鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第32話
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船に入る前の会話

 

『いや〜。まさかおチ……エドワード君達がまさかあの化物をぶっ倒してくれるとわね〜。俺様感激しちゃったよぉ。』

 

ゼロスがご機嫌にそう答えていた。

 

ジーニアスとエドは、嫌悪の顔をした状態で前を向いて歩いていた。

 

『おいおい、ちょっとはこっち向いてくれよぉ。俺様が居なかったらあの化物は見つからなかったかもしれないんだぜぇ?倒せたのも俺様のおかげでもあるんじゃねぇの?』

 

『へぇ。こんな時に自分の過剰評価かぁ………』

 

ジーニアスとエド達が、前を向いたままゼロスの目を見ずに答えた

 

『本っっ当に役に立たねぇ野郎だな。』

 

『危うく僕達は死にかけたんだよ?』

 

『ゼロスくん……最低です。』

 

プレセアとジーニアスとエドは三人並んで家路についていた。

 

ガックリしていたゼロスの肩に、アルとコレットは手を置いた

 

『ゼロス。大丈夫だよ……。私も役立たずとして端っこでずっと……見てただけだから……』

 

『僕なんか……一回食べられたから。化物に』

 

二人はゼロスを励ますように言っていた。

 

リフィルは、考え事をしていて、そんな事など考えていなかった

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

『お帰りなさい。』

 

アンジュは三人の帰りを笑顔の祝福した

 

全員の空気の重さに、また圧倒されかけた。

 

『なんだか……また大変だったみたいね……。巨人は倒せたのかしら?』

 

エドは頭を掻いて、唸り声を上げた

 

『ありゃぁ……巨人というより。合成獣だな』

 

『キメラ?』

 

アンジュがそう言うと、エドは答えた

 

『どれだけの錬金術の技量を持っているのか知らねぇけどよ。多分、大量の人間を使っていた。と思う。分解したとき、全ての人間の材料を出しただけで簡単にバラバラになった』

 

エドの言葉に、リフィルは反論する

 

『……だとしても、あの大きな口は?鹿を取りくんだのは、穴の中の腐乱した死体は?貴方の使う錬金術というのは、人間をあんな形にする物なの?』

 

『いや、多分一つの生物をベースにした、多分、取り組むにも限りがあった……というか。あんなもの錬金術師でも不可能だ。あのラザリスという奴か人造人間が絡んでるとしか思えねぇ』

 

ラザリスと人造人間の話題で、アンジュは俯いた

 

『そう。それじゃぁ早急になんとかしないとね。』

 

そう俯き、暗い空気になると、

 

アルは少しだけ慌てだす

 

『に……兄さん!そんな暗くなるような事……』

 

『だって事実だろ?嘘を言っても後からふざけるくらい混乱するだけだ。それに、お前らも大体分かってただろ』

 

全員、あの化物が本当は人間の集まりだと言うことは、見ただけで分かっていた。

 

ただ、自らの命の危険と、外見のおぞましさにそれ程の事は考えられなかっただけだ。

 

人間だと思い込む前に、殺してしまった

 

それに、あれは回復をしていた。

 

どこか、賢者の石……もしくはそれに似た触媒を持っていたのだろうか。

 

どちらにせよ、後から考える必要がある

 

『おおエド!!お前帰ってたか!』

 

スパーダが、このフロアに入ってきた。

 

エドがスパーダの存在に気づくと、エドも笑顔で手を上げた

 

『よぉ、ようやく起きたって事か?』

 

『ああ。今日は物凄く良い夢を見てな。無理やり二度寝したんだ。起こしたルカを半殺しにしてな。』

 

笑顔で”半殺し”という言葉を使ったエドの友達に、アルは一瞬寒気がした

 

『エド………この人は?』

 

ジーニアスがそう言うと、エドは素っ気無く返した

 

『ああ。この船のギルドの一員のスパーダってんだ。』

 

『んあ?おいエド、こいつら新しい隊員か?』

 

スパーダがそう言うと、エドは首を横に振った

 

『いいや、違う。今回の依頼で探せと言われて連れてきただけだ。』

 

スパーダはふぅんと頷き、プレセアとジーニアスの方を見た。

 

ジーニアスは、その目つきが少し恐ろしく感じた。

 

スパーダは、次に舌打ちをして床に唾を吐いた

 

『ちっ、ガキが』

 

