文々。新聞 弾幕ごっこ考察 |
「弾幕ごっこを徹底解析!
〜幻想郷に住む人々の弾幕ごっこに対する想い〜」
いつも身近にある存在にも関わらず、あまり深く追求したことの無い話題を取り上げてみることにした。ここに記されていることは各々の考えであり、真実でも絶対でも無いということを念頭に置いて頂きたい。
今回、インタビューに協力して頂いた方々に心から感謝の言葉を。
(射命丸 文)
紅魔館メイド長の場合
弾幕ごっことは何ですか?
「そんな当たり前のことを聞かれてもねぇ……。弾幕ごっこは弾幕ごっこですわ。それ以上でも以下でもありませんわ」
弾幕ごっこをする上で気を付けていることはありますか?
「時間を止めた時、ナイフを投げる位置に気を使いますわ。だって近過ぎるとよけられませんもの。ただでさえ『痛い』とか『当たり判定が大きい』とか言われているのですから」
失敗した時は投げ直しているわけですね。
「…………。否定することが出来ませんわ」
月の兎の場合
弾幕ごっこを初めて知った時どう思いました?
「ジャンケンという遊びがあるじゃない。あれに良く似ていると思ったわ」
実際に体験してみてどうでした?
「ジャンケンと違って運もへったくれもなかったわ……しくしく」
何か苦い思い出がありそうですね。
「いい勉強代になったのよ」
騙された人はみんなそう言いますけどね。
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地上の兎の場合
こんにちは嘘吐き兎さん。
「嘘は吐かないわよ」
それが嘘なんですよね? 分かっていますよ。
弾幕ごっこを『嘘』だけで勝った経験は?
「あるよ」
嘘っ!?
「嘘」
!?
「嘘」
!!??
「…………」
ええっと、あなたは嘘吐きだから今言ったことは嘘であって、でも嘘だから、更に嘘と言うことで……?
「……勝った時の話を聞きたいんじゃないの?」
ああ、そうでした。聞かせてください。
「饅頭が一個余りました」
はい。
「その場には二匹の兎が居ました」
はい。
「ジャンケンでどちらが食べるか勝負しようということになりました」
はい。
「私はそんなことよりこの饅頭を永琳様の前で食べたら饅頭をもう一個あげるよと言いました」
はい。
「饅頭が食べられる上に、もう一個貰えるというのだから相手は喜んで永琳様の前で饅頭を食べました」
はい。
「終わりです」
はい?
「私は永琳様からご褒美に四個の饅頭を貰って一個は、その兎にあげました」
ええっとよく分かりません。詳しくお願いします。
「私は永琳様から『無意識に薬の効果が現れる様子を見たい』と言われていました」
……はい。
「だから残った饅頭にその薬を入れました」
…………。
「後で饅頭に薬を入れてあることを永琳様に伝えて、ご褒美を貰いました。お終い」
……ちょっと待ってください。弾幕ごっこが一度も出てきていませんが?
「最初から全部嘘だもの」
なんですってっ!?
普通の魔法使いの場合
『攻め』と『守り』に分かれるルールの場合どちらが好みですか?
「『攻め』かな? でも『守り』側で勝った時の嬉しいからどっちも好きだぜ。『守り』はとにかく不利なんだ。相手の弾幕は避けられないし移動にも制限が付く。繰り出す弾幕に工夫が無いと被弾してくれないしな。だからこそ勝った時は嬉しいんだ。『攻め』よりもな。でも『攻め』る時の緊張感と爽快感は『守り』じゃ味わえないからな。違いを言うなら『守り』は経験と知識を活かし弾幕ごっこ前に準備をして挑むのもだけど。『攻め』はその瞬間瞬間に相手の策を理解し、超え、打破するという感じかしら。だから――」
あの、もういいです結構です有難うございました。
「なんだよ。インタビューっていうから張り切って原稿書いて待ってたのに。全部喋らせてくれないのか? いいじゃないか。減るもんでもないだろ」
紙とインクと時間と精神力が減ります。
香霖堂店主が考える弾幕ごっこ
綺麗な花火を撃ち合っているように見える。見ている側はそれだけで見る価値がある。出来ることなら夜景に混じるように弾幕を張って欲しいくらいだ。
楽しげに遊ぶ者から真剣そのものの者まで、やっている立場に立てば弾幕を眺めている暇など無いかもしれない。だけど、第三者の立場に立てば……ゆっくりとその弾幕美を眺めることも出来るだろう。
弾幕ごっこに一生懸命になりすぎて他人の弾幕ごっこまで、ゆっくりと楽しめないようではあまりに勿体無い。
弾幕ごっこが出来ない立場の意見を言うならば、もっと弾幕を観賞するべきだ。
きっと弾幕の見た目にも気を使っているお茶目な者もいるだろうから。
(森近 霖之助)
鬼の場合
あなたの思う弾幕ごっことは何ですか?
「目的、かな。目的のために弾幕ごっこがある。目的のために弾幕ごっこをやる」
弾幕ごっこで豆を投げられたことはありますか?
「あー、弱い人間相手にするとよくあるよくある」
強い人間は投げてこないんですか?
「豆より痛い弾幕張ってくるよ〜。知らない?」
痛いですよねアレ。針とか。
「あ〜痛い痛い。アレは痛いなー」
歴史喰らいの半人半獣の場合
弾幕ごっこをどう思いますか?
