GROW4 第十二章 月灯りの下で・・・
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「月の力が動き始めたのじゃ。このフィールド全体はもはやわらわの支配下となった。さて、

刹那はどうくるかのう・・・」

「なっ、なんだこれは!?真昼間なのに会場全体がすっぽり夜になってる・・・」

「上を見よ、刹那」

「満、月・・・」 

 急に会場に訪れる夜。真上には太陽ではなく明々と照らす満月の姿が見える。会場全体が月灯りに照らされて白く輝きだす。

「見事な満月じゃろう。風月我下(ふうげつわか)。我、月の下にあらん時、風説の功を示す・・・

刹那、汝(なんじ)にわらわが倒せるか?」 

「・・・・・ああ、すまない。あまりの美しさに見とれていたよ。綺麗だな・・・」

 月灯り輝く月姫の姿は、唯一無二とも言わんほどの美しさである。会場の雰囲気によって、大きな覇気を更に増していき、まるで月が依り代になったような感じだ。

 刹那さんもそれに見とれてしまい、一瞬声が出なくなった程の・・・

 

「刹那。この程度で驚かれてもらっては困る。わらわの力の本質はこの先にある。さあ、引き出して見よ、刹那!!」

 グググッ

 新たに造り出した棒、剛魔の槍を手に動き出す刹那さん。どう動く・・・

「真っすぐ攻めてくるか、流石じゃな」

「一式破人(いっしきはじん)」

 ゴゴゴっ

 ピタァァァァァッ

 

「何!?力が抜けてく・・・」

 瞬時に棒を動かし、完全に月姫の死角を捉えた攻撃が、身体に触れる瞬間に速度を急激に落とす。

攻撃どころか刹那さんまでもが。いったい何が・・・

「なかなかの威力じゃ。パワー型の槍じゃな?ここまでの進行は久しぶりじゃ・・・」

「身体が軽い?重心が定まらない・・・」

「月の重力という奴じゃ。月の重力は地球の6分の一程しかない。踏み込みすらふわふわして叶うまい・・・

わらわは月の姫巫女。月そのものじゃ」

「月そのもの?そんなことが。いや、これが失われた魔法の力。何があってもおかしくないよね・・・」

「そのとーりじゃ。じゃがまだまだこの程度ではない。月がどのような環境か分かるか?」

 ピキィィィィン

 急にフィールドすべてが凍り出す。それとともにフィールド全体が真空状態になる。

「苦しかろう刹那。呼吸もできない、氷点下300度以上の真空空間こそが月。華やかな輝きを

放つのとは一変。孤高の一面も見せるのじゃ・・・

真空状態では身体も持たんじゃろ。ばらばらになる前に降参するんじゃな」

 ドンッ

「ん?」

「焔、零無・・・」

「まさか、ほう。科学で月を・・・」

 赤と青の棒を取り出す刹那さん。二本を合わせ、酸素を生成したのだ。

「反則だな全く。とりあえず永らえたとはいえ戦いようがない・・・」

「そうじゃろ。重力が低いと動きづら・・・」

 しゅっ

「ゴフゥゥゥゥ」

 ゴシャァァァァァッッッ

「残念・・・」

 刹那さんの攻撃があっさりと当たった。どういうことだ?

「くっ、ありえんのじゃ。重力が増えるよりも、減るほうが対応の仕方は難しいのじゃぞ」

「逆に軽くていい。さて、完全に掌握しきったかな?月の力・・・」

「この程度でのう。見せてやるのじゃ。わらわの真の力・・・」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 シャラァァァァァン

 

「巨大な槍?」

「槍ではない。月姫巫女の杖じゃ・・・」

 

 

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「杖?」

 二メートルはゆうにある巨大な杖。先端部分には輪っかや飾などが彩られており、月の光と呼応

している。

「一塵月下(ミルミティーナ・マドリグロー)」

 しゅっ

 ガキィィィン

 

「うう、肩がぶっ壊れる・・・」 

「その棒がパワーに長けていて良かったのう。通常なら粉微塵じゃ・・・」

 杖を軽く振っただけでこの威力。いったい何をしたんだ?

 

「その杖、月と同じ質量だな?」

「その通りじゃ。そろそろ厳しかろう。酸素も造るのに体力を使うのではないか?」

 圧倒的に不利な状況。刹那さんはずっと酸素を造り続けないと死んでしまうのだ・・・

「更に何か隠しているだろ。こちらとしても隠してもらってはやりづらいい。五式破壊神(ごしき

はかいしん)」

 ゴゴゴン

 バカァァァッ

「フィールドを破壊しおった・・・

あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

「やっぱりな。このフィールド全体があなたの身体になっている。フィールドを破壊すれば力も弱る・・・

三式横槍破滅の塵(さんしきよこやりはめつのじん)」

 ガキィィィィン

「まだまだ片手で防げる威力じゃな・・・

月の光(ムーンライト)」

 ピカァァァァァッッ

「フィールドが再生した?完全に破壊するのは本人と言うことか・・・」

「わらわは倒れんよ。このフィールドも、月も。決して輝きを失うことはない・・・」

 

