仮面ライダーEINS 第十六話 一撃
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――2011年11月6日 02:22

――学園都市 文系学区

 ツヴァイが学園都市を我が物顔に自衛行為を行っていた。

相手は学園都市で既に骨董品に格上げされたタイプスティール・パンサーであった。

その相手に対しツヴァイは腰のバックルに差してあったカードを取り出し、右手のナックルに備え付けられていたリーダーに挿入する。

 

『トライアル』

 

 カードが読み上げられたと同時に右手が三頭の犬を模したナックルが召喚される。

凶暴性をそのまま形にしたそのナックルは回転を始めタイプスティール・パンサーに打ち付けられる。回転を伴ったパンチはボクシングのコークスクリューの如く威力を高めていた。

『尾木、やれ』

 右手に挿入されていたカードを抜き、腰のバックル横に備え付けられているスキャナーで再びスキャンする。

 

『トライアル』

 

 必殺技の発動と同時に紫のオーラが右手にまとわりつき、同時に三頭の犬がさらに高速回転を始める。

「死ね」

 一歩でタイプスティール・パンサーを捕らえ、その禍々しい拳で吹き飛ばした。

タイプスティール・パンサーはダメージの限界値を超え、装着者を強制的にパージした後に爆発した。

「たわいもないな」

 吹き飛んだ先に倒れていた男に、ツヴァイは静かに近づいた。

「待て!待ってくれ!」

「ああ?」

『痛みつけるのはいいが、殺すなよ』

「了解……」

 タイプスティールに変身していた男の絶叫が鳴り響いた。

 

 * OP:Journey through the Decade *

 

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――2011年11月7日 12:30

――東京都 千代田区

――国会議事堂

 首相の定例会見に記者達が集まっていた。

記者達が首相の揚げ足を取ろうと必死になるところで、一人の記者が目を輝かせていた。いくつか首相への質問が終わったところで、その記者が首を突っ込んだ。

「総理、学園都市に監査機関を設けたのは何故ですか」

「……学園都市は監査機関が必要です」

 記者の質問にやや間があって首相が答えた。

「ですが監査機関は行きすぎた自衛行為を行っているとの情報があります」

「こちらはそんな情報は入っておりません」

 

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EPISODE16 一撃

 

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――2011年11月7日 13:11

――東京都 千代田区

「どうでした、城戸さん?」

 一騎の車の助手席に座ったのはOREジャーナルという名札をぶら下げたジャーナリストだった。

後部座席では晴彦がノートパソコンを弄っている。

「いやぁ、どうもこうも。ありゃ何も知らないよ」

 そう言って城戸と言われた男性は腰を深く下ろした。

「すみません、わざわざカマかけてもらって」

「いいよいいよ。いつも流してもらっているし」

 アインツチームは学園都市で自衛行為を行っている以上、学園都市と政府の確執など、所謂暗部に触れることが多かった。

その中で隠蔽された事件の情報を彼らに流し、様々な事件に光を当ててもらっていたのだ。無論学園長初めとする十人委員会のお墨付き……というか指示であった。

実際いくつかの事件に光をあて、何人かの無念を晴らしたこともあった。

「あの様子だと総理は本当にハリボテだな」

「ってことは幹事長が独自でやっているってことですか?」

 テレビでよくみる幹事長の顔は如何にも政治家という印象であった。

「いやもう政治も。散々無能無能言われているけど本当に無能。少しくらいカリスマがあってもいいと思うんだけど、それもない」

「さんざんな言い方ですね」

「ハル。お前、あの老害に敬老の日に贈り物したいか?」

「ごめん。絶対したくない」

 ほぼ即答であった。比較的名家の出である晴彦には送るべき相手がもっと居るだろう。

「ここだけの話、幹事長ってやばいほど権力握っているらしいよ」

「まあ幹事長なんて役職、権力隠しやすいですからね」

「あの幹事長警察上がりでさ。それにアメリカの業界とパイプがあるくらいだからね」

「どこの業界ですか?」

 もうそれと献金がある時点でスキャンダルだ。よくもまあそれだけ調べた物だ。

「軍産業界だよ。金の流れを調べてびっくりさ。わざわざ小久保さんに海外出張頼んだくらいだからね」

「……このネタ相当やばいんじゃ?」

「やばいも何も。小久保さんから止められたくらいさ」

 警察上がりの政治家なら、モバイルニュースを中心に活動しているジャーナリストなどもみ消し潰そうと思えば一瞬で潰せるだろう。

「いざとなったら本社を学園都市に移してください。治外法権で守れますので」

 そういって一騎はOREジャーナルの本部に車を走らせるのであった。

 

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――2011年11月7日 15:33

――学園都市 中央区

『尾木。中央区でアンノウンが出現』

「もう既に到着している」

 尾木・K・小次郎が怪人と対峙していた。何人か襲ったらしく、両手に持たれている鎌から血がしたたり落ちているがどうやら犠牲者はいないようだ

尾木はカードデッキが内蔵されたバックルを腰に当てる。バックルからベルトが伸びベルトが完成する。

そして覚悟を叫ばずに変身を開始した。

 

『Zwei!!』

 

『尾木。敵はタイプブラッド・マンティス』

「所詮カマキリだろ?」

 その所詮は高速移動で一気にツヴァイに迫ったのであった。

「何!?」

 鎌で一撃。そして次の瞬間連撃がツヴァイに迫った。

ツヴァイの反応が鈍い。それは第三者的視点であった。確かにツヴァイは強い。しかしその強さは攻撃と防御が高いだけであって、素早さ……所謂運動性能は前任者に大きく劣っている。

素早く重い一撃を重ねられるとなすすべがないのだ。

「クソ!重い!」

 そして何より装着者がツヴァイの事をさっぱり分かっていないのだ。

 

『ヴィクトリー』

 

 ツヴァイが胸にあるリーダーにカードを挿入する。カードの名前が読み上げられるとほぼ同時に、リーダーを残したままアーマーがより近代的なデザインの装甲に姿を変える。

防御力は高い。ツヴァイはそう高をくくっていた。

タイプブラッド・マンティスの鎌はその装甲をたやすく引き裂いた。

「くそ!こいつでどうだ!」

 

『オルタナティブ』

 

 ツヴァイの右腕が変わり、同時に右手に大型のブレードが形成される。

その大振りのブレードでタイプブラッド・マンティスの鎌を受け止めようとするが、ブレードはまるでそこに存在していなかったかの様に真っ二つに切られた。もちろん受け止めたブレードが真っ二つに切られた以上ツヴァイ自身にもダメージが通った。

身体から火花を発し、再び装甲が引き裂かれる。

「何でだ……こいつとは……」

「どうした?随分と手こずっているじゃないか?」

 ツヴァイが振り返ったそこには一騎が不敵な笑みを浮かべて立っていた。

「雨無……貴様!」

「自分だけ特殊能力を持ってると思うな」

4――9――1――3

 

「変身!」

『EINS』

 

 歴戦の戦士が光球から姿を現す。

静かにタイプブラッド・マンティスに歩み寄る。手に携えた鎌を巧に避けながら、裏拳と掌底を用いて頭部を揺らす。

脳を揺らされ怯んだ敵の腕を掴みそのまま放り投げる。

ツヴァイよりかは優位に戦闘を進めていた。だが致命的なまでに決定打がない。負けはしないが勝ちもしないということか。

だからこそテストとしては申し分ないのだ。

5――5――5

「誇れ!英雄のコードで倒されることを!」

 

――リミットカット

『ENERGY!!Release!!』

 

 次の瞬間、アインツに雷にまとわりつき、アーマーの縁に金の意匠が現れ、腕にもエネルギーの経路が繋がりその流れも金色に変化する。

纏われていた雷が振り払われ、アーマーの色が暖かい赤へと染まり、瞳とアーマーから深紅の炎があふれ出す。最後に火炎のマフラーが形成され風になびく。

アインツの新機能。リミットカットモードだ。

「さあ、盛大にそして派手に行こう」

 いつもの決め台詞を少し派手にして、アインツが歩みを進めた。

熱を放出しながら歩いてくるアインツにタイプブラッド・マンティスは両の手の鎌で振りかぶるが、それよりも先にアインツの炎の拳が直撃する。

「おお、反応速度が上がっている……」

 焦るタイプブラッド・マンティスを尻目に一人感動していた。

そもそも足枷が多すぎた。相手を殺せない……否殺さないデメリットはアインツの基本性能の低さに直結し、一騎のスキルに頼っていた。

しかしその足枷は今はなく、装着者はその足枷で殴りかかっているような気分であった。

「ハル、捕獲するぞ」

『相手は解剖用のラットでありクローンで、敵さんに制御されているんだよ?それでも情けをかけるの?』

「だからこそ、教えてもらうのさ」

『ああ、なるほど』

 付き合いが長いから多くの言葉はいらない。一騎と晴彦のチームワークも、アインツの強みの一つであった。

火炎の拳は今まで足りてなかったアインツの攻撃力を増し、スキルと性能が揃ったアインツは、タイプブラッド・マンティスを一気に圧倒していく。

4――4――4

 

「ライダーパンチ!」

『ENERGY!!RIDERPUNCH!!』

 

 今度はアインツの両腕が電撃に包まれタイプブラッド・マンティスを迎え撃つ。

タイプブラッド・マンティスの鎌が振りかぶられた瞬間、アインツが半歩前に出て、左の拳が腹に直撃し身体が大きく浮く。その浮かび上がった身体に叩きつける様に右の拳を後頭部に振り下ろした。

今までのアインツでは想像できない威力を発揮した新必殺技は、タイプブラッド・マンティスを遙か後方に吹き飛ばした。

「……何!?」

 次の瞬間爆発した。確かに手加減した。爆発を伴うほどのエネルギーは与えていないはず。

すぐにタイプブラッド・マンティスに近づくがほぼ跡形もなく爆発していたようだ。

「まさか……」

『自爆……』

 強く拳を握りしめたアインツは変身を解除した。

「命を……弄んでやがる」

 

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――2011年11月6日 21:02

――学園都市 理系学区 医療学部

――一騎の研究室

 文字通り本拠地に戻ってきたアインツは修得してきたデータをまとめていた。

「で、どうなった?」

「うーん、それなんだけどね。やっぱりツヴァイチーム、驚くほど怪しいよ」

 そう言って晴彦はツヴァイのデータを表示する。

いつもの監視カメラと独自の分析力、そしてちょっとクラッキングして拝見したものだった。

「驚くほどアインツと似ていない。変身ツールの形式はまるで違うし、アーマーの転送方法、エネルギー循環方式、エネルギージェネレータ……は仕方ないか。まるで"別世界"から持ってきた様な技術ばかりさ」

 別世界という単語に少し反応しつつもツヴァイチームの顔ぶれを拝見した。

肝心のツヴァイの装着者は傭兵崩れのなり損ない。それを指示しているのは自衛隊からPMCに入社、その後ヘッドハンティングでツヴァイチームに所属しているようだ。

「ハル、こいつ怪しすぎないか?」

「自衛隊からPMCに入社ってレアパターンなの?」

「分からん。ただ日本を出て行きたかったのか、それともドンパチしたかったのかで評価は分かれるな」

 そしてそれを総括、つまり幹事長の姿がお目見えした。

「しかし政府の直轄なんだ。人員なんかはさすがにクリーンだろ?」

 そもそも学園都市の位置がかなり異端なのだ。十人委員会私財のみ作られた学園都市は、政府の意向を全く聞かない独立国家となっている。便宜上日本国ということになっており、そこに日本政府が首を突っ込んでくるのは、日本人の性としては十二分に考えられた。

「ツヴァイチームを編成したのは今の幹事長っていうのは知っているよね?」

「自分が幹事長に居座っている以上目立ったムービングはあり得ないだろ?」

「一騎、幹事長の経歴知ってる?」

 そう言って晴彦がディスプレイに映し出したのは、現幹事長の経歴だった。

一騎とは縁もゆかりもない大学の文系学部を卒業した後、警察幹部となっている。そしてその数年後に政治家として出馬した。

晴彦が注目したのはその警察での経歴であった。

「これみて」

「対組織犯罪のエキスパートで武器密輸などの事件を数多く手がけた……」

 大学上がりの警察機構の人間にしては随分と現場で働いている様だ。

「次にこっち」

 晴彦が示したのはもう一人の経歴。一騎はその顔に見覚えがあったが、如何せん覚えることが多すぎて思い出せない。

しかしその経歴は先ほど見た経歴によく似たものであった。そしてその横に三人目の経歴。どうやら既に他界しているようだった。三人とも警察時代の実績は組織犯罪に対するカウンターが主な物であった。

「警察時代の経歴は確かに三人とも似ているが……二人目は最終的に政治家にはなっていないし、三人目は既に他界している」

「まあね。それに幹事長と三人目はそもそも政党が違う。けど一応この三人は警察組織において上司部下の関係で、捜査に伴う権力基盤は引き継いだ物なんだ」

「なるほど……二人目……誰だったっかな」

「覚えてない?2007年のスキャンダル」

「あのときの警察幹部だと?」

 一騎の顔が少し変わった。学園都市最初の事件の際に、学園都市の粉砕に荷担している可能性があると言われた人物だ。

少し下を向いて考え、そして晴彦にインターフェイスを貸すよう手振りをした。

「どうしたのさ?」

 調べ物をするには晴彦のデスクが一番向いている。学園都市の心臓部とも言える"知識の根"。その最深部のさらに奥に存在する超大型サーバーに直結しているのだ。

それを相棒から取り上げた一騎は過去の選挙のデータを閲覧しているのだ。

「やはり……現幹事長とこの故人は同じ選挙区の出身だ」

「え?」

「おそらく投票結果を捜査しやすい地区なんだろう。そこから出馬させ、過去の経歴と後ろ盾から一気にのし上がらせる。これなら"後ろ盾"は怪しまれない。何せ政党は違うし、選挙区が一緒だったとしても、そうなったのは世論と思うのが普通だ」

ツヴァイチームと現幹事長の繋がり。現幹事長と警察幹部の上下関係。警察幹部と故人が上司部下。そして現幹事長と故人の選挙区での仮定。

繋げた。

繋がったわけではない。しかし敵のやり方の推測ができた以上打つ手も考えられる。

「にわかに信じられないね」

「あくまで推測さ。つまり幹事長は"財団"が都合良く世界を回す役者で……ツヴァイチームは……」

 

 物語は回り出す。

 

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おまけ:仮面ライダー設定

仮面ライダーアインツ・エナジーフォーム・リミットカット

深紅のアーマーに赤い瞳。そして全身のアーマーの縁に金の意匠が現れ、火炎のマフラーがなびく。

技術的にエネルギーを交流させる事はかなり困難で危険であったが、とある仮面ライダーから提供された技術を元に再構築し誕生した。今まで脚部のみに流れていたエネルギーを全身にも繋げ全身に循環するように構築している。結果としてエネルギーが交流する地点が生まれ、出力は上昇している。

この形態によるカタログスペックは通常時の2~2.7倍程度あり、事実ツヴァイと同等かそれ以上の戦闘能力を誇り、人を殺せないアインツが人を殺せる形態であり現在、最大の切り札である。

必殺技はライダーパンチと、威力を増したエナジー・ライダーキック。双方とも非殺傷ではあるが、危険性がないわけではない。

 

おまけ:怪人設定

ツヴァイ

厳密には仮面ライダーではない。晴彦曰く別世界の技術で作られた疑似ライダーであり、変身ツールはカードデッキであり能力発動にはカードを使用する。

スペックは平時のアインツの二倍だが、実質は装着者自身が設計したアインツに及んでいない。

各四肢及びアーマー部にカードを挿入するスロットが存在しており、そこにカードを差し込むと能力が発動する。だが換装と武器の転送のみである。

所持カードは「ヴィクトリー」「オルタナティブ」「トライアル」の三種をそれぞれ5枚づつ所持。

 

 * *

 

次回予告:

――うーん、量子力学的には時間を超えてきたんじゃないかな?

 

――時間が止まっていた……

 

――クソ!ライダー相手にネタバレかよ!

 

第十九話 未来から来た男

説明
この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。
・日曜日朝八時半より連載。
・寝坊しましたorz
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仮面ライダー 仮面ライダーEINS アインツの世界 TINAMIの世界 

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