真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1―11 |
この作品は恋姫無双の二次創作です。
三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため
人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので
その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。
上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。
舞流や燕璃、左慈が仕官し始めて早一月。
特に大きな内乱や、異民族からの侵攻も無く、黄色い布を巻いた妙な一団、黄巾賊が賊徒として活動し始めた以外は、幽州は至って平穏である。
しかし、飢餓や寒波、賊徒に対しては現状では対処しきれておらず、自室で報告書を見ながら一刀は眉間に皺を寄せていた。
「っあー!駄目だ!全然考えがまとまんねー!」
途端に部屋の静かだった空気が破られる。
苛立たしげに頭をがしがしと掻く一刀だったが、それもしばらくすると収まり、机に突っ伏した。
ここ、幽州は大陸の北方に位置する州。
他の南にある州より少し寒いのが特徴である。それ故に寒さにある程度の耐性はある。
あるのだが、城下の街以外の群はそれほど裕福ではない。
服や食料品の流通がうまくいっていないのだ。
いや、上手くいっていないというのは語弊がある。上手くいっていた、少なくともここ最近までは。
最近現れて徐々に数を増やし始めた黄色い布の集団。通称、黄巾党。
幽州各地でもその被害は多発しており、金品の略奪、虐殺、人売り、などの報告が幽州の太守、公孫伯珪の元に上げられてきている。
賊徒討つべし、とこれを機に義勇兵を募っているのだが、未だに成果は上がっておらず、現状は公孫賛軍正規兵が三千五百。
集まっている義勇兵が五百。合わせて総兵力四千。
一方、幽州付近に居る黄巾党の数は、五千強といったところ。
勝てはするかもしれないが、厳しい戦になることは必至だった。
つまるところ今の公孫賛軍は、兵を率いることのできる将が不足しているのだ。
つまり、白蓮、星、舞流の三人。
今回、一刀と燕璃は白蓮の補佐、並びに軍師の真似事というポジションなのだ。
これで戦も出来なくはないのだが、指揮する将が少ない分、各個人の負担が大きくなる。
それでは本末転倒なのだ。
そういう事情もあって、一刀は悩んでいた。
そりゃもう現在進行形で悩んでいた。
どこからか二人か三人くらい指揮できる人が現れてくれないかな〜、なんて現実逃避もしたりした。
そして、そんな現実逃避な願いは、神様の気まぐれによって聞き届けられる。
『だ〜か〜ら〜!私たち、白蓮ちゃんのお友達なんです〜!』
「ん?」
それは、一刀が煮詰まった頭を冷やすために散歩を始め、本当に、ただふらりと目的地を決めずに、城門の方にむかって歩いていた時に聞こえてきた。
可愛らしい女の子の声。それだけでも十分気になるのだが、その台詞の中の一部分、白蓮、という部分に引っかかりを覚えた。
少し急ぎ足で城門へと歩く。真名という名前の概念はこの世界では想像以上に重い。
その真名を呼んだのだ、どちらに転ぶとしても真相を確かめねばならないだろう。
そして、城門に着いた一刀の目に飛び込んできたのは
「さっきから友達だって言ってるじゃないですか〜!」
「と、桃香さま!少し落ち着いてください!門番の方が困っています」
「うにゃ〜……お腹すいたのだ〜」
三人の美少女が門番に詰め寄っているとてもシュールな光景だった。
早速、警備を強化した成果は上がっているらしい。
前なら軽い目的確認だけで通していたが、今は違う。
しいて言うなら警備の強度を一段階上げたということだ。
つまり、見知らぬ人間には警戒を。ということである。
「クレーム……か?」
その三人を見ていて、ふと口からそんな言葉がこぼれる。
いや、失礼極まりないのだが、出てしまったものは仕方がない。
そしてその意味を正しく解すことのできる人物も、この世界にはいない。
そんな孤独感と戦いつつ、一刀は門番に近付いていった。
「どうかしたのか?」
「あっ、北さん!助かった〜。なんとかしてくれませんか、これ」
声を掛けられた門番に安堵の表情が浮かび、顎で美少女三人組を示し、自分は門内詰所に戻って行った。
俗に言う丸投げってやつだ。
「ええ……と」
気まずい沈黙が流れる。
今のやり取りでこの美少女達も自分たちが厄介者という目で見られているのを自覚したであろうし、一刀としてもいきなり矢面に出されて状況を完全に把握しきれておらず―――
「すいません!私たちの話聞いてください〜!」
ガバッ!