「ぐっ、」

「足が辛いか刹那?それはそうじゃろう。あれだけの質量を受けたのだ。反動はきついじゃろ」

 膝を着く刹那さん。向こうの体力はほぼ無限状態に対し、こちらは体力維持に手いっぱいの状態。

宇宙空間で恒星一つを相手にしているようなものなのだ。体力が持つはずがない・・・

「能力が反則過ぎる・・・」

「まだほんの一片に過ぎんがな・・・」

「ま、まさか・・・」

「刹那。久しぶりに楽しかったよ。だが終わりだ。わらわの真の力は月だけではなく、“全惑星”

になれることだ。つまり、この地球にも、太陽にも、な・・・」

「まさかそんなことが・・・」

「もっとも、惑星を一撃で破壊してしまうような民族には効かんのじゃがな・・・」

 ニヤリと笑う月姫。そんなのがいるのかね。

「破壊すればいいんだな・・・」

「ん?」

「惑星そのものを破壊すれば倒れるんだな!!」

 ゴゴゴゴゴゴ

「無駄じゃ。月の旋律(ムーン・メロディア)」

「黒天の槍、十二式鴈侮(じゅうにしきがんぶ)」

 ボボボボボッ

「かき消された?」

 ヒュヒュン

 バキィィィィン

 

「杖が、粉々に?」

「酸素不足で忘れてたよ。黒天が完全無効化の槍だって・・・」

「じゃがこの力には及ばん。銀河惑星讃歌(ギャラクシー・ヴァ−ブレッジミルドズ・ミーティア)」

 ゾゾゾゾゾッ

「黒天で打ち消せない?魔力ではない?」

「隕石の来襲で生物は完全に消える。わらわの今の攻撃は惑星の動力。魔力分の力など微塵もない・・・

相手の行動に対し戦い方を瞬時に返るのは定石じゃろう。この数の隕石にどう対応する?刹那!!

百万の惑星痕(ガドレマランザス・バラクナドレードラ・ミーティア)」

 ヒュヒュヒュヒュヒュンヒュヒュンヒュン

 

「零無、四式零殿(よんしきれいでん)」

 ピキィィィィン

「地面を凍らせた?」

「八式氷の群衆(こおりのぐんしゅう)、108魔零槍!!九式詮鋲(きゅうしきせんびょう)、

氷の千年樹(ヒルトリ・ガルナジャ・サウザンテ)」 

「一瞬にして対抗する氷の槍と、自分を守る盾を造りおった・・・

尽きかけではなかったのか?」

 

 ガシュウゥゥゥゥ

 ガラガラガラガラ

 

 ボッ

 攻撃は月姫のほうが威力は上だったらしく、打ち負かされたものの、防御のおかげで刹那さんは

無傷だ。激しく上がる煙の中からそれをかき消すように、焔の槍を持った刹那さんが月姫の眼前に

出た。

 空中に浮遊する月姫は、反撃の体制に移るが一歩遅かった。

 

「一式王蓮(いっしきおうれん)」

 ドドドドドドドド

 ジュゥゥゥゥゥ

「ああああああああああああああああああああっ。なんという熱じゃ。この身体が燃えておる・・・」

「一万度で溶けないなんて月はそんなに頑丈だったかな?五式熱風(ごしきねっぷう)」

 たたみかけるように追加攻撃を加える刹那さん。攻撃は効いているようだ。

「パワー押しよりもこっちのほうが良かったみたいだね。次でチェックメイトだよ・・・」

「流石じゃ刹那。じゃが太陽に変わればそんなもの・・・

太陽の発動(ビールガマンデ・サンドレン)」

「十七式黒列(じゅうななしきこくれつ)、黒爆炎崩酸魔倒(リィーマブレストカノン・サーガバルト・マガルデスカランズ・プラトニック・レイ)」

 ドゥン

「ガハッ、そんな・・・」

 強力な一撃が入り、ふらつく月姫。紅く燃えるその身体の中心に、更に紅い痕ができる。

「くっ、熱いな。太陽の質量は地球の約230倍に加え、燃え盛るガスによって生成される。物理

攻撃じゃ看破出来ないな。でも、なりかけのさっきの状態にはかなり効いたか?」

「燃えろ刹那。太陽こそ最強の惑星じゃああああああああああああああああああああ」

「太陽は“恒星”なんだがな」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ。消失の焔(キロブレッス・プロミネンス)」

「七式炎蛇(ななしきえんじゃ)、溶ける炎牙(ゴーレン・キャスヒィファー)」

 ドドドドドドッ

 ボウン

 

「本家の火力がでかすぎる。温度で上回っても質量で押される・・・」

 刹那さんの攻撃は術者まで届かない。

「黒天は惑星には直接は無意味。攻撃を打ち消したとしても次のが来たら・・・」

「そろそろ終わりじゃ刹那。太陽を人間が落とせる筈がなかろう。我に近付いただけで溶けるようなな・・・」

「近付いたら溶ける?そうか・・・」

「ん?何をしておるのじゃ?自分の身体を燃やしておるのか?」

「完全炎化(フルディーティマ・エンラテオス)」

 シュゥゥゥゥゥ

 

