Alternative 1-9 |
現在時刻は一七四八――セシウに聞いたので間違いない――作戦開始時刻は一六〇七。
少しばかり余裕を持って開始地点に着くことができた。
俺達が来ていたのは村の端、この村を取り囲む柵のすぐ側だった。
周囲に人はおらず、この辺には家も少ない。お陰で俺達は堂々とその場に立ち尽くしていることができた。
もう大分、日が暮れてきている。今頃酒場ではおっさんどもがたむろしているかもしれねぇな。それ以外の連中が家に入っているだろう。
「ねぇ、ガンマ?」
傍らに立つセシウがふと俺の顔を覗き込んでくる。今はクロームとプラナがいない。二人は別の場所で待機している。
二人一組になる時はいつもこの組み合わせだからな。
「なんだよ?」
「魔導陣を破壊するって言ってたけど、周囲の小さい魔導陣を壊しても意味ないんだよね?」
「ん? ああ、そうだな。大魔導陣だけでも時間はかかるが、魔術は発動する」
何を今更そんなことを……。
「で、その大魔王人――」
「大魔導陣な」
どんな人種だ。
「――ダイマドウジンは私達に見えないんでしょ? 小さい方はいいとして、どうやってそっちを壊すの?」
……こいつは、さっき一体何を聞いていたんだ?
何も聞いてなかったんだろうな。聞いていたとしても理解できてないか忘れているかのどっちかだったんだろうな。
バカめ。
「あのな、意識結界は補助魔導陣が張ってんの。だから、補助魔導陣を壊せば、大魔導陣も自然と俺達に見えるようになる。それを壊せばいいだけの話だ」
「あー、なるほど。そういうことか」
納得して満足気に微笑むセシウ。んー、これだからこいつは……。
まあ、話の腰を折らないためにあの時はあえて疑問を口にしなかったんだろうな。そういうところでは気が回るんだよ、こいつ。
つまるところ、プラナの提示した作戦はそういうものだ。まずプラナが、構築したアンチプログラムを組み込んだ魔術を発動させ、魔導陣に張られた意識結界と罠を無効化する。
さすがのプラナでも大魔導陣を最初から裸にしたり、魔導陣そのものを無力化するようなプログラムを組み上げるには時間が足りなかったようだ。
それでも意識結界と罠がなくなれば随分と攻略は楽になる。
実際、こんな短時間であの膨大な譜面に対するアンチプログラムを組み込めるだけでも、十分すごいことなのだ。
本来なら二日三日かかってもおかしいものでさえある。
プラナだからこそできたことである。何も文句は言えない。
俺は魔導陣の破壊用に与えられたスローイングナイフを一本、腰のベルトのホルスターから引き抜く。プラナが用意した特別製だ。物自体はそこそこ簡単に手に入るが、プラナの魔術が施されているため魔導陣に対しては圧倒的な威力を発揮してくれる。
銃じゃ、さすがに銃声で目立ちすぎるからな。その辺のことも考えてくれたプラナには感謝せねばなるまい。
まだ同様の術を施した銃弾も一応渡されているが、これはできれば使いたくないところである。セシウの革製のグローブにも同様の魔術が施されている。
短時間でこれだけのものを用意したプラナはやっぱり天才なんだろうな。
「ねぇ、ガンマ?」
「なんだよ」
また何かくだらないことでも聞かれるのかと予想しつつ、俺は隣のセシウへと顔を向ける。どうせまた能天気な笑顔でも浮かべて――
「…………」
――セシウは――俯き、下唇をぎゅっと噛んでいた。その目は今にも泣き出しそうなほどに弱々しく、揺れているようにさえ思えた。いや、思えたんじゃない。今、確かにセシウの薄い肩は震えていた。
じっと爪先を見下ろし、拳を握り締めたセシウ。予想だにしていなかった見知らぬその表情に、俺は一瞬言葉を失ってしまう。
「…………」
「ど、どうしたんだ、お前?」
「ガンマ……。私達、村の人達……救える、よね?」
ゆっくりとセシウが俺の顔へと視線を向ける。顔は地面に向けられたまま、目だけで窺うように……。
今にも泣き出してしまいそうで、その危うさがどうしようもなく不安定で、俺は近付くことも離れることもできず、いつもそうであったはずの距離感をそれでよかったのか、と疑ってしまう。
この距離感は果たして適切なのか。近付けば泣き出してしまいそうで、離れても泣き出してしまいそうで、後ろにも前にも動けない。
「……あのね、ガンマ……私さ……今まで、いろいろ誰かを救うためにやってきたけどさ……これが失敗したら誰かが死ぬ、なんてことは初めてなんだよね……情けない話だけど……」
そうか……そういやこいつはヒュドラの身辺警護が本来の仕事。それ以外の場所に駆り出される時はあってもその時は戦場ばかりだっただろう。確かに戦場でも自分の行動一つで味方の生死が決まってしまうこともある。だけどそれは死さえも覚悟した戦場での殺し合いの果てにあることであって、避けては通れない道としてそれなりの納得に落ち着かせることができるし、最善を尽くしたのならば責められる奴だっていない。
