鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十三話
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〜医務室〜

 

エドが目を覚ますと、目の前には沢山の人が居た。

 

アニーは、信じられないような顔でエドを見ていた。

 

その顔があまり理解できず、エドはアニーをあまり見なかった。

 

『嘘………』

 

アニーは、声を出して戸惑いを表現した。

 

沈黙した空気の中、アルの声が聞こえた

 

『兄さん……?』

 

『ああ……アル?』

 

エドがアルの方に目を向ける。

 

アルの前には、カノンノが今にも泣きそうな顔でエドを見つめていた

 

『エド………エド…』

 

そしてエドの元に駆け寄り、エドに抱きついた。

 

今度は、安堵と感激の表情で。

 

『うわぁ!!』

 

その唐突さに、エドは戸惑い、顔を赤くさせる。

 

『どういう事なの……?さっきまで、本当に心臓までもが止まってたはずなのに……!』

 

疑問の表情が消えないアニーと、リフィルを見た全員は、笑顔で対応した

 

『んな事どうだって良いじゃねえか!!エドがこうして戻ってきたんだ!!』

 

ロイドが嬉しそうな顔でエドに近づく。

 

『お帰り、エド』

 

ロイドの言葉に一瞬気が付かなかったエドは、少し返事を遅れて答えた

 

『あ……ああ…。』

 

次に、リタがエドの本に歩み寄った。

 

『……ふん。よくあんな淵から生き返れたわね。』

 

『憎まれ口かよ』

 

エドがそう言った後、カノンノは自然にエドから離れた。

 

その顔は、まだ泣いている顔で、何か戸惑っている顔だった。

 

その顔に疑問を感じたエドは、カノンノを観察した。そして、カノンノは口を開いた

 

『エド……エドは一体…。何者なの…?』

 

『は?』

 

カノンノの代弁をするように、今度はリタが答える

 

『あんたのドクメントの中から、ヴェラトローパのドクメントが検出されたの。その上、この世界の大地に関すること、地盤に関するこ

 

と、さらにこの船の材質までもが検出されたのよ。』

 

リタの話を聞き、エドはある事に心当たりがあった。

 

心理の扉

 

その中を見た上に、真理を見つけ出した。

 

そして自身が構築式となったエドのドクメントは、そこまでもが露出されたのだろうか。

 

『さらに、一回ドクメントを出せば魂が抜けたように死んで、そして生き返る。見ようによっては貴方は魔物に見えるわ』

 

『魔物……ねぇ。』

 

エドは、不穏な顔でその話を聞く。

 

魂が抜けたのは、おそらくそのドクメントで真理の情報を出したことが、人体練成と同じ事になったのだと思う。

 

そう思ったが、言っても伝わるわけが無く、黙っておくことにした。

 

『ねぇエド……もしかしたらエドは………』

 

カノンノが何かを言いかけたが、それはアンジュの声によってかき消される

 

『エドワード君。目が覚めた所悪いのだけど、行って来て欲しい所があるの』

 

『?』

 

起きてからすぐに依頼が来ることに、一瞬理不尽な怒りが現れたが、

 

その後に、自分にしかできない依頼なのかと考えるようになった。

 

いつも選抜される成長なのだろうか。エドはその成長が憎たらしかった。

 

『アンジュさん!エドワードさんはまだ病み上がりなんですよ!?』

 

『病み上がりでも、この世界の情報がドクメントにあるというなら、連れて行かないわけ無いでしょ?』

 

連れて行く

 

その言葉に反応して、エドはベッドから降りた

 

『で、どこに連れてくって?』

 

エドがアンジュの元へ歩こうとした時、アルはエドの事を心配する

 

『に…兄さん。あんまり無茶しないで…』

 

エドは、アルを睨むと、アルはただ俯くことしか出来なかった。

 

その様子を見たエドは、再びアンジュの顔を睨みつける

 

アンジュは、安心したような表情に戻り、行き先を告げた

 

『勿論、ヴェラトローパよ』

 

 

 

 

 

 

 

〜甲板〜

 

『あら、エドワード君という人は起きてきたのかしら?』

 

耳の長い女性が、槍を持って立っていた。

 

露出の多い服で、普通ならその肌に目をやるはずなのだが、

 

エドは、その女性の後ろに居る巨大な化物にしか目が行かなかった

 

『で………でけぇ………!』

 

その化物は、翼を生やした鯨のようで、

 

背中には複数の人が乗せられるように、船が置かれていた。

 

『久しぶりね。ジュディス』

 

『あら。いつぶりかしら?』

 

リタが、ジュディスの方に挨拶をした。

 

『なんだ?知り合いか?』

 

エドが荒そうに質問をすると、リタはぶっきらぼうに答えた

 

『あんたには関係の無い話よ』

 

その言い草に、エドはイラっと来て殴りにかかろうとした所、アルに止められた

 

『兄さん。今は抑えて』

 

今はこいつと争っている場合で無い事は知っていたが、なんかムカツク

 

エドは文句を呟きながらもその化物の方を見た

 

『ところで、そのエドワード君という人は、どこにいるのかしら?』

 

ジュディスが辺りを見渡す仕草をすると、エドはカチンと頭に来た

 

その様子を見て、リタは笑いをこらえるように爆笑している。

 