「全然自覚してませんでしたー!!!」
ネバーギブアップの精神か、はたまたもの凄くポジティブな思考の持ち主なのか。
どちらでも構わないが、とりあえず現状を説明しておこう。
茫然と立ち尽くす一刀にピンクと赤の中間ぐらいの髪色をした女の子が涙目で抱きつく。
↓
一刀、押し倒される。
↓
しばらく呆気に取られていた残りの美少女二人が慌てて引き剥がしにかかる。
↓
一刀、窒息寸前の状況から脱出。(何が原因で窒息寸前に至ったのかはご想像にお任せします)
「ふぅ……死ぬかと思った」
「……ごめんなさい」
空気のおいしさを噛み締めている一刀の前には、先ほど飛びかかってきた美少女が正座しており、ショボ〜ンという疑音が似合いそうなほど項垂れていた。
その横には同じく正座をして頭を下げている黒髪の美少女が。
ちなみに、背の小さいオレンジ色の髪をした女の子はその横でぐったりしている。
ときおり、ご飯という単語が耳に聞こえて来ていた。
「あ、いや。謝罪はいいからさ。えっと……君たちは?」
「私たちは公孫賛殿が義勇兵を募っていると聞き、兵を集めて馳せ参じた者です」
生真面目と言う言葉が似合いそうな黒髪の美少女が、さっきまで下げていた頭を上げ、話す。
黒髪の艶やかさに心を奪われそうになるが、頭を振って雑念を振り払う。
だが実際、一刀はその艶やかな黒髪よりも、その端正な顔立ちに見入っていた。
意志の強そうな瞳。生真面目で融通の効かなさそうな委員長タイ……プ?
一瞬、意識にノイズのようなものが走る。
それはすぐに収まり、今感じた既視感のようなものはきれいさっぱり消えていた。
……うん。初対面だよな。
隣にへたり込んでいる身長の小さい子を見たときにも同じようにノイズのようなものが走ったが、二回目、しかも間髪いれずにだったので、疲れからきているものだと思い、その思考を中断させる。
今は目の前の状況をどうにかしなくちゃだ。
「その割には兵の姿が見えないね?あぁ、外に待たせてるのかな」
「は、はい。さすがに大人数で押し寄せては迷惑だと思い、外で待たせてあります」
「そっか、悪いね。気遣わせて。えっと……それじゃあ公孫賛様に謁見って形でいいのかな?」
そう言って一刀は文官としての仮面を被り、未だ座ったままの三人に尋ねる。
力強くぶんぶんと頭を上下に振る二人の美少女。
もう一人の女の子は返事の代わりにお腹を鳴らした。
一刀は、それじゃあ、と三人を立たせ謁見の間へ。
途中で会った部下に二つのことを頼み、至急という名目で走らせる。
一つは白蓮への報告。
そして二つ目は―――
「桃香―!!久しぶりだなー!!」
「白蓮ちゃんも久しぶりー!!元気だった?」
「それなりになー。最近は黄巾党のやつらが増えて来て忙しいけど、特に体調を崩したとかは無いな」
「そっかそっか。えへへー」
「なんだよ桃香、笑ったりして」
「ううん。久しぶりに会ったからなんか嬉しくなっちゃって。えへ」
こんな感じの会話が続くこと数分。
なんかキャピキャピした女の子フィールドが辺りに形成されており、この場に居る人間の中で唯一男一人の一刀としては、居づらいこと極まりない。
桃色の髪をした女の子の後ろに付く二人も、やれやれ、と呆れたような諦めたような表情をしており、決して舞い上がっているからだけの行動ではなく、日常的にこのテンションであることは容易に想像がついた。
「そういえば桃香はなにしてたんだ?しばらく前に盧植先生のとこを出たって聞いてたけど」
「うーんとね。色々な場所で人助け……かな?」
人差し指をピンと立て、顎に付けて、おまけに台詞の後ろに疑問符を付けて可愛らしく首を傾げる。男であれば可愛いとも思うが、今対しているのは白蓮。