でも、今は違うんだよな。
俺達はたった四人でこの村の人々全員の命を守らなければならない。村人達は戦場に立つ兵士などではなく、誰も死の覚悟なんてできていないし、ただ穏やかに生きているだけだ。
全ての責任は俺達が背負わなければならない。もしここで救えなかったら、それは全部俺達のせいになってしまう。納得させることだって難しい。
四人だ。たった四つの身体だ。ただそれだけの心で背負わなければならない。
それはきっととても辛いことで、またどうしようもないくらいに逃げ場がないのであろう。
卑屈になって閉じこもることだってできるだろうが、きっとセシウはそれをよしとしないんだろう。
人を救うという行為の尊さとその重圧。最初から何もしなければ、成功した先の栄光も得られないが、そんな責め苦を受けることだってない。
何もしなければ楽に決まってる。でも、それはできない。
なんせ、勇者の仲間だからな……。
「不安、なのか?」
「そりゃ……そうだよ。だって、私達が失敗したら、村のみんなは……」
込み上げてくるものを堪えるように、セシウは唇を噛み目を僅かに細める。視線を俺から逸らし、また爪先へと落とされた。
今、こいつの脳裡には村の人々の笑顔が去来しているんだろう。
なんで分かるかって? 俺もそうだからだよ。
看板娘や、俺達に花環をくれた少女、酒場の親父――みんな屈託のない笑顔を浮かべてていて、ちょっと抜けてるところはあるけど真っ直ぐで、みんな温かくて。
喪うわけにはいかない。
でも、その命全てが今自分達に委ねられている、なんていう現状は確かに重すぎるものもある。
そうは言っても、やれるのは俺達しかいない。
「不安に決まってるじゃん……。だって全部私達にかかってるんだよ……? この村のみんなの未来を……私達が背負ってるんだよ? 不安じゃない、わけ……ないよ……」
掠れた声で呟くようにセシウは零す。
なるほどな。こいつなりに、いろいろ考えてんだろうな。
いつもバカバカ言っちまってるけど、こいつはそこまでバカなわけでもない。むしろしっかりと自分で考えて行動のすることができる奴だ。
ちょっと俺達が小難しい話しすぎるせいで、バカっぽくなっちまうんだけどな。
別に頭が悪いわけじゃあねぇ。
まあ、バカバカ言うのをやめるつもりもねぇけどさ。
それに今更、表面上の評価を変えるわけにもいかねぇだろう。恥ずかしすぎる。
俯いたままのセシウの横顔は湿り気を帯びていて、頬にかかる長い髪に、ああ、こいつも女だったんだなぁなんて的外れの感想さえ浮かんでしまう。
女なら、放っておけねぇよな。
困った女性には優しくしてやるのが男として生まれた者の義務だと俺は思っている。
なら、こうしてここで俯いている奴が例え野蛮な幼馴染みだとしても、そいつが女の顔をしているのであれば優しくしてやらねばなるまい。
大義名分は揃ってる。
俺は努めて温かさを感じられるかもしれない微かな笑顔をセシウに向ける。
「なぁにらしくもねぇこと言ってんだよ。お前はお前だ。お前のできる限りのことをすりゃいいんだよ」
語調もなるべくきついものにならないように気を払う。セシウを落ち着かせるよう、穏やかにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「でも……もし失敗したら……」
未だに踏ん切りがつかないセシウに俺は頭を掻く。根が他人想いだからな。絶対に守りたいからこそ、失敗した時のことが怖いんだろう。
俺は俯いたままのセシウの前へと立ち、腰を少し曲げてセシウの両肩に手を置く。目の高さを同じにし、伏せられた瞳をじっと見つめる。
両手を置いた肩は今も震えていて、こいつはまだまだ未熟だったことを思い出す。
妹のような存在だ。小さいころからずっと側にいた。
こいつはあの頃からそう変わってはいないんだろう。どんなに強気で振る舞っていても、心はずっと繊細だ。
先程、この作戦が終わったら宴をしたいと言っていたが、あれも不安を払拭するための提案だったのかもしれない。
こいつは、こいつなりに頑張ってるんだよな。
「そんなこと考えてどうすんだよ。クロームが言ってたろ? できるはず、じゃなくて必ずやり遂げるんだ。失敗なんか考える必要はねぇ。俺達は必ずやり遂げられるはずだ。失敗なんか考えてたら、成功するもんも成功しねぇよ」
セシウが僅かに目を上げる。顔は未だに下を向いているため、自然と上目遣いをするような形になり、濡れた瞳も相俟って、その仕草はどうにも愛らしくて……。
うぐっ……落ち着け俺。こいつはただの幼馴染み。家族みたいなもんだ。妹に欲情する兄がどこにいるっつぅんだ。
「ガンマ……分かってるよ……でも、さ」
「でも、じゃねぇよ。俺達がやらずに誰がやるっていうんだ? それとも見殺しにしろっていうのか? それはお前が一番嫌なことなんじゃねぇのか?」
