真・恋姫†無双〜二人の王佐〜一章第十話 「一刀の決意」 |
一刀と風里が結婚式を挙げることになって三日、ついに式当日になってしまった。
「結局何も打開策が見つからなかった」
「そ、そうですね…////////(も、もしかしてこのまま一刀さんと結婚しちゃうのかな?ドキドキ!!)」
日も沈み夜と言ってもいい時刻、一刀は風里と共に式に出る為、楓に指定された場所に来ていた。もちろん出ないという手もあることはあったのだが、だがもしここで逃げ出してしまえば風里だけでなく母親の楓さんまで恥をかいてしまうため、一刀にはその選択をすることが出来なかった。
「来てくれてうれしいわ一刀くん!」
「そうなるよう仕組んだのによく言いますよ」
「ふふっ、そんなつれないこと言わないで♪私はただ貴女達を祝福したいだけなんだから!」
「もう!!お母さん、私はそんなこと頼んでないもん!!」
「はいはい、とりあえずもうあまり時間がないから着替えていらっしゃい!貴女たち、二人をそれぞれの控え室に連れていきなさい!」
「「かしこまりました」」
「ちょっ!?」
「お母さん!まだ話終わってないですよ!!」
「話なら式が終わった後にゆっくり聞いてあげるわ」
一刀と風里の言い分もあっさりかわされてしまいあっけなく侍女達に連れて行かれてしまった。
「二人の方はこれで準備大丈夫ね。あとは…………あの娘達ね。警備の方はどうなっているかしら?」
「はっ!警備兵についてですが全員配置についており、万全の警備状況です!」
「そう、本殿と寝所の周りは特に警戒するようにね」
「はっ!」
連絡役の兵士が下がると入れ替わりに美雷が入ってきた
「楓様どうですか?警備の状況は」
「完璧よ。この厳重さなら貴女の教えてくれた娘達が式を妨害することはできないはずよ」
「そうですか…ですがお気をつけ下さい。なにせ桂花ちゃんは将来、兄である一刀君を支える為“だけ”に色々と勉強してきた娘ですからどんな手を使っても取り戻しにくるはずですから」
「そう、ありがとう。肝に銘じておくわね」
「それじゃあ私は風里ちゃんの様子でも見てきます♪」
ばたん
「さて、この警備状況でどうするのか、お手並み拝見ね」
一方その頃、桂花達はというと…
「狭いですわ!!一体いつまでこんな所にいればいいんですの!!」
「静かにしなさい!!」
すでに敷地の中にある箱の中に隠れていた。
「それになぜわたくしたちはこの小さい箱で三人なのにあのもがもが…」
「………(イラ)」
「黙りなさいって言っているでしょう!兵士に気付かれるじゃない!」
「もがー!もがが、もがー!!」
「ウルサイワヨ」
「!?す、すみませんでしたわ」
「ワカレバイイノヨ(訳:分かればいいのよ)」
桂花の鶴の一声で麗羽は大人しくなったのには訳があった実はあの日から桂花は怒り状態が続いており一言しゃべるだけでも十分迫力があるのだった。
「桂花、作戦実行まであとどれ位待てばいいのかしら?」
「ソノウチアイズガアルカラソレマデマッテイナサイ(訳:そのうち合図があるからそれまで待っていなさい)」
だがそんな状態の桂花にも臆せず華琳は小声だが普通に話しかけた。
「合図って誰が出すのよ」
「ワタシノオクリコンダカンチョウヨ(訳:私の送り込んだ間諜よ)」
「間諜って一体いつの間に!」
「キノウヤトッタノヨ(昨日雇ったのよ)」
「さすがね」
「トウゼンヨ。オニイサマヲスクイダストイウモクテキノアルワタシニワタシニフカノウハナイワ(訳:当然よ。お兄様を救い出すという目的のある私に不可能はないわ)」
「そう、それならその合図が来るまで待ちましょうか」
「ソウネ」
「(華琳さんったらあの状態の桂花さんと普通に会話できるなんて凄いですわね…)」
そして約半刻後、
「賊だーーー!!賊がいたぞーーーー!!」
「「!?」」
「アイズダワ(合図だわ)」
「あれがそうなの?」
「ソウヨ。ソレジャアテハズドオリニイクワヨ(訳:それじゃあ手はず通りに行くわよ)」
こうして“二つ”の箱から抜け出した桂花達はそれぞれの目的の為、行動を開始したのだった。
「楓様!ご報告します!!」
「どうしたのかしら?」
「賊が入ったとの報告が!!」
「賊ですって!?」
「はい、それで今数名の者が賊の探索をしています」
「そう……!?(こんな時に賊?そんな都合のいい話があるかしら……まさか!?)」
何かに気づいた楓は連絡役の兵士に尋ねた。
「賊の姿を見た兵士はどこの誰だかわかるかしら?」
「いえ、詳しくは、突然賊が出たと声があがったのでどこの誰が声をあげたのかまでは……」
「なら賊を探す必要はないわ!!それは囮よ!!そんなことより新郎のいる部屋の向かいなさい!!おそらく本当の賊はそこにいるはずだわ!!それとこのことは新郎と新婦には気付かれないようにしなさい!!」
「御意!!」
「ふふっ、所詮子供の浅知恵ね。残念だけど一刀君は風里のお婿さんになってもらうわ!」
そう言いながら楓は部屋を出て行った。途中美雷も合流し向かっているとまたも伝令が来て、
「諸葛礼様、頭巾を被った者と外套を頭まで被った怪しい三人組を発見したのでただ今追跡しております。いかだいたしましょう?」
「ねぇ、ねぇ、もしかして猫の耳のようなもののついた頭巾?」
「おそらく…」
「なら、それは桂花ちゃんだね♪」
「そう、ならおそらくその三人組が例の賊よ!まだ子供だけど全力で捕まえなさい!!」
「御意!!」
「それじゃあ私達もいくわよ!」
「は〜い♪」
「いたぞーー!!」
「追えーーーーー!!」
「アラ、モウミツカッテシマッタノネ。ショウガナイワネ、アナタタチニゲルワヨ(訳:あら、もう見つかってしまったの。しょうがないわね、あなた達逃げるわよ)」
「「(コクン)」」
桂花達は見つかってしまったので隠れるのを止め、一気に一刀のいる部屋へと走り出した。
「ハァ、ハァ、モウスコシデツクワ。ソレマデガンバリナサイ!(訳:はぁ、はぁ、もう少しで着くわ。それまでがんばりなさい!)」
「「はぁ、はぁ(コクン)」」
しかし部屋が見えたところで楓と美雷が立ち塞がり、あっという間に包囲されてしまった。
「残念だったわね♪外套なんて被っていても貴女達の正体はお見通しよ!曹操ちゃん、袁紹ちゃん!それと猫の耳ののついた頭巾を被っているのが荀ケちゃんよね?」
「アラ、ヨクワカッタワネ?トイッテモソッチニハミカミナリガイルカラトウゼンヨネ(訳:あら、よくわかったわね?と言ってもそっちには美雷がいるから当然よね)」
「あははははっ♪ごめんね桂花ちゃん♪」
「それと貴女の作戦もなんてお見通しよ!賊が侵入したと嘘の声を上げて兵士を混乱させ、その隙にお兄さんを取り戻そうって魂胆だったのでしょうけど私には通用しなかったわね♪」
楓は勝ち誇った顔で桂花に向かってそう言ったが当の本人の桂花は何でもないとでも言うように
「ナニイッテルノカシラ?ショウブハフタヲアケルマデワカラナイモノヨ?オ・バ・サ・ン♪(訳:何言ってるのかしら?勝負は蓋を開けるまでわからないものよ?お・ば・さ・ん♪)」
「(ムカチーン!!)そう、なら引導を渡してあげるわ!!あなた達、その娘達を捕まえなさい!!」
「御意!!全員掛かれーーー!!」
楓の指示により兵士が桂花を捕まえようとしたが……
「アマイワヨ。フンッ!!(訳:甘いわよ。ふんっ!!)」
スッ
「えっ?」
桂花は兵士の手をかわし、両袖から何重にも折り畳まれた棒を取り出して結合し一本の長い棒にすると、
「ハァッ!!」
ドカッ!!