「燃えておるではないか。熱くなりすぎておかしくなったかのう?」

「わたしの槍の温度は太陽の約二倍。こちらを燃やせばそっちの炎は無意味。必然的に太陽が

沈む・・・」

「そんなもので落とせると思うか?第一質量が違いすぎるのじゃ。一部を溶かしても問題ない」

「存在するのはあなただけだ。質量と体積は違う。あなたの今の質量は確かに太陽そのもの。し

かし、体積は人間と同じ大きさだ。体積は変化する。あなたの今の体積は、太陽の大きさから人間の大きさに変えているにすぎない。月と違ってフィールド全体に展開したら地球が無くなるからね・・・」

「そこまで読まれて・・・」

 ボボッ

「い、いつの間に?まさかあれは!?偽物を置いて引き付け、本物は話の間に懐まで潜り込ませたのか・・・」

「熱でやられたのはそっちだな発情ウサギ。燃えるならこのくらいじゃないとね。常時炎化二十式溶岩拳(じょうじえんかにじっしきようがんしょう)」

 ゴシュウウウウ

「ああああああああああああああああああああっ」

 棒術ではなく、燃え盛る右拳を打ち込んだ刹那さん。打ち込まれた月姫は意識を持っていかれる。

 完全に燃え尽きてフィールドに倒れてしまった。

 月姫が倒れると同時に、張っていた月の魔法が解け、昼間に戻った。

 

「あーあ、暑い」

 

 「勝者、御狩懈刹那」

 

 

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 3 

 

「次も今井か。衣さんも厳しい戦いになるだろうな・・・」

 フラッ・・・ガシィ

「おいおい、生きてるか?刹那」

「衣さん?」

 倒れかけた刹那さんを受け止めたのは、次の試合の衣さんだった。

「随分とこっぴどくやられたもんだな。だから造るなら雷が良かったんだ」

「忠告どうも。それよりも気を付けて。本気で強いから・・・」

 ガクっ

「おい、刹那?」

 気を失う刹那さん。意識どころか呼吸もしていない。

 

「試合の邪魔だ、はようどけんかいの」

「貴様!」

 現れたのは、龍神スサノオ。次の対戦相手だ。

「ウサギもこんな格下にやられるとは情でも湧いたか?わしなら絶対に勝たせん・・・

小娘も同じじゃ。わしが葬る」

 ガッ

「なっ」

 横になって倒れていた月姫を蹴飛ばし、フィールドから出すスサノオ。酷過ぎる。

「フン」

「気にくわねぇ奴だなあんた・・・」

「情を出せば負ける。こいつは娘に情を見せたから負けた。あんなに簡単に正体をべらべらと・・・」

「じゃぁあんたはどうなんだ?」

「わしは決して情など出さん。泣こうがわめこうが、たとえ生まれたての赤子でもひねり殺す。親の前でな・・・」

「ただの悪趣味なだけだな・・・

少し我慢しろよ、刹那」

 バリバリバリバリィ

「ガハッ、はぁはぁ・・・」

「随分と荒い心臓マッサージじゃな」

「黙ってろ。天使っ、刹那を頼む・・・」

「うん、頼まれたっ」

 次に控えていた天使さんに、刹那さんを渡す衣さん。俺も心配になって駆け寄る。

 

「茶番だ。こんなカス共しか残っとらんとはな・・・」

「・・・・」

「なにも言い返さんのか?いや言い返せんのか・・・」

「始めろ審判っ!!」

 「え?」

「早く始めろ。早くこいつをぶっ殺さねぇと理性が吹き飛びそうだ・・・」

「簡単に揺らぐような理性など飛ばせばいいのじゃ」

 グワッッ

 バシィィィィン、バリバリバリバリィ

「ハー、ハー、」

「怖い怖い・・・」

 

 思わず手が出てしまった衣さん。その右ストレートを指一本で止めたスサノオ。

「シンパァァァァァン!!!!」

 

 「はっ、はい。始めっ!!」

 

「脳呪宣誓(マガルテミオ・コントロール)」

「自分の脳を?」

 衣さんは自分の脳に電撃を放つ。いったい何をする気だ?

 

「ふぅ。やっと落ち着いたぜ。さぁ、はじめようかオッサン」

「すぐに終わらないといいがな・・・」

 

 

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 4

 

 次回予告

 

 残虐非道の男、龍神スサノオ機動。

 果たして勝負の行方は?

 二回戦もそろそろ中盤ですね

 あ、まだまだだww

 

 では次回、GROW4第十三章 禁じられた戦い

 

 じかい禁呪のバーゲンセールですww

 

 ではでは

 

 

説明
月姫さん反則です
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GROW 御狩懈刹那 輝夜月姫 龍神スサノオ 織物衣 湖都海天使 

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