カーニバル 6話目 |
ボク達は城へ向かいながら話をした。
「でも、悪い魔法なんて誰から……」
オリンズは、少し視線を落とし、首を左右にふる。
「オリンズは、もともとこの国の出身なの?」
「違うよ、わたし……ある国から亡命して
きたの。魔法に包まって、世界から逃げて。」
ボクは相槌を打つ。
「逃れた先が、この国のある施設で。ずっと
守ってもらっていたけど、自由は無かった。
そこの所長さんは、閉じこもって逃げるだけじゃ
ダメだって、ずっと言ってくれてた。」
「先日、王子様から手紙が来て、どこまでも
続いている空に向け羽を広げて自由に飛べって
……所長さんも、もう戻ってくるなって……」
オリンズの事を少し知ったとこで、立派な城の
前に着く。ただ、様子がおかしい。兵士らしき人
も居ないし、門も開いている。
おそるおそる城内へ入っても、人の気配が
しない。一番奥の王の間まで進み、ドアを開ける。
すると、中に一人の男が座っていた。
「やぁ、待っていたよ」
すっと立って、こちらへ来る。
「招待状なんてひさしぶりに出したよ」
コツンコツンと足音が響く。
ボク達は片膝をついた。
そう、この人はこの国の王子なのだ。ただ初めて
直接お会いするので、少し緊張している。
「楽にしてよ、この城には我々しかいない、後の
者はでていってしまった……」
王子は悲しみが滲んだ溜息を吐く。
「皆と意見が合わなくてね、今この国は少し不便
な暮らしを国民にしてもらっている。」
ボクは「魔石を使わなくなったからですよね?」
と言う。
「ここに居た連中は魔石を使うこと、魔石に頼る
事を推していたよ。周りの国々も魔石を使っている。
今、この世界は、安心だの安全だのと言って魔石を
使って楽な暮らしを手に入れた……」
オリンズが「魔石はどんなものでも生み出す力
があります、けど……」
「うん、だが、本当に安全なのだろうか?私はいずれ
とんでもないものを引っ張りだしてきてしまうと思って
いる。魔石は危険なモノだ。」
王子は目に力を込めて
「今の世界の情勢は魔石の奪い合い、そして使い終わった
魔石の処分などを理由に国々で戦争をしている。ならば
そんな物騒なものは使わずに我々は自然と共に生きる選択
をした、その為、城の者たちは皆出て行ってしまった。」
「オーダーくんの父上や兄などが治める国やオリンズ
が捨てた国なども、そんな理由で戦争をやめない。」
ボクとオリンズは、顔を曇らせる。
「戦争を繰り返し、力をつけていった国は、さらに
戦争をして、また力をつける……いずれ我々の国も
巻き込まれるだろう。」
王子はボク達に背を向ける。
「動きだしたら、いくら拒否しても無駄なんだ。
ただ、じっとしていたら悪い方向へ世界は舵をきる
だろう」
くるりと、こちらに振り返って
「どうだ、私を信じて一緒に戦わないか?」
ボクは立ち上がって
「父や兄が、戦争を頻繁に起こす事を嫌って、この
国へやってきました。その父や兄を止めるのはボク
しかいないと思います。」
オリンズも立ち上がって
「わたしは、この国に救ってもらった恩を返したい。
それに魔石の話……」
ここで、オリンズは口を噤んだ。
王子は
「ハハっ、私は部下とかそういったくくりは嫌い
なんだ、これからは同じ想いを持った仲間だ。」
すると突然、王の間にある窓が開き風が入って
くる。そして澄んだ声で
「ブラッド、新しい仲間が増えたの?」
ボクは声の方を見て、驚いた。
「あ、あの時のエルフさん?」
「シア、オーダーくんを守ってくれてありがとう」
王子が礼を言う。
「うふふ、良かったわ、これで仲間になってくれ
なかったら、ガッカリしてたところよ」
ボクは、シアさんに近づいて
「先ほどは、ありがとうございました。シアさんと
王子は仲間なんですね。」
横から
「王子はやめてくれ、ブラッドでいい。」
シアは少し心配な顔で
「でもオーダー、あなた、とんでもない奴に狙われて
いるわね。というかブラッド、この国へ他の国の者に
自由に入られるなんてセキュリティが甘いわよ。」
「向こうがルール違反をしているんだ、私が怒られる
のは筋が違うよ。だけど……近いうちに争い事が起こる
のは間違いない。」
ブラッドは何かを思い出した。
「そうだ、オリンズ、今この国に君の師匠が駐留して
いるよ。」
オリンズの顔がほころんだ。
シアが
「伝説の魔導師かぁ。今は隠居しているけど……
先の大戦の話は、もはや伝説ですものね。十騎士の
一人、ブラッドでも少しは話を聞いてみたいんじゃ
ないの?」
「私は十騎士に入っているつもりはないよ。それより
オリンズ、オーダーくんと一緒に会ってきたらどうだ。」
オリンズは「はい!」と笑顔で答えた。
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