういうとなにが可笑しかったのか、レイは目に涙を浮かべながらクスクスと笑っていた。
「そう思えるのはカズキさんぐらいかと・・・・・・私の魔眼は、【理解する魔眼】です。」
「理解?」
「はい。魔法ならどんな魔法か、どこに核があるかなどがわかり、物体ならどんなものなのかどんな素材でできているかを瞬時に理解できる魔眼なんです。」
そこで一息きったレイは語ってくれた。その魔眼のせいで、一族から追い出されたことを、そして、悲しさや寂しさが爆発したのか俺の胸で泣き出してしまう。
「私がいた・・・・・・一族・・・・・・では・・・・・・一族の・・・・・・中でも選ばれた・・・・・・者しか・・・・・・教えられない・・・・・・そんな魔法が・・・・・・あるんです。私が・・・・・・興味本位で・・・・・・解析しようと・・・・・・魔眼を発動させたから・・・・・・それで、魔眼のことが知られ・・・・・・てしまって、気味悪がれて・・・・・・追い出さ・・・・・・・・・・・・」
「そっか・・・・・・うん。俺は、そんな事は思わないから・・・・・・大丈夫だよ」
そう俺は、慰め、安心させてあげる。なんだかんだで、1週間過ごした仲だ。悪い奴ならとうに追い出している。レイがいい娘だからこそ一週間過ごせたんだ。
泣き止んだのか、そっと俺から離れたレイはやがて真剣な表情になりこう言った。
「もし、カズキさんが望むなら、この【理解する魔眼】を契約で片目だけ譲渡できます。もちろんカズキさんの目が私の目となりますから、相応の痛みがあります。そして、もちろんリスクもあります。」
「リスク?」
「はい、契約で渡された魔眼と反対の目は、魔眼を使うたびに視力が落ちていきます。魔眼自体の視力は落ちませんが、反対の目は視力が落ち、最終的には失明します。」
確かにリスクだ。魔眼自体の視力は落ちないが、反対の生身の目の視力が落ちていくか。待てよ?もし失明した場合その後のリスクはどうなるんだ?
「なぁレイ。もし、反対の目が失明してしまった場合その後のリスクはないのか?」
「いえ、失明した場合は、魔眼を使うたびに体の一部の機能がなくなっていきます。その一部の機能とは人それぞれなので、私にもわかりませんが・・・・・・これが魔眼のリスクです」
「でもさ、そう簡単に俺に渡してもいいもの?」
魔眼とはいえ、自分の目と他人の目を交換するんだ。多少の抵抗感があるはずだ。
「えぇ、確かに魔眼とはいえ、私自身の目ですから、抵抗感はあります。けれど、私を助けてくれたカズキさんに何かお礼をしたいんです。それが私の場合は、たまたま魔眼の譲渡だったという形なんです。」
そうレイが言った後の顔にはなにか決意を持った表情になっていた。そんな顔を見せられたらなぁ・・・・・・こっちも覚悟決めなくちゃいけないじゃないか・・・・・・
「そうか・・・・・・んじゃ契約するよ」
レイは俺が、即決で決めたことに軽く驚いていたが、落ち着きを取り戻し、再度警告をした。
「そうですか・・・・・・視力や身体機能を失っていきますけど・・・・・・いいんですね?」
「大丈夫でしょ。それに」
「それに?」
「それに家には優秀で美人な優しい家族が一人いるから、何かあったら頼りにするさ!」
レイは唖然としていたが、次の瞬間には笑いながら俺の意見を了承してくれた。
「わかりました。もちろん責任をとってお世話いたします!」
「よし!いい返事だ!・・・・・・なら契約するぞ」
お互い真剣な表情になり向き合う
「ハイ、第1章・血の契約」
互いの親指を軽くナイフきり、切り口を合わせ、互いの血を混ぜる。
「第2章・魔眼開放」
レイの両目が青色から紫色に変わっていく。
一瞬不安そうな目で俺を見るが、笑顔を見せて安心させてあげる。
「第3章・移植・・・・・・目を閉じて額を合せてください」
レイの言うとおり目を閉じて、額を合せる
「いにしえの契約によりかの者に魔眼を授ける。苦しみと懺悔を負う覚悟がある者にこの魔眼を授けよう。汝の思いを、今我に示せ・・・・・・魔眼、移植」
すると、俺の右目が熱くなり、そして激痛が襲う。
「ア・・・・・・アアグガァァァァ!!!」
額を離そうとしても動けない。その場に足が張り付いたように足が上がらなくなり、額もまるで両方から吸い付いてるように離れなくなっていた。全身から吹き出る汗。早く終わってくれ、ただそれだけしか思えなくなってくる。そして
「接続・・・・・・第4章・魔眼覚醒」
そして、その言葉を最後に俺の意識は、暗闇へと消えた。
説明 | ||
とある世界で、鍛冶屋を営んでいる青年には秘密があった。 そして、青年は出会う。女の悪魔に。 また女の悪魔もであった。自らの運命を導く、秘密を持つ青年に。 二人は出会い、そして歩んでいく……運命に向かって。 |
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