真・恋姫†無双〜天兵伝〜 第4話
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徐福は自室にいた。

 

 

鼻歌交じりに身支度を整え、鏡で身だしなみを確認している。

 

 

 

「・・・・よし!」

 

 

 

彼女に表情は明るい。まるで、これから起こることを楽しみにしているかのようだ。

 

 

数冊の本が入ったカバンを肩から斜めに引っさげ、数本の短剣を腰に差し込む。

 

 

 

「(北郷殿は『天の御使い』である可能性は高い。 その仮説も立てた。 あとは本人次第・・・・・)」

 

 

 

目的は北郷一刀と『天の御使い』の関連を立証すること。

 

 

 

「・・・・・『天の御使い』ならば、この乱れた世の中を変えてくれる」

 

 

 

そう呟いた彼女は、勢いよく部屋を飛び出した。

 

 

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墜落から40時間以上が経過した。

 

 

状況は芳しくない。

 

 

今に至るまで、救援はおろか友軍と連絡すらとれなかった。

 

 

 

「なんで救助が来ねぇんだ・・・・・」

 

 

 

一刀は退屈そうに、パイロットの血痕がまだ残るコクピット内の座席に腰を下ろしていた。

 

 

暇つぶしに積載物の一覧が記された書類を手に取り、鬱々とした表情で眺める。

 

 

一覧表には多種多様な武器弾薬の名前がズラリと並んでおり、それぞれに番号が振り分けられている。例えば『C−32:〜12.7o×99 NATO』と記されていた場合、『C−32』と記された箱の中身は12.7o×99弾である。つまり、どの箱に何があるのかが一目でわかるというわけだ。

 

 

「こんだけ弾薬があるってのは・・・・不幸中の幸いだな」

 

 

 

救助の見込みがない現状下では、弾薬や銃器といった戦闘用品は重要だ。

 

 

弾数が多ければ、それだけ長期的な戦闘、つまり継戦維持能力が高くなる。

 

 

それに銃器の種類が多ければ、あらゆる局面に対応できる。 ショットガンがあれば屋内戦闘を有利に展開できるし、スナイパーライフルがあれば長距離狙撃が可能になる。

 

 

 

一刀は書類をダッシュボードに放り投げ、機内で入手した未開封のペットボトルに手を伸ばした。

 

 

フタを回転させると、パキパキッと音が鳴る。周りが静寂なためか、その音はコクピットの全体に響いている気がした。蓋を開けると、間髪入れずに口をつけた。

 

 

口内に流れ込んでくるのは、ぬるくて味気のない水。冷めたい水だったなら良かったのだが、そんな贅沢は言ってられない。この状況下では、水があること自体が『ありがたい』といえる。

 

 

コクッという音とともに、口に含んだごく少量の水を喉に通した。余計な水分は摂取せず、常に最低限の量を摂取する。

 

 

ペットボトルを口から離し、フタをしっかり閉める。その後のペットボトルは、書類と同様の運命を辿った。

 

 

 

一刀は席にもたれて目を閉じる。

 

 

眠いわけではない。ただ、こうすると幾分か落ち着くことができるのだ。何も考えずにいる時間が、一刀に安らぎを与えてくれる。

 

 

 

ただ、五感はしっかりと研ぎ澄ましたままでいる。

 

 

だからこそ、遠くから聞こえる音を捉えることができた。

 

 

靴と茂る草とが擦れ合う音が、先程から聞こえていることも捕捉済みだ。

 

 

 

「(・・・・・森の道からここは見えない。 通行人ならヘリに気づくこともなく通過するはずだ)」

 

 

 

逆を言えば、ここから道は見えない。だが足音が聞こえるということは、対象との距離はさほど遠くない。

 

 

靴の種類にもよるだろうが、距離からしてせいぜい十メートル以内だろう。

 

 

 

一刀はホルスターから『シグザウエル P229』を抜き出し、破損したコクピットのキャノピーに銃口を向け、安全装置を外した。

 

 

座席に座ったままでは急な行動ができないので、膝立ちの姿勢で銃を構える。

 

 

半ば掩体壕と化したコクピット内で待機すること数十秒。

 

 

足音の主が姿を見せた。

 

 

 

 

 

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「北郷殿ー。いらっしゃいますかー?」

 

 

 

 

姿を見せたのは、明るい朱色のショートヘアが特徴的な少女。

 

 

 

「(・・・・。)」

 

 

「北郷殿ー?」

 

 

 

呼ばれているにもかかわらず、一刀は動こうとしない。射撃姿勢は崩さずに、徐福ではなく周囲に意識を集中する。

 

 

人間は本能的に、より目立つものを見る。 音も大きな方を捉える。その間、視界は狭まるうえ、意識も一方向にしか向かなくなる。

 

 

つまり、全体に対する警戒度は低下する。

 

 

だからこそ、一刀はあえて徐福ではなく周囲を警戒した。

 

 

他に誰かいないか?