セシウはまた目を伏せてしまう。
いかん。ついついいつもの調子で言葉に棘ができてしまう。抑えろ抑えろ。
「お前が、この村の人々を救いたい、と強く思ってることは分かってるよ。長い付き合いだ。分からねぇわけがねぇ。大丈夫だ。お前は村人達のために尽くせる限りの全力を尽くせばいい」
どの道、俺達はそうするしかないのだ。
たった四人の人間にできることなんて全力を尽くすこと以外、何もない。俺達が多少特別な力を持っていたとしても、だ。
結局は人間でしかないんだから。大いなる流れの前に抗うには、ただがむしゃらに頑張り続けるしかない。
少なくとも俺達は全力を尽くすべき方向を見つけられた。一縷の希望が見えたならば、そこに縋るべきだろう。
抗える手段があるだけ幸いだ。
「その結果がどうであれ、そこにいちゃもんを付けたり、お前を責めたりするような奴がいた時は、俺がそいつを絶対に赦さねぇよ」
俺の説得に、セシウは弾かれたように顔を上げる。目を大きく見開き、俺の顔を直視してくる。
「え……? 今、なんて言ったの?」
「だから、お前を責める奴がいたら、俺はそいつを絶対に赦さねぇっつったの。だからお前はただ全力を尽くしてくれればいい。誰にもお前を責めさせやしない」
セシウの瞳が僅かに揺れる。俺から逃げるようにそっぽを向くけど、この状況じゃどうやっても横顔が丸見えだった。
さっきまで泣きそうだったせいか、なんか頬が紅いような。あれ、泣きそうで頬って紅くなるもんだっけ。
「ど、どうして……そこまで……」
「ん? いや、そりゃ、お前が大事な家族だからだろうが。絶対にお前を守ってやるよ」
何を今更。
妹も守らない兄はいないだろう。こんなに悩んでたら。それはまあ、家族として当然の義務だろ。
俺の答えに、何がおかしいのかセシウはぷっと吹き出した。
……わ、笑われた……!
「私より弱いくせに」
顔を上げたセシウは少し充血した目で、俺を上目遣いに見てくる。先程までの弱々しさなんかなく、悪戯気な笑みまで備えてある。
「う、うるせぇな」
気恥ずかしくなって。俺は震えているセシウの肩から手を放す。今も震えているのはきっと込み上げてくる笑いを抑え込んでいるからなんだろう。
その心遣いは一体なんだ。
「頼りないのに、言うことだけは立派なんだから」
「わ、悪かったな」
今度は俺が顔を逸らす番だった。
そりゃ俺なんて大した実力もねぇよ。セシウと比べれば本当に身体能力は劣っている。
それでも家族一人くらいは守るくらいの格好はつけたいじゃねぇか。
俺の中にある数少ない譲れないものであった。
痛いところを指摘されてとぎまぎとする俺にセシウはにっこりと笑ってみせる。
「でも、少し元気出たかも。ありがとね、ガンマ」
それは本当に穏やかな声音で、俺はどうしてかその笑顔にほっとしてしまう。
こういう感覚は慣れんな、どうにも……。
「う、うーっし、作戦決行の時間も近い。気を引き締めて行くぞ」
俺は湧き出てくる感情を振り払うようにセシウへ背を向け、腰に両手を当てて目標の魔導陣があるであろう方向を見つめる。
背中にはどうにもちりちりとした感触があって落ち着かないけど、一度背を向けてしまった以上振り返る勇気もなかった。
今は、ただ、これから始まることに集中しよう。こいつのためにも悪い結果にはしたくない。
もし誰かがこいつを責めても俺は大した支えになれやしないんだから、せめて今この時に全力を尽くしそうなることを未然に防ごう。
俺にできるのはそれくらいのことだ。
一六〇七――予定通りプラナの魔術が発動した。
村の端であるこの地点からも、逆端から伸びた光はよく見えた。
天上へと真っ直ぐに伸びていく細く白い光。遙か上空まで昇った白光は球体となって静止する。
光自体は強いものではなく、ここからでは眩しさを感じさせない。一体どれだけ高く上がっているのだろう。ここからではサイズの測定も難しい。
滞空する光はやがて甲高い音を立てて弾け、いくつもの小さな光が放物線を描きながら、村へとゆったり降り始める。
その数――二十四条。
光の尾を曳きながら降り注ぐ光が落ちていく先にあるのは魔導陣だ。
俺達のすぐ側まで降ってきた光が地面に振れた瞬間、金属同士がぶつかり合うような鋭い音が鳴り響き、硝子が割れる音が耳を劈いた。同時に瞬いた閃光を俺達は腕で遮り、視界を保護する。
それでも眼球が膨らむような鈍い痛みからは逃れられない。
光が闇に溶け入り、俺達が光の落下地点へと目をやると、そこには今までなかったものが出現していた。
否、視えなかったものというべきか。
現れていたのは魔導陣。意識結界を破壊され、最早隠れ蓑を失い、全てを晒し物にされた姿がそこにはあった。
プラナの魔術は成功した。さすが天才魔術師というべきか。
おそらく村中の魔導陣が見えるようになっていることだろう。
これならば俺達でも簡単に破壊することができる。
本番だ……!