それを見て苦笑いをしたアンジュは、ジュディスに答えた

 

『あのー…ジュディスさん。』

 

アンジュはエドの方を指差すと、ジュディスはようやくエドの姿を捉えることが出来た。

 

エドの姿を見て、ジュディスは少しだけ驚く仕草をして、微笑んだ

 

『あら、すごい魔術を使ったり、体術も使って、戦闘が得意な人だと聞いたから、もっとゴツイ人だと思ってたけど、随分可愛い子供だ

 

ったのね。』

 

『可愛い言うな!!子供も言うな!!!』

 

エドが癇癪を起こすようにそう言うと、アルはまぁまぁとエドをなだめた

 

『あら、そこの鎧君はお兄ちゃんの方かしら?』

 

ジュディスの言葉に、アルは腰を低くして答える

 

『あ、いえ。僕は弟のアルフォンス・エルリックって言います。』

 

『弟?変ねぇ。それにしては身長の差が著しく逆だわ。』

 

『うがぁ―――――――!!!!!!』

 

エドが爆発寸前になろうとした瞬間、アンジュは慌てだした。

 

『あ……。それじゃぁ早速ヴェラトローパまで行って貰おうかしらね……。』

 

余りにも先ほどの話を無かったことにするかのように話を上被せた。

 

ジュディスはアッサリとその話に乗り、微笑みながら化物に乗った

 

『そうね。時間は待ってくれないもの。それじゃぁ大きい弟君。小さい兄君。行きましょうか。』

 

あ、とアルは小さく呟いた

 

『だぁぁぁああああああああああれぇえええがぁぁあああああああ!!!マイクロ粒子ドチビかぁぁぁああああああああああああ!!!

 

!』

 

『兄さん!!落ち着いて!!』

 

アルが宥めるようにエドを取り押さえると、ジュディスは面白そうに微笑みが増した。

 

その面白そうに微笑む顔がさらに気に入らなく、エドの頭には血が上った。

 

『それじゃぁ、私も同行させて貰うわね。』

 

集団の中から、リフィルが一人入ってきた。

 

『ええ。それじゃぁよろしくお願いします。』

 

アンジュがそう言った後、リフィルは化物の背の船に乗った

 

その様子を見たエドは、少し疑問の顔をする

 

『え?アンタも行くのか?あのでっけぇ遺跡に』

 

遺跡という言葉を聴いたリフィルは、急に熱く熱弁した。

 

『当然だろう!!空に浮かぶ、ヒトの祖が形を持つまで滞在していたという未だかつて無い神殿に、私が行かなくてどうする!!!』

 

その豹変ぶりに、エドは再び恐怖が湧き上がる

 

『はぃい!?』

 

さらに、アルが疑問の声の混じった小さな悲鳴を上げる

 

『待っていろヴェラトローパ!今、このリフィルが全て調べ尽くしてやるからな!!ふふふ……はぁーっはっはっはっはっは!!!』

 

その様子を見ていたエドとアルは、恐怖にガタガタ震えていた。

 

ほとんどの者は、呆然とリフィルを見ていた。

 

ジーニアスは溜息を吐く。

 

ジュディスは、依頼が面白くなりそうだと期待を持った顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ヴェラトローパ〜

 

そこは、天空なのに芝が生えており、

 

そして石畳が置かれ、空を見れば、巨大な神殿が見える。

 

圧倒されるようなこの場所に、エドとアルは辺りをくまなく見渡した

 

『すっげぇ……。なぁアル。』

 

『うん…。こんな場所があったんだねぇ…。』

 

その感心する二人の隣に、さらに激しく感激する人が立っていた

 

『おおお!!すごいぞ!!これがヒトの祖が作り上げたと言われた、ヴェラトローパ!!!!』

 

リフィルは、感激したような顔で、その神殿を走っていた。

 

その様子を見たエドは、呆れるように溜息を吐いて、アルは見えない苦笑いをした。

 

『随分元気な人ねぇ。』

 

ジュディスだけが、涼しい顔でそのリフィルの様子を見ていた。

 

『うるっせぇだけだと思うぜ?』

 

『あれだけ元気な人が居た方が、パーティも賑やかになると思わない?』

 

ジュディスは笑顔でそう言ったが、エドはげんなりした顔でトボトボと歩いた

 

『むっ!!この石版……』

 

リフィルがある石版を見つけると、エドはその場に近づく。

 

『なんだなんだ?』

 

近づくと、そこには巨大な石版が存在していた。

 

『なんだろう。これ』

 

『何かが書かれているのは……分かるけどよぉ。』

 

エドがじぃっと見ても、エドは何一つ理解が出来なかった。

 

それはリフィルも同じ事で、このような文字は見たことが無いのだろう。文字を見ては唸っていた。

 

『ぐうぅ……意味有り気な文章が目の前にあると言うのに、解読できない……これ程の屈辱があるか…!!』

 

行き場の無い怒りに、リフィルは悔しい表情をする。

 

その様子を見たジュディスは、くすりと笑った

 

『何がおかしい!!』

 

リフィルがそう怒鳴ると、ジュディスは石版の文字を見ながら答えた

 

『創世伝えし者の為にこの空間を遺す』

 