しかも旧知らしいのでそういう仕草は見慣れていることだろう。
「はぁ!?なにしてんだよー!盧植先生に将来を有望視された劉玄徳が!」
そして一刀の耳に聞き逃せない名前が入ってきた。
「劉玄徳……劉備ぃ!?」
その素っ頓狂な声に、その場にいる全員の視線が一刀に集まる。
気まずい。非常に気まずい。
その気まずい沈黙を破ったのは
「わー!私の名前知ってるんですか?ねぇねぇ愛紗ちゃん、私って有名人なのかな?」
まったく緊張感を感じさせない劉備の一言だった。
「一刀には前に話したことあるんだっけか。これが劉備。私の知己ってやつだな」
「劉備って言います。字は玄徳です。さっきは案内してくれてありがとうございました!」
ぺこりと頭を下げ、桃色の髪をした美少女、劉備はニコニコ笑っている。
確かに劉備と言われればそれっぽい気もするが、如何せんこの世界ではイメージなど当てにならない。星然り、舞流然りである。だが、彼女が劉備だということは……
若干の不安を抱えて、一刀は劉備の後ろに控える二人を見る。
一見、普通の美少女だが……
「な、なぁ。間違っていたら謝るけどさ。後ろの二人って、関雲長と張翼徳……とか?」
「なっ!?なぜ我らの名まで知っている!?」
「おー!お兄ちゃん凄いのだ!確かに鈴々は張飛なのだ!」
とりあえず一刀は、張飛が自分の真名を平然と言ってのけた件に関してスルーすることにした。二人の反応は対照的と言えば対照的。
関羽は警戒の色を更に強くし、張飛は感心したようなキラキラした目つきで一刀を凝視する。
この場合、関羽の反応の方が普通だろう。そもそも、よく知らない人物が自分の名を知っていたら不気味だろうし、少なからず不快感を覚えるだろう。
一刀は、自分が知っていたのが彼女たちの真名で無いことに安堵しつつ
「あーいや、最近賊をこの辺で倒して回ってる三人組が居たなってね」
当たり障りのない返事を返す。無論、その情報は正しいが、言ったことは真実ではない。
最近賊を倒して回っている三人組がいる情報は真実。
だが、名前までは報告に上がってきていない。
ピンポイントで調査を掛けていたなら話は別だが、掛けていない以上、それが限界。
つまり、そちらに至っては真実ではないということだ。
「白蓮ちゃん、白蓮ちゃん。このお兄さん……誰?」
「あぁ、うちの文官やってもらってる北郷だよ。結構優秀だぞ?」
「白蓮。あんま持ち上げないでくれ。文官って言っても俄かだしな」
そう言って肩を竦める一刀。しかし、それを聞いて白蓮の前に居る劉備はびっくりした表情で固まっている。
「と、桃香?おーい…」
白蓮が顔の前で手を振っても反応なし。だが、次の瞬間
「ぱ…」
「ぱ?」
「ぱ、白蓮ちゃんが男の人に真名預けてる!どどどどっどういうこと白蓮ちゃん!もしかして旦那さん?けっけけけけっ結婚したとか!?」
爆発した。なんか爆発した。
爆発した劉備がテンパりながら白蓮の服を掴んでガクガクと揺すり、どういうこと!?と連呼する。
早くも白蓮は虫の息。このままでは衛兵とか飛んできてシャレにならない事態になりそうだったので、一刀と関羽、張飛は協力してなんとか劉備を引き剥がした。
「ゲホッ……し、死ぬかと思った」
「大丈夫か?白蓮」
「あ、あぁ……一応な」
まだ呼吸機能が完全には戻っていないらしく、首元を擦りながら一刀の心配そうな声に応える白蓮。引き剥がされた劉備も落ち着いたようで、バツの悪そうな表情をしていた。
一刀は本気で思った。衛兵沙汰にならなくて良かった、と。
と、いうか
「星、居るんだったら少しは手を貸すとかあっても良かったんじゃないか?」