「セシウ、行くぞ!」
「う、うん!」
同時に俺達は駆け出す。最も近くにある魔導陣の横合いを抜けながら、俺はスローイングナイフを投擲。地面に突き刺さったナイフ、その刀身に刻まれた魔導式が駆動を開始し、魔導陣が砕け散る。透明な破片は宝石のように煌めきながら宙を舞い、エーテルへと戻り消えていく。
いい破壊力だ。
魔導陣に対しての破壊力は何も言うことがない。
そのまま俺達は止まることもなく、次の魔導陣を目指す。魔導陣の場所は全て脳みそに叩き込んである。
これでも記憶力には自信があんだ。
クロームとプラナも今頃、同様に魔導陣の破壊をしているはずだ。一組辺り十二基の魔導陣を破壊すれば中央の大魔導陣を覆っている意識結界も剥がれる。
そうなってしまえばこっちのものだ。丸裸の魔導陣ならプラナの用意した魔術で簡単に破壊することができる。
問題点として上げるのであれば、猶予がおよそ三十分弱しかないこと。なんせプラナのアンチプログラムが目立ちすぎる。術者が気付かないわけがない。
相手がバカでもない限り、すぐに始動式の詠唱を始めるはずだ。
だからこそ一切のムダなく動かなければならない。
破壊行動を続け、すでに三基壊した。スローイングナイフを突き刺すだけで壊れてくれるので、随分と助かる。
「いたぞ!」
四基目を目指す最中、横合いから聞こえた野太い声に俺は舌打ちをする。
ベラクレートの私兵が出てきやがった。予想よりも早い。待ち伏せでもしていたか。
そこで俺は自分の浅はかさに苛立ちさえ覚えてしまう。今日はもともと魔導術を発動させる予定だった。事前に妨害くらい予想していたはずだ。出てくるのも早いに決まってる。
もっとしっかり考えておくべきだった。
「が、ガンマどうする!?」
「構うな! 次を目指す!」
「あ、うん!」
構ってられるほど余裕はない。
今は少しでも時間が惜しいんだ。後悔も後回しだ。
「追え! 敵は第八魔導陣を指向し移動中。捕らえろ! 後続にも伝えろ!」
背後から聞こえる野太い声。いくつかの足音も聞こえる。
どうやら追いかけてきてるらしい。
「ガンマ! 追ってきてるよ!」
「放っておけ! 野郎に割いてる時間はねぇ! 今、俺の時間を割くことができるのは好きなシリーズ小説の続編と美人の誘いと生理現象だけだ!」
「どーでもいい情報ありがとうッ! ムダに賢くなれましたッ!」
こんな状況に軽口を叩く俺に、セシウは呆れたように答える。
よし、もう少しで四基目の魔導陣に辿り着――
「来たぞ!」
「捕らえろ!」
魔導陣の周囲を取り囲むように、武装した兵士達の姿がそこにはあった。数は四人。
クソ……待ち伏せかよ……!