そういい終えると、ジュディスは石版から目を離し、リフィルに目を向けた

 

『って書いてあるわよ。』

 

その言葉に、エドが全員の代弁をするように答える

 

『お前………この文字が読めるのか?』

 

『ええ。私は普通の人間じゃなくて、クリティア族。という種族なの。”ナギーグ”という能力があって、だいたいの物から情報を読み

 

取る事が出来るわ』

 

エドとアルは、その能力に脱帽する。

 

そんなチートみたいな能力が、ほとんど非現実を感じさせるからだ。

 

『という事は、この神殿の場の文字はほとんど理解出来ると言う事だな?』

 

『まぁ、そう思ってくれて構わないわ』

 

ジュディスがそう言うと、リフィルが活き活きとした顔になる

 

『よし!そうと決まれば遠慮なく動くぞ!!私の後に続け!!』

 

リフィルはそう大きな声を出し、全員に命令した

 

『……はぁぁぁい………』

 

『声が小さい!!』

 

エドのやる気の無い声に、リフィルは癇癪に来たのか、怒鳴り声を上げた。

 

エドは、怒り混じりにもう一度声を出した

 

『はぁぁぁああああああああああああい!!!!!』

 

その大きな声に満足したのか。リフィルは頷いた後、それ以上何も言わなかった。

 

『……さっきから、物凄い迫力だよね。リフィルさん……』

 

アルがそう言うと、リフィルは物凄い速さでアルの方を睨みつけた

 

『いっいえ!何でもありません!!本当にっ!!』

 

アルがそう言うと、ふんと鼻を鳴らしながら前を向いて歩き出した。

 

その様子にアルは安堵の溜息を吐いた。

 

エドは、呆れの息を吐いた。

 

ジュディスは楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エリア・イダ〜

 

神殿の中へと入ったエド達は、その神殿の中を見て、さらに驚いたような表情をした。

 

神殿の中が、真新しいのだ。

 

ヒトの祖が居たというのだから、もっと薄汚れていても良さそうな物の、

 

まるで新築の神殿のように、床が新しかった。

 

壁も、全てに存在せず、まるで柱のように辺り辺りに散らばるように存在していた。

 

床の端は下に落ちるのだが。

 

その下はガラス状になっていて、そのガラスからは空の下が見えた

 

『すごい……綺麗だね。』

 

アルがそう言うと、ジュディスがその言葉を返すように答えた

 

『今まで人間や動物はおろか、大気中の埃やゴミまでも接触を避けた神殿でしょうからね。』

 

思えば、辺りを見渡しても、魔物はおろか、虫の気配もしない。

 

植物も雑草一つ生えておらず、そこは人工物であるかも怪しいくらいだった。

 

辺りを見渡すと、所々存在する壁のそれぞれに絵が描かれているのが見える。

 

『………なんだ?この絵』

 

エドがそう呟くと、真っ先に飛びついたのはリフィルだった。

 

『これは……!!まるで世界樹のようではないか!!』

 

絵には、真ん中には世界樹、その横には魚と、トカゲ、虫、そしてヒトのような物が描かれていた。

 

これは、一体どのような事を現しているのだろうか

 

『ジュディス!!解読を!!』

 

リフィルがそう叫ぶと、はいはいと微笑みながら相槌を打って壁の絵を見た

 

そして答える

 

『ええと……。”世界樹とは世界を生み出し物、大地、自然の摂理、そして生命体を作り出す”』

 

その言葉を聴いたエドが、疑問を思う

 

『世界樹が大地を作って、自然を作って生命体を作る?』

 

『何か不満かしら?』

 

ジュディスの言葉に、エドは馬鹿馬鹿しいように答える

 

『……まぁ。俺達の世界では全く違う摂理でね、まずガスが固まった物で大地が出来、その他のガスで作られた火を噴く太陽。それが自

 

然の摂理、生命を作り出すんだ。』

 

エドの言葉に、ジュディスは相槌を打つ

 

『なるほどね。確かにそっちの方がしっくり来るかも』

 

その言葉に、リフィルが怒った顔で二人を睨みつける

 

『何を言う二人!!この歴史的代遺産の言葉が偽りとでも言うのか!!!』

 

リフィルの言葉に、エドは反論を入れる

 

『だったらその何も知らねぇヒトの祖が作った大昔壁画の書いてあることが本当の事かどうか証明してみろよ。今ここで』

 

『ぐっ………』

 

エドのその言い草に、リフィルは何も言えないでいた。

 

だが、ジュディスはエドにそのまま返すように言った。

 

『それじゃぁ、貴方の言ったガスの理論が完全に証明出来ると言える?』

 

『言えるさ。太陽に伝わる熱で水に反応が起こり、生命が誕生する。自然の摂理も、水が蒸発すれば一定の気圧の場に雲が出来、気温が

 

変われば、それが液体となって雨になるんだ。』

 

エドの言葉に、ジュディスは小さく拍手をした。

 

『ご名答。』

 

アルは、首を傾げてジュディスを見た。

 

ジュディスの目は、余り笑っていなかったからだ。

 

『でも、それは科学の理論でしょう?科学で証明された事は、まだ世界の半分も言っていないの。例えこの壁画が嘘八百の八百長理論だ

 