その最悪な挨拶に、ジーニアスはムッとする

 

『………ただの子供と思ってたら痛い目見るよ?』

 

『知るかよ。ガキはガキだろうが。俺はお子ちゃまには興味無えんだよ。』

 

すると、次にリフィルの方に視線を向けた

 

『それよりも……こちらの姉ちゃんが入ってくれるなら歓迎だけどなぁ……』

 

スパーダは、狙うような目線でリフィルを見た。

 

その時、ジーニアスはスパーダに哀れみの目を見せた。

 

エドも同じく、哀れみの目を見せた。

 

コレットは、スパーダを可愛そうな目で見た。

 

『そう、それじゃぁ今日から私の授業を毎日受けてもらうかしら?』

 

『授業?』

 

スパーダが、エドの方を見ると、ジーニアスがスパーダの疑問に答えた

 

『姉さんは、学校の教師をやってるんだよ。』

 

潜伏していた防衛本能を働かせたスパーダは、100Mを5秒で走りぬける速さでこのフロアから脱出した。

 

教師と聞いて、スパーダは一瞬で頭を切り替えたのだろう。

 

走っているときのその顔は、真剣だった

 

『………さて、こっからどうする?』

 

エドは話題を切り替え、リフィルに問いた

 

『お前らが森に居た事を問うつもりは無いが、お前らもギルドがあるだろ?だったらそのギルドに帰る必要があるんじゃねえの?』

 

エドがそう言うと、リフィルは唸りだした

 

『ん〜。でも私達、別にギルドには入っていないのよ』

 

『え?』

 

『私はただのしがない教師。そして弟は私の弟。プレセアは木こり。それ以外は何者でも無いのよ。』

 

リフィルの言葉に、アルは疑問を持つ

 

『それじゃぁ……どうして森に居たんですか?』

 

その質問に、リフィルは指をアルに指して答える

 

『その森の中に存在すると言われているガルギャラク族の痕跡を探していたのだ!!!』

 

その言葉に、エドとアルは沈黙する。

 

『………はぁ?』

 

『コンフェイと大森林に1000年前に住んでいたガルギャラク族…。今日は目にかかる事は無かったが、次こそは必ず探し当ててみせるぞ!!待っていろ!!1000年前の痕跡!!』

 

その口調の変わりようと、何を言っているのか分からないその言葉に、エドとアルはさらに沈黙した

 

エドとアルに説明するように、ジーニアスは溜息交じりで答えた

 

『……姉さんは遺跡とか古代の痕跡とか見ると、”遺跡モード”という者になっちゃってね。ちょっとだけ鬱陶しくなるんだ。』

 

『ちょっとじゃねえだろ』

 

エドが、ジーニアスの言葉を訂正するようにツッコミを入れる

 

『何なのこれ?ねぇジーニアス。人格までもが変わってるよ?』

 

『うん。変わるよ、遺跡モードだからね』

 

『答えになってないよ?』

 

ジーニアスは、ふっと笑うように答えた

 

『だって、これ以上言えないんだもん。』

 

 

 

 

 

 

 

〜廊下〜

 

『鋼の。なんだもう帰ってたのか。』

 

マスタングが、エド達に挨拶を交わす

 

『ああ。僕達は新しく入った……』

 

ジーニアスがそう言い掛けると、エドがかなり嫌そうな顔をしているのが目に入った。

 

それで、目の前の人物が何者か、混乱する羽目になった。

 

『ああ大佐。こんにちは』

 

『アル!こんな奴に挨拶なんざぁしなくても良いんだぞ!!』

 

エドがそう言うと、隣に居たセルシウスが呆れる顔をする

 

『ふん。自分の都合のままに動く人間が』

 

『大体、なんでお前は居場所を燃やした奴と仲良くなってんだ!!!』

 

エドはロイの隣にセルシウスが居たことに突っ込む

 

だが、セルシウスは少しだけ慌てた様子で答える

 

『な……仲良くなんかあるか。錬金術を習った暁には、こいつさえも制裁を与える誓いをしているのだからな!』

 

セルシウスの言葉に、マスタングは笑いながら答える

 

『はっはっは。それは怖い。』

 

それは、まるで相手にもしていないかのような反応だった。

 

『鋼の、それよりもそちらのお美しい女性はどなただ?』

 

マスタングの目には、リフィルが映っていた。

 

ジーニアスはマスタングに哀れみの目を見せた。

 