「グエッ!?」
ドサッ
「オトコガワタシニサワルンジャナイワヨケガラワシイ!!コノヨデユイイツワタシニフレテイイノハオニイサマダケナノヨ!!ハァ〜〜!!(訳:男が私に触るんじゃないわよ汚らわしい!!この世で唯一私に触れて良いのはお兄様だけよ!!はぁ〜〜!!)」
ドカッ!
ドカッ!
兵士を次々と倒していった。
「わ〜桂花ちゃんやるな〜♪」
「やるわね、子供だと思って甘く見ていたわ。それならこちらもそれ相応の対処をしないとね…全員に通達!武器の使用を許可するわ!ただし、使うのは棒のみよ!とはいえ相手は子供、なるべく手荒なことはしないようにね!ただ武器を取り上げて拘束するだけでいいわ!」
「御意!!」
「チッ!ブキヲツカワレルノハヤッカイネ(訳:ちっ!武器を使われるのは厄介ね)」
「「!?」」
兵士達の雰囲気が変わった事に気付いた桂花は警戒を強めたが後ろの二人は慌て始めてしまい、そして…
ギュム!
「「きゃん!?」」
二人一緒に外套を踏んづけてしまい派手に転んでしまった。
「チョット!?アンタタチナニコロンデイルノヨ!サッサトオキテ…………(訳:ちょっと!?アンタ達何転んでいるのよ!さっさと起きて…………)」
桂花は振り返った所で声を失ってしまった。なぜなら…
「痛いよ〜!」
「あいたたたたっ、もう〜足擦りむいちゃったじゃない!!」
頭に被っていた外套が外れてしまい二人の素顔が出ていたからだった。だが、普通ならここで楓は追い討ちを掛けようとするのだが、美雷が呟いた一言で楓も動きを止めてしまった。
「えっ!?華琳ちゃんと…麗羽ちゃんじゃ…ない!その二人は私達と同じ私塾の学生です!!」
「なん……ですって!?」
「ドウヤラバレチャッタミタイネ。ナラサクセンドオリテッシュウスルワヨフタリトモ!(訳:どうやらバレちゃったみたいね。なら作戦通り撤収するわよ二人共!)」
「ぐすっ、は〜い」
「うん、わかりました」
「はっ!?ちょっと!どういうことよ!残りの二人はどこにいるのよ…!?まさか!!」
「フフフッ、サテドコカシラネ?ハッ!!(訳:ふふふっ。さてどこかしらね?はっ!!)」
楓が動揺している為、包囲網が乱れので桂花はその中で一番薄くなった場所に突撃をかけた。
「しまった!?」
「ワタシノヤクメハオワッタカラモウカエルワ。ソレジャアネ(訳:私の役目は終わったからもう帰るわ。それじゃあね)」
桂花はそう言うと二人と一緒に出口へと走っていった。
「諸葛礼様!追いますか?」
「そうね……兵の半分を向かわせなさい!残りの半分は私と一緒に残りの二人を追うわ!場所はおそらく……“私の娘の所”よ!!」
時間を少し遡り桂花が兵達に見つかり追い掛け回されている頃、当の華琳と麗羽はというと風里、花嫁のいる部屋の扉の近くの茂みの中にいた。
「どうやら桂花の作戦は上手くいっているようね」
「…………」
さっきまでいた見張りの兵士数人も楓の命で桂花達を探しにいったため、今扉の前にいる兵士は一人になっていた。
「一人だけなら余裕でなんとかなるわね」
「…………………」
「それじゃあ……」
「………………………………」
「あーーーー!!もう一体何なのよ!さっきから不機嫌そうな顔しちゃって、言いたいことがあるならさっさと言いなさいよ!!」
「なら言わせてもらいますけど、どうしてこのわたくしがこんな地味で目立たない役をしなければならないのですの?これなら桂花さんの所のほうが絶対に目立ちますのに!!」
「それは何度も話したでしょう?あまり運動の得意でない貴女がやるよりも、あの特徴的な頭巾を被っていて、まだ最近始めたばかりらしいけど武術もできる桂花の方が適任なのよ」
「ですがやっぱり納得できませんわ!」
「あのねぇ、もう作戦は始まってるのよ?いまさら駄々を捏ねないでもらえる?それよりも兵士が背を向けたわ!行くわよ麗羽!!」
「ちょ、ちょっと華琳さん!?」
華琳は草むらから飛び出すと素早く背を向けている兵士に殴りかかり気絶させた。
「麗羽、お願いがあるのだけど外で誰か来ないか見張っていてもらえるかしら?」
「な、なぜわたくしがそんな下っ端がやるようなことをしなければならないです?そんなの華琳さんがやればいいんですわ!」
「そう、それじゃあもしこの策が失敗したら麗羽、ア・ナ・タ・の所為ということになるけどいいわね?」
「えっ!?そ、それは……」
「そうなったらきっとあの娘、貴女を一生許さないでしょうねぇ?」
「(ビクッ!?)」
「大好きなお兄様を救い出せなかった怒りを全部貴女にぶつけるかましれないわね?」
「わ、わたくしなんだか無性に見張りがしたい気分なので風里さんを連れ出す役目は華琳さんに譲りますわ!!」
「そう?なら見張り役はまかせたわよ♪(やっぱり麗羽って単純ね)」
そう言うと華琳は部屋の中に入っていった。
部屋の中には青い帳の下がった寝所があり、そこにはすでに花嫁衣裳に身を包んだ風里が座っていた。入ってきたのが華琳だとわかると一瞬驚いたような反応をしたがすぐに元の表情に戻り
「やっぱり来ましたね華琳さん」
「当然よ。こんな一刀の意思を無視した結婚なんて認められるわけないじゃない。私達はこの結婚式をぶち壊しに来たのよ」
「そう、ですか……当然ですよね。そういえば桂花さんと麗羽さんはどちらに?」
「麗羽は外で見張りをしていて、桂花は囮として貴女のお母さんとやりあっているわ。私は風里、貴女を攫いに来たの」
「えっ!?な、なぜ一刀さんではなく私を?」
「向こう、つまり貴女のお母さんはおそらく私達が一刀を奪いにくると思っているからその裏をついて貴女を攫いに来たのよ。二人のうちどちらかがいなければ式は出来ないでしょう?」
「それはそうですが……」