「セシウ! 蹴散らせ! そこはかとなく優しくな」
「そこはかとなく優しくあいよ!」
ずっと俺の後ろを走っていたセシウがあっという間に俺を追い抜き、兵士達へと飛び掛かる。それはまるで弾丸のような素早さだ。
今までセシウが俺の速度に合わせていたことを知らしめられて泣きたくもなる。
飛び上がったセシウはまず一番前に立っていた兵士の顔面に跳び蹴りをかまし、倒れていく男の肩に片手だけついた状態で逆立ちし足を広げて回転。両隣の兵士を蹴散らし、再び跳躍する。跳んだ先にいるのはやはり兵士――落下の力と共に拳を胸部へと叩き込む。纏っている甲冑がいとも容易く砕け散り、男の身体が反り返った。叩き込んだ拳で男の胸倉を掴んで引き戻し、もう片手を脇腹の部分にかけたセシウは雄叫びを上げ、屈強な男の身体を持ち上げ、残った最後の兵士へとぶん投げる。
「う、うわうわ!」
声にならない声を上げてその場から動きこともできぬまま、甲冑を纏ったヘビィ級のおっさんにのしかかられた男はそのまま倒れ伏して起き上がることもできない。
本当に秒殺だな……。
全力で走ってる俺が辿り着く前に終わるとは思ってもいなかった。
額に浮いた汗を拭ったセシウはにかっと笑い、俺に親指を突き立ててみせるけど今は無視。ナイフを魔導陣に突き立て無力化して、止まることもなく次を目指す。
セシウもすぐに俺の後ろをついてくる。こいつが迅速に敵を倒してくれたお陰で足止めを喰らうこともなかった。この調子で行けば、作戦は成功するだろう。
下手に遠回りをすることはタイムロスになるのでできればしたくない。セシウの突進力を活用し、正面突破していくべきだ。
「あいつらだ!」
「追え!」
後続の部隊が到着してきたらしく、追っ手の数がどんどん増えていきやがる。
こっちは村の周りをぐるりと回る形だというのに、あいつらは直線ルートでやってくる。振り切れないわけである。
宵闇の中に、五基目を視認するがやはり周囲にはベラクレートの私兵が待ち構えている。数が先程より多い。十人か……。
背後には十三人の追っ手。止まったらかなりのタイムロスになるだろう。
セシウは俺が指示を出す前に先行し、兵士達に突撃していく。
「うおらああああああああああ!」
打ち付けるような咆哮を上げ、セシウは真っ正面から敵に顔面に拳を叩きつける。弾け飛び地面を転がる甲冑。
先程のように他の連中が辟易することはなく、声を張り上げ兵士達はセシウへと殺到する。四方から槍を構え突撃してくる中、セシウは至って冷静だった。
セシウは空へと飛び上がり、迫る兵士の一人を踏みつける。突然頭上から衝撃が襲い、前のめりの体勢で突撃していた男はそのまま倒れ込む。倒れ込んだ男に足を取られ両隣の兵士も転倒する。倒れ込んだ三人を踏みつけながら、セシウはさらにその向こうの男へと拳を打ち付ける。弾け飛び、またもや地面に転がる甲冑。
セシウの脚力で踏みつけられた男どもも戦闘の継続は不可能だと思われる。この調子なら楽勝だな、と思われた矢先、セシウへと背後から兵士が掴みかかる。
「おわっ!」
男はそのままセシウを羽交い締めにして動きを封じる。次いで迫ってくる男をセシウは裏拳で迎撃するが、それを見た兵士はさらに腕へ力を込める。
セシウならこれくらいの相手を振り払うことは容易い。ただあの状態から抜けるとなると、かなり本気を出さないといけないだろう。それをセシウはよしとしないはずだ。あの状態じゃ手加減したままでは抜けられない。
「クソッ!」
俺は足を速め、敵陣へと飛び込む。セシウを拘束から解き放とうとする俺の前に兵士が立ちはだかる。
「邪魔だ!」
即座に力の限り蹴りをお見舞いしてやる、が――
「イッツゥッ……!」
考えてみりゃ蹴りで鎧を纏った相手を倒せる訳もなく、俺は脚全体に走る痛みに呻きを上げてしまう。今すぐしゃがみ込んで、爪先を押さえたい気分である。
殴らなくてよかった。
俺の多くの女性をよがり狂わせてきたゴールデンフィンガーが傷物になるところだったぜ……。
しまった……。銃使えないなら、これ勝ち目なくね? 俺。
「ガンマ何やってんの? 頼りないなぁ」
「うっせぇな! こっちはせっかくお前を助けてやろうと、うおっと!」
言い返してる最中、両脇から飛び掛かってきた男二人に気付き、俺は素早く飛び下がる。男共はそのまま勢いを殺しきれずにお互いの兜をぶつかり合わせ、地面に倒れ込んでしまう。
うほっ、儲けた。
対してセシウは後ろから羽交い締めにする男の足の甲を必死に踏んづけて抵抗していたが、もう一人に足をがっしりと抑えられ完全に身動きが取れなくなってしまっていた。
くそ……五基目はもう目の前にあるっていうのに……。いや、まだ四基しか壊していない。こんなことをしている場合じゃないっつぅのに……。
俺達を追っていた連中も追いついてきて、いよいよ事態は最悪だ。いくらなんでも手加減した状態で、抜けられるものではない。
「あと一人だ! 捕まえろ!」
残った兵士が俺へと迫ってくる。五人潰れて、十三人合流して合計十八人。簡単な足し算であるが、現実は簡単じゃない。
ここはまずセシウを助けることが先決だな。なんとかセシウの元に辿り着き、拘束を解くのが俺のすべきこと。
そうと決まれば行動開始だ。
俺は眼鏡を押し上げ、向かってくる兵士に向かって走り出す。切羽詰まった声でセシウが俺の名を叫ぶ。心配でもしてんだろう。血迷ったのかと思ったのかもしれない。
安心しろよ。俺もそこまでバカじゃない。自分でなんとかできることじゃないのは分かってる。だから自分にできることだけするさ。
武器を構えた兵士と交わるその寸前に俺は飛び上がり、槍の刺突を避ける。先頭の男の鎧に覆われた肩に片手をつき跳び箱の要領で越え、その後ろの男の頭に自分の足をねじ込む。
無理な動きに足が軋むように痛むが今は無視。頭を足がかりに立ち上がり、さらにその向こうの男の肩に足を載せ、バランスを崩す前に次の兵士を足場にして、俺はセシウの元へと駆けていく。
最後尾の男の肩を蹴り飛ばし、俺は飛び上がる。着地した場所はセシウより少し離れているが、あいつらはやり過ごした。助けられる。
無理な動きに足は痛みを訴えているけど、今だけは構うな。
「セシウッ!」
俺の口はどういうわけかセシウの名前を呼んでいた。よりにもよって張り上げた声で。
そういやこいつの前で名前を呼ぶのは久しぶりだな、なんてことを思ってしまう。
待ってろ……! 今助けてやる!