コレットは、マスタングを可愛そうな目で見た。

 

エドは、面白そうな目でマスタングを見ていた。

 

『あら。それは光栄ね。』

 

『貴方のお名前をお聞きする前に、まず私の自己紹介から。私の名はロイ・マスタング。銘は焔の錬金術師と申します。』

 

錬金術師という言葉を聴いて、リフィルは耳を向ける

 

『錬金術師……。エドワード君と何か関係があるのかしら?』

 

マスタングは、笑顔で答える

 

『ええ。私は鋼のの上司にあたる人物でして、私の世界では国家錬金術師として軍に所属しています。階位は大佐です。』

 

『軍…?』

 

『どうでしょう。今度、暇なときに私と一緒に茶をたしなむというのは……』

 

マスタングがそう言うと、セルシウスが呆れた顔でマスタングの腕を掴み、甲板へと向かう

 

『そんな暇があれば、錬金術を私に教えろ。』

 

セルシウスの言葉に、マスタングは笑いながら答える

 

『ははは、これは厳しい。』

 

そう言って、二人は廊下から消えて言った。

 

『………なんだか、ゼロスと同じ匂いがするね』

 

ジーニアスが、呆れ口調でそう言った。

 

『そういえば、隣に居たあの女性は誰なの?大佐と仲良くなってたみたいだけど……』

 

エドは頭を掻きながら答える

 

『ああ……あいつは前に俺達がボコボコにした精霊で…俺達に仕返しをする為に、大佐に弟子入りして錬金術を習ってるっとは聞いてる。』

 

エドの言葉に、ジーニアスとリフィルは驚く仕草をする

 

『ええ!?……エドって…あの精霊に闘って勝ったの?』

 

エドは、自信満々に答えた

 

『おうよ!!いやぁ精霊と言っても大した事は無くて……もう俺達の圧勝って感じだよ!まさに俺様最強って感じで…』

 

『もう、兄さんったらまた自分を棚に上げて……』

 

アルがそう言った後、エドの後ろから声が響いた

 

『……尊敬します……』

 

プレセアが、エドの後ろでボソリと答えた

 

『うぎゃぁぁああああああああああ!!居るなら居るって言ぇええ!!ああぁ……びっくりしたぁ!!!』

 

尻餅をついて驚いたエドを見て、アルとジーニアスは呆れた表情でエドを見つめていた

 

『とても、精霊に圧勝した人には見えないよね。』

 

『うん……そうだね。』

 

息のあった会話が、この間に一瞬だけ流れた

 

 

 

 

 

 

 

〜ユーリとエステルの部屋〜

 

『あ、師匠!見てください!割れたグラスが、もうこんなに復元されたんです!』

 

エステルは、少しだけヒビの入ったグラスをエドに見せた。

 

最初に割れている直筆サイン入りのグラスを渡したエドは、それを見て感心した

 

『へぇ……随分成長したじゃねえの……』

 

エドがそう言うと、エステルは笑顔になった。

 

アルは、エステルに慌てるように頭を下げる

 

『あ……兄さん。この人、あくまでも年上の人なんだよ?もうちょっとは敬語を使いなよ。』

 

アルの言葉に、エドは不機嫌に答える

 

『ああ!?年上だろうが、同時に師匠と弟子でもある!敬語なんか必要ねぇ!!』

 

そう答えるエドに、アルは溜息を吐いた。

 

『大丈夫です。師匠の弟さん。私は、希望して師匠の弟子にしてもらっているのです。ですから、心遣いなんて必要なんかありませんよ。』

 

エステルがそう言うと、すみませんとアルは再び頭を下げた。

 

『まぁ、俺達でさえエステルには敬語なんか使わないしな。王女様という身分に対してもだ。』

 

姫様という言葉に、アルとジーニアスは驚く

 

『え……!?この人……王女様なの…!?』

 

『兄さん!だったら尚更……』

 

二人の言葉に、エステルは首を横に振った

 

『いえいえ。今ではこのギルドの隊員であり、師匠の弟子でもあります。そんなに気を使わないでください。』

 

エステルがそういえば、二人はそれ以上は何も言わなかった。

 

そして、ジーニアスはある話題を取り出す

 

『そういえばエド、弟子が居るって事は、錬金術の関連する書物があるって事だよね?』

 

『ん?ああ。確かにあるな』

 

エドがそう言うと、アルがその話題に入る

 

