あめのくる音がする |
会社の帰り、いつもの停車場でバスを降りた。
暗いアスファルトの地面に足をつけたとたん、
夜の冷たくなった風が耳の横を通り抜けた。
(あ…)
少し、水気を含んだような風に髪を乱されながら、
暗い地面を目で追う。
夜色に染まった靴が、先行して歩いた。
(…あめがくる)
知ったかぶって、笑みを唇にのせて、
「あめがくる、音がする…」
声に出して、上を見上げた。
雲ひとつない空には、星が小さく瞬いた。
…のは、みなかったことにして。
「あめがくる音がする」
ひそやかに、おごそかに、
まるで予言をするかのもう一度口に出して、
暗い家路を、いそいだ。
結局、雨なんて降らなかったけど。
説明 | ||
小説というか、文章。 あめのくる音がする。 耳元で風がなって、雲が通り抜ける。 気のせいかもしれないけど。 |
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