「それに一刀の性格だと貴女のお母さんに悪い、とか言って一緒に来てくれなそうだしね」
「あぁ〜、一刀さんなら言いそうですね…」
「そういうわけで貴女には無理にでも一緒に「いいですよ」来てもらうわ。って、ええっ!?貴女、今いいって!」
華琳達は風里が抵抗するものだと思っていたので風里の言葉に驚いてしまった。
「はい。私、華琳さん達についていきます」
「貴女はそれでいいの?お母さんを裏切ることになるわよ?」
「構いません。私もこんなやり方で一刀さんと結婚するのは不本意ですから」
「えっ!?まさか貴女本気で!?」
「はい、私も一刀さんのことが好きになりました」
「はぁ〜〜〜、また一人犠牲者が出たのね。一刀ったら本当に天然の女たらしなんだから。あと一体何人の女の子を惚れさせる気よ!まったく!!」
「そういう華琳さんも一刀さんのこと好きなんですよね?」
「ばばっ、馬鹿言わないでもらえるかしら!わ、わわっ、私はただ純粋に一刀が優秀だから私の部下にしたいだけで好きとかそういうのじゃ…」
「ふふっ、はいはい。今はそういうことにしておきますね。でもそんなことばかり言っているとそのうち誰かに一刀さん取られちゃいますよ?」
「そ、そんなことよりさっさと行くわよ!多分桂花の方もそろそろ限界だと思うし、もしかしたらこちらの策を見破られる可能性もあるのだから急ぐわよ!」
返答に困った華琳は急に話題を変え、風里を急かした。
「それなら上に何か羽織らせてください。このままだと恥ずかしいので…」
よく見ると今風里が着ている服は和服の襦袢(じゅばん)に似た真っ白の服で暗がりの中なら問題無さそうだが明かりを照らすと中の下着が透けて見えそうだった。
「わかったわ。なら早く何でもいいから羽織りなさい!」
「ありがとうございます華琳さん」
華琳が準備が終わった風里を連れ外に出ると、麗羽が苛立った様子で立っていた。
「華琳さん!!遅いですわよ!!一体何をしていたんですの!!」
「風里と話をちょっとね。そんなことより風里を確保したから気付かれる前にここを出るわよ!!」
「わかりましたわ!!」
こうして見つからないよう移動を開始していた華琳達だった………………が、いつの間にか
「あっちだー!探せー!」
ザッ、ザッ、ザッ
走っていた。しかも全速力で
「華琳さん!!なぜわたくし達は走っているのですの!!」
「そんなの麗羽、貴女があそこで声をあげたからでしょう!!!」
「ふみゅぅぅぅぅぅ!!!!」
実は移動中、兵士が来たので茂みの中で身を潜めていたのだがいきなり麗羽が大声をあげてしまい、見つかってしまったのが原因だった。
「わたくしの所為ではありませんわ!悪いのは全部あの時わたくしの目の前に現れた虫がいけないのですわ!!」
「そんなの無視しなさいよ!!あ〜もう、桂花の囮のお陰で見張りの人数が減っているからもう少しでやり過ごせたかもしれかったのに全部台無しじゃない!!」
「そんなのって!あの虫わたくしに噛み付こうとしていたのですわよ!!この名門袁家の次期当主のこのわ・た・く・し・に!!」
「わかったわよ。大変だったわね…これでいいでしょう?そんなことより今はこれからどうするかよ。いっそのこと、二手に別れてみる?」
「そう言ってわたくしを囮にして逃げる気ですわね!そうはいきませんわよ!!」
「ならあそこの角を曲がって一旦体制を……」
「華琳さん……」
華琳が言葉を続けようとした時、ふと麗羽が走るのを止め、立ち止まってしまった。
「何よ?急に立ち止まっちゃって、早く走らないとまた見つかるわよ!」
「わたくしもう疲れましたわ」
「はぁぁぁぁ?麗羽、貴女今そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?」
「疲れましたわ!つーかーれーまーしーたーわ!!もう一歩も動けないですわ!ですので華琳さん、わたくしを背負いなさい!!」
「馬鹿言わないで!!ただでさえ私は風里の手を引いて走っているのよ!ったく…なんで私達は麗羽を今回の策に参加させてしまったのかしら…本当に失敗だったわ」
「ご迷惑かけてすみません華琳さん…」
「気にしないで。逆に感謝しているのよ?本当は貴女を昏倒させて運ぶか無理やりにでも脅して連れていくはずだったから自分の意思で走ってくれたから結構助かっているのよ私は」
「そう言ってもらえると私も助かります」
「そういうわけだから貴女も自分の足で走りなさい麗羽!」
「嫌ですわ!!」
「あのねぇ…(イライラ)」
そう言ってると近くから兵士の声が聞こえてきた。
「どこにもいないぞ!!」
「もっとよく探せ!おそらくこの近くにいるはずだからな!!」
「ああ!」
「くっ!しょうがないわね。こうなったら……す〜〜」
すると華琳は何を思ったか大きく息を吸い込み…
「見つけたぞー!ここだーー!!」
大声で自分達の居場所を叫んだのだった。
「ふぅ〜さて、早く逃げないと大変なことに……」
そう言いながら麗羽の方を見ると…
「早く逃げますわよ華琳さん、風里さん!!」
すでに麗羽は走り出していた…しかも凄い速さで……
「……………何よ、まだちゃんと走れるじゃない」
「………ですね」
「それじゃあ私達も行きましょうか」
「はい」
そして苦労の末、式場の外に脱出することに成功した華琳達は桂花との待ち合わせ場所である裏の小屋に着いた。
「ここに桂花さんがいるんですか?」
「そうよ。桂花、私よ、華琳よ、入るわね!この小屋は私の知り合いの人のものなの。だから…」
この時、華琳はすっかり油断していた。なぜならこの小屋は雫の持ち物で中には桂花と今回の策に協力してくれた娘達しかいないと思っていたのだ。なので…
ヒュン!