『え?どうして錬金術に関係する書物がここに存在するの?』

 

『俺達が乗ってた列車が、この世界に辿り着いてたからな……。』

 

エドの言葉に、アルはしばらく黙り、頷く

 

大体、分かっていた事なので、それ以上は何も言わなかった。

 

『ああ……。それじゃぁ……』

 

アルは、ある言葉を言いかけたが、それ以上は何も言わなかった

 

エドは、そのアルの言葉にも耳を向けなかった。

 

『ああ、これだね?』

 

ジーニアスは、机の上にあった錬金術の書物を手に取り、中身を開いた

 

それを見たエステルは、自信満々に答えた。

 

『錬金術の基本は等価交換。さらに錬金術を使いこなすには、地の流れ、さらに物の流れを読み、物質を理解する必要があるのです。』

 

エステルの話なんか聞かないように、ジーニアスは練成陣を本を見ながら描いていた。

 

『私も、ただ本を読むだけでは何も出来ませんでした。しかし、こうやって同等の努力を払って、今やっと物をここまで復元することができたのです。』

 

練成陣を描き終えたジーニアスは、唸りながら手を叩く

 

『練成陣は、と時間の循環を示し、これに構築式を組み入れることで初めて錬成陣として機能するのです。私も最初は分かりませんでしたが、こうやって構築を理解して分解、そして再構築まで出来て、ようやく初歩的な段階に……』

 

ジーニアスが練成陣に手を置いた瞬間、練成陣が発光し、下から突起物が飛び出た。

 

その突起物はやがて形を変え、一つのけん玉が出来上がる。

 

形からけん玉と分かるが、それはあまりにもけん玉としての機能は存在しない形だった。

 

それを見たエステルとエドは、固まっていた。

 

たった一回本を読んだだけで、ここまでの錬金術を発動させる事ができるとは、誰が予想出来ただろうか。

 

だが、ジーニアスは頭を掻いて、その出来に不満を持っているようだった。

 

『駄目だ。やっぱりエドワードさんのようには行かないや……。やっぱりエドワードさんの錬金術って、ものすごい技術があるんだね。』

 

ジーニアスがそう言うと、エドは少しだけ頭を唸らせる

 

『………一回読んだだけで錬金術を発動出来たお前の方がすごいと思うけどな……』

 

『え?だって地の流れを読む事はそんなに難しい事でもないし…。やっぱり流れを利用して使うことが一番難しいよ。』

 

ジーニアスは、自身がなさそうにそう答えていた。目の前に、すごい錬金術師が居る為自慢が出来ないのだろう。

 

だが、後ろに居たエステルは部屋の隅っこで体育すわりで落ち込んでいた。

 

何か、ブツブツ言っている。

 

『エドワードさんの錬金術って、この練成陣無しでも出来たんでしょ?それに形も完璧だし……多分エドワードさんの技術に辿り着くまで、20年は掛かるんじゃないかな?』

 

ジーニアスがそう言うと、エドは少し満更でもない顔をした。

 

アルは、落ち込んでいるエステルに声をかけていた

 

『私……やっぱり才能が無いですかね………』

 

涙目のその顔は、アルを再び慌てさせた。

 

『そ……そんな事無いよ!エステルさんだって、才能はあると思うよ?普通は練成を発動させる為に1年は掛かる人だって居るのに、エステルさんはこんな短期間でグラスをここまで復元したんでしょ?凄いよ!』

 

『でも、そこの男の子は、たった2分で………』

 

『も……元々地質とか知っている人は早いし、料理が上手い人だって早い例があるんだよ?それはしょうがない事だと思うよ!』

 

アルは、一生懸命弁慶していたのだが。

 

励ませば励ますほど、エステルはだんだん沈んでいるように見えた。

 

『に………兄さん!』

 

アルは、救いを求めるようにエドに目を向けた

 

『ん?どうした?』

 

エドは、なんだかご機嫌な顔だった。

 

ジーニアスも、ご機嫌な顔をしていた。一体何の話をしていたというのだ。

 

『いやぁ。まさか普通の人はそんなに時間が掛かるなんてね。僕も、エドワードさんみたいに、ちょっと錬金術の才能があるのかなぁ……』

 

ジーニアスが自身気にそう答えると、エステルは目に涙を溜めながらジーニアスを睨みつけた

 