としても、聞いてみる価値はあるじゃない?どちらにせよ、調べないことには始まらないわ。』

 

ジュディスの言葉に、エドは唸る。

 

『それは……そうだけどさ。』

 

『兄さん。ここはもう少し素直に受け止めて見ようよ。』

 

アルの言葉で、エドはさらに唸ったあと、苦し紛れに頷いた。

 

その頷きに満足したジュディスは、笑顔で次の壁へと向かった。

 

『さて……。まだ続きがあるわよ。』

 

ジュディスは、壁画に描かれている事をさらに続けて答える

 

『世界樹の始まりは、一つの世界。その世界が分離して、複数の世界が存在した……。』

 

その言葉に、リフィルは驚きの顔をした。

 

『始めは一つの世界……。その世界からさらに世界が複数に生まれたと言うの……?』

 

エドが居る世界にしても、それは衝撃的な事だろう。

 

エドであっても、他人事では無いのだ。この壁画の事が本当なら、エドの世界も始めは一つの世界だったと言える

 

だが、あくまでこの壁画は”世界”が作ったのではない。”ヒト”が作ったのだ。

 

エドはその理論を完全には信じていなかった。

 

さらにジュディスは言葉を連ねる

 

『そして世界樹は……。生命の手によって成長していく……。』

 

生命の手によって成長していく

 

この事は、大体理解した。

 

『無意味に生まれてきた生命など無い……って事か。』

 

エドは、理解したようにそう答える

 

『そうだと良いのだけどね。』

 

ジュディスがそう言うと、次にもう一つの壁へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

『ぜぇ……ぜぇ…。ようやく辿り着いた……』

 

意外と遠くに存在した壁に、エドは疲れを感じた。

 

『あら?こんな事で息切れかしら?だらしないわね。』

 

『ざっけんな!!この女が全力疾走した上に、10分は走らされると来た!!普通に疲れるだろうが!!』

 

エドの隣には、リフィルがさらに息切れしているように四つん這いで大きく息をしていた。

 

エドの怒りとは対照的に、アルは全然平気な顔をしていた

 

『弟君は、全然平気そうな顔してるわね。』

 

ジュディスの言葉に、アルは一瞬戸惑った。

 

エドも、アルの事は何も言わなかった。

 

その様子に、ジュディスは少しだけ疑問に思い、首を傾げた

 

『んな事より、壁、壁画はどうなんだよ』

 

エドが進めるように壁画に指を指す

 

『ええそうね。それじゃぁ読もうかしら』

 

そう言って、ジュディスは壁画の方に目を向ける。

 

その壁画をじっくり見た後、ジュディスの口は開いた

 

『………これは、ルミナシアでない世界の事よ。』

 

『は?どういう事だ?』

 

エドが質問すると、ジュディスはエドの目を見て答えた

 

『この世界の近くで、世界にまでなる事が出来なかった……世界』

 

ジュディスの言葉に、エドはピンと来る

 

『………ラザリス』

 

エドの言葉に、アルは一瞬疑問を感じる

 

『え?兄さん。ラザリスって何?』

 

『俺たちが前に会った、頭のいかれている女だ。人間を別の形にして、最後には殺した……。』

 

その言葉に、アルは息を吸い込むようにショックを受けた。

 

『そんな……。酷い…!』

 

エドの言葉に、リフィルも少しだけ俯くような顔をした

 

『……エドワード君も、大変な思いをしたのね。』

 

その表情は、哀れみとちょっとした後悔の顔だった。

 

その表情の意味は分からなかった

 

『……そのラザリスとやらを、世界樹が取り込んでいる、という事が確かのようね。』

 

ジュディスがそう言うと、リフィルは反論をするように答える

 

『しかし……どうして世界として成り立たなかった世界なんかを取り組もうとしているのかしら……。』

 

『さぁ。世界樹の事が分かれば、苦労はしないわ』

 

ジュディスがそう言うと、エドはさらに口を出した

 

『………なぁ、創世伝えし者の為にこの空間を遺すって最初の石版に書いてあったよな。』

 

その言葉に、全員が思い出したように答える。

 

『そういえばそうね。でも、それがどうかした?』

 

そのジュディスの言葉に、エドはさらに答える

 

『その創世を伝えし者って奴の為にこの神殿を残したってなら、そいつは誰なんだ?』

 

エドがそう言うと、アルが頷く

 

『そういえば……。人間はおろか、虫や埃までもこの神殿に近づけさせなかったからね……。』

 

そのアルの言葉に、リフィルは目を光らせる

 

『と言う事は……。この神殿の中にその創世を伝えし者が居る……という事ね?』

 

『ああ。そう言う事になるな』

 

エドがそう言うと、またリフィルは全力疾走した。

 

『ああ!!おいコラ待て!!!』

 

『今すぐその創世を伝えし者に会いに行くぞ!!早く来い!!』

 

リフィルのその自分勝手さに、苛立ちを感じながらもエドは走った

 

『ああ、もう!!どうしてこうもいい加減な奴が多いんだ!!このギルドはよぉ!!!』

 

そう叫んだ後、三人はリフィルを追いかけるように付いていった。

 

その場所に辿り着くと、そこは外に繋がっていた

 

 

 

 

 

 

〜エリア・イダ 最深部〜

 

そこは、高い場所からの涼しい風を感じ、辺りには大きな雲が包み込むように存在した。

 

その場所に、どこか見覚えのある男が立っている

 

『あれ?兄さん…。あそこに男の人……』

 

アルがそう言って、初めてエドはその姿を確信した。

 

その姿を見たエドは、目を疑うようにその姿を見た

 

ジュディスはその目が分からなかったが、リフィルもエドと同じような顔をしている

 

『あら、知り合いかしら?』

 

『知り合いも何も……』

 

リフィルが代わりにジュディスに返すと、

 

エドは、その姿に声をかける

 

『………クラトス…!!』

 

その言葉を、ジュディスとアルは初めて聞いたが、

 

リフィルは、同じようにクラトスの目を見ていた。

 

すると、クラトスは溜息を吐くように答える

 

『………やはり、見つかってしまったのだな。この神殿を』

 

その言葉の意味が分からず、エドは混乱をしたが、

 

憤るように、エドはクラトスを睨みつける

 

『どういう事だクラトス!何故お前がこんな所に居る!!』

 

『…………私が、創世を伝えし者だからだ』

 

『意味が分からねぇ!!』

 

エドの言葉に、クラトスは冷静な対応をした。

 

そして、言葉を口にした

 

『私は、世界の創世と共にこの世界に産まれた。そしてヒトが出来上がるのを見てきた。ただ、それだけの存在だ。』

 

ジュディスは、質問をするように声を出した

 

『それじゃぁ、何故この世界がラザリスという世界を取り組んでいったのか、分かるかしら?』

 

『それは分からない……。私は、この世界が生まれて、そして今まで生きた事しか分からないのだからな……。』

 

その言葉に、エドは嫌悪な顔をした

 

『けっ!使えねえなぁ!!!』

 

『兄さん!』

 

エドの態度の悪さに、アルは言葉を出す物の、エドは一向にむくれている表情をしている

 

『だが、何故ラザリスというあの人間の形がこの場に生まれ、そして存在しているのかは説明が出来る』

 

クラトスの言葉に、首を傾げたジュディスと代弁するように、リフィルが質問する

 

『それって……どういう事?』

 

『おそらく、”生命の場”を持たないドクメントだけの存在が、この世界の生命力を得て、存在してる。』

 

エドは、その言葉について考える

 

『ドクメントって……兄さんから出てきた、あの大量の輪の事だよね?どうして別の世界のドクメントがこの世界で生命力を得たんです

 

か?』

 

アルの質問に、クラトスは口を開く

 

『生命を作り出すには、私達の存在する生命の場と世界を構築する”情報”が必要になる。』

 

情報  構築

 

この言葉に、エドは反応する

 

『………その構築が、錬金術に対応した……だからこの世界でも錬金術が使えたんだな。』

 

エドがそう言うと、クラトスは俯きながら考える仕草をする

 

『それはそうかもしれん。だが、私には君が使う錬金術という代物は知らん。更に、君はこの世界を操れる程のドクメントを有している

 

。エドワードという存在。最初見たときから、興味を持っていた。』

 

クラトスは、エドの元へと歩み寄る

 

『君は、ある事によっては世界を滅ぼし、そしてこの世界を救うだろう。』

 

『………つー事は、俺は神様か何かか?』

 

『少なくとも、私よりは上の存在かも知れんな。』

 

クラトスの言葉に、ジュディスはからかうようにエドに言葉を出した

 

『あら、良かったじゃない。これで普通の人よりも大きくなれたんじゃないの?』

 

ジュディスのその言葉に、エドは満更でもないようだった。

 

『え?やっぱそうなるかな?』

 

エドのその顔に、アルは溜息を吐く

 

『もう、駄目ですよジュディスさん。兄さんはすぐに調子に乗るんだから。』

 

三人の会話に、クラトスは話を続けるように口を挟んだ

 

『………その生命の場と世界を構築する情報が無ければ、世界は成り立たない。その上、生命を持たない世界では、世界樹は滅びるだろ

 

う。』

 

クラトスの言葉に、エドはある事を思い出す

 

『……滅びるっつったら、世界樹って奴が滅んだら、俺達全員、大地や空が崩れるのか?』

 

エドの言葉に、クラトスはあっさりと首を横に振った

 

『それはあり得ない。世界樹が存在するには、生命と情報が必要となるだけで、世界樹が存在しなくなっても、最低限の植物や人間は残

 

るだろう。』

 

『じゃぁ、なんで世界樹が存在しているんだ?』

 

エドの返した言葉に、クラトスは考え事をする。

 

しばらく唸った後、ようやく言葉を出した。だが、それは不確かな物だった

 

『…………人間に限らず、植物、動物の欲望の為なのかもしれんな。』

 

その言葉は、不確かな物であってもほとんどの人にショックを与えた。

 

その言葉を聴いたリフィルとアルは、この世界の浅い存在理由に絶望し、

 

ジュディスは少し考え事をし、

 

エドは何の反応は無かったものの、頭の中では葛藤していた。

 

『………まぁ良いや。とりあえず、続きは船で聞かせてもらうよ。とっとと俺達の所へ……』

 

エドがそう言うと、クラトスは剣を抜いた。

 

その様子に、エドはビビリながらも声を出した

 

『まっ……ままっ待て!!ちょっと待て!!何する気だおい!!』

 

『伏せろ!!』

 

クラトスが、エドの方に飛びつく、

 

二人は地に伏せるように這い蹲る。

 

すると、クラトスの居た場所と、柱の上半分が、綺麗に斬れていた

 

『…………!!!』

 

その圧倒的な光景に、エドは息を飲んだ

 

『時空が騒いだと思ったら、こんな物があったなんてね…。』

 

エドは、その聞いたことのある声に、目を見開く。

 

クラトスが立ち上がり、エドも同じように立ち上がると、そいつを見た

 

『………ラザリス!』

 

その言葉を聴き、アルはラザリスの方を見た

 

『え……?この女の子がもう一つの出来損ないの世界?』

 

アルがそう言うと、ラザリスは敵意の目でアルを見た。

 

その目に驚いたアルは、小さな悲鳴を上げながらその場で尻餅をついた。

 

その時点で、ラザリスの視線は変えられた。

 

『……僕が何者か、分かったようだね。』

 

ラザリスは、エドの目を見て答えた。

 

その目の奥には、大きな憎しみと怒りがあった。

 

『そうだよ。僕は生まれるはずだった世界。ジルディアにして、その一部……。出来損ないの失敗作さ。』

 

ラザリスの表情は、だんだんと悲しそうな顔になる

 

アルは、その目の前の女の子に同情さえ感じたが、エドはそうは行かなかった。

 

こいつは、人を多く殺している。そして絶望のままに死なせているのだ。

 

『僕はね、あのまま朽ちるはずだったんだ。でも、君達の世界樹は僕を取り組み、星晶で封じたんだよ。』

 

『星晶で封じた…?』

 

エドがそう疑問の声を出したが、そんな暇は無かった。

 

『どうして僕を封じたんだよ……生まれる事も出来ず、価値の無い僕を何故わざわざ封印したんだ……!』

 

『封印して当然だったんじゃねえの?』

 

エドの言葉に、アルは呼び止めようとする。

 

だが、エドは話を続けた

 

『生命を異形の形に変えて、お前の自由気ままな独裁世界にするような奴の下に、誰が就くか。』

 

そのエドの言葉に、ラザリスの目は開かれる

 

『黙れ!!お前がそう言えば、この世界だってほとんど世界樹の思うがままじゃないのか!?世界なんてどこも変わらない、世界樹だっ

 

て、どこも変わらない!!』

 

ラザリスは発狂するように叫ぶと、急に大人しくなった。

 

その急激な変わりように、一同は不気味を感じた程だった

 

『僕なら……。僕ならもっと良い世界を作れる。そう、僕なら、こんな自滅を歩む世界なんか作らない、薄汚い人なんか、僕は作らない

 

!!!』

 

『それが、世界になれなかった大きな点だ』

 

クラトスが、割り込むように入る

 

『人を作らない、僕ならもっと良い世界を作れる…だと?世迷言を言うな。それはただの競争心が、自分の欲望のままに強く反映された

 

だけの感情だ。そんな世界が、生まれればどうなるか、お前自身分かっているのではないか?』

 

『うるさい!!!!!』

 

ラザリスの声が、辺りの大きく響く

 

『僕は……僕はただ生まれたかった…。他の世界と一緒に、僕が作った世界を見たかった!!僕は!!僕は!!うああああああああああ

 

ああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

ラザリスが叫ぶと共に。地が大きく揺れているのが分かった

 

『何だ!?』

 

エド達が下を見ると、そこには突起物が現れていた。

 

その突起物は、空まで届くように大きく生えて成長していくように大きくなっていた。

 

『なんだよ……これ……!!』

 

その突起物は、巨大な牙の形となった

 

その巨大な牙は、どの山よりも大きく、今にもこの神殿にぶつかりそうだった

 

『おい…!この世界に何をした!!』

 

エドがそう言うと、ラザリスは小さく微笑む

 

『あの突起物は、僕の世界ジルディアのほんの一部。』

 

そして、大きく笑うように笑顔になり、ラザリスは大きく手を広げた

 

『やがて、この世界は僕の色に染まるよ。ジワジワとね。』

 

エドは、ラザリスの笑顔を見て、憤りを感じ、戦闘態勢に入った。

 

錬金術を使い、ラザリスに攻撃をしたが、

 

『ふん!この程度?』

 

片手を振っただけで、その突起物が破壊され、ラザリスには傷一つ無かった。

 

だが、エドはそれぐらいでは怯んでおらず、腕を刃に変えたままラザリスに突っ込んだ。

 

刃がラザリスに刺さろうとした瞬間、ラザリスは首を避け、刃から身を守り

 

エドの腕を掴み、クラトスの元へとぶん投げた

 

『ぐおああああああああああああ!!!』

 

『エドワード!』

 

クラトスは、エドを抱くように受け止め、ラザリスを睨みつけた

 

『君達じゃぁ僕を止められないよ』

 

ラザリスは、自信満々にそう言った。

 

『僕を苦しめたこの世界を、僕の物にしてみせる。そしてお前ら人間を、全員抹殺してあげるよ!!!』

 

ラザリスがそう叫んだ瞬間、どこからか声がした

 

『全員抹殺は困るなぁ』

 

その声に聞き覚えのあるエドは、上を見上げた

 

今度は、アルまでもが不穏な表情をする

 

『エンヴィー……!!』

 

『エンヴィー?』

 

ジュディスが、疑問の声をする、

 

だが、エンヴィーは何も気にしていないかのように、笑顔だった。

 

『おやおや、鋼のおチビさん。また会ったねぇ。』

 

おチビさんという言葉に反応して、エドの顔に血管が浮かび上がる

 

『ちょっと待って……。その隣に居る子は誰なの?』

 

アルがそう言うと、エンヴィーの隣に居るそいつは不気味に微笑む

 

そしてアルの方に手を掲げ、その手が発光する

 

『!!』

 

巨大な錬金術が発動して、地から巨大な突起物が現れる

 

その突起物から避けるように、アルは横に走る。

 

だが、少し遅かったのか右足の半分が失ってしまった

 

『ぐわぁあああ!!!』

 

『アル!!』

 

無くなった右足に、アルは叫んだが、

 

ゲーデはまだ微笑んだままだった

 

『今のは……。エドワード君が使ったのと同じ術……!!』

 

ジュディスが、警戒するように戦闘体制に入る

 

そしてゲーデの方に向かって走る。

 

ゲーデは今度はジュディスの方に錬金術を発動し、突起物を作り出す

 

だがジュディスは、その突起物に飛び移り、ゲーデの方に槍を振り下ろす

 

『ほう、なかなかやるようだな』

 

ゲーデはその槍を掴み、そして練成した

 

『…………!!』

 

ジュディスの槍が、殺傷力の全く無いピコピコハンマーへと変貌した。

 

その唐突さに呆然としているジュディスの隙を突き、ゲーデはジュディスの腹に蹴りを入れた

 

『ぐは……!!』

 

『ジュディス!!』

 

その蹴りで内臓に傷がついたのか、ジュディスは血を吐いていた。

 

ゲーデの足に一瞬だけ、岩の靴が纏まりついていたのだろう。ゲーデの足を見ると、動きは早かったが、地が元に戻っていく

 

『………の野郎!!』

 

エドが錬金術を使うと、ゲーデは更に錬金術で返した。

 

巨大な賢者の石を飲んだゲーデの錬金術は凄まじく、エドの錬金術はすぐに粉砕した。

 

『ぬ……りゃぁぁあああああああああ!!!』

 

だが、エドはゲーデの錬金術の突起物に乗り、そして飛び移りながらゲーデの方に向かう

 

『ふん。』

 

ゲーデの顔は、面白そうに微笑んだ。

 

殴りにかかったエドを見つめながら、目を見開いた。

 

その瞬間、エドは地から生えた突起物に捕まり、身動きが取れなくなる

 

『ぐっ!!』

 

『兄さん!!』

 

アルが動き出そうとすると、エンヴィーが腕を刃物に変えて、エドの喉に突きつけた

 

『おぉっとぉ!動くなよ。動いたら辺りは血の海になるぜ?』

 

エンヴィーが人質を取る様にエドの喉に刃を当てる。

 

この光景を見て、アルはどうしても動けなかった。

 

『クラトスさん!!』

 

アルは、クラトスの方を見たが、クラトスはただ俯いているだけだった。

 

『……残念だが、私にも無理だ。この錬金術という術さえも理解していない上に、あの人とも思えぬ者が……4人。』

 

クラトスは、ただ申し訳なさそうに俯いていた。

 

その様子を見ていたエンヴィーは、ただただ笑っていた。

 

『エンヴィー……!!てめぇらのこんな所に来て何のつもりだ…!!』

 

睨みつけるエドに、ただエンヴィーは喉を撫でながら答える

 

『んー。特に理由なんか無いな。』

 

『嘘つけ!!理由なしでこんな天空まで来るわけない!!』

 

エドがそう言うと、エンヴィーは面倒臭そうに答えた。

 

『ゲーデ』

 

ゲーデに押し付けると、ゲーデは何の躊躇も遠慮もなしに答える

 

『この世界を知る為だ』

 

その答えを聞き、リフィルは疑問を感じる

 

『この世界を知る……。知ってどうするの?』

 

『滅ぼす』

 

そのあっさりと恐ろしい事を言ったゲーデに、リフィルとアルは寒気がした。

 

だが、エドは暴れるように動き出した

 

『ざっけんな!!一体何の理由があってそんな事……!!』

 

『おっと、黙ってな』

 

エンヴィーの刃が、さらにエドの喉に押さえられる。

 

エドの喉には、一滴の血が流れ出した。

 

ゲーデは、そのエドを見て、哀れむように見つめた。

 

そして、エドの質問に答えた

 

『俺は……。ある世界に捨てられた。』

 

捨てられた

 

その言葉が、エド達を疑問に感じた

 

『散々嫌われた挙句……。さらには殺されそうになって、そして……ディセンダーに世界から迫害されたんだ…。』

 

『ディセンダー……が?』

 

ゲーデの目が、怒りと憎しみで震えている

 

『皮肉なもんだよな…。同じ世界樹から生まれたディセンダーの身だってのに、俺だけが、負を背負った子供……』

 

ゲーデはこの部屋の端へと行き、世界を見下ろすように下を見つめる

 

『空から見れば、世界はこんなにも見える。この滅ぼしたい世界を、俺は空から見たかっただけなんだろうな。』

 

『どうして……。この世界は君の世界とは関係無いじゃないか!』

 

アルがそう言うと、ゲーデは、目を見開かして答えた

 

『俺の世界を捨てた奴は、この世界に居る!!直接送った奴ではないが、捨てた奴は確実にここになぁ…!!!』

 

『………!!!』

 

エドは、その言葉に目を見開かせた。

 

この世界に、こいつを捨てた奴が居る?