俺はセシウを目指し一直線に駆けていく。しかし、突然視界の脇から入り込んできた影が俺の前に立ちはだかる。
なっ!? 確かに全員やりすごしたはず……! 総数もしっかり確認していたというのに……!
一体どこから湧いて出てきた!?
想定外の事態に混乱した俺の動きは緩慢になり、立ちはだかった男の突進を真っ正面から受けてしまう。
「うぐっ……!」
「行かせはせんぞ!」
腹部に走る衝撃。見事なアタックを決められてしまう。それでも根性でなんとか踏ん張り倒れることは防いだが、男はそのまま俺の腰に手を回し抑え込んでくる。
クソッ!
こいつは一体どこのどいつだ!?
武装はしている。装備から考えて間違いなくベラクレートの私兵だ。しかし勘定していけば一人余分だ。
……そこで俺は気付く。真っ先にセシウの殴り飛ばされ地面を転がった男の姿がない。
まさか、セシウの拳を身構えることもできずに受けたっていうのに立ち上がったっていうのか?
とんでもねぇ気概じゃねぇか。そのまま俺は前に進むことも、後ろに退くこともできなくなる。
なんて力だよ……こいつ。
歯噛みする俺の後頭部に鋭い衝撃が走る。視界に火花が散るような錯覚。訳も分からないまま、俺の視界は揺らぎ、顔面に衝撃。
セシウが悲痛な声で俺の名前を呼ぶ。
口の中には味のないざらざらとした土の感触。無味だというのにどうしようもなく不快な苦味が広がるような感覚。
頭の後ろから何かが俺を地面に押しつけてる。背中には岩のように重い何かがのしかかり、背骨が悲鳴を上げている。
やりすごした連中が追いつき、そのうちの一人が俺を抑え込んでいるらしい。
唾と一緒に土を吐き出すが、口の中から不快感は消えない。
なんか額が熱い。何かが垂れてきてる。
どうやらさっき頭を打たれた時に出血したらしい。
身体は興奮状態であるためか痛みを訴えず、どうしてか億劫だった。頭がぼーっとしている。
眼球がピントを合わせてくれない。
全身の血液が沸騰しかけているように熱い。身体の中心から指先まで、じんじんと熱を放っている。
なのにこの身体は動かない。
必死に顔を上げようとすると、即座に頭を抑える手に力が込められ、地面に叩きつけられた。頬に何かが突き刺さる。
「ガンマッ!」
もうほとんど泣いているような声で、セシウが俺の名前を呼ぶ。一体あいつは今、どんな顔をしてんだろう……。
また疼くような熱が灯る。それでも痛みはない。
「一度ならず二度までもトリエラ様の神聖な魔導陣を害すとは……この蛮族めが!」
誰かが頭上から俺を罵ってくる。降り注ぐ罵声も今はどうでもよかった。
俺の上に載っかって拘束している奴を一秒でも早く消し去りたかった。
「テメェら……あの魔導陣がどういうもんだか分かってんのか……!」
俺は必死に頭を曲げ、片目だけで睨むように兵士の一人を睨む。おそらくこいつが隊長格なのだろう。尊大な態度で俺を蔑むように見下ろしている。
それでもその顔はよく見えない。なんだか、ぼやけてるな……。
そういえば伊達眼鏡はどこいった……。いや、眼鏡に度は入ってないから関係ないけど……。
まあ、どうでもいいか……。
「あれはトリエラ様が閣下のために用意してくださった大いなる栄光への礎だ」
「大いなる、栄光……? ハッ、何も分かってねぇんじゃねぇか! あれはただの大量殺戮兵器でしか――」
突如頭部に鋭い衝撃が走る。俺の眼前でまた火花が散った。
け、蹴られたのか……。多分そうだろう。
頭がじんじんと熱を訴える。それはきっと痛みという熱量なんだろう。頭皮をくすぐるような感触はきっと血かね?