『あ……貴方には負けませんから!負けませんからぁああああああああああ!!!』

 

『あ……!おいエステル!!』

 

エステルは、泣き叫びながら廊下に出て、どこか走り去って行った。

 

その様子を見ていたジーニアスは、少しだけ悪い気がしていた。

 

『僕……なんか悪い事しちゃったかな……』

 

『いや、何もしてねぇと思うぞ。あいつがやる気出しただけじゃねえの?』

 

エドがそう言った瞬間、アスベルが部屋に扉の音を響かせながら入ってきた

 

『エドワード君!さっきエステリーゼ様が泣いておられたが、一体何をしたと言うのだ!!』

 

めんどくせぇのが入ってきた。

 

エドはたった今、そんな顔をしていた。

 

『返答によれば………ただでは済まされないと思ってください!』

 

『……ただ、才能の差を感じただけだと思うぜ。』

 

エドの代わりに、ユーリが現状を伝えた。

 

全員は、ユーリに部外者なりの心遣いを感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜研究室〜

 

アンジュが、ハロルドに研究結果を聞きに。この場にやってきた。

 

例の、ヴェラトローパへと続く機械の製作進行を

 

『例の機械の進み具合はどうかしら?』

 

アンジュがそう言うと、ハロルドは答える

 

『んー。まぁミスとかは全てエドちゃんが錬金術で直すとしてもねぇ、あともう一つ、足りない物があるわね。』

 

ハロルドがそう言うと、アンジュは首を傾げる

 

『足りない物?』

 

『そ、ヴェラトローパに関するドクメントよ』

 

その足りない物を聞いて、アンジュは驚く

 

『そ……そんな物、多分どこにも無いわよ。』

 

アンジュがそう言うと、ハロルドもさすがに少し唸る

 

『そうなのよねぇ。ちょっとだけでも良いから、ヴェロトローパについて何か手がかりがあると良いんだけど………』

 

しばらく考えた後、ハロルドに良い案が浮かんだ

 

『ああ、そうだ。ねぇアンジュ?』

 

『何?』

 

ハロルドは、笑顔でアンジュに話を持ちかける

 

『エドちゃんのドクメントを分解するよう、呼びかけてくれないかしら?』

 

ハロルドの言葉に、アンジュは首を傾げる

 

『………どうして?』

 

『まぁ、どうしても何も。とりあえずつれてくれば良いのよ。ほら早く!』

 

ハロルドは、せかすようにアンジュに呼びかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜甲板〜

 

アンジュに呼ばれたエドは、渋々ながらも甲板に立ち寄る

 

そこにハロルドとリタが居ることを知り、エドはその場から去ろうとした

 

『ちょっとちょっとちょっと!!エドちゃんそれは無いじゃない!』

 

『わり、俺ちょっと便所行きたかったんだわ。ちょっとガルバンゾ国でトイレ貸しに貰いに行ってくる』

 

『逃げる気満々ね………』

 

リタはエドを睨むつけるようにそう言った。

 

言い訳するエドに、カノンノは少しだけ溜息を吐く

 

『エド、これは本当に大切な事なんだよ?だからちょっと嫌かもしれないけど、今は少しだけ我慢して欲しいの。』

 

カノンノがそう言うと、エドは発言する

 

『……つってもよぉ、なんだか嫌な予感がしてたまらねぇんだよ。マジで何をされるのか。不安でしょうがねぇよ』

 

『大丈夫よ。ちょっとエドちゃんのドクメントを見るだけだから。』

 

『それも嫌なんだよ!俺はお前らに俺の情報を与えたくなんか無い!!!』

 

エドが怒ると同時に、カノンノも何か疑問を感じていた。

 

他の世界から来たエドのドクメントを見て、一体何をしようと言うのか。

 

エドは、逃げるように背を向け、どこか立ち去ろうとした

 

『俺はギルドの隊員で、依頼ならなんでも嫌々だが、従ってきた。だが今回はどうしても従うわけには行かねぇ。』

 

エドは、ドクメントで色々と知られるのが怖かった。

 

身長、体重、寿命や嫌いな物を知られるのも嫌だが、

 

一番嫌だと感じたのは、トラウマさえも引きだしてくるからだ。

 

頼むからそっとしておいて欲しい。俺の情報は知らないで欲しい。そう考えた。

 

扉に手をかけようとした瞬間、取っ手が動かなかった。

 

『あれ?開か……ねぇ……!!!』

 