 

物音は聞こえないか?

 

話し声はどうだ?

 

 

 

わずかな変化すら見逃すまいと、周辺を観察する。

 

 

 

そして、引き金に人差し指をかけた。

 

 

 

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徐福はキョロキョロと周囲を見回したが、目的の人物の姿はなかった。

 

 

 

「北郷殿ー?」

 

 

 

呼びかけてみても、返事はない。

 

 

 

「(いないのかな・・・・・?)」

 

 

 

残念そうにため息をついた徐福は、眼前にそびえる巨大な鉄塊に目をやった。

 

 

灰色のそれの上部には長くて大きな羽のようなものが七枚、円を描くようにして並んでいる。

 

 

 

「(とても自然のものとは思えない。でも、人間が作れるようなものでもない。 でも、だからこそ――――)」

 

 

 

徐福はヘリを見て、何か確信を得たかのようにウンと頷く。

 

 

 

「なに一人で自信満々そうに頷いてんだ?」

 

 

「ふぇ!? ほ、北郷殿!?」

 

 

 

 

 

「ほんごー? 誰だそりゃ???」

 

 

 

声の主は、彼女の背後に立っていた。

 

 

人数は二十以上。その全員が何かしらの武器を携えている。

 

 

この集団の頭と思わしき男が、ニヤリとした表情で徐福に問いかけてきたのだ。

 

 

 

「俺たちの仲間の亡骸が打ち捨てられててなぁ、その下手人探しをやってんだが、何か知らないか?」

 

 

 

『俺たちの仲間が亡骸になった』。おそらく自分を輪姦しようとした三人組のことだろう。

 

 

徐福は半身になって、右半身を隠すような体勢をとった。

 

 

 

「知りませんね」

 

 

「そうかい。 そんじゃ――――」

 

 

「・・・・なんですか?」

 

 

 

下劣な笑みを浮かべた男たちが、徐福に歩み寄る。

 

 

 

「『本業』をするまでだ」

 

 

 

一人の賊が、右手に持った直剣を徐福の鼻先に突きつける。

 

 

 

「へへ・・・・動くんじゃねぇぞ」

 

 

 

賊は静止を促すと、縄を持ってくるよう仲間に声をかける。

 

 

そのわずかな一瞬、賊の視界から徐福が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女が無抵抗だと思ったら大間違いです」

 

 

 

前に出た、徐福の右半身。

 

 

大きく振り上がった徐福の右腕。

 

 

 

 

そして、賊の頭部側面に突き刺さった短剣。

 

 

 

 

 

「嬢ちゃんテメェ・・・・・とんでもねぇ事してくれたなぁオイ!!!」

 

 

「本当に、とんでもない事をしてしまいました。 北郷殿が帰ってくる前に片付けないと、変な誤解を招きかねませんよ」

 

 

 

いつの間にか、徐福は両手に白く輝く短剣を手にしていた。

 

 

誰が見てもわかる。彼女は戦うつもりだ。

 

 

 

「・・・・・売り物にすりゃ高値が付くくらいの逸物だと思ったが、もういい。野郎ども、殺しちまえ!!」

 

 

 

賊たちが一斉に駆け出したと同時に、徐福も駆け出した。

 

 

両手の短剣を勢いよく投げ、足元に転がっている賊の死体から一投目の短剣を抜き取る。

 

 

 

「(数が足りない・・・・!!)」

 

 

 

腰に差してある短剣は残り一本。徐福はそれを抜き取り、逆手に持つ。

 

 

 

「(格闘戦は苦手だけど、仕方ない)」

 

 

 

徐福は賊の一人に向かって駆け出した。

 

 

 

「死ねやぁああああ!!」

 

 

 

勢い良く降りおろされた賊の剣をひらりと躱し、返し気味に賊の頸を掻き斬った。

 

