たまにはお前から
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 もうどれくらい時間が経っただろうか。体感的には何時間も過ぎたような気がするが、案外そうでもないような気もする。

 ともかくそう思うくらい感覚が曖昧となるような沈黙が、ここ香霖堂を支配していた。

 薄暗い店内に動くものはない。と言っても誰もいないわけではない。

 店主であるこの僕、森近霖之助ともう一人、売り物の壷に座る少女が一人。霧雨魔理沙だ。

 昼前にやってきた魔理沙は最初の挨拶を交わした以降、一言も声を発していなかった。かく言う僕も、一切の言葉を紡いでいない。

 では何をしているのかといえば、僕は読みかけの本をただひたすら精読しようとしている。

 魔理沙は……何をするでもなく、ただじっと僕の方を見ているのだ。

 とても、非常にとても、居心地が悪い。

 想像してみて欲しい。特に何を言うでもない、何をするでもない、ただただひたすらにじっと見られ続ける様を。精神的になかなかきついものがある。

 何故こんなことをするのか? と言う疑問はあるようでない。と言うのも、こんな風になるのは初めてではなく、既に何度もあったことなのだ。

 最初の内は魔理沙に疑問をぶつけても見たが、「なんでもないぜ」とはぐらかすだけ。だからもう聞くことはしない。

 きっとこいつは試しているのだ。この状態の中、いつまで沈黙を守っていられるかを。

 いいだろう、それならば僕も受けて立つ。何せ日がな一日、本を読むだけで過ごすことも多い僕だ。沈黙を守ることくらいなんでもない。少しだけ悲しい事実が思い浮かぶがそこは流す。

 まったく、何が楽しくてこんなことをするんだ。こうも見つめられては本に集中することもできない。僕は精読に勤しみたいというのに。

 せめて客か、客じゃなくてもいいから誰か来てくれればこの沈黙を破ることも簡単だろうに、生憎誰も来るような気配もない。

 ちらりと魔理沙に視線を送ると、ニヤリと笑われた。くそぅ。

 

 それからどのくらい時間が流れただろう。夕日が差す頃になってついに僕は観念した。

 

「はぁ……僕の負けだよ魔理沙。降参だ」

 

 本を閉じ、手を上げて降参の意を示す。

 しかし魔理沙は黙ったまま近づいてくる。

 そばまで来ると、フフン、と聞こえてくるような顔で僕の顔を見てきた。

 

「……やれやれ」

 

 ため息混じりに苦笑いをして見せて、僕は彼女の頭に手を伸ばす。

 なでりなでり。

 

「うぇへへへ」

 

 ここで初めて魔理沙が声を出した。

 

「満足したかい?」

「いーやまだまだだぜ、もっとなでろ」

「はいはい……」

 

 気持ちよさそうな顔をして。

 呆れてしまうが、その顔についつい僕も顔が綻びそうになる。そんな顔を見せると何を言われるかわかったもんじゃないので必死に耐えるが。

 いつも僕が負けると魔理沙は頭を撫でろと催促をしてくる。いや、実際には口には出さないのだが、長い付き合いなせいかなんとなくそうだとわかってしまうのだ。

 撫でて欲しければ素直に言えばいいのに、恐らくそれは負けることになると思っているんだろう。負けず嫌いだからな。

 まったく仕方のない奴だ。

 

 

 

 今日も私の勝ちだ。だけど香霖はわかってない。

 誰が頭を撫でろなんて言ったんだ?

 きっとあいつは素直に言えばいいのにとか、負けず嫌いだとか思ってるんだぜ。負けず嫌いはあいつの方だと思うんだけどな。

 私はたまにはあいつの方から話しかけて欲しかっただけだぜ。いつも私から話しかけてばっかりだし。大体あいつは本ばっかり読み過ぎなんだよ。もっと私との会話を楽しめってんだ。

 まぁ、撫でて貰えるのは嬉しいから戦利品として頂くけどな。

 まったく仕方のない奴だぜ。

 

 

説明
短い魔理霖を目指して書いたら何も考えないで書くハメになった(´・ω・`)
とても残念な出来ですが少しでもにやにやしてもらえたなら幸いです。
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東方 魔理沙 霖之助 魔理霖 

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