必死に押しても引っ張っても、開く気配が無かった。

 

後ろで、ハロルドの不気味な笑い声が聞こえる

 

『ふっふっふ……こんな事もあろうかと、扉の向こうには筋肉おじさんが立って貰っているのよ。世界の為と言ったら、なんとか従ってくれたわ。』

 

エドは、ハロルドを睨みつける。

 

ハロルドの顔は笑っていた。

 

エドは、その笑顔に恐怖を感じた

 

『う……うわぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!』

 

『走ったわ!捕まえなさい!!!』

 

リタがそう言うと、甲板に居たほとんどの者がエドに襲い掛かった。

 

中にはリッドやミント、さらにはカノンノやイヤハートまでもが居た。

 

イヤハートに関しては、ドクメントというのは知らないような顔をしていたが

 

『エド……ごめん!!』

 

カノンノが、思いっきりエドに抱きつく

 

カノンノは、顔が赤くなりながらも抱きついたが、決して離そうとはしなかった

 

『うわぁ!!は……離しやがれ!!!』

 

思いっきり抱きつかれたエドは、危機感を感じて暴れだす。

 

そして、笑いながらハロルドは歩み寄ってくる。

 

『ふっふっふ……よくやってくれたわ。カノンノちゃん』

 

もう逃げられないと悟ったエドは、せめて疑問を感じていた事を言葉に出した

 

『お…お……お前らの目的はなんだ!!何で俺のドクメントを見ようとしやがる!!!』

 

『エドちゃんのドクメントは、他の世界の人間の物なんでしょ?ヴェラトローパは人の祖が住んでいた場所。それじゃぁ私達と違う生き方と違う進化を遂げたエドちゃんには、私達と違うドクメントが存在していて、ヴェラトローパのドクメントは無くとも何か一つの手がかりはあるはずよ』

 

その言い草に、エドは反論した

 

『だったら!そこのイヤハートとか大佐とかに見せて貰えば良いだろうがぁ!!!』

 

『イヤハートちゃんは、ほとんど私達と同じだったし、それにエドちゃんの情報を覗いてみたいしねぇ……』

 

ハロルドの目は爛々としていた

 

『鬼!悪魔!!俺の情報は絶対渡さねぇ!!絶対渡さねぇぞ!!!!』

 

その言い草は無駄だと分かってはいるが、口に出してしまう。

 

ハロルドは、リタに目を向けて命令した

 

『それじゃぁ、初めて頂戴』

 

『はいはい。』

 

リタがエドの目の前に来ると、エドは犬が唸るような声を出して、リタを睨みつけた

 

『動かないでよね。動いたら……死ぬわよ』

 

『上等だ、クソ女』

 

エドが言い終えた瞬間、リタはエドのドクメントを表に出した。

 

瞬間

 

『!?』

 

『な……何よ……これ……』

 

エドの周りに、多数のドクメントが現れれる。

 

まだ、何も細かく見ていないと言うのに、そこにはかなり多くのドクメントが存在していた

 

いや、それどころか今もなお、すごいスピードで増えてきている。

 

ドクメントに囲まれて、エドが見えない程だ。

 

『これが……エドの…ド……ドクメント……なの……?』

 

その圧倒的な多さに、カノンノは思わずエドから離れてしまった。

 

『何よこの……圧倒的な多さ……尋常じゃ……』

 

『あ!おいこれ見ろよ!!』

 

リッドが、エドの一つのドクメントに指を指す

 

『これ………この船の構造と、資質じゃねえか?』

 

『!?……どういう事……?』

 

他にも、火山の流れや活動

 

他にも、空気中の酸素の割合や窒素の割合が現れていた

 

『エド……の中に、どうして……この世界の情報が……』

 

カノンノが、最早何か分からず、混乱してしまう。

 

エドのドクメントには、大量のドクメントが混雑するように流れている

 

それはまるで、構築式のように………。

 

『あ!!ちょっとちょっとこれ見て!!』

 

ハロルドが指差した先、そこに書かれていた物に、リタは驚愕した

 

『ヴぇ……ヴェラトローパの……情報……!?』

 

リタは、馬鹿なと疑問を感じた

 

エドは、他の世界の人間である上に、ただのノーモーションで魔法を使う奴だと知った。

 

この世界の事は、ほとんど分からないはずだ、なのにどうして、私達も知らないこの世界の事を知っている?