「なっ!?」
ドスッ!!
「ぐふっ!」
扉を開けた瞬間に出てきた棒を避けることができなかった。
「「華琳さん!?」」
「がはっ、一体なんなのよ。悪戯にしては趣味が悪いわよ桂……」
そして吹き飛ばされた華琳が頭を上げるとそこには桂花ではなく兵士と知らない男が立っていた。
「遅かったね?待ちくたびれてしまったよ全く!!」
「げほっ、貴方一体誰?それに桂花達をどこにやったのよ!!」
「あ〜この小屋にいた小娘達か!ならちゃんと中にいるよ?」
そう言うと中から兵士に捕まり猿轡をされた桂花達が出てきた。
「むががががっ!ぷはっ、華琳!!風里を連れて逃げなさい!!こいつは元「何勝手に話してるんだ!!」むがむが…」
「静かにさせろ!!」
「はっ!」
パシンッ!!
「きゃっ!?」
「「桂花ちゃん(さん)!!」」
「ちょっと!!やめなさい!!」
「いいぜ、止めてやるよ!そのかわり、君の後ろにいる僕の許婚を渡してもらおうか!!」
「えっ?」
「わ、私の許婚ということは貴方様が劉璋(りゅうしょう)様?」
「そうさ!僕が君の許婚の劉季玉さ!」
「そうだったんですか…」
「貴女、許婚の相手の顔を知らないの?」
「は、はい、実は一度も会ったこと無かったので……」
「それならなんで彼は貴女の顔を知っているのよ?」
「な、なぜでしょう?」
「そんなの僕が君のことを見に行ったことがあるからに決まっているじゃないか!!」
「「「えっ!?」」」
「そんなことより!さあ、僕の下に来るんだ諸葛誕さん!!そうすれば君のお友達を解放してあげよう」
「で、ですが…許婚の話は既に無くなったはずじゃ?」
「そんなの僕は認めていない!君は初めから僕のものなんだ!!」
「それは貴方の勝手でしょう?それに風里にはすでに貴方以外に好きな人がいるのよ。だから諦めなさい!」
「なんだと!?一体誰なんだ…まさか!!今夜君と結婚するはずだった荀鳳とかいう男ではないだろうな!!」
「(コクリ)」
「そういう訳だから諦めて桂花達を離してさっさと国に帰りなさい。そうすれば今夜のことは無かったことにしてあげるわ。それに早くしないと一「ふふふふっ」んっ?何がおかしいのかしら?」
華琳が一刀にこの事が知られないよう話をまとめようとしたら急に劉璋が笑い始めた。それを隣で見ていた桂花が何かに気付き、
「ぷはっ!だから逃げなさいって言ってるでしょ!!こいつはそんなこと関係ないのよ!!こいつは元々風里、アンタと無理やり結婚する為にここに来たんだから!!」
「なんですって!?」
「ふははははははっ!!!そうさ!!僕はその為に来たんだ!!君の都合なんて関係ない!ただ君は黙って僕の妻になればいいんだよ“風里”」
「貴方!!ふざけるのもいい加減にしなさい!!」
「別にふざけてないさ!風里と僕は夫婦になるんだ。真名で呼び合うくらい当然だろ?」
「許されていないのに真名を勝手に呼ぶなんてよほど死にたいのかしら?」
「(ぶるぶる)」
「最低ね、死ねばいいのに…」
「そうですわね、本当に最低な方ですわね。こんな人があの一刀さんと同じ男性だと思うと気分が悪くなりますわ!」
華琳は怒りを露にし、風里は許可していない者に呼ばれた為恐怖で怯え、桂花はただ一言呪詛を呟き、麗羽は嫌悪感を覚えていた。
「おやおや貴女までそんなつれないこと言わないでくださいな袁紹殿!貴女は僕と同じ選ばれた者なんですから仲良くしましょう!」
「おーっほっほっほ!!貴方とこのわたくしが同じですって?冗談を言わないでもらえます?わたくしは人の真名を許可無く呼ぶほど愚かではありませんわ!ですから貴方とわたくしを一緒にしないでもらえますかしら!!」
「そうですか…ならしょうがありませんね。所詮貴女はただの三公を輩出しただけの袁家の者。やっぱり皇帝の血族である僕の足元にも及ばない低俗な人間なんですね」
「なぁぁぁんですってぇぇぇぇ!!!!!」
「麗羽、こんな奴の話を聞くだけ無駄よ」
「そうそう、貴女の事も知っていますよ曹操さん!」
「なんですって?」
「貴女のお母様、曹嵩様でしたっけ?自らの体を売って大鴻臚になったんでしょう?」
「なっ!?」
「だから貴女もそのうち母親と同じように自らの体を売ってのし上がっていくんでしょう?大変ですねぇ〜」
劉璋がそう言った瞬間華琳の周りの空気が変わった。覇気ではなく黒い殺気の塊が華琳の周りから溢れてきた。
ここはとある場所
ピキ――ン
「!?この気は華琳か?でも………………………………………………んっ?誰だ!!」
「殺す!!!!!」
「おやめなさい華琳さん!!」
どこから取り出したのか華琳の武器の〔絶〕を手に今にも飛びかかりそうになったので慌てて麗羽が羽交い絞めにした。
「離しなさい麗羽!!!!アイツは私とお母様を侮辱したのよ!!万死に値するわ!!八つ裂きにしてやるわ!!!!」
「いつも冷静な貴女らしくはありませんわよ華琳さん!!今この人を殺せば貴女だけでなくお母様まで首を切られてしまいますのよ!!」
「くっ!でも…」
「でもじゃありませんわ。それにもし華琳さん、貴女が人を殺したら一刀さんが悲しみますわよ?それでもいいのですの?」
「一刀が?」
「そうですわ」
麗羽は泣いている子供をあやすかのように華琳に優しく話した。すると華琳の放っていた殺気が徐々に収まり、やがて消え去った。
「ありがとう麗羽。もう大丈夫だわ。離してもらえるかしら?」
「本当に大丈夫ですの?」