そう言って一刀が玉座の裏手に声を掛けると、壺を片手に飄々とした雰囲気を纏う星が現れた。
「おや、ばれてましたか。いやいや一刀殿、私の気配を探れるようになっているとは。日々の研鑽の賜物ですかな?」
「違う。メンマの匂いがしただけだ」
「おや、それは残念」
そう言って肩を竦めた星は、玉座の左側に立つ。
左に星。真ん中に白蓮。右に一刀。
武官、君主、文官の並びになると同時に、先ほどまで友として劉備に接していた白蓮の纏う空気が微妙に変化する。それを感じ取ったのか、場の空気に気圧されたのか、劉備も一歩下がり、固い表情を作る。
白蓮は君主。他の諸侯と比べると見劣りしてしまうが、素質、実力共に無いわけではない。
むしろ優秀な方だ。普通に。
だが、知己ということを除けば、ここに居る白蓮と劉備の立場は、一つの州の太守と義勇兵の長。身分は問わないが、立場の違いははっきりしている。
あくまで劉備が本当に義勇兵の長、ならばの話だが。
「で、桃香。兵を率いて来てくれたってって聞いたけど」
「う、うん!た、たくさんいるよ!」
「そっかそっか。……でも、友達の私に嘘を突くのは良くないと思うぞ?」
「えっ?」
すでにぎこちなかった劉備の表情が固まる。後ろにいた張飛は目に見えて慌て出し、関羽は驚いた顔をしたものの、すぐにバツの悪そうな表情になった。
「これでも一応太守なんだ、そのくらいの嘘は見抜けるさ。特に桃香相手なら尚更な」
「うぅ……、嘘吐いてごめんなさい、白蓮ちゃん」
白蓮のしてやったり顔に、劉備は速攻で降参した。
「で?本当に連れてきた兵は少ないだろうけど、どれくらいいるんだ?」
「それは……えっと」
「一人もいない。ってさ」
言い難そうにしていた劉備の言葉を遮ったのは一刀。
その傍らにはさっき二つの指示を出した部下が、一刀に何かを耳打ちしていた。
「今、街の外を見に行ってもらってたんだけど、周辺一里ぐらいには人っ子一人いなかったって。あ、下がっていいよ。ありがと」
その言葉に、一刀の部下は頷いて、下がる。
残るのは、バツの悪そうな顔をした劉備、張飛、関羽の三人と。
ほう、と感心した表情で一刀を見る星。それ以上に驚いた顔をしている白蓮だった。
「一刀、行動早くないか?まだ私だって状況を把握しただけだってのに……」
「ん?あぁ、城門のとこで話した時なんか違和感あったからさ。一応、念のためにね」
「なんだ。たまたまではなかったのですか。やれやれ、つまらん」
「……俺は星を楽しませるために仕事やってんじゃないんだよ。……ったく」
星からの軽口を少しムッとした顔で受け流す。
人を疑うのは好きではなかったが、一応文官として違和感を感じたことに手を打っておいただけ。
正直に言うなら、半分近く勘だ。
そもそも、兵を連れてくれば一刀が城門前に現れずとも、兵を率いてきたことの証拠になり、門番は通しただろう。
だが、彼女達は兵を街の外に待機させてきたと言う。
そこに一刀はひっかかりを覚えていた。
城に入る直接的なコネが無いことから、少なくとも彼女達は一般人。
そして一般人が兵を集めてくる場合、間違っても正規の兵を連れてくることは無い。
基本的に街で募集するはず。しかし、城からの募集と、街で個人が募る募集。
そして、城下で誰かが兵を集めていれば報告が上がるので、この街で人数を集めたわけではない。
また、間違いなく、腕っ節に自信のある者なら待遇の良い方を取る。
なら、彼女達が募って集まった兵はそこまで質が高いとは考えられないだろう。
加えて、街中はまだしも、街の外は黄巾党がいつ襲ってくるとも限らない。
そんな危険極まりない状況下の街の外に、兵を集めて賊を討たんとする人物達が兵を置いて来るだろうか?
