鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十四話 |
〜バンエルティア号〜
『クラトスさんが……。創世を伝えし者………?』
アンジュは、疑問の顔をしながらエドを見た。
エドの顔は真剣だった。
『ああ。ヴェラトローパに行ったら、クラトスがそこに居た。後で居なくなったけどな』
ヴェラトローパであった事をアンジュに伝え、その場に偶然居た者も聞いていた。
イアハートが、質問をしてくる
『でも、どうしてそのクラトスさんはこのギルドに居たのかな。』
結構前からクラトスはギルドから離れ、誰一人気にはしなかったが、居ないことは知っていた。
だが、どこで何をしているかは分からず、ほとんどの者が疑問を感じていた。
報告を聞いていたアンジュでさえ
『そうね。私は”村に入った魔物を全て討伐するのに、多くの時間を要する”としか聞いていないし……』
嘘の報告を頭に吹き込まれていた。
ラザリスが生まれてから、クラトスは何か行動を起こしているのだろうか。
『どちらにせよ、あいつは何か隠してる』
エドが、断言するように答えた
『人造人間とラザリスもヴェラトローパに来ていた。その時、奴はそいつらに攻撃を仕掛けなかった。』
エドの言葉に、アンジュが驚いた声を出した
『ラザリスと……人造人間……?』
『それって、あの地から生えてきた牙と何か関係があるのかしら?』
リタが、質問をするようにエドにそう言った。
だが、代わりにアルが質問に答える
『うん……。あれはラザリスって言う女の子の言った。ジルディアの世界の一部……って言っていた。』
アルの言葉に、アンジュは唸る
『そう……じゃぁこの世界も、徐々に侵食されつつあるのね……。』
その言葉は、この場の空気をさらに重くした。
だが、その空気の重さは誰もが気にしなかった。
『しかし、クラトスがどうしてラザリスに攻撃をしなかったのか、それが不思議だよな』
ロイドが割り込むように質問をする。
その質問に、エドが答える
『その人造人間が居たからだろ。』
『でもよぉ、たったそれだけにしてもクラトスが戦いを放棄するとは思えねえんだよな。』
ロイドがそう言うと、アルが言葉を付け加える
『ああ。それは多分、人造人間の隣に、もう一人錬金術を使うディセンダーというのが居たからだと思う。』
ディセンダー
その言葉を聴いて、アンジュ達は耳を疑う
『ディセンダー……?ラザリスの事?』
『いや、そいつじゃなくてもう一人居たんだ。確か、そいつはゲーデと言っていた』
ゲーデという言葉で、イアハートの表情が変わった
『ゲーデ……?』
その変わった表情に、エドは視線を向ける
『ん?知ってるのか?』
エドの言葉に、イアハートは俯く
だが、何も言いたくなさそうな顔だった
『イアハート……?知ってるんだな?』
ロイドが、イアハートに言葉をかける。
だが、イアハートは俯いたまま動かない
『という事は、そのゲーデって人はイアハートさんの世界に居たって事?』
アルが、イアハートに顔を向けて質問をした
だが、イアハートは何も言わない
『そいつは、この世界を異常に嫌っていた。世界を迫害されたとも聞いた。そして、こんな事も言っていた。』
エドの表情が、真剣になっていった。
そして、言いたくなさそうな声で、言葉を発した
『………俺を世界から迫害した奴が、確実にこの世界に居るってな。』
『兄さん!イアハートさんがその人だって言うの!?』
アルの言葉に、エドは眉を潜め、苦しいように拳を握り、呟くように語った
『そうかもしれねえ。だが、断言できる事でも無え。それに、イアハートの反応から、無関係だったとは言い辛い。』
エドは、再びイアハートの方に目を向ける
『答えろ。お前とゲーデとは、一体何の関係だったんだ?』
エドがそう言うと、イアハートは少しだけ震えていた。
だが、エドは睨むのを止めなかった。
観念したイアハートは、ガクリと頭を下に向けた。
そして、少しずつ言葉を発する
『………ゲーデは、私の世界を滅ぼそうとした。』
『……………』
エドは驚かなかった。
奴の性格から、大体予想は出来たからだ。
『だけど、ディセンダーの人と一緒に、私はゲーデと闘って。勝った………』
『そして、世界から迫害したのか?』
エドがそう言うと、イアハートは首を横に振る
『違う!ディセンダーはゲーデと一緒に世界樹へと連れて、一緒に消えていった!……それ以降は…』
イアハートは、また再び俯く
それを見たエドは、頭を掻いた
『………てめぇは、そのディセンダーをよっぽど信頼してんだな』
エドがそう言うと、イアハートは拳を強く握る
『………そんなはず無い。と思ってる。まさかディセンダーが、ゲーデを迫害するなんて…。』
その瞬間、リタが話に入ってくる
『ちょっと待って。という事は、この世界に、貴方が居た世界のディセンダーが居る……って言う事?』
エドは、そこで頭を掻いて考えた。
『いや、正しくは”直接送った奴じゃない、ゲーデを捨てた奴”と言っていた。』
エドの言葉に、益々リタは悩みだす
『ああ!もう!!さっきから話が読めないわ!!』
『つまりは、そのディセンダーに命令した奴、もしくは世界樹に送った後に、誰かが捨てた奴、だろうな。おそらく前者の可能性が高い
けど。』
アルは、その話の中で、可能性を見つける
『……じゃぁ、クラトスさんがゲーデに刃を向けなかったのは、そのゲーデを捨てた人に何かあるからなのかな……。』
『さぁな、そこまでは分からねえ。そもそも俺の仮説自体、怪しいもんだ』
〜ユーリとエステルの部屋〜
『ほ〜ら。プリルちゃん。お手ですよ〜。お手!』
―――ニー
子供のミアキスをあやすように可愛がっているエステルは、楽しそうな顔をしていた。
『へぇ、随分可愛いペットを飼ってるんだねぇ。』
そこに、しいなが割って入ってくる。
『ペットじゃありません!プリルは私の家族です!』
その溺愛ぶりに、しいなは少しだけ呆れる表情を出した。
『分かった。分かったよ。それにしても、そのミアキス…』
しいなは、そのミアキスとかつて共に居た動物と重ねて見えた。
そのミアキスは、確かに似ていた。
『?しいなさん。どうしたんです?』
『あ……いや、なんでも無いんだ。』
しいながそう言った後、今度はプレセアがそのミアキスに近づく
『あの………』
か細い声で、プレセアはエステルに問う。
『はい。なんです?』
プレセアの身体は、どこか欲望でウズウズとせわしなかった。
『触っても……良いですか。』
その言葉を聴いて、エステルは笑顔で答えた。
『良いですよ。ほら、とっても可愛いですよ。プリルちゃん』
エステルはそう言って、プレセアにミアキスを渡した。
そのミアキスを掴み、ひっくり返してからプレセアは肉球をいじりだした
『肉球……』
やさしく肉球を押すと、プレセアの表情は次第に柔らかくなっていった。
『肉球がそんなに良いんです?』
『ふにふに……』
プレセアが楽しそうに肉球を触っている。
だが、ミアキスの方は少しだけ嫌がっていた
―――ニーニー
『あっ』
ミアキスは暴れだし、プレセアから離れてエステルの方に向かった。
『わ!プリル……?』
どうやら、肉球を触られることが不愉快だったようで、プレセアの事は、少し威嚇していた。
その様子を見たエステルは、プレセアの方を見た。プレセアの手からは血が出ていた。
『わ!……大丈夫です!?プレセアさん!』
エステルが、心配そうにプレセアを見ていた。
だが、プレセアはそれよりも、心の方に傷を負っているようだった。
今までよりも、更に暗い表情をしていた
『…………私は、やっぱり嫌われ者なんですかね。』
威嚇するミアキスを見て、悲しそうな顔をする
『あ……あの?』
エステルは心配そうにプレセアを見たが、プレセアは部屋から出ようとした。
プレセアが扉を開けると、そこにはエドが居た
『よぉ?』
エドは、何も思わぬ顔でプレセアに挨拶をした。
『………。』
だが、プレセアは間が悪いように、部屋から出て行った。
それを見たしいなは、心配そうにプレセアを追った
『お……おい!ちょっと待っておくれよ!』
しいながプレセアを追っていくのを見たエドは、首を傾げる
『なんだ?あいつ……相変わらず無愛想な奴だな。』
エドが捨てるようにそう言うと、エステルは、少し複雑そうな表情をした。
そしてエドは、エステルの方を向き、言葉を発した。
『で、あの材料はもう集まってるんだろうな?』
エドがそう言うと、エステルは表情を変えて、バッグを取り出した。
そして、バッグの中身をエドに見せた
『師匠、これで足りますでしょうか……』
エステルは心配そうにそう言ったが、エドは笑顔で答える
『ん……十分十分。』
そう言って、バッグの中に入っているものに手を伸ばす。
そして、嫌らしい事を考える笑顔になった
『さぁて、これを使うのは遅くは無い。』
その笑顔に、どこか不安を感じながらも、エステルはただ頷くことしか出来なかった。
瞬間、部屋にはカロルが帰ってきた
『あれ?エドワード。どうしてここに居るの?』
カロルがそう言うと、エドは振り向く。
そして笑顔で、カロルに話を持ちかけた
『おいカロル。真実を知る気は無えか?』
エドの言葉を理解できなかったのか、カロルは首を傾げた
『何?どういう事?』
エドは、自信満々に答える
『ウリズン帝国の裏、これからもぎ取らねえか。って事だ』
〜甲板〜
セルシウスは、マスタングから習った錬金術をマスタングの前に見せた。
まずは紙に描いた練成陣から、火を起こすという物だった。
セルシウスは。まずは酸素、可燃物である紙の物質の量と資質を理解し、構築式を練った。
そして手を合わせ、練成陣に手を置いた。
瞬間、紙には小さな光が現れ、練成陣に沿って火が現れる。
時間が経ち、紙は燃え尽き、そして灰へとなった。
『どうだ、これ程にも私は扱えるようになったぞ。』
セルシウスの言葉に、マスタングは微笑する
『……この位で満足をしていたら、私を倒す事は永遠に近しい程、不可能だな』
その嫌味にムッとしたセルシウスの前に、マスタングは全く同じ練成陣の書かれた紙を用意した。
マスタングは、手を合わせずに紙に手を置いて、練成を発動させた。
すると、火は一瞬だけ発生し、その一瞬の間に、紙が全焼した。
紙の全てが灰になり、その灰は空へと飛びだって行った。
『ここで、初めて初級者並の錬金術と言える』
そう言って、マスタングは紙をもう一つセルシウスに渡す
『もう一度、やってみたまえ』
その偉そうな態度に、セルシウスはイライラしていた。
『………どうして貴様はそうもよく、精霊の前でそんな態度が取れる……』
『師弟関係だからさ』
マスタングはそう言うと、セルシウスは何も言えない状態だった。
私は教えてもらっている身であり、本来なら私の方が下の存在
それが、ちょっとだけ悔しかった
『それでは私は、これから依頼が来ているのでね。後は独自で研究していたまえ』
マスタングはそう言って去ろうとしていた。
『待て!』
セルシウスは、マスタングを呼び止めようとしている。
マスタングは、その声に反応して動きを止めて、耳に集中した
『………依頼が終わり頃、必ずまた来い。今度は貴様を脅かす程成長しているだろう。』
少しだけ気恥ずかしそうに、強気でそう言った。
一体何を言っているのか、一瞬そう思う。
だが、マスタングはただ笑い、そして扉に手をかけた
『それは面白い。是非頑張ってくれ』
そう言って、扉に手をかける。
そして、甲板からマスタングは出て行った。
出て行くと、イライラが急に消し去った。
その後、セルシウスは溜息を吐いて、甲板の壁に拳を叩きつけた
『………なんだ、この気持ちは………』
敵意はちゃんとある、
だが、寂しい感情と、どこかモヤモヤした心情がある。
感情があるというのは、益々どういう事なのか、分からなくなっていった。
マスタングに、錬金術を習い始めてから。
『………くそ!練習だ練習!!』
セルシウスは、マスタングから渡された大量の紙に、練成の構築式を頭の中で理解して、手を合わせた。
だが、全く上手くいかなかった。
〜バンエルティア号〜
クラトスが創世の伝えし者
さらにラザリスとディセンダーの登場
アンジュは、悩みに悩み、頭が痛くなっていった。
『う……』
急に足場がよろけ、その場で落ちそうになる
『アンジュさん!』
カノンノが駆けつけ、アンジュの身体を支える。
『ああ……ありがとう。カノンノちゃん』
『アンジュさん…。あまり無理はしないでくださいね…』
カノンノに心配されたアンジュは、笑顔でカノンノに向ける
『大丈夫よ…。ちょっとだけ、ショックが残っているだけ。もうすぐで楽になるわ』
そう言って、アンジュはその場で座り込んだ。
その様子を見たカノンノは、ある事を口にする
『あの……アンジュさん?』
『ん?』
『イアハートが言っていた……その…ゲーデっていうディセンダー……。どうしてこの世界を憎んでるのかな……。』
カノンノの言葉に、アンジュは首を傾げる
『どういう事かしら?』
『だって……ゲーデはイアハートの世界を憎んでるんでしょ?もしかして、イアハートには悪いんだけど……逆恨み…されてるんじゃな
いかな……て。』
カノンノの言葉に、アンジュは悩む
『そうね……。確かに私達の世界は関係無いわよねぇ……。』
『それに…世界から迫害されたって…。それにしては、イアハートが反論していたよ。』
考えれば考えるほど、答えが見つからないその言葉は、さらにアンジュの頭を痛くさせた
『アンジュさん、大丈夫ですか?』
『うん……大丈夫。大丈夫。』
すると、アンジュは依頼書を取り出し、出された依頼に目を通す
仕事をするアンジュを心配するものの、カノンノは何も言わなかった。
『…………これは…』
アンジュが、言葉を口にした
『どうしたんですか?』
『いえ……。また大変そうな依頼が来たな……って。』
アンジュの言葉に、カノンノは興味が湧いた
『何?一体どんな依頼が来たの?』
カノンノの表情とは対照的に、アンジュの顔は少し暗かった。
そしてしばらくして、依頼の内容を口に出した
『………地の精霊、ノームに出会い……星晶の現状を把握してくれ……と』
説明 | ||
今回は短いです。ていうか船編はいつも短い……。すみません。 | ||
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