 

いや、張本人を

 

エンヴィーが騙しているだけなのかもしれないが、

 

エンヴィーの顔は、ただ真剣な顔だった。

 

何一つ微笑んでいない。

 

まるで、初めて知ったかのように

 

『それで、君もこの世界を憎んでいるんだね』

 

ラザリスが、ゲーデの方を向いて語っている。

 

ゲーデは、語ってきたラザリスの目を見た

 

『それじゃぁ、……君も僕と一緒に来ないかい?』

 

ラザリスは、ゲーデの方に手を差し伸べる

 

『僕の世界……ジルディアへ。僕は、君をきっと受け入れてあげるよ。』

 

ラザリスが優しくそう言うと、ゲーデはしばらく沈黙した。

 

そして、ふんと鼻を鳴らして笑った。

 

『………俺を受け入れる、世界…か』

 

ゲーデは目を瞑った。

 

エンヴィーは、そのゲーデを見て沈黙する。

 

だが、その目は何かを期待している顔だった。

 

ラザリスの顔が微笑む

 

ゲーデの顔が、さらに微笑む。

 

とてつもなく、不気味に

 

 

ゲーデは、ラザリスの頭の右耳に裏拳をして、ラザリスを地に這いつくらせた。

 

そして、ラザリスの頭を踏みつける。その時のゲーデの顔は、とてつもなく冷たい表情だった

 

『そんな世界に、興味は無い』

 

倒れたラザリスの周りの地に、管が練成される。

 

その管は、ラザリスを巻きつき、身動きが出来なくされた

 

『俺が持つ興味は、俺を捨てた奴の殺害だ』

 

そして、ゲーデはエドの方を見つめる

 

エンヴィーは、まだエドの喉に刃物をつけている

 

『離してやれ』

 

ゲーデがそう言うと、エンヴィーはつまらなそうな顔をしながら手を元に戻した。

 

エドを捕まえていた練成物も崩れ、元の地に戻った

 

『てん……めぇ!!』

 

エドは、怒りの表情でゲーデを見るが、ゲーデはエドを哀れむように見ていた

 

『なぁ、お前はどうしてこの世界を守ろうとしてるんだ?こんな世界、とんでもなく最悪な世界だって言うのに』

 

ゲーデのその言い草に、エドは憤りの声を出す

 

『当然だ、お前のような奴が一番間違っているからだ!!!』

 

エドの言葉に、さらにゲーデは哀れむような顔をした

 

そして、エドに背を向けて歩み去った。

 

『お前は、絶対に後悔する。絶対にな』

 

そう言って、端へと走り、そして飛び去った。

 

『あ……!』

 

ジュディスが声を出そうとしたが、遅かった

 

三人は、空から落ち、地へと向かって引っ張られるように落ちていく

 

そして、ついには見えなくなった

 

『……………』

 

その光景を見て絶句をしたジュディスとリフィルは、その場で立ち尽くしていた。

 

そして、しばらくして物が壊される音が聞こえる。

 

捕らえられていたラザリスが、解かれたのだ。

 

ラザリスは、怒りの表情でエド達を睨みつけいた。

 

『…………必ず、この世界を僕の物にしてみせる……』

 

そして、ラザリスの姿も透けるように消えて言った。

 

今度は、誰も何も言わなかった。

 

『……………』

 

敵が居なくなった。その沈黙の間に、

 

エドはクラトスの方に振り向いた

 

『………で、船についたら話を聞かせてもらうぜ』

 

エドのその言葉に、クラトスはただ沈黙した。

 

しばらくして、ようやくクラトスの口が開く

 

『…………その前に、あの生物は何か、それを説明してもらいたいのだが』

 

クラトスの言葉に、エドは考え、

 

そして信じてもらえるかは分からないが、ありのまま話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……錬金術から生まれた、人造人間……』

 

『錬金術って、そんな事が本当に可能なの?』

 

リフィルがそう言うと、エドは首を横に振る

 

『いや、俺達一般の錬金術には到底不可能だ。』

 

その言葉に、さらに皆を悩ませる

 

そして、言葉を出す

 

『……おそらく、この世界のドクメントと、エドワードのドクメント、そして錬金術が、この問題の鍵になりそうだな。』

 

クラトスがそう言うと、おもむろに歩き出す

 

『どこに行く気だよ』

 

『お前達に話す事は、もう何も無い』

 

そう言ってクラトスは、どこか去って行った

 

『おい!!待てよコラ………』

 

クラトスは、どこかへと去ってしまった。

 

『……あの野郎…!』

 

エドは拳を強く握り、舌打ちをした

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お久しぶりな投稿。遅れてすいませんでした。
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