「人間を守る場合、都合の良い判断材料だと思います。力のある妖怪たちは『今から人間を食うぞ』と宣言した上で弾幕ごっこを挑んできますから。勝てば潔く退散してくれますし、負けたとしてもその時にはもうすでに目の前から人里は無かったことになっていますから」
力の無い妖怪は人間でも対処出来ますからね。
「はい。力のある妖怪に対抗出来る手段も教えてありますが、その方が確実なんです」
ちなみに私の対処方法は『インタビューには素直に受け答えること』ですよ。
「……?」
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半分、幻の庭師の場合
弾幕は幽霊も痛いですか?
「痛いんですよ……しくしく」
弾幕を斬ったりして文句言われたりしませんか?
「閻魔様に『幽霊は斬るな!』って言われたことがあるくらいで、特に何も言われませんよ。だって斬るくらい余裕があるんですから。避けた方が楽です」
何故、わざわざ斬るんですか?
「修行です」
氷精の場合
「弾幕ごっこは、あたいが最強よ。分かった?」
まだ質問していません。
「そうそう。最強のスペルを思い付いたの。聞いて聞いて」
私の話も聞いてください。
「『パーフェクトフリーズ』で弾幕を凍らせるんじゃなくて、相手を凍らせるのっ! 相手は避けることも出来ないっ! 天才!」
反則です。
「いちいちうるさいな。新・最強スペルの餌食になるがいいわ!」
あなたの場合、相手を凍らせるまでが至難の業ですよ。
「うああっ! 冷気が逆風で! 待って待って降参こうさ――」
風が強すぎました。ごめんなさい。
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忘れ去られた門番の場合
弾幕ごっこに利点を感じることはありますか?
「門番は必然的に『守り』側になるので勝つのが難しくて難しくていつも怒られてばかりで悲しくて悲しくて痛いです」
あの利点は……?
「利点なんかないですよ〜」
では弾幕ごっこをやらずに守りに徹してみてはどうですか?
「どっちにしろ勝てないって分かっていますから……ぐすん」
ご愁傷様です。
死に神の場合
死に神は弾幕ごっこをする機会はあるんですか?
「そりゃあここで生きている以上そんな遊びの一つや二つ自然に覚えるものさ。まあ今となっては滅多に無いけど」
この間の騒動は珍しかったのですか?
「そうだね。滅多に無いことだよ。ここに来ること自体が死にに来るようなものだからさ」
楽しかったですか?
「仕事中に遊べるなんて滅多に無いことだから目一杯はしゃいじゃったよ」
あ!
――バシッ!
「きゃん」
今のお気持ちは?
「痛いね……しくしく」
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神隠しの主犯とその式神の場合
「紫様はお休み中なので私が代わりにインタビューを受けるがよろしいかな?」
構いません。
弾幕ごっこの楽しみは何ですか?
「『相手に王手をかけるその瞬間』だそうだ」
それは勝つ瞬間ということでしょうか?
「いや、勝つことや負けることなんか始めから分かっているのだと思う。紫様は『守り』側を好む人だ。だから、相手の行動パターンを読み尽くし、掌の上で一つの弾幕ごっこのシナリオを描くことが楽しみなのだろう」
寒気がする話ですね。
「……同感だ」
あなたにも質問してもよろしいですか?
「勿論だ」
あなたは主人の命令通りに動き、時には主人の弾幕となることをどう思いますか?
「忘れてしまうこともあるが、それが式神の使命であり存在意義であり、生き甲斐だ。あの方の為ならこの命、惜しくは無い」
あ、あんな所に隙間が。
「む……消えたか……。きっと紫様だ。聞き耳を立てるなんて……意外と可愛い所があるでしょ?」
ええ……。
――バシッ!
今のお気持ちは?
「痛いよ……しくしく」
博麗神社に住む巫女の場合
必然的に有利な『攻め』に回ることの多い巫女として思うところはありますか?
「有利? 有利ですって? それは元々、不利な立場の者が『攻め』に回った場合の話でしょ? 私は『攻め』でも『守り』でも条件は変わらないと思っているわ。むしろ、弾幕ごっこという形式で甲乙を付けている以上、かなり譲歩しているのよ」
それでは何故そう思うのですか?
「人はね、妖怪に勝つためにあらゆる手段を考えて来たわ。私はそのあらゆる手段を知っている。ただ調伏するだけならその『あらゆる手段』を使えば問答無用で勝てるのよ」
例えば、どのような?
「悪魔とか亡霊とかは論外ね。お払いや徐霊、成仏させてしまってもいいからよ。ただし、屈辱を味あわせるような勝ち方をしてはダメなの。『負けてもらう』という姿勢が一番ね。共存の第一歩が『相手の怒りを静めること』なの。手を合わせて拝むという小さな行為から供養のために供物を用意したり生贄を捧げたりすることまで大小は様々よ」
随分と腰の引けた勝ち方ですね。
「弾幕ごっこより労力は最小限で済むわ。知恵のある人間なら誰でも出来ることよ。おまけに絶対勝てると分かっているのだから」
話題が違ってきていますが。ちなみに私に勝つ方法とか知っているのですか?
「『勝った』と思わせることが大事だって言ったじゃない。仕方が無いから教えてあげる。インタビューには素直に受け答えることよ」
確かに今、『やった』と思いました。
「そういうこと」
(裏面へ続く)
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とある天狗が書いた。 とある新聞。 |
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