GROW4 第十五章 天馬の翼(ペガサス・ウィング)
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「 天馬の翼(ペガサス・ウィング)!!!」

 バサァァァァッッ

 広げると五メートルを超える巨大な翼で空中を飛ぶ天馬。3mを超える巨体が、15mもの空中から俺を見降ろしている。

 吹き抜けになっている会場のため、空中戦もできるらしいのだが飛べない俺には意味がない。しかし、相手が飛んでるからといって“攻撃”できないわけでもない・・・

 

「はっははーん♪この高さのわたーしに攻撃できるかなーーん?」

「うっとおしい奴だ・・・

魔術の深淵たる我は、この力を最果てへと導かんものなり・・・」

 ボシュゥゥゥ

「ん?なんだあれは?」

 黒い光を上げて輝きだす俺の身体。闇とも違うそれは、フィールドを包むこともなく、敵を覆うこともなく、静かに俺だけを包みこんだ。

 

「あれは。あいつまさか、まさか・・・」

「黒の礎(ブラック・フェリアリトス)?何でおにーさんがあんな魔法を・・・」

 うろたえているな、親父たち。見てろ、いつまでも空気じゃないんだぜ俺も・・・

 

「見たこともない魔術だねん?でもわたーーしを落とせるかなん?神風乱れ刃(かみかぜみだれやいば)」

 バサァァァッッッ

 シュシュシュシュシュンンン

 

 ドドドドドドドッ

「バカな!?一歩も動かず避けたのかん!!」

 俺は無数に飛んでくる巨大な刃を、上半身の重心移動だけでかわす。単調な攻撃など、防御をする必要もない。 

「夷の宴(えみしのうたげ)・・・」

 ドウッ

「気の質が変わったん?まさか、貴様の術の本質は・・・」

 フワァッ

 ドシュッッ

「気づくのが一歩遅かったな、馬・・・」

 俺の身体は一瞬の実体を忘れ消え去る。その刹那、消えた肉体が天馬の身体を斬り裂いたのだ。15mの空中で・・・

「鋭い鬼悦(きえつ)だが、わたーーしの鋼の肉体を一撃で落とすまではいかないようねん。ましてや空中、避けられるかな?大太刀ち回り、激斬捨慟(げきざんしゃどう)!!」

「お前の攻撃に、避ける程度のものがあったか・・・はっ!!!」

 バギィィィィィン

 ガラガラガラガラ・・・

 

「気、だけで全部吹き飛ばしたの、ん?ありえない、ありえない、ありえない!!!貴様の父親ですら手こずらせた天馬の鋼鉄装を、触れることもなく弾き飛ばすなんて・・・」

「親父は親父だ・・・」

「ちっ。だがしかし、空中戦のできん貴様じゃ、わたーしを落とすことはできない」

「バカかお前。俺が地面に落ちるまでに生きてられると思ってるのか?おめでたいな・・・」

「何だとん!!」

 ガシィィィ

「は、はなせ!!」

 バキバキバキィィィ

「ぎゃぁぁぁぁっ!!鋼鉄の肉体だぞ!?」

 右手で天馬の左肩を攫む俺。簡単に天馬の肩は砕けてしまった。

 今まで使っていた気質とは違う。黒の礎とは、魔術の中で唯一、魔力ではなく気を媒体として用いる魔術だ。なのに発動時に出るのは魔力と変わった術なのだがな・・・

 気を魔力に変換して発動する術式。この術は気質によって大きく魔力の質も変わってくる。そしてこれが、そのひとつ。

 

「金鳥の魔消耗(ゴルディバサイドリアス・サネスティマルダソバ・マギカ)」

 ドシュゥゥ

「右手が黄金色に?わたーーしの魔力が無くなっていく!!や、やめろーーーー!!!」

 砕けた肩を介し、天馬から魔力を奪う術。更に、この魔術の怖ろしいところはここからだ・・・

「黒の翼(ダーク・ウイング)・・・」

「んな!?貴様に、翼が・・・」

 魔力の逆転換。自分の気を魔力に変えるのと同様に、相手の魔力を気に変換させられるのだ。

 しかも、付加能力の為、俺の気はどんどん増していく。

「貴様、わたーーしの力を利用したのん?それだけじゃない。奪った以上に気が溢れている」

「右の怖風(デクストラー・フランス・メギア・レディラドフェンス)」

 ドシュゥゥゥゥ

「ググゥ、化物め」

「無駄口を叩いていいのか?波動風雅(ベリリアーズ・セレシーアレス)」

 バキャァァァン

 ドドドドドド

 強力な風の爪が天馬を襲う。右翼が粉々になり、地面に落下した。

「終わりだな・・・」

 シュゥゥゥゥ

「なっ!?なぜ翼を納める。なぜ気を消す。勝負はまだついていないん!!」

 地面に降り立ち戦闘態勢を解く俺に対し、天馬は言う。

「俺は殺人鬼じゃない。既に戦意がないものを追いたてるようなガキ臭いマネはしない」

「なるほど。あのシグマーさんが一目置くのも納得がいく。わたーーしの負けみたいねん」

「どーも」

 

