楽々・恋姫無双 第2回同人恋姫祭り 特別編 |
あの険しい戦いの末、
一刀ちゃんと華琳の短かった旅は終わってしまうかのように見えた。
だけど、
一刀ちゃんの気持ちは、
例えその命の炎が消え去るとしても、彼女と一緒に居ることの願った。
そして、あの涼州での戦いが終わって六年後、
時は魏にて第六回の三国同盟祭りが始まる時期。
一刀こと曹丕ちゃんが五才になった時のことだ。
「蓮華お姉さん、そして孫呉の皆さん、本日曹魏にお越しいただきありがとう御座います」
「ええ、ふふっ、それにしても、一刀が自らお迎えに来てくれるなんて嬉しいわね」
「……桃香お姉さんの所にはお母様がいっています。」
「そう」
曹丕、一刀ちゃんの魂が再び産まれた子にして、曹孟徳の息子だ。
生まれる前から三国にて騒ぎになり、生まれてからはそれはもうまだ喋れない時から様々な騒ぎを起こしていたが、今に至っては曹魏の王子として慎みを持っている。
過去の彼ときたら母の曹操が頭を悩ませるほどの悪戯好きな子でしたが、今回はそういう話ではない。
「それじゃ、こちらへ……」
「………ぅ」
「?」
「!!」
ふと、一刀は初めて見る人の目が合って頭をかしげた。
「あ、こら、朱蓮、ちゃんと出て挨拶しなさい」
「……?」
「うぅぅ……」
蓮華の後ろに隠れて前に出ようとしない、まるで蓮華をそのまま小さくしているような娘を見て、一刀は蓮華の方を見上げた。
「あの……?」
「あ、ごめんね、この娘かなり人見知りだから……」
「……あ、お母様から話は聞いてました。孫登ちゃんですね」
「ええ」
孫登、
孫権の娘として孫家の小さな姫だ。
魏で一刀ちゃんが産まれて一年後、蜀、呉でも同じく桃香と蓮華が懐妊(理由不明とされているが大体感はつく)して、一年後両国とも娘を得た。
が、一刀ちゃんは他国に行くことを母の華琳に禁止され、他の両国の娘たちもまだ幼くて他国にいかせなかったため、今まで話ばかり聞いて顔を見たことはなかった。
だけど、祭りが始まる一ヶ月前、先に会った華琳と両国の王が話合って、今回三人を合わせるように話を決めたのでした。
が、
「おかあさん……うぅぅ…」
「…もう…ごめんね、一刀」
「いいえ、大丈夫です。ボクだって初めて会ったばかりですから、警戒されて当然です」
「話はちゃんとしてあるんだけどね、どうも初めて合う人たちとはこんな感じなの。困った娘ね、まったく」
「ちょっと、いいですか?」
「え?ええ……」
蓮華に断ってから、一刀ちゃんは彼女の後ろに隠れた孫登の方へ近づいた。
「こんにちは」
「……!」
「ボクは曹丕って言うんだ。あなたの名前も教えてくれる?<<ニッコリ>>」
「……うぅ……ぅ…そん…とう………孫登……」
「孫登ちゃんなんだ。…そんなに怖がらなくていいよ。今日はお祭りの日なんだよ。楽しんでくれたら嬉しいよ」
「………っ」
「あ」
孫登ちゃんは近づいてくる一刀ちゃんの事が恥ずかしかったのか、それ以上近づかされるのが我慢できず孫呉の行列の後ろへと逃げてしまった。
「うーん……」
「ごめんね、一刀」
「謝られるようなことじゃないです。ボクがちょっと焦ってたみたいです。行きましょう。奥の方へ桂花お姉ちゃんたちが待っています」
「ええ」
そうやって一刀ちゃんは孫呉の行列を連れて許都へ向かうのだった。
「……うん?」
「ふえぇ……ふええ……」
孫呉の他の人たちを役人たちに任せて、一刀ちゃんは蓮華を母に合わせるために内城に向かっていた。
だけどその途中で、一刀ちゃんは御殿近くの庭で泣いている娘を見つけた。
「一刀?」
「…蓮華お姉さん、少し失礼します」
一刀ちゃんは蓮華から少し離れて、その娘が泣いてる方へ向かった。
「うぅぅ……」
「何で泣いてる?」
「うぅ……っ!!」
泣いていたその娘は、突然視界に現れた一刀ちゃんにびっくりして、パッと立ち上がった。
「どうしてこんなところに居たの?」
「うぅぅ……」
泣いてた子供は両手に何かを納めているようにゆったりと握っていた。
「……手に何か持ってるの?」
「……うん……」
「見せてくれる?」
「………」
子供が手を開けると、そこには蝶々一匹が元気を失ったまま小さな羽を動かしていた。
「蝶々さん…綺麗だから捕まえたのに……死んじゃいそうで…」
「だから泣いてたの?」
「…うん……どうすればいいのか分からなくて…」
「そうなんだ。あのね、蝶は人の手で捕まえたらダメなんだよ。人が手で触ると直ぐに死んじゃう」
「!!蝶々さん、死んじゃうの?」
「………ちょっと良いかな」
一刀ちゃんはその娘に向かって手を開けた。
その娘はすこし戸惑った、手に持っていた蝶々を一刀ちゃんの手に渡した。
一刀ちゃんはその蝶々を手の平において、そのまま庭のお花畑が在る方へ行った。
そして、そこにあった花の上にゆっくりとその元気の失った蝶々を置いた。
「…………」
「…………」
二人は息をすることも忘れて蝶々の様子をみていた。
「(お願い、動いて……)」
一刀ちゃんの心の声が通じたのか、しばらくして、小さな蝶々はその羽を動かし始めた。
「はあっ?」
そして、もうしばらくしてもう元気をつけたのか羽を動かして、ゆっくりと花の上から跳び上がった。
「蝶々さん!」
「よかったね」
「うん!」
泣いて居た娘はとてもうれしそうに頷いて、
「ごめんね、蝶々さん、もう綺麗だからって捕まえたりしないから許して」
蝶々にその話が通じたのかはわからないが、蝶々はそのまま羽ばたきながら花畑の他の蝶々たちがあるところ向かった。
「……」
一刀ちゃんが女の子を見ると、もうその娘は涙を拭いて本気で生き返った蝶々のことを喜びながらその姿を見ていた。
「ところで、あなたは誰なの?どうしてこんなところに一人でいるの?」
「……ふえ?」
その時になってやっと周りを見回ったその娘は……
「あれ?……お母さん居ない?」
どうやらさっきの蝶々を捕まえようとして母と逸れてここまできたようだ。
「……ふぅ……お母さんどこ……?」
女の子がまた泣きそうになると一刀ちゃんは慌てながらその子の肩を持った。
「ほら、泣かないで。ボクがお母さんのこと探してあげるから…あなたの名前は?」
「うん……劉禅……」
「そう、りゅうぜん………劉氏……」
一刀ちゃんは嫌な予感がした。
「あら、桃華ちゃんじゃない」
「蓮華お姉さん……あの、この娘ってやっぱり」
「ええ…桃香の娘よ」
「…………」
さすがに一刀ちゃんのこれには何も言えなかった。
一刀ちゃんは蓮華と桃華を連れて母の部屋にまで着いた。
コンコン
「お母様、蓮華お姉さんをお連れしました」
「入ってきなさい」
中から華琳の声が聞こえると、一刀ちゃんは部屋の扉を開けた。
「ご苦労だったわね、一刀」
「うん…いや…はい」
「ふふっ」
「うっ……」
他の王のお姉さんたちの前で大人気あるようにしようとしていた一刀ちゃんはつい素が出て顔を赤らめた。
「久しぶりよ、蓮華」
「蓮華さん、お久しぶり?」
「ええ……その前に桃香、あなたちょっと失望したわよ」
「ふえ?何でいきなり……」
「お母さーん!」
後ろにいた劉禅が、華琳の向こう側に座っている母を見た途端、周りの目も構わず跳び込んだ。
「え!?桃華ちゃん、どうしてここに……」
「庭に行列と逸れて一人で居るのを見つけてきました。朱里お姉さんのところには既に連絡を入れていますから心配は要りません」
「……桃香」
華琳が呆れた顔で桃香を睨んだ。
「はぅぅ……ごめんね、一刀ちゃん」
「いいえ、平気です。むしろ早く会えて嬉しいです」
「そういえば、一刀、朱蓮には会ったのかしら」
「はい…何か嫌われてるようで……」
「そんなことはないわ。ちょっと初めて見る人だから警戒しているだけで、お祭りが始まると一刀とも仲良くなると思うわよ」
「そうなったらいいのですけど……」
なんやかんや言って、一刀ちゃんには城に自分の年の友たちが居なかった。
街に出ると遊べる子たちはいたが、同じ立場に友たちがあることは大事。
そんな考えで、華琳たちも今回の祭りにて三人を合わせようと考えたのである。
自分たちの後を継ぐこの子たちの時までこの三国の同盟がつながるためにも、これは大事なことであった。
「桃華ちゃん、一刀ちゃんにちゃんと挨拶したの?」
「うん?……ううん」
「誰かも知らなかったから仕方ないでしょう。あなたがちゃんと紹介してあげなさい」
「そうだね」
桃香は娘の桃華を見て言った。
「桃華ちゃん、この子がお母さんが前から言っていた、魏の王子さまだよ。名前は……」
「曹丕です。字は子桓。宜しくね」
「…!」
劉禅はそれでやっと自分を連れてきた相手が誰か気づいて身の嗜みをしっかりして一刀ちゃんを見た。
「姓は劉、名は禅、字は公嗣です。よろしくおねがいします<<ぺこり>>」
「よろしくね<<ぺこり>>」
ゴン!!
「「痛っ!」」
両方が近い所で同時に頭を下げたせいで、頭を盛大にぶつかり合ってしまった。
「あぁぁぁ゛ぁ゛」
「痛いよ、お母さん」
「あはは…よしよし」
「まったく……(ニヤニヤ」
「お母様、笑わないでくださいぃ……」
次の日、本格的にお祭りが始まった。
「………( ゚д゚)ポカーン」
「あ、桂花お姉ちゃん、今日午前暇だったらボクと一緒に……桂花お姉ちゃん、どうしたの?」
「………悪夢よ、これは悪夢に違いない」
「桂花お姉ちゃん?」
「いやああーーーーー!!!」
「け、桂花お姉ちゃん、どうしたの!桂花お姉ちゃん!」
逃げ出す桂花を追いかけようとした一刀ちゃんだったが、その前に桂花が見ていた掲示板を見た。
「……?」
三国同盟祭り杯将棋大会
・
・
・
荀ケ vs 呂布
・
・
・
「………そっとしてあげた方がいいかな」
良く分からない方々は前回の魏での祭りの時の話参照ください。
「子桓、こんなところに居たのか」
「あ、秋蘭お姉ちゃん」
対陣表を見ていた一刀ちゃんの前に今度は秋蘭が現れた。
「華琳さまがお探しだ」
「お母様が?……でも今日は忙しいから一緒に行けないって言ったのお母様なんだけど…?」
「…どうやら子桓に任せる任務があるらしい」
「うーん……じゃあ、秋蘭お姉ちゃんと出かけるのはまた今度だね」
「そうだな。残念だな」
「うん。あ、でも、天下一品武道会は見に行くから」
「そうか。なら、今年こそ優勝して、子桓の一週間独り占め権いただかないとな」
「……え?」
一刀ちゃんはまったくしらなかった話が魏の武将たちの士気を高めていたようです。
「それじゃ、私は行くぞ」
「あ、う、うん……」
ちょっと呆気ない顔のまま秋蘭を見送った一刀ちゃんは直ぐに華琳の所へ向かった。
「劉禅ちゃんと一緒に街に?」
「ええ、あなたが街のあっちこっち詳しいから、あなたが一緒に行っていろんなところ見せてあげなさい」
「……でも……」
「私の息子でしょ?魏の王子として、ちゃんと他の国の姫さまたちのことちゃんと見てあげなさい」
一刀ちゃんは桃華の上の桃香の方を見ながら悶々とした。
「私からもお願いしたいな。一刀ちゃんならちゃんと桃華ちゃんと遊んでくれるはずだし、本人も一刀ちゃんと一緒に遊びたいって」
「………でも」
一刀ちゃんが心配するのも無理はなかった。
他国の姫なのだ。一人で出歩く時はまだいいけど、他国の姫をエスコートしながら出歩くほど、祭り時の街並みは安全な場所とは言えない。
「……曹丕ちゃんは」
「?」
「曹丕ちゃんは桃華と一緒に遊ぶの嫌?」
「う、ううん!そんなこと全然ないよ!一緒に遊ぼう?」
「……ほんと」
「うん、うん!ボクも劉禅ちゃんと一緒にお祭り楽しみたいな」
「<<パァッ>>」
直ぐにでも泣きそうであった桃華の顔が、笑顔に変えてきた。
「あなた、娘良く育てたわね」
「えっへん」
華琳の言葉に胸を張る桃香さん。多分それ皮肉です。
「じゃあ、姫様、お手を」
「……う、うん//////」
一刀ちゃんがその場で片膝を付いて丁寧に手を伸ばすと、桃華は顔を赤らめながらその手をつかんだ。
「ほぉ……華琳さん、息子良く育てました☆」
「当然よ」
「うん?」
「……!」
「曹丕ちゃん、どうしたの?」
「いや、何か人の影が見えた気がするんだけど」
「私は何も見てない」
「うーん…見間違いかな」
「そんなことより、早く行こう?」
桃華は積極的に一刀の腕に自分の両腕を絡んでまだない胸に一刀ちゃんの腕を挟めようと頑張ってます。
「うん、そだね」
・・・
・・
・
「………」
「おおー!すごい!」
許都の街は既にお祭り騒ぎ。
昨年蜀にて行われた祭りをパッと見ても倍は騒がしいのは、さすが中原を治めてる魏の首都にふさわしい規模だった。
「最初はどこから行こうか」
「えっとね……<<ぐぅー>>……綺麗なのがあるとこ<<ぐぅー>>……お飾りとか…<<ぐぅー>>」
「先ず食べものがあるところに行こうか」
「………ハイ///////」
育ち盛りの年頃だった。
・・・
・・
・
そうやって一刀ちゃんが桃華を連れてきた所は、いわば食店街。
祭りでもあってこういう人が多い時こんなところは特需だった。
「<<キョロキョロ>>確かこの辺り……」
「…曹丕ちゃん、どうしたの?」
「あ、あった!流琉お姉ちゃん!」
「<<チィーー>>あ、一刀君!」
一刀ちゃんは食店街の中心の屋台で焼きそばを売っている流琉の姿を見つけたのであった。
今回流琉は他の武道会やらには出店せず、食店街の屋台でいろんなものを作って売ることにしたのであった。
で、初日の今日は焼きそば。
アイデアは一刀ちゃんから出た。
「あ、そこに居るのは……?」
「あ、あの…劉禅って言います」
「桃香お姉ちゃんの娘」
「へー……」
流琉は一瞬、一刀ちゃんの腕に絡んでいる桃華の姿を見つめていたが、
「流琉お姉ちゃん?」
「え?あ、ごほん!はい、お客さん、ご注文は?」
「焼きそば2つください」
「はい、焼きそば2つね」
チィーー!
「美味しそうな匂いがする」
「流琉お姉ちゃんは魏で一番料理の腕が立つからね」
「やだ、一刀ちゃんったら、そんなこと言っても、焼きそば特盛しか出ないよ」
「わーい(*^_^*)?」
「//////(あー、もうかわいいなー)<<チィー>>と、いけない、ちゃんと見てないと…」
流琉の手が素早く動き始めると、やがて焼きそばの匂いが街並に広がった。
「はい、できたよ。はい、一刀ちゃんのは大盛り」
「ありがとう、流琉お姉ちゃん」
「明日も良かったら来てね。明日はたこ焼きやるから」
「うん!」
焼きそばを入れた器をもらった一刀ちゃんはそのうち特盛の方を桃華に渡した。
「はい」
「……<<ムッ>>」
「?」
「…桃華、そんなに食べないもん………」
「…あ」
確かに女の子の大きい方を勧めるのは間違ってる(ただし、恋とデートしている時は自分の分まで渡すべき。ここテストに出るよ)
「ごめん、ボクあまり女の子と一緒に遊んでみたことないから良く分からなかった」(※お姉ちゃんたちを除くと嘘じゃありません)
一刀ちゃんが謝って普通盛りの方を桃華に渡すと、桃華ちゃんは順々とそっちの方を引き受けました。
正直、これ以上粘ってまたお腹が鳴ると、それほど恥ずかしいこともありませんしね。
「<<ちゅるる>>うん、おいしいー☆」
「<<ちゅるる>>ほんとだね。さすが流琉お姉ちゃん」
「でも、食べるところがないね」
実際、屋台は小さく焼きそばはその場で食べられるものではなかったし、どこかに座って食べるにも、街は真昼間で大騒ぎ、なかなか落ち着いて食べられる場所が見つからなかった。いつでもはしたなく立ったまま食べるわけにも行かない。
「それじゃ、どっか涼しいところ行って食べよう」
「あるの?」
「うーん…………あ、あそこが良いかな」
一刀ちゃんが差したのは普通人たちが通らない狭い道だった。
「あっちを通ると涼しいところが出るよ」
「じゃあ、そこに行こう」
「うん」
二人は焼きそばを持ったまま、一刀ちゃんが差した所へ向かった。
にゃー
「あ、猫さんだ」
「ここ涼しいから夏に熱い時に猫たちが良く集まるよ」
「そうなんだ…曹丕ちゃんすごい」
「………まぁ、良く遊んでるから…///」
そうやって二人が狭道を通ったらそこには空き地が出てきた。
そこにはもう夏の日を避けにきた猫たちが集まっていた。
それは一刀ちゃんにとってはいつもの光景。
が、
「!!」
「あ」
「え?」
その空き地にある隅で、お猫を膝において座っている朱蓮と目が合ったのであった。
「あ、孫登ちゃ…」
「……!!」
一刀ちゃんは挨拶しようとしたが、朱蓮は慌てながらパッと立ち上がって逃げようとした。
が、唯一の出口は一刀ちゃんたちによって塞がれてる状態。
「……!!!……!」
まるで子猫のように近づいてくる一刀ちゃんのことを警戒している朱蓮だったが、一刀ちゃんとて今度こそはちゃんと挨拶しようと思っていたため引き上げることはなかった。
「良くここ分かったね。猫好きなの?」
「………ぅん<<こくっ>>」
「すごいね。ここに初めて来たのにここが分かるなんて……」
「……そうでもない」
「いや、ボクなんかこの街いつも歩いててもここ見つけるに何年かかったのに、孫登ちゃんは猫のこととか詳しいんだね」
「……好き…だから……////////」
「曹丕ちゃん、そのこは誰なの?」
「!!」
後ろで桃華が現れると、新しい人が現れたことに近づいてきたことに孫登は更に後ろに隠れようとするがもう後ずさる道もない。
「大丈夫だよ、孫登ちゃん、こっちは蜀のお姫様だよ。劉禅ちゃん、こっちは孫呉の姫様」
「そうなんだ。私は劉禅っていうの」
「……孫登……」
「よろしくね、孫登ちゃん!」
「!<<ピクッ>>」
桃華は頭を下げる代わりに、空いてる手を伸ばした。
反面、突然手を伸ばす劉禅に驚いた朱蓮は囲まれたねずみが猫に飛びかかるかのように桃華にぶつかってきた。
「キャッ!」
「あ、劉禅ちゃん!」
同時に、桃華が持っていた焼きそばが地面に落ちて、劉禅は尻餅をついた。
桃華を倒した朱蓮はそのまま出口の方に走って行こうとした。
「劉禅ちゃん、大丈夫?」
「ふええ、痛いよ…桃華なんか悪いことしたの?」
「ちょっとびっくりしただけだよ。…孫登ちゃん!」
「にゃー」
「…!」
が、逃げようとしていた朱蓮は出口を何歩前にしたところで、前に猫が通りすぎるのを気づかずに居て、いきなり足を止めようとしたが、結果そのまま前に倒れてしまった。
「…つっ!」
「孫登ちゃん!」
「………ふ……ふぅ……ふええ………」
コケた孫登ちゃんは怖さと痛みの果てに泣き出してしまった。
おまけに一刀ちゃんの前で涙を汲んでいる桃華も、その泣き声を聞いたら何か自分も色々と悲しかったのか泣き出した。
「ふぅぅ……ふえええん」
「ふええー……」
「!……!!<<あわあわ>>」
女の子二人が突然泣き出して一刀ちゃんは慌てた。
でも、ふと母が言った言葉を思い出した。
『私の息子でしょ?魏の王子として、ちゃんと他の国の姫さまたちのことちゃんと見てあげなさい』
「……<<コク>>」
自分がしっかりしないといけないことに気づいた一刀ちゃんは、取り敢えず遠くで転んだ孫登ちゃんの方へ行った。
「ねぇ、大丈夫」
「ふえー、痛い……」
「大丈夫だよ。ほら、ちょっと見せて」
一刀ちゃんは倒れていた朱蓮をなんとか座らせた。
幸い、かすっただけで、血が流れてるわけでもなかった。
「怪我はないよ。まだ痛い?」
「………」
「ごめんね、孫登ちゃんが猫たちと遊んでるってしらなかったから……ボクたち来て迷惑だった?」
「………<<ふるふる>>」
一刀ちゃんの質問に、驚くも朱蓮は否定した。
「…迷惑じゃ…ない。…ちょっと…びっくりしただけ……」
「そうなんだ…よかった。じゃあボク孫登ちゃんに嫌われてないよね」
「………ん」
「じゃあ、孫登ちゃんが良かったらボクたちと一緒にお祭り楽しまない?三人で居たほうが、一人や二人で居るようにきっと楽しいよ」
「………一緒に…
「うん?」
「一緒…に…遊んでも…いい?」
「…<<ニッコリ>>もちろん」
「………うん<<にしっ>>」
やっと朱蓮の笑みを見ることが出来た一刀ちゃんは、彼女の手をつかんで小さく泣いてる桃華の方へ行った。
「劉禅ちゃん」
「…ふえ……え?」
「………ごめんなさい」
桃華の前に来た朱蓮は桃華を見て頭を下げた。
「……孫登ちゃん」
「あたし…人と話すの苦手だから…ちょっとびっくりしちゃって……」
「劉禅ちゃん、孫登ちゃんもボクたちと一緒に遊びたいって」
「……<<コクッ>>」
「……ぁ……うん、良いよ」
「……ふぅ<<パァッ>>」
劉禅に許してもらった孫登ちゃんの口から安心の息が漏れた。
「焼きそば、ひとつしかなくなっちゃったね」
「うん」
「……ごめんなさい」
「孫登ちゃんのせいじゃないよ」
「……でも、どうしよう。行って2つ新しく持ってこようかな」
「それだと時間がかかりすぎるよ。それに、そろそろ屋台も忙しい時だし………あ、そうだ」
「何?」
一刀ちゃんはいいアイデアが思い出したような顔をして、他の二人の姫たちは頭をかしげた。
「これって、特盛だから、もういっそ三人で一緒にこれ食べたら良いよ。ボクも小腹だから、これ全部食べられないし」
「でも……端一本しか…ない」
「それは………ハイ」
「……!!」
一刀ちゃんは自分の箸で焼きそばをとって、それを朱蓮ちゃんの前に差し出した。
「はい、あー」
「……!…!!あ、あー<<ぱくっ>>」
「ああ!」
「……ふむ……<<もぐもぐ>>……おいしい」
「でしょ?」
「曹丕ちゃん、それ曹丕ちゃんが食べてた箸じゃない////」
「!!!」
「うん、でも、これしかないし……仕方ないよ」
「仕方ないじゃ……」
「………結婚……」
「「……え?」」
突然朱蓮の口から出た言葉に桃華も一刀ちゃんも硬直。
「……結婚…します」
「え?」
「えーー!」
「同じ箸使ったから……もう……結婚するしかない//////」
確かにそうですね。
「そういうものなの!?」
そういうものです。
「あの……、孫登ちゃん」
「……朱蓮」
「…え?」
「…夫婦だから……真名…あげる」
それにしてもこの孫権の娘。見た目と違ってノリノリである。
「あー、孫登ちゃんだけずるい。曹丕ちゃんとは私が先に会ったのに!」
「劉禅ちゃん?」
「桃華なの!」
「え!?」
「私も桃華ちゃんって呼ぶの!後、私も焼きそば食べさせて」
「え!?」
「……旦那様ー<<ぎゅー>>」
暴走する桃華とも関係なく、朱蓮ちゃんもまた自分の胸を一刀ちゃんの腕に当ててくる。もうすっかり猫じゃらしに酔った子猫のようだ。
「ええ!?///////ちょっと、朱蓮ちゃん?落ち着いて、何かあたってるよ!」
「<<ピキッ>>へー…私がした時は何も言わなかったのに……孫登ちゃんは何かあたってるんだ……」
「と、桃華ちゃん、落ち着いて……何か怖いよ」
「やだな。一刀ちゃん、私全然怒ってないもん…あ、もう夫婦だから真名呼んでいいよね」
「え、待ってボクはまだ結婚とかは………!」
「……一刀旦那様」
「その旦那様禁止ー!」
「……劉禅ちゃんに言われる筋はない」
「ぐぬぬー!!」
「………!!!」
ジジジーーーー
「あ、あの…二人とも落ち着いて」
「「……!!」」
「!!……うぅぅ………」
「「……あ」」
と、二人に酷く睨まれた一刀ちゃんは、さっき二人が泣く時に我慢していた分までなんか一気に吐き出してしまった。
「ふええ……二人とも喧嘩しちゃダメなのーー!!」
「え?一刀ちゃん!」
「…旦那さま」
「ふぅぅ………」
男の涙に弱い姫さまたちだった。
「「……<<コクッ>>」」
相手をみて頷いた姫様たちは…
「(休戦?)」
「(休戦把握)」
ガシッ
「ほら、一刀ちゃん、私たち喧嘩してないよ」
「……うん、うん」
「………ほんと?」
「「うん!?」」
「……じゃあ…」
「一刀ちゃん、今度は私から食べさせたげる」
「え、ああ…うん」
「ほら、アーン」
「…あー<<パクっ>>」
「おいしいでしょ?」
「………うん、おいしい<<パァーッ>>」
「「<<ドキッ>>////////」」
・・・
・・
・
とまぁ、こんな感じで、三人の初めての出会いは幕を開けたのであった。
これからこの三人が広げる三角関係は、自分の母たちがまったく考えなかった方へ飛んでしまうことなるけど、
今日の話はここまでにしよう。
三人のお祭りは、まだ始まったばかりだ。
説明 | ||
お祭りもあと2日。 今回の楽々・恋姫†無双ネタは、 大陸の二代たちの物語の前哨戦です。 どうか楽しんで頂ければ幸いです。 |
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