「安心しなさい。もう我を忘れていないわ。それにあんな屑、殺す価値もないことに気付いたから大丈夫よ」
「そうですの。それはよかったですわ」
「酷い言いようだ。それより話は終わったかな?ならさっさと風里を渡してもらえるかい?」
「それはさっきも言ったけど「見つけたわよ!貴女達!!」あら?」
声のする方を見ると風里の母こと楓が息を切らしてこちらに来ていた。
「はぁ、はぁ、やってくれたわね貴女達!でも、もうおしまいよ!って貴方様は劉璋様!?」
劉璋の存在に気付いた楓はすぐに跪いた。
「失礼しました。ところでなぜこちらに?」
「そんなの一つしかないだろう?お前の娘のことだ」
「で、ですが…先に伝えた通り、すでに娘は嫁ぎ先が決まったので劉璋様と娘の婚約は解消され白紙になったはずじゃあ!!」
「誰がそんなこと言ったんだ?僕はそんなこと認めていないぞ?」
「し、しかし!!そもそも、この話は風里に好きな人が現れたら無かったことになるはずでは!劉璋様のお母上の劉焉様はしかとお認めに…」
「そんなの関係ないね!!僕は風里を妻にすると決めたんだ!!」
「ですがすでに娘は荀鳳という若者と婚約を…」
「ああ、先ほどからこいつらが言っている男か。でも残念だがその男なら今頃死んでいるだろうな!」
「なんですって!それは一体どういうことよ!!」
「そんなの簡単だ。先ほど俺がそいつに向かって暗殺指令を出した。実行するのは我が劉家を今まで守ってきた隠密部隊だ!」
「そんな!!」
「お、お兄様、いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「はははははっ、安心しろ死体はちゃんと持ってくるよう命令してある。だからもうすぐ僕の部下達が戻ってくれば…」
シュタッ
その時一人の全身黒尽くめの男が劉璋の隣に降り立った。
「ほら戻ってきた。ん?お前一人か?他の者と男の死体はどこにあるんだ?」
「も、申し訳…ありま…せん…劉璋様…」
「…何?」
劉璋は一刀の死体のことを聞こうとしたが、男はふらつきながら謝罪の言葉を口にした。
「あの…男は…化け…物で…す。私…達が束になっても…」
そこまで言うと隠密の男は倒れてしまった。劉璋が驚いた顔をしていると突然上からまた何かが大量に降ってきた。
「なんだこれは?ってこいつらは僕の送った隠密達!!一体誰がこいつらを…」
言葉を続けようとすると今度は“もの”ではなく“声”が聞こえてきた。
「そっか、彼らは君の部下達か」
「「「「「「「!?」」」」」」」
みんなが声のする方を見ると塀の上に一人の男が立っていた。
「お、お兄様!!!!」
「一刀!!!!!」
「「一刀さん!!!!」」
「「一刀君!!!!」」
「なん、だと!?」
劉璋は事態が呑みこめないのか口を開けて立ち尽くしていた。
「あれ?なんだみんないるじゃないか一体どうし…」
初めはいつもの様子で話していた一刀だったが縛られた桂花、そして絶を持っている華琳を見て目が険しくなった。
「か、一刀!落ち着いて聞いてちょうだい実はこれには訳があるの…」
しかし一刀は華琳の方を向かずそのまま地面に降り立つと真っ直ぐ桂花の下に歩き始めた。もちろん愛刀の黒牙刀を手に持ったまま…
「待って一刀!!話を聞いて!!」
「……」
「何言ってるんですの?一刀さんが桂花さんを助けようとしているのですからそんなに慌てなくても…」
気楽に、そして期待するように麗羽が言うと華琳はさらに焦った感じに言った。
「だからよ!!ここままでは一刀がまた暴走してしまうわ!!」
「暴…走ですの?」
「そうよ!!以前暴走した時は大竜巻を起こして公園を無差別に破壊したわ!!」
「なんですって!?」
「多分、また暴走したら今度は人を殺してしまうかもしれないわ!」
「そんな!!」
「だから私は今必死に止めようとしているのよ!!だから邪魔しないで!!」
「は、はいですの…」
事の重大さに気付いた麗羽は華琳の邪魔をするのを止め、再び一刀を見た。
「一刀!!安心して!!桂花は大した怪我をしていないわ!それに彼らはこれから桂花を解放しようとしていたのよ!だから何もせず、ただ桂花を連れて行くだけでいいのよ!!」
「…………………」
一刀は一瞬、華琳の方を見ただけで止まらず歩き続けた。そして気付くと桂花まであと十歩ほどになっていた。
「はっ!?な、何やっている!!そいつを人質に近づけさせるな!!」
「やめなさい馬鹿!!」
劉璋がそう命令を下すが実際、兵達は動くことができなかった。なぜなら、死地を潜り抜けたとか、もう何百人も殺している猛者ではないとはいえ彼らは一応、武を志す者達。なので対峙しただけで絶対に勝てないのを瞬時に理解してしまったので動くことができなかった。これは頭で理解したのではなく、人が生きようとする生存本能がもし立ち塞がったら最後、一瞬で殺されると告げていたからだった。
コツッ、コツッ、コツッ
そして一刀以外誰も動けないまま桂花の目の前に着いた。一刀は桂花を縛っている紐を持っていた兵士を見た。すると兵士はまるで妖術にでも操られたかのように突然、桂花を縛っている紐を解き始めた。そして紐を全て解くと一目散に逃げていった。
「お待たせ桂花。怖かったろう?大丈夫だったかい?」
「は、はい。お兄様?????(あ〜〜〜すごく幸せ?????もう他のことなんてどうでもいい…)」
一刀は桂花を抱き寄せ頭を撫でてあげた。もちろん桂花の目からは大量のハートが飛び出していたが…
「お、お前達!!何をしている!!こいつをさっさとこ、殺してしまえ!!」
劉璋が喚き散らすが兵士達は誰も動こうとはなかった。なぜなら桂花を助け出したので一刀からは先ほどのような感じはしないのだが、さっきの恐怖を体が覚えてしまい一刀に武器を、しかも殺そうとする気が起きなかったのであった。
「はぁーーーーーーーーー寿命が縮んだわ。それにしてもあの男、本当に馬鹿なのね…」
「華琳さん?」
「少しでも武を学んだ者なら今のあの発言は絶対にしないわね。私だって命が惜しいもの…」
「そ、そこまで凄かったんですの?先ほどまでの一刀さんは…」
「……麗羽、貴女袁家の次期当主として、学問だけでなく武術も習っているんじゃないの?」
「わ、わたくし汗臭いことはしない主義ですの!」
「はぁ〜、そう、なら教えてあげるわ。あのね、さっきまでの一刀だったら私も含めここにいる人間は全員一瞬で殺せるくらいの勢いだったのよ」
「そんな大げさですわ華琳さん!」
「残念だけど冗談ではないわ。そうね…もし私達があの男の仲間で桂花が今よりもっと怪我していたと仮定するとまず間違いなく全員ここで死んでいたわね」
「……そ、そこまでですの?」
「一刀にとって家族は何事にも変えられない大切なものなのよ。そして、もしそれを脅かすものが現れたとしたら一刀は全力で叩き潰すでしょうね…」
「一刀君ってそんなに凄かったんだ…」
「一刀さん…」
「………さて劉璋殿、貴方の兵達は戦意を無くし、人質もすでにこちらにあるわ。これでもまだ続ける気かしら?」
「くっ!…………(一体どうすれば……んっ?そうだ!!)……ふっ、その前に一つ質問がある」
「あら、何かしら?」
「彼女、かざ「(ギロッ)」諸葛誕と彼は本当に付き合っているのか?」
「えっ!?な、何よ突然!!」
「ふふっ、どうなんだ?」
「………」
「ふはははははっ!!やはりな!!やはり二人は付き合ってなどいない!!大方結婚をするのが嫌だったからこいつに偽の恋人になってくれと頼んだのだろう!!」
「くっ!」
華琳達は何も言えずただ黙っていることしかできなかった。
「ほ、本当なの?風里ちゃん!!」
「ごめんなさいお母様…」
「そんな…」
「ふはははははっ、ならそこにいる男との結婚は無くなり代わりに僕との許婚の話が復活だ!!」
「で、ですが…」
「見苦しいぞ!それにお前はすでに僕に嘘の報告をし、許婚の話を破棄させたという大罪を犯している。そんなお前に発言権があると思うなよ?」
「は、はい……申し訳…ありませんでした…」
楓は止めさせようとしたが劉璋が正しかった為何も言うことができなかった。
「そうだ!今から国に帰って結婚式をやろう!!丁度風里に着る服もあることだし式だって途中だったのだから構わないだろう!」
「し、しかし…」
「お前にはすでに発言権がないのだから黙っていろ!!」
「きゃっ!!」
「お母さん!?」
そう言うと劉璋は裾を掴んでいる楓を突き飛ばし歩き出した。
「さあ、行こうか風里!」
「い、嫌です!!」
「いいから来い!!」
劉璋が風里を無理やり引っ張って行く様子をただ見ていた一刀の下に華琳達が集まってきた。
「……一刀、どうするの?」
「それは…」
「お兄様…」
「一刀さん…」
「一刀君…」
そしてみんなと一緒に楓も一刀の下にやってきたと思ったらいきなり土下座をした。
「か、楓さん!!」
「お願い!風里を助けて!!」
「えっ!?」
「一刀君、私が調子のいいことを言っているのは十分わかっているわ。それに私が間違っていたということも…もう風里を無理やり結婚させたりはしないわ。あの娘の結婚相手はあの娘自身に決めさせるわ!!だからあの娘を、風里を助けて!!風里を救えるのは一刀君、貴方だけなの!!」
「楓さん………………………………………………………わかりました」
一刀は目をつぶり思案したあとそう呟いた。
「あ、ありがとう一刀君!!」
「お礼を言うのはまだ早いですよ楓さん」
「一刀、何か策があるの?」
「一応はね…でもこの策は風里の意思を確認しなければならない」
「風里さんの意思ですの?」
「ああ。この策が成功するとおそらく彼女の人生を僕が縛ることになってしまうかもしれない。だから彼女の意思をしっかり確認しないと…」
「じ、人生ですの!!」
「ちょっとそれって!?」
「それと楓さん、もしかしたら風里は僕が貰っていくかもしれませんが構いませんか?」
「一刀君!?それって一体どういう意味なの?」
「まずい!?早く追わないと手遅れになる!ごめんみんな詳しいことは後で話すよ!とりあえず僕は先に行くね!!
「お、お兄様!!」
「一刀!!」
そう言うと一刀は一人屋根の上に飛び乗って行ってしまった。
「貰っていくって……ま、まさかお兄様ったら風里と結婚するつもりじゃ!?」
「そんな!?」
「ど、どうかしら?」
「とにかく私達も追いましょう!!」
すると急いで一刀の所に向かおうとする桂花達に声をかけるものが現れた。
「あら、これは一体どうしたというのです?」
「えっ?あ、あなた様は!?」
一方、劉璋と風里はすでに街の外へ出る門まであと少しというところまで来ていた。
「ふふふふっ、あの角を曲がれば僕の馬車がとめてある。だからそれに二人で乗って国に戻り、そして盛大に式を挙げよう!」
「いや!!は、離してください!!」
「うるさい!! 」
バチン!!
「きゃっ!」
「お前はすでに僕のものだ!!口答えをするな!!」
「ぐすっ、助けてください一刀さん!」
「またアイツか!!なぜだ!僕の方が血筋も財力もあるのになぜアイツの名を呼ぶ!!僕の方が君に相応しいのに…………まっ、まさかお前、本当にあ、あの男の事が好きなのか!!」
「はい……すみません劉璋様、私はあの方を、一刀さんを心からお慕いしています」
「なん…だと!?」
「で、ですので劉璋様の想いに答えることが「ふふふふっ」劉璋様?」
風里の告白にショックで膝をつきが下を向いていた劉璋が突然笑い出した
「りゅ、劉璋様!?いかが致しましたか?」
「もういい」
「えっ?」
「もうお前の意思などどうでもいい!」
「劉璋様?何を言って…」
「風里、君の意思を聞くのはもう止めだ!こうなった君を無理矢理にでも僕のモノにしてやる!!そうさ!最初からそうすればよかったんだ。そうだな…まずは部屋を用意させよう、それと逃げないよう足枷をして……」
「そ、そんなこと許されるはずが…」
「許されるさ!僕は皇帝の血族で幽州の太守の息子だ!!誰も僕には逆らえない!!」
「そんな!?助けて一刀さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「ふははははっ!!無駄だ無駄だっ!!街中には別の場所に待機させていた兵達を配備したからそう簡単には…」
しかし街の外へ続く門への最後の角を曲がった劉璋が門の前で見たのは先ほど置いていったはずの一刀だった。
「一刀さん!!」
「な、なぜ貴様がここにいる!!街中には大勢の兵士達を配備したのだぞ!!しかもなぜ僕よりも先にここにいるんだ!!」
すると一刀は上を指差し、
「ああ、そんなの簡単だよ。上から来たんだよ」
「う、上だと!?」
「うん、上から屋根伝いに来たんだ。だから兵士とは一度も会わなかったし、君よりも早く着いたよ」
「そんな馬鹿なこと!!」
「そんなことよりも話がある」
「い、一体なんだ!!」
「風里を離してそのまま帰ってくれないか?」
「なんだと!!ふざけるな!風里は僕のものだ、僕の妻だ!!」
「だけど風里は君と結婚するのを嫌がっている」
「うるさい!そんなの関係ないね!!僕がそう決めたのだから誰にも文句を言わせない!風里も…そしてお前にも!!絶対にだ!!」
「そんなの絶対に間違っているよ」
「間違ってなんかいないね!僕は皇族の血を引いている選ばれしものだ!庶民のお前なんかよりずっと偉くて尊いんだ!だから僕が何をしてもそれは全て許されるんだ」
「そんなの関係ないよ!例え君が皇族の血を引いている選ばれしものだとしても、他人の人生を勝手に自由にする権利なんてないんだ!」
「うるさい!僕に命令するな!お前なんか僕の気分次第で殺すことも生かすこともできるんだぞ!」
「それこそ君の力では無理だね。僕は斉南国の太守、荀?の息子の荀鳳だ。だからそこいらの庶民の子供じゃないから僕は簡単には殺せないよ?」
「くっ!」
「もうやめよう?今ならおふざけで済むし誰も傷つかない。それにここは皇帝のお膝元である洛陽だ。こんなことバレたら君だってただでは済まないよ?」
「うるさい!うるさい!そんなの知るもんか僕は風里を妻にするって決めたんだ!!だから誰にも邪魔させるものか!!」
「そっか、なら仕方ないね。風里」
「な、なんですか一刀さん?」
「一つ聞いていいかな?」
「お、おい勝手に僕の妻に「少し黙っていてもらえます?」ひぃ!!」
「は、はい」
「風里は僕のことをどう思っているかな?」
「えっ!?どうって?」
「好きとか嫌いかってことだよ」
「ふみゅ〜〜〜〜〜!!!!!な、なんで今いきなりそんなことを?」
「大事なことなんだ。だから答えてくれ!」
「は、はい!え〜っと(ふみゅ〜〜〜〜〜!!!何?なんですかこれ?何でいきなり私の気持ちなんて知りたがるんですか一刀さん?はっ!も、もしかして一刀さんったら本当に私と結婚してくれるんじゃ!ってことは一刀さんは私のことが好き!!ふみゅ〜〜〜〜〜!!!どうしよう、どうしよう!!嬉しすぎだよ〜〜〜////////)」
「風里?大丈夫かい?」
「は、はい!!(そうだ、答えないと!好きですって伝えるんだ私!!)え〜っと、その、わ、私一刀さんが好きです!!!!(ふみゅ〜〜〜〜〜///////ついに言っちゃったよ〜〜〜〜!!!!)」
「そっか、それならずっと側にいてくれるかい?風里」
「はい!一刀さん??」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
「な、なんだよ!!一体それがどうしたって言うんだ!!さっきから言っているだろう!!そんなの関係ないって!!風里の意思がなんであろうと風里は僕のものだって!!」
「そうだね。確かに“ただの”風里ならそんなことが言えるよね?」
「なんだと?」
「だから僕は決めたよ。風里、君を僕の臣下にするよ!!!」
「臣下…だと!!」
「(あれ?一刀さん?私をお嫁さんにしてくれるんじゃ?)」
「そうさ!僕は将来かあさまの跡を継いで太守になるつもりだ。つまりその僕の配下になってしまえば君がおいそれと奪うことはできないというわけだよ!!」
「くっ!!だがそんなこと風里が承知するはずが!!」
「(え〜っと、その〜、つまり一刀さんは私に好きかを聞いたのは単純に一刀さんのことを好きか嫌いかを聞いただけであって異性としての好きか嫌いかではなかったということだったと………はあぁぁぁぁ〜〜〜、そうだったよ〜〜〜、一刀さんってそういうことに関しては凄く鈍い人だったんだっけ!なんていったって桂花さんや華琳さん、それに麗羽さんの気持ちにまるで気付いていないほどだもんね。ふみゅ〜〜〜〜///////単に私の早とちりだったなんて恥ずかしいよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!)」
「風里、どうだい?引き受けてくれるかい?」
「えっ?(で、でも一刀さんが私を助けるとはいえ、そう言ってくれるということはこれで一刀さんとずっと一緒にいられるんだよね!なら何も迷うことないよね!!)はい!!私一刀さんの家臣になります!!」
「なんだとぉぉぉ!!認めない!!僕はそんなの認めないぞぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
「劉璋殿!!」
「嫌だ!!こうなったらお前を殺して「そこまでよ!!」何?」
一刀達が振り向くとそこには桂花達の他にもう一人女性が立って劉璋を睨んでいた。
「貴女は一体「お、お母様!?」えっ!?劉璋殿のお母様ということは………もしかして劉焉様?」
「そうよ。君が荀鳳君だね?息子が大変迷惑かけたね。すまなかったね。そこのお嬢ちゃんも貞操は大丈夫かい?」
「て、貞操!?ふみゅ〜〜〜〜〜///////」
「はっはっは!その様子なら大丈夫だったみたいだね。安心したよ」
「え〜と、劉璋様は何故こちらに?」
「そんなの「お母様!!」なんだい馬鹿息子?」
「なんだいではありませんお母様!!なぜこちらにいるんですか!!」
「わからないのかい?馬鹿息子」
「そ、それは…」
「なんだい、わかってるんじゃないか。私はお前を連れ戻しに来たんだよ」
「くっ、余計なことを」
「何か言ったかい?」
「い、いえ…」
「そうかい、ならさっさと帰るよ!!」
「ですがまだ…」
「つべこべ言わないで行くよ!!それとお前、あの娘の真名を許可無く呼んだそうだね?」
「えっ!?で、ですが夫婦になるなら呼んでも…」
「馬鹿言ってんじゃないよ!真名は他人が容易く呼んではいけない名だと教えただろう!!こうなったら帰ったらお仕置きだね!」
「そんな!?」
すると劉焉は風里に向き直り頭を下げた。
「ごめんね。え〜と「諸葛誕です」そうかい君がこいつの元許婚かい。なら諸葛誕ちゃん、こいつには帰ったらキツイお仕置きと厳しく言い聞かせるからそれで許してもらえるかい?それと諸葛誕ちゃんとこの馬鹿息子との許婚の話も結婚も全部無かったことにしたからもう馬鹿息子に追いかけられないから安心おし!」
「は、はい!」
「そうかい!ありがとうね!………さてと、それじゃあ私たちはもう行くわ。それじゃあね!!」
そういうと劉焉は劉璋の首根っこを掴んで帰っていってしまった。
「どうやら全部片付いたみたいね」
「そうだね」
劉親子が帰った後、華琳達は一刀と風里の所に歩いてきた。桂花だけは兄の一刀の胸に飛び込んでいったが…
「それにしても一刀、貴方の考えた策って何だったの?」
「そうですわ!人生だの貰うだの、も、もも、もしかして一刀さんったら風里さんと……」
「あ〜、そのことなんだけどどうする風里?あいつとの許婚の話がなくなったのなら、さっきの話も別に受けなくてもいいぞ?」
「大丈夫です一刀さん。さっき言った通り私、一刀の臣下になります!」
「「「「えっ!?」」」」
「そっか、風里がそう決めたのならもう何も言わないよ」
「ちょっと一刀!これは一体どういうことよ説明しなさい!!」
「そうですお兄様!!説明してください!!」
「わ、わかったから!みんなとりあえず落ち着いて!?」
「落ち着いてなんていられませんわ!!」
「そうだね♪どうしてそうなったのか教えてほしいな♪」
みんなに詰め寄られた一刀は先ほどの劉璋とのやり取り、そして一刀の考えを話した。劉璋が風里を監禁しようとしていたこと、そしてそれを回避するために太守の息子である一刀の臣下にして簡単には手を出せないようにしようとしていたこと。そして劉璋との件が全て無かったことになったことを話した。
「……なるほどね。話はわかったわ。そう、それで一刀の臣下にね…」
「は、はい…」
「そ、それでしたら別に一刀さんのところではなくわたくし達の臣下でも良かったのではありませんこと?むしろ手が出せないのでしたらわたくし達の方が安全だったのでは?」
「諦めなさい麗羽。風里がそう決めてしまった以上、私達は何も言えないわよ」
「そう…ですわね」
「そうだったの。風里、貴女はそれで良いのね?」
「はい、お母様」
「そう、ならいいわ」
「それとすみませんでした。折角お母様が私を思って色々してくださったのに…」
「別に構わないわよ。逆にあんな男に風里を嫁がせなくてすんでよかったわ!でもこれじゃあ素直に家に帰るわけにもいかないわね…そうだわ!私は姉さんのところにでも厄介にでもなろうかしら♪」
「お母さん…」
「だから私のことは心配しないで、貴女は自分の好きに生きなさい!」
「はい!!」
「それじゃあ私も一刀君の臣下にな〜ろうっと♪」
「美雷!?貴女何言って…」
「あははははっ♪だってあの時私言ったでしょ?『私は風里ちゃんとずっと一緒にいる』ってさ♪だから風里ちゃんが一刀君の所にいくならもちろん私も当然ついていくよ!だって私達は一番のお友達だもん♪」
「美雷ちゃん!!」
「風里ちゃん!!」
「は〜、もういいわ。貴女達の好きになさい。私はもう帰るわ」
「わたくしもそうしますわ」
「そうだね。それじゃあ帰ろうか!それとこれからよろしくね風里、美雷!!」
「「はい!!こちらこそよろしくお願いします“一刀様” ?(♪)」」
「さ、様って二人共!?」
「私たちの主なんですから当然です!!」
「……わ、わかった。なら好きに呼んでくれていいよ」
「「はい!!」」
「「「(また恋敵が増えた(ましたわ)…)」」」
こうして桂花達は新たな恋敵の出現に戦慄を覚えるのだった…
[ 真・恋姫†無双〜二人の王佐〜 一章“完” ]
「ね、ねぇ、私たち忘れらてない?」
「しょうがないよ。私たち今現在、ただのモブキャラだもん…」
「そうだよね…ただのモブキャラだもんね…」
「「は〜〜〜〜」」
[ 真・恋姫†無双〜二人の王佐〜 本当に一章“完” ]
〜次回予告〜
世界は混沌へと進んでいく…貧困、差別、市民達の我慢の限界がついに超え、漢帝国を滅亡へと導く“あの事件”がついに勃発する…そして斉南国も例外ではなくその波に呑まれていく……
次回[真・恋姫†無双〜二人の王佐〜]二章第一話 「家族の為にできること…」
『大事な家族を守るため、一刀は一人戦地へと赴く』
説明 | ||
風里の母、楓の仕業で結婚式をあげることになってしまった一刀。 それをぶち壊そうと企む桂花達とそれを阻止しようと警備を強化する風里の母楓。勝つのはどちらか? しかし、洛陽に近づく不穏な影が… 拙い文ですが最後までお楽しみください。 |
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これは良い麗羽(roger) 320i さん 第2章は怒涛の展開になりますよ!!(syouki) ls14848j さん きっと大人とはいえ色々あっていっぱい、いっぱいなんですよ…(syouki) きたさん モブキャラの二人のメイン昇格少し考えてみますね♪(syouki) nameneko さん がんばります!!(syouki) シグシグ さん ありがとうございます!是非期待して待っていてください!!(syouki) readman さん 一刀はしっかり乗り越えていきますよ♪(syouki) shirou さん 本当にそうですよね…(syouki) ただのモブキャラで終わるのはもったいない二人ですよね。あっ、もちろんメインの子達の活躍?も楽しみにしてますから。(きたさん) 今後が楽しみだ(VVV計画の被験者) 子供編終了ですかね。今後どんな展開になっていくのか楽しみですね。次回が待ち遠しいです。(シグシグ) いよいよ一刀が人を殺めるのか。その心境が楽しみです。(readman ) まさかここで嫁泥棒エピソードを持ってくるとはw麗羽にしろ華琳にしろいつまでもこの関係のままでいられたらいいのにねぇ。(shirou) |
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