 「勝者、渡邊彰文」

「とりあえず一勝、か・・・」

 

 

 

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「次の試合、どっちも聖の連中だな。いったいどうなるんだ?」

 

 「しょ、勝者、不知火記憶」

「何!?」

 一瞬の出来事だった。試合の決着は・・・

 

 スタスタスタスタ・・・

「やぁ、こんにちは」

 こ、コイツ。不知火・・・

 

 

 身長160cmくらいでくせっ毛のロングへア。紅蓮に染まる髪は、風で揺れると火花を散らすが如くキラキラと光っている。服装はマリアの制服なのに、フードをかぶってないせいですごい違和感がある。

「どうしてもキミと戦いたくてね。瑞希には沈んでもらったよ。さて、と・・・」

 ドドドドドドドッ

 綺麗な気だ、この子・・・

「楽しみにしてるよ、“アキくん”・・・」

 ギラァァァァァッッッ

「まさか、アンタは?」

「すっごい剣幕だね。何年ぶりかな、アキくん?」

「こ、こんなとこで。名字まで変えて・・・

姉さん・・・」ボソッ

「ふふん♪またねっ」

 こんなところに姉さんがいた。

 ん?一年?おかしい。姉さんは俺の二つ上の筈・・・

「どうしたの?」

「なんで一年、何だ?」

「学費稼ぐのにいっぱいいっぱいで二年留年しちゃったwwまあ問題ないよね、ふふん♪」

「そうだ。姉さんは最強のバカだったのだ」

「声に出てるぞっ、バカ者っ!!」

「姉弟でのちちくりあいは終わりだよ。次の試合の邪魔だ」

「なに?このロリっ娘?」

「こんな腐れビッチがおにーさんの姉とはね。戦いたくないからぶちのめすんだよ、おにーさん」

「アキくん。5年もしない間に妹も造ってらしたのかな?お父さんは?」

「いや、その・・・」

「もう一人いるよ。あそこに・・・」

「なっ。あんな幼女がもう一人!?まさかアキくん?あの幼女も?」

「フフフ、サカッテイルネェニンゲン・・・」

「今度はなんだ?」

「ペガサスヲタオストハヤルナニンゲンノオトコ。ボクモハヤクヤリタイヨ」

 し、死神だ。次の試合に出場する死神がいた。 

 

 

 黒いローブに身を包み、左目のドグロの部分だけが割れて、どす黒い目が見えている。身長は130前後。エイミーさんと一緒くらいの身長だが、背中には2mを超す大鎌を背負っている。

「面白くなってきたじゃないアキくん。全部倒さないとね^^」

「俺は興味がないけどね・・・」

「ニンゲンヲクラウマエニジンガイノモノガアイテカ、カカカカカ」

「予選で戦えなかったんだ。おにーさんには勝ちあがってきてもらうよ」

 

「全く。あいつもいつからあんなになっちまいやがったんだろうな、アキ・・・」

 スタッ

「親父は知ってたのか?姉さんのこと・・・」

「帰ってきて早々それか。知らなかったよ」

「そうか・・・」

「留年してたなんてな・・・」

「そっちかぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

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 二回戦第十試合目が始まろうとしていた。

 まさかの人外同士の対決・・・

 てゆーか死神さんは人間じゃないのか?

 

「中尊寺学院に聖☆宜保交響団体。どう考えても怖ろしいサンド状態だね・・・」

「カカカカカ。チュウソンジモセイントモレキシアルガッコウダカレネ。ムメイノレンチュウニココマデシンコウサレルトハオモッテナカッタガナ、カカカカカ」

「死神喰らいが死神を名乗ってる時点でわたしはドン引きだけどね。君も丸くなったね、“死神の位”に落ち着くような奴じゃなかったんじゃないかい?」

「エイミーサン。ジツハセンジツキンシンガトケ、カンゼンフッカツシタノデスヨ。ボクノチカラワ」

「へー。それは良かったね。まともな試合ができそうじゃないか」

「ボクハシニガミクライ。シニガミデアリナガラシニガミデハナイモノ」

「9割死神じゃないか。残りは“堕天”の腐れだけどね」

「キミハオモシロイ。フェルティマトドウヨウ、“ジンガイ”ノレンチュウハ・・・」

「フフフ。始まる前からワクワクが止まんないね、勝たなきゃいけないのに・・・」

「カカカカカ・・・」

 

 「第二回戦第十試合、始め」

 

 

 

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 次回予告

 

 人中を超えたバトルが展開。

 死神の裏の力が明らかに。

 

 次回、GROW4 第十六章 死神(デス)

 

 ではでは

 

説明
姉様キターー
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GROW 天上天馬 渡邊彰文 不知火記憶 水面水希 死神 エイミー=エヴァンス まさかの ペガサス・ウィング ペガサス・ウィング 

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