どうでもいいんだ……んなことは。
「蛮族が! トリエラ様を愚弄するかっ!」
「愚弄なんざしてねぇよ……これは正真正銘の事実だよ……。あの魔導陣が起動すれば、多くの人間が死ぬ……。村人は誰一人として生き残れねぇ。その記念すべき血の夜は今日なんだよ! テメェらに構ってる暇はねぇんだ! とっとと失せやがれ……! 村人の命が懸かってんだよっ!」
俺はもう怒鳴ることを通り越し吠えていた。腹の底から必死に声を絞り出していた。
大声を上げるということはこんなに体力を消耗することなのか……。頭が重い。喉に棘の塊を飲み込んでしまったような無数の痛みを感じる。
どうでもいい。全部どうでもいい。
俺の身なんざどうなろうと構わない……。
俺の放った真実を受け、しかし男はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「だから、それが?」
「は……?」
「それがどうしたというんだ? 村人が死ぬ? それがなんだ? その村人の無数の魂を糧に、閣下は不老不死になられるのだ。閣下の崇高なる目的のために、村人は尊い犠牲となってもらう。それだけのことだ」
……な、何を言ってんだ? こいつは?
不老不死? 崇高なる目的?
一体何の話をしてやがるんだ?
それよりも――
「テメェら……! 村人が犠牲になることを分かっていてこんなことしてんのか!」
「当然だ。それがどうした?」
「ざっけんじゃねぇぞ……!? 村人をテメェらの、あのクソ豚野郎のエゴのために犠牲にするっていうのか!?」
俺の肩に鋭い痛みが走る。今度ばかりは誤魔化しきれない純正の痛みが俺の脳へと駆け上がり貫いた。
「うっ……ぐっ……! があああああああっ!」
獣の咆哮のように唸りを上げる俺の視界の端が紅くなる。痛みという感覚が俺の意識を上書きし、激痛だけが意識は席巻する。
肩に何かを突き刺された。きっと剣なんだろう。そうに違いない。
「ベラクレート卿は神になるお方だ。貶すことは許さん。そして何より、村人は無駄死にするわけではない。神の誕生の、これから始まる伝説の、礎となるのだ。こんな寂れた村で意味もなくひり出され、ただのうのうと生き延び、ムダに畑を耕し、その場しのぎの生活を漫然と続け、愛だななんだのほざきながらベッドの上で腰を振り合い、精液を吐き出し、受け止め、大した意味もない命を生み出し、ムダに死んでいくよりもよっぽど有意義ではないか」
「んだと……テメェ! 取り消せ! 今の言葉を取り消せ!」
許さねぇ! こいつは絶対に許さない……! ベラクレートもだ……! 全員纏めてぶっ殺してしまいたい。
いや、殺す……! こいつらに生かしておく価値なんてありゃしない。
「黙れ、クズが。勇者だか何だか知らぬが偉そうな口を」
そう言って男は視線を俺から逸らす。俺の頭上を抜けて、誰かに合図を送っているようだ。そんなことを考えていると、再び背中に激痛が走った。
「ガッ……ハッ……!」
傷口を広げられる痛みに俺の視界の端に滲む赤がより一層強くなる。
肩に突き刺さった剣が捻られたのだと意識の片隅で理解する。そんな情報なんて何の意味もなく、濁りのない鋭利な痛みが俺の意識を混濁させていく。
激痛の紅い奔流が駆け巡る。全身を熱されるような錯覚。落ちていくような昇っていくような、どちらとも言えない感覚に三半規管がイカれてくる。
騒音が俺の頭を揺らす。耳障りだ。
でもそれはよく聞けば俺の哭き声で、震える喉からは血の風味さえ溢れていた。
セシウが何事か叫んでいる。何を言っているのか分からないけど、その声がセシウのものであることは分かった。十数年聞いてきたんだ。分からないはずがない。
あー……やっぱお前、声は可愛いわ……。内容が分からないけど、その音はすごく落ち着く。耳に心地いい。
喋るとバカだけど、音だけ聞いてるなら、悪くない、かもな。
「黙れ、小娘が。どうやら自分の状況が理解できていないようだな」
男の声が聞こえる。今はもう視界に入れるように努力することも面倒くさい。
あー、さっきより視界が不明瞭だ。まるでモザイクがかかってるみたいだな。
「黙れ! クズどもが! あんたたちに村の人達を好き勝手にできる権利なんてない!」
地面のようなものが見える。一面が緑色で視界の半分を埋め尽くしている。きっとこれは草なんだろう。その先に黒い塊がぼんやりと見えた。