答えは否。
そして極め付けに、と一刀は張飛を指差す。
「張飛ちゃんがお腹を空かせてるの見てピンと来たんだよ。兵を雇ったなら兵たちの食事も管理しないといけないだろ?でも、そこまで劉備さん達は裕福そうには見えない。一応、この街に着く前に路銀を使い果たして、あとは白蓮頼みだった可能性も考えたけどさ。そもそもこの街、黄巾党が増え始めてから警備を強化したから、商人とかだったらともかくとして、それなりの人数を連れている一団だったらすぐに報告に上がるよ、街に入る前にね」
その沈黙から数秒。
「はぁ〜……、すごいな一刀。もしかしたら軍師とかに向いてるんじゃないか?」
「確かに。これはなかなかどうして」
「……凄い」
「まさかそこまで詳しく見破られているとは……」
「鈴々お腹空いたのだ〜……」
上からそれぞれ、白蓮、星、劉備、関羽、張飛の順で感想を述べる。
張飛に至っては感想では無いが。
そんな空気に、一刀は居心地悪そうに頬を掻く。
この空気を作った張本人とはいえ、一刀としては自分が思ったことをただ正直に述べただけに過ぎない。特に関羽の感想はただの買い被りである。
別に、見破ったわけではないのだから。
「ま、まぁそれはともかくとして、白蓮。劉備さん達の処遇どうすんの?」
「えっ!?しょ、処遇?」
一刀のひとことに劉備が困惑した表情を浮かべる。
しかし、後ろの関羽と張飛は状況を理解しているようで、険しい表情を浮かべていた。
「友達とはいえ、白蓮殿は太守。太守を騙そうとしたなら、それ相応の罰が下るでしょうからな。なるほど、道理だ」
「そ、それはそうだけど……」
「それについては俺に案があるんだけど、いいかな?」
一刀と星の立場的臣下としての指摘に、白蓮も困惑する。
そして、その一刀が案があると言い、手を上げる。
白蓮が無言で頷き、促した。
「劉備さんは、太守を騙そうとした。これは結構重い罪になる、立場の違い的にね。だから―――」
ぐっと身構え、劉備の前に出る関羽と張飛。
歴史に名を連ねる豪傑二人に敵意をむけられ、一刀は苦笑いせざるを得ない。
この二人にかかれば、おそらく自分などひとたまりもないのだから。
だから一刀は言う
「劉備さん、関羽さん、張飛ちゃんには、しばらくのあいだ白蓮の元で働いてもらおうかな」
この三人が三国志屈指の英雄であることを知った時から考えていた案を。
「えっ?」
「なっ!?」
「はにゃー!?」
三者三様の答えを返す三国志屈指の英雄。
特に、警戒していた関羽と張飛の驚きは劉備のそれを越えていた。
白蓮は安堵の息を吐き、星はこの展開を予期していたように微笑んでいた。
「ま、ギブアンドテイクってこと。うち、兵数はそれなりに揃ってるけど、指揮の出来る人材が少ない。で、劉備さん達には今回の無礼を不問にする……ってことでどうかな?いやまぁ、決めるのは俺じゃ無くて白蓮だけど」
「ぎぶあんどていく……初めて聞く言葉ですな。意味は会話の流れ上なんとなくわかりますが」
「さすが星。ギブアンドテイクってのは、持ちつ持たれつっていうか、交換条件みたいな意味かな、多分」
自分でもはっきりした意味を理解できていない言葉を使ったが、どうやら伝わったようだ、と一刀は安堵する。
「私はそれで構わないけどさ、桃香に指揮なんてできるのか?」
「んー……劉備さんはともかく、関羽さんと張飛ちゃんは出来ると思う」
「と、ともかくって言われた……」
落ち込む劉備を尻目に話は続く。
「なぜ我らが指揮をできる人間だと分かるのですか?北郷殿はそんなことまで見抜けると?」
「できるかもしれないけど、鈴々たちはまだ一回も指揮を執ったことがないのだ!」
当たり前と言えば当たり前の二人の反応。
だが、一刀には確信めいたものがある。この世界の誰が何と言おうと彼女らは三国志の話の中では英雄なのだ。
仁君、劉備。
美髯公、関羽。
燕人、張飛。
この三人は、少なくとも一般兵の枠には収まらない。
一刀もそれなりの武は持っている。だからこそ感じるのだ。
こうして相対しているだけでもひしひしと伝わってくるオーラのようなものが。
劉備の持つ素質。関羽と張飛の並々ならぬ実力が。
「……確証はないけどね。しいて言うなら、勘かな?そういう素質があるっていう、勘」