 

 

「が、ぅ・・・」

 

 

 

頸部から血を噴き出したまま、賊は崩れ落ちる。

 

 

その間に、徐福はさらにもう一人の賊の心臓に短剣を突き刺していた。そして突き刺した短剣を引き抜き、次の標的を決定して斬りかかっていく。

 

 

だが、賊の集団も黙っていない。

 

 

 

「弩弓で遠距離から撃ち殺せぇ!!」

 

 

 

木々の間から、数人の賊が姿を現した。 弩を構えて、動き回る徐福に狙いを定めていく。

 

 

 

「(まずいっ!!)」

 

 

 

徐福は舌打ちをすると、左手の短剣を投擲して弩を構えている賊の一人を倒す。

 

 

だが、まだ弩を構えている賊は何人かいる。

 

 

また死体に突き刺さったままの短剣を回収しようとした。

 

 

その時である。

 

 

 

 

 

 

 

《パゥ!! パゥン・・・・・!!》

 

 

 

とつぜん鳴り響いた炸裂音。

 

 

それに呼応するかのように倒れた2人の賊。そのどちらも、胸から血を吹き出して絶命していた。

 

 

これには賊も徐福も動きを止めてしまう。

 

 

そんな中、一人の男の陽気な声が現場に響く。

 

 

 

「徐福、こっち来い」

 

 

「ほ、北郷殿!?」

 

 

 

一刀の声にいち早く反応した徐福。

 

 

声のした方を向くと、一刀がヘリの右側面ドアから頭と右腕を晒していた。

 

 

その右腕の先には、銃口から煙を吐き出すP229が。

 

 

 

「いらっしゃったんですか!?」

 

 

「いいから早く乗れ。 援護する」

 

 

 

一刀はそう言って、射撃を再開する。

 

 

弩を持つ賊を全員撃ち殺すあいだに、徐福はヘリに駆け込む。

 

 

一方、賊集団は一刀の銃撃に混乱し、徐福に構う暇などなかった。

 

 

 

 

「な、なんだアイツぁ!?」

 

 

「お頭、木の裏に隠れてた連中が全―――――《パゥン!!》――――――ガッ!?」

 

 

「おい、おい!! どうした!?」

 

 

「お頭ぁ! あの女、変な建物みてぇなのに入りやがった!!」

 

 

 

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「北郷殿! 居たならどうして最初から助けてくれなかったんですか!?」

 

 

「おかげで良いモンが見れたよ。 前のアレはわざと襲われたのか?」

 

 

「質問を質問で返さないで!!」

 

 

 

一刀はマガジンを交換し、キャノピー越しに射撃を続ける。

 

 

 

「徐福、楽しいおしゃべりは後回しにしよう。 こないだ見せた銃がどっかその辺にあるはずだ。 持ってきてくれ」

 

 

「え!? え、えっと・・・・コレですか?」

 

 

 

徐福は計器盤の上に横たわる物体に見覚えがあったので、反射的に手に取った。

 

 

確認のためにそれを一刀に見せようとダッシュボードの上に置くと、「いい子だ」と一刀が呟いた。

 

 

 

「あと三人」

 

 

 

そう言うと一刀はダッシュボードに置かれたM4カービンライフルの改良モデル、『HK 417』に持ち替える。

 

 

弾倉が装填済みのHK 417にはダットサイト(無倍率の光学照準器)と4倍率ブースター(拡大鏡)が取り付けられていた。一刀はまずワンタッチでブースターを取り外し、次にダットサイトのレンズカバーを外す。

 

 

そして安全装置を外し、素早くサイティングをして引き金を引いた。

 

 

放たれた7.62mm NATO弾が、一直線に賊の身体を貫いてゆく。

 

 

 

 

一刀が賊が全滅させるまで、徐福は銃声のやかましい音に顔をしかめることしかできなかった。

 

 

 

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「周辺を探ったが、他に誰もいなかった」

 

 

「そうですか。 またお世話になっちゃいましたね」

 

 

 

周辺索敵を終えた一刀がヘリに戻ってきた。

 

 

一方、徐福は機外に腰を下ろし、回収した短剣の手入れをしている最中だった。一刀の索敵中、機内の物に手を触れるようなことはしなかった。興味こそあったが、それでも他人に私物を触られるのは誰だって嫌に決まっていると思ったからだ。

 

 

 

「それにしても、お前にあんな格闘技能があったとは思わなかったよ」

 

 

「・・・・・小さい頃から撃剣術を学んでたんです。 もっとも、学問の道を選ぶようになってからは稽古もしてなかったですけど」

 

 

 

撃剣術も殺人術の一つ。 人を殺す技を身に付けた挙句の果てに、何度も実戦を経験してきたのだろう。

 

 

『人を殺す』という行為には、尋常ならざる精神的負担が伴う。 耐え切れずに自殺する者もいるほどの重さともいわれる。

 

 

 

「なんで『三人組に襲われたとき』は何もできなかった?」

 

 

「短剣を持っていなかったからです。 徒手空拳などは心得ていませんでしたので」

 

 

「なるほどね」

 

 

 

彼女は演技をしていたわけじゃない。

 

 

実戦を重ねていくうちに鍛え上げられた『精神力』と装備の不備が生み出した『違和感』を、一刀がシビアに感じ取っただけだった。

 

 

 

 

 

一刀はコクピットに乗り込み、携行していたHK 417を近くの壁に立て掛けた。 もちろん安全装置はかかっている状態で、戦闘中は取り外していたブースターも設置済みだ。

 

 

徐福も短剣の手入れを終え、その全てを腰に差していった。

 

 

 

「次は私が質問する番です。 どうして北郷殿はずっとあの中に居られたのですか?」

 

 

「お前と連中の関係が知りたかった。 仲間なのか、敵なのか。 一緒に来たのか、偶然会っただけか。 そういうのをハッキリさせるためさ」

 

 

「疑ってたんですか?」

 

 

「そうだ。 お前がどっかの組織とツルんで、仲間と一緒に俺を狩りに来た場合を想定して行動したんだ。 ノコノコ出迎えて殺されてみろ、マヌケにも程があるってもんだ」

 

 

 

一刀はヘリから降り、徐福の右隣に腰を下ろした。

 

 

二人の距離は数メートルほど。徐福の顔は一刀に向いているが、一刀自信は徐福に顔を向けずに前を見ている。

 

 

 

 

「つか、そもそも徐福は俺に何の用があってここに来たんだ?」

 

 

「あ、そうでした!!」

 

 

 

徐福は慌てて肩にかけていた鞄を開けた。

 

 

返り血で汚れたカバンの中から書物を取り出し、パラパラとめくり出した。

 

 

 

「なんだそりゃ。本か?」

 

 

「『筆記長』です。 私が今までに学んだこと・考えたことを書き記した、いわば『私が今までに学んだことを凝縮した書』です」

 

 

「それを俺に見せるために?」

 

 

「ええ・・・・・あ、見つけた! 北郷殿、ここを見てください」

 

 

 

徐福が示したページをのぞき込む一刀だったが、『漢字のような文字』のみで構成された未知の文章に、首を傾げることしかできなかった。

 

 

 

「(中国語・・・・・にしちゃ使われている文字に差異があるな)」

 

 

「読めませんか?」

 

 

「ああ」

 

 

 

「そうですか。 では説明します。 この文章は、今から三月ほど前に書いたものです。内容は『天の御使い』について」

 

 

 

 

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天の御使い。

 

 

それは、流星と共に天より降り立つ者。

 

 

天の御使いは乱世を終結させ、この世に平穏をもたらす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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徐福から『天の御使い』についての説明を受けた一刀だったが、その表情は無表情で、反応もドライだった。

 

 

 

「御使いねぇ・・・・」

 

 

「で、私考えたんです。 天の御使いって、もしかしたら北郷殿のことなんじゃないかって」

 

 

「ほぉ・・・・根拠は?」

 

 

 

徐福が自信ありげに、ニッコリと笑みを受かべる。

 

 

 

「北郷殿がいた国を『天』、その大きな鉄塊を『流星の残骸』としたら、北郷殿は『天の御使い』ですよね?」

 

 

 

すると突然、一刀は声を上げて豪快に笑い出した。

 

 

 

「ハッハッハ!! 俺が『天から来た御使い』か!!! こりゃケッサクだ!!!」

 

 

「え、おかしいですか!?」

 

 

 

「同僚に聞かせてやりてぇ!」と、腹を抱えて大爆笑する一刀。

 

 

それに対して徐福は、自信のある仮説をこうも笑われてしまったために顔を赤く染