「黙れと言ったのはこっちのはずだが? 貴様のような小娘には閣下の素晴らしき思想も理解できぬか。無知とは……全く、哀れなことだ」
これはなんだろうか。ごつごつしているように見える。
「うるさい! この村の人達の命は人生は、何もムダなんかじゃない! 全てに意味があって、全てに価値があるんだ! そんなことも理解できないあんた達の方がよっぽどバカで間抜けで、哀れだ!」
ああ、軍靴か。
「口を慎め。この状況下でそんな態度を取って、どうなるかも分からぬか?」
硬そうだ。あんなもんで蹴られれば、そりゃ痛いに決まってるわな……。
「そんなの知ったこっちゃない! ガンマから手を離して! あんた達にこれ以上ガンマは傷つけさせない……!」
痛いって、あれ? 痛みはどこにいったんだ。
「馬鹿め。殊勝な態度を取っていれば、少しは扱いも変わったであろうに」
今となっては熱もなくて、夜風がやたら身に沁みた。
「捕虜となった女の行き着く先というものを教えてやろう」
なんか今度は寒ぃな……それに身体が重い……。頭がぼーっとしている。
「え……あ、いや……!」
眠いな……。
…………。
……。
「――服を剥げ」
沈みかけていた意識が急速に浮上する。血液が熱量を全身に伝達する。身体の芯が燃え上がるように熱い。今まで血が凍り付いていたかのようだ。
視界に映る全ての輪郭が定まり、混ざり合っていた色も分離する。個体を個体として認識する。
意識が、視界が、痛みが、再構築される。
全身に骨が軋むような痛みが蔓延している。それを感じ取れるほどに神経が冴え渡っている。
靄を抜けたような爽快感。苦痛に呻きながらも、俺は地面に手をつき、身体を起き上がらせようとする。
「なっ! 貴様!」
ぐっと頭を誰かに押される。背中にかかる重圧も強くなっている。
邪魔だ……!
俺は全身の力を振り絞り、地面に抑え込もうとする力に抗う。腕の関節が軋む。肩に突き刺さったままの剣がさらに傷口を拡張し、新たな痛みを生み出すが、湧き出る声も今は歯を食い縛って飲み干す。
苦痛も、呻きも、弱音も、慟哭も、その全てを嚥下し、俺は雄叫びを上げていた。全身の力を全て動員してありったけの声を絞り出す。
瞬間、身体が軽くなるのを感じた。背中にあった重みがふっと消え失せ、俺の身体は起き上がっていた。
ようやく開けた視界が捉えたのは隊長格と思しき男の手から必死に逃れようと身を捩る、羽交い締めにされたセシウの姿だった。セシウを取り囲むように兵士達が輪を作っている。
男の手はセシウの服にかけられていた。何をしようとしているのか、考えるだけで吐き気がする。
「セシウッ!」
俺は声を張り上げ、名前を呼ぶ。叫ぶ。渇望するように、求めるように、ただひたすらにセシウの名前を呼んだ。
「ガンマッ!」
「ふん、また立てるとはな。虫けらに相応しい生命力だ。お前達、殺してしまえ。別に無理に生かしておく必要もない」
男が何かを言う。どうでもいい。あいつが何を言っていようと、俺はあいつの顔面に一発ぶち込まなければ気が済まなかった。
俺は深く考えることもせず、本能のままにセシウの元へと駆ける。
取り巻きの兵士達が俺の行く手を阻むように押し寄せてくる。鎧を纏った肩が、腹部にめり込む。逆流した胃液は即座に飲み込み、そのまま男の身体を押し返す。さらに次から次へと兵士が俺に向かってくるが、それを身体で受け止めては押し返した。蹴飛ばして、殴り飛ばす。拳も足も鈍い痛みを疼かせいているけれど、気にしてなんかいられなかった。
目の前にまた新たな兵士が立ちはだかる。
邪魔だ……! 邪魔だ邪魔だ邪魔だ。
俺の右手はいつの間にか、ヒップホルスターに突っ込んだ銃へとかかっていた。
「死ねやっ!」
俺の口が無意識に怒鳴るような声で何かを言い放った。それはこの世で最もシンプルな殺意と憎悪の表現であり、また一切の反論を許さないほど暴力的でストレートなものだ。
俺の腕はそうであるのが当然のように銃を引き抜き、構え、引き金を引いていた。
銃声が耳を打つ。銃口が火を放つ。銃弾が眉間を撃つ。
単純な事象の連結的展開。その末端には死しかなくて、渇いた銃声は夜の闇に溶け入ることもなくずっと反響していて――
そして――
――魔導陣が、紫色の光を放ち、静かに、回転を始める。
悪夢が咲いた。
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