「勘……ですか」
「な、なんだか凄い説得力を感じるのだ!」
その単語に困惑する関羽と、なにかを感じ取った張飛。
勘という曖昧な言葉のわりに、一刀の表情は自信たっぷりだった。
「白蓮。これは文官としてより北郷一刀個人としての頼みだ。とりあえず、劉備さん達をここに置くことを許可してくれないか?」
「あ、あぁ……うん。分かった。それじゃあ、劉備、関羽、張飛の三人はそこの趙雲に着いていってくれ。城内を案内させるから。頼めるか?星」
「任されましょう。私としても、関羽どのや張飛どの、劉備どのには興味がある」
一刀の頼みは聞き届けられ、白蓮は星に案内を頼む。
星も武人として、劉備たちのなにかを感じ取ったのか、快く承諾して劉備たちと連れ立って玉座の間から退出していった。
玉座の間に残されたのは、固い空気から解放され、安堵の溜息を吐く一刀と。
……なぜか少し不機嫌顔の白蓮だった。
こうして三人の英雄は一時、白蓮の指揮下に入ることとなる。
無論、その後の星の見立てにより関羽と張飛の実力は白日の物となり、劉備も武の才はほとんどないものの、不思議なほどの求心力とそれなりな指揮能力により、晴れて公孫賛軍の客将という立場に位置づけられることとなった。
……なぜか、その後もしばらく白蓮の不機嫌顔は続いたという。
【あとがき】
真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1―11
【 英雄来る ・ 一刀の片鱗 】
更新させていただきました。
初、黄巾編のスタートです。
元ネタの真・恋姫†無双では一刀が持っていたボールペンを売って、張りぼて(兵士を生業とするわけではないという意)の兵士を百人くらい雇っていますが、残念ながら今回は一刀が劉備達に同行していたわけではないので、完全に知人頼みの三人を書くことになりました。
そしてそれなりに文官職が板についてきた一刀。
素質はあったということですね。
流れ的にはこの後、元ネタ路線(公孫賛勢力視点)といったところでしょうか。
とりあえず、がんばります。
説明 | ||
真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1―11 更新させていただきました。 やっと新潟から帰って来れた……。 でも仕事が山積み……。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
8264 | 6331 | 64 |
コメント | ||
実史の張飛ならともかくとして、鈴々じゃ肉を自分で食べきってしまうでしょうなww(心は永遠の中学二年生) 張飛は本当は中々資産を持った肉屋らしいけどね…鈴々じゃなぁw(PON) 桃香のやったことは重罪ですよねぇ。そもそも人脈利用ですらない寄生か神頼み同然だし。(matsu) 一刀、それは悪手だ。劉備は受け入れた勢力に災いを齎す疫病神だぞ。原作どおりに民を兵に引き抜いて去っていくだろうし下手すると星まで奪われるし(PON) この外史の桃香の髪って桃色なんですねー(棒読み) いや、もちろん勘違いだろうって分かってますが。桃香の髪色は濃い蘇芳っていうか臙脂っぽいし(黒乃真白) 白蓮さんヤキモチですか〜?気持ちはハッキリと伝えないと大徳おっぱいさんに一刀さん持ってかれちゃいますよ〜。(mokiti1976-2010) どうでもいいことかもしれないけど、太守に取り次ぐ前に身元、最低でも名前ぐらい確認しようよ一刀君。(yoshiyuki) 一刀、早くフォローしてあげてwww(通り(ry の七篠権兵衛) 白蓮が嫉妬してますね。そして一刀は鈍感王www(量産型第一次強化式骸骨) 初めて会うのに大変桃香達の事を買ってるのが気に入らないのかな?白蓮嫉妬可愛い。(shirou) 俄か文官の一刀も中々、様になってますな(ロンギヌス) 白蓮拗ねた?(アロンアルファ) |
||
タグ | ||
真・恋姫†無双 恋姫†無双 天の御遣い 白蓮 趙雲 蜀の三英雄 | ||
じゅんwithジュンさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |