真・恋姫†夢想 魏√ 桂花EDアフター その七 |
煌々と、夜空を照らす人工的な照明と、それよりは遥かに小さいながらも、自己の存在を主張するかのようにはっきりとした輝きを放つ、色とりどりの数多の灯りたち。耳に聞こえるのはたくさんの人々の活気に溢れた声と、笛と太鼓が織り成す賑やかな祭囃子。
私は今、“縁日”という所に来ている。まあ正確に言えば、縁日と言うのは場所ではなく行事の名前であり、それが行われている場所に来ている、と言うのが正しいのだが。
「……にしても凄い人ごみね。もう、歩くのさえやっとって所だわ」
「だな。けど、この辺りはまだ入り口近くだから、入場さえしてしまえばもう少し楽に歩けるよ」
「……手、離さないでよ?」
「分かってるって。……それにしても凄い人だな。まあ、今年はこれが最後の縁日だし、花火も今日が最終日だからな。っと」
「きゃ」
殺到する人の波に、思わず流されそうになった私を、一刀はしっかりと抱きしめてくれた。……やっぱり温かいな、一刀の胸の中は。
……この三日ほど前。先月受けた大学検定の合否が、私の下へと通知された。
結果は、合格、だった。
「……やっぱりさすがと言うべきかな?たった三ヶ月で大学検定に受かる辺りは、王佐の才の面目躍如、ってところかい?」
「……それ以上に、桂花ちゃんの乙女ぱわーが凄かった、と言うべきかもね。どぅふふ」
……通知の書かれたその手紙を見て、満面の笑みを浮かべた私に、なぜか屋敷内で筋肉だるまの姿になっている貂蝉が、そう笑って言った。
「……で?お前はなんでそっちの姿なんだよ?」
「……ちょっとした事情でね。貂蝉の姿と名前じゃないと、色々不都合な〜のよ。だから二人も、私のことは貂蝉で通してねん」
『……はあ』
なんだか良く分からないけど、とりあえず、納得した私たち。……ほんと、自分でも何で納得できたか分からないんだけど。
(お祭りの都合上ですw)
「まあそれはともかくとして。桂花ちゃん、改めて、合格おめでとう。そんな桂花ちゃんに、私からプレゼント……贈り物があ〜るのよ」
「……贈り物?」
「そ。はい、これよ」
そう言って貂蝉が差し出したのは、少々大きめの長い箱。……なにかしら、これ?
「とりあえず開けてみたら?危険なものってことは、多分無いだろうし」
「あん。ご主人様ってば、相変わらず厳しいお・こ・と・ばン」
「……だから、その姿でいやいやすんな。鳥肌が立つ」
一刀と貂蝉がそんなやり取りをするのを横目に、思い切って箱に手をかける私。その箱に入っていたのはと言うと、
「……着物?」
「そ。正確には、浴衣、ね」
「へえー。いいじゃないか、桂花。それにこの柄、これ、金木犀だろ?」
「そうよん。金木犀、それはつまり」
「……桂花、だろ?」
金木犀とは、私の真名である桂花―丹桂の、この国での呼び名だそうだ。それが蒼い生地のところどころに描かれた、浴衣というこの国独特の衣装を、貂蝉はわざわざ用意してくれたそうである。
「でね?ご主人様の浴衣も用意してあるから、二人してそれを着て、近くの神社で行われる縁日に行って、夏の夜の一時、楽しんできたらどうかしらん?」
……以上の経緯により、私と一刀は現在、その縁日会場である神社に来ている、と言うわけである。ちなみに、着付けは一刀が手伝ってくれたんだけど、正直言ってちょっと恥ずかしかった。……いやね?散々裸なんて見られてるとは言ってもよ?やっぱり着替えとなると、その辺ちょっと違うわけで。とは言え、私以外のほかのメイドさんたちは、夏休みと言うことで現在お屋敷を不在にしてるものだから、着付けが出来るのは一刀しか居ないと言うわけである。
しかも、浴衣の下には何も着ないのが、この国でのるーる…しきたりってやつだって言われたものだから、今の私は浴衣一枚で外を歩いているわけで。
(……着崩さない様に歩かないと、その、丸見えになっちゃうかも知れないわね……ほんとに、気をつけないと)
転んだりなんかしたら、それこそ一刀と華琳さま以外には見せた事のないところまで、衆人の耳目に晒されちゃうし。……そんなことになったら、それこそ自殺もんだわ、うん。
「ふう〜。ようやく人ごみを抜けたよ……。桂花、ちゃんと着いて来てる?」
「ん、大丈夫。ちゃんと一刀の手、握っていたから」
「そ、そか///」
「/////」
たったそれだけの会話。なのに、何故だか顔が真っ赤になる、私と一刀だったりした。
「……と、ともかく!屋台もたくさんでてるし、しっかり楽しんで行こう!な?」
「う、うん!」
そうして始まった屋台めぐり。まず最初に立ち寄ったのは、飴屋だった。……まあ、単に一番近くにあったからなんだけど。
「たくさん種類があるわね〜。私も見たこと無いのばっかり」
「そうだな。でもなんと言っても、縁日といえばりんご飴だろ。おいちゃん、二つおくれ」
「はいよ〜!」
「……わ。甘くておいし。……風だったら、屋台ごと買い占めそうね」
「はは。言えてる」
そうして買ったりんご飴を舐めつつ、次に寄ったのは射的という遊戯が出来る屋台。
「……こう?」
「そうそう。先端に突起があるだろ?それを的の上部の隅に当てて狙いをつけて」
「この、ひきがねを引く……!やった!落ちた!」
「おお!才能あるじゃんか、桂花。……まあ、秋蘭だったら確実に、店の景品全部持ってくだろうけど」
「……間違いないわね」
でもって、景品で取った人形を手に、次に向かったのは形抜きってのをやる屋台。
「……あ、くそっ!また崩れた!」
「あ〜、私も駄目〜……結構難しいわね、これ」
「ああ。よっぽど集中力が高くないと駄目だからな」
「上手くやれるとしたら、稟……かしら?」
「そうだな。まあ、華琳の浴衣姿とか見て、鼻血を吹いてなきゃ、だけど。……でもまあ、それ以上に一番確実に言えるのは」
「……春蘭や季衣には絶対させられないわね」
「……だな」
「……確実に、イライラが爆発して、屋台ごと破壊しかねないものね……」
その後は食べ物系の屋台をはしごして、夕食代わりに食べ歩き。
「このお好み焼きっての?霞や真桜が好きになりそうね」
「あとたこ焼きもな。焼きそばは流琉…かな?まあ、自分で食べるより、安くておいしいから庶民食にぴったりです!…って言いそうだ」
「そうね。でも、食べ物で一番こだわるのは」
「華琳、だろうな。……下手したら全部の屋台にけち…指導をつけて回るかもな」
「ふふふ。かも知れないわね」
そうして食べ物を片手に場内を歩き回り、私も着ている浴衣とか、この世界のいろんな服を見たら、沙和は確実に狂喜乱舞しそうだとか、凪だったら意外なところで、輪投げなんかにムキになりそうだとか、張三姉妹は会場の中心で歌と踊りを披露したがるだろうとか。
……魏の面々の事を、二人揃って久々に思い出し、ちょっとした郷愁のようなものにかられながらも、私たちは祭りを十分以上に楽しんだ。
そして祭りの終了の時が近づいた頃、私は一刀に連れられて、神社の中にある高台に居た。
「……ねえ。なんでこんな所にわざわざ来るわけ?」
「もうすぐ分かるよ。……お、始まったかな?」
「え?」
ひるるるるるるる〜〜〜〜……どおーん!
「ふわあ〜……」
思わず見とれた。……満天の星が広がる夜空に、大きくその花を開かせる煌びやかな光。そしてさらに、二つ、三つ、四つ……いくつもの、大輪の光の輪が、夜空に瞬いては散っていく。
一瞬の華やかさと、せつなさ。それが何度も何度も繰り返され、衆人の耳目を惹き付ける。
「……綺麗……もしかして、これが“花火”?」
「そ。祭りの占めはこれが欠かせないからな。……ここからが一番、花火を綺麗に見られるって、前もって貂蝉に聞いていたのさ」
「……」
一刀が私にそう答えるのを耳にしながら、私の目は夜空に咲く大輪の光の花に囚われ、飽きる事なくそれを見上げ続けていた。……そっと。一刀が私の肩を抱き、寄り添って来ていた事にも気がつかないほど。
「……なあ桂花」
「……え?あ、な、なに?」
「……来年も、こうして二人で、一緒に花火、見に来ような?」
「……うん」
「……もちろんそのためにも、明日からはまた、猛勉強だからな?」
「……あのねえ。せっかくいい雰囲気なのに、なんでそう水を差すようなこと言うかな、この男は?!」
ぐりりっ!!
「あだだっ!?ご、ごめんっ!いやけどさ」
「……まだ言う?」
「……帰ってからにします」
「よろしい♪」
少々涙目になった彼に、にっこり微笑んで勝ち誇る私。だってそうでしょう?せっかくのいい雰囲気を壊した一刀が、全面的に悪いんだから。
もちろん、彼に言われなくても、私だってその事は十分に承知している。大学検定に受かったからといっても、それはあくまで、大学を受験する資格を得た、というだけの話である。そう、本番はまだこれから。……残りの約半年で、私は一刀が受ける大学に、同時に入学出来なければいけないのだ。
もちろん、もっと時間をかけてゆっくり……次の受験まで勉強するって言う手も、あるにはあるわよ?でもその間に、大学で一刀に悪い虫がつかないとも限らないし。……もちろんその場合は、どんな手を使ってでも、絶対排除してやるけどね。フフフ。
……まあ、それはともかくとして。
「……一刀とちょっとでも一緒に居るためには、絶ッッッ対今度の受験で、一緒に合格しなくっちゃ」
「ん?何か言った?桂花」
「……なんでもない///」
花火の音でかき消されたのか、私の独り言は一刀に聞こえなかったようだ。まあ、そのほうが私も、恥ずかしい思いしなくていいんだけどさ。
夏はもうすぐ終わり。
そして、秋になり、冬を迎え、新しい年を一刀と迎えれば。いよいよ、大学受験のその本番に、私と一刀は臨む事になる。
どんな結果になるかは、もちろん今の時点では分かりはしない。
『人事を尽くして天命を待つ』
と言う言葉もあるとおり、今はただひたすら、自分に出来ることをやっていくだけ。
……華琳様。それから向こうに居るほかの皆。身勝手な願いなのは分かってます。皆を捨てて、只の女である事を選んだ私に、こんな事を言う資格は無いのかもしれない。
でも。
もし、こんな私を許してくれるのなら、もし、祝福をしてくれるのなら、どうか見守っていてください。
天の世界より、あの世界の仲間達へ。
もう二度と、おそらくは会う事のないであろう、親愛なる友人達へ。
暑中お見舞い、申し上げます。
〜荀文若〜
続く
というわけで。
今回の第二回恋姫同人祭り、最後の参加作品として、桂花EDアフターその七を、お送りしました。
一応、性格改変されているとはいえ、桂花は桂花だし、他にはオリキャラも出してないし、貂蝉もぶるあの方で出したので、無問題だとは思うんですが……。
とりあえず、祭りも本日八月二十三日をもって、一応の終了とはなるわけではありますが、恋姫の火はまだまだ消えはしませんとも。
ええ!消してなるものですか!
というわけで、今回最後の作品紹介をして、この場を閉めさせていただきます。
作品:『真・恋姫無双〜2人の飛将軍〜』
作者:cavalさん
恋並みの武を誇る一刀・・・・・・いいですよね、チートって♪(ぇw
今後もぜひ頑張って欲しいですw
では今回はここまで。
ではまた次回、北朝伝かツン√か、はたまたこれの続きか、いずれかの作品にてお会いしましょう。
であ♪ ノシ
説明 | ||
これが最後のお祭り参加作品です。 桂花の大学検定の合否は、はてさて・・・?www まあ、ぶっちゃけ言うまでもないと思いますけどね♪ それではご覧くださいませw |
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コメント | ||
続きが気になる(カワネコ) 続きがみたい(masahisa000) あー、この後木陰で青k(ry(通り(ry の七篠権兵衛) 2828さん、summonさん<あ、今は下着をつけるのが普通なんですか。いやあ、作者は本気で知りませんでしたwでも修正はしませんが(ぇw(狭乃 狼) 悪い虫が付くのはなのも一刀とは限らないぜ?(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) これが陵辱ゲーなら下着付けてないのを撮られて脅迫材料にされて・・・・・・フヒーヒW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) 確かに、現代は下着つけますよね…一刀さん、何してんだい…(summon) 一刀・・・現代では下着つけるの普通だろうが・・・・お前は衆人観衆に桂花を晒したいのかと・・・・(2828) これで桂花だけが受かって一刀は落ちてなんて事には……(峠崎丈二) この桂花は一刀が絡むと信頼度を100%にしてしまう気がするww(アロンアルファ) 桂花さん大検合格おめでとう。大学受験もこの調子で乗り越えろ!(mokiti1976-2010) |
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