 

『リタさん、どうしたんですか……?早くコピーしないと……見えなくなりますよ?』

 

ミントの言葉に、リタは慌ててエドのドクメントをコピーする

 

『あぁ……わ…分かってるわよ……!!』

 

リタは、コピーしたドクメントを取り出した。

 

『これで、ヴェラトローパに辿り着くことが出来たわね。まさかのエドちゃん、大活躍じゃない!』

 

ハロルドが、嬉しそうな顔でエドのドクメントを見ていた

 

『それじゃぁ……。解除するわよ』

 

リタがそう言うと、エドの周りのドクメントはゆっくりと見えなくなった。

 

エドは、その場で眠るように倒れていた。

 

一瞬、死んでいるかと思われたが、リタはあまり動じなかった

 

『ほら、とっとと起きなさいチビ。もう終わったわよ』

 

普通なら、これで”誰がドチビかぁー!!”と怒ってエドは飛び上がるのだが、

 

どこか様子がおかしい。

 

『ちょっと?チビ?とっとと起きなさいよ』

 

リタがゆすっても、一向に起きる気配が無い。

 

『気絶……したのかしらね。』

 

ミントがそう言った後、リタはエドの脈を調べた。

 

リタの目が、見開かれる

 

『脈が…………無い……』

 

リタのその言葉に、一同は沈黙した

 

カノンノは、その場で信じられないように震えていた

 

『え………?』

 

目が見開かれ、倒れているエドを見ている

 

『エド……?エド……?』

 

今度は、カノンノが寝ているエドを揺さぶる

 

『嘘……だよね?ねぇ?エド?起きてよ……ねぇ……』

 

だが、揺さぶれば揺さぶるほど、エドは動かない。

 

息さえも、していなかった

 

『エド!!エド!!うわぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

絶望の叫びが、辺りを響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

エドは、白い空間の場所に立っていた。

 

その場所は、以前にも来た事がある。そうだ。

 

以前、母親を人体練成をした時、見つけた物だ

 

目の前には、大きな扉があった

 

『なんだよ……これ』

 

この現状に、エドは溜息を吐いた。

 

≪よぉ≫

 

後ろから、声が響く

 

≪久しぶりだな。エドワード・エルリック≫

 

透明人間のような姿で、そいつは佇んでいた

 

『………なんだ?俺は死んだのか?』

 

エドが質問すると、そいつはすぐに返答する

 

≪いや?魂がこちらに一時的に来た。というべきかもな。≫

 

『それは、死んでるんじゃねえのかよ?』

 

≪馬ー鹿。自分の情報を外に出して、この世界の真理の情報を表に出しやがって。魂が抜けないわけがないだろ?≫

 

そいつがそう言うと、エドはざまあみろと言う様にそいつを睨みつけた。

 

エドの笑顔に、そいつはエドに指を指した

 

≪後ろ見ろよ≫

 

そいつの言葉の通りに、エドは後ろを振り向く。

 

その場所は、もう一つの真っ黒な扉だった

 

≪勝手口。て奴だ≫

 

『ここを通れば、さっきの世界に戻れるって事か?』

 

≪ご名答。≫

 

エドは、そいつを睨みつける。

 

そして、そいつに指を指した

 

『その腕と足、絶対いつか取り戻すからな。』

 

≪まずは、弟の体をなんとかしたらどうだ?≫

 

『言われなくても、そっちが先だ!!』

 

エドはそう言って真っ黒な扉に手をかけて、押し続けた

 

≪おいチビ、いい事を教えてやるよ≫

 

エドは扉を押しながら、話を聞く。

 

≪お前が行こうとしている世界。これは相当いかれてるぜ。後に大きな絶望が襲うだろうな。≫

 

エドは、扉を押し切った。

 

そして、扉に入る前に、そいつの顔へ振り向き、答えた

 

『そんな絶望、俺が打ち砕いてやるよ』

 

そう言って、エドは扉の奥へと進んだ。

 

扉は、完全にエドを包み、そして閉まった。

 

それを見たそいつは、不気味に笑い出す

 

≪……馬鹿が。どうしようも無い事だってのに。その世界がいかれてるんじゃねぇ。世界その物がいかれてんだ。≫

説明
ドクメントって、今気づいたけど、ドキュメントの文字をもじった物だったんだね。
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鋼の錬金術師 テイルズ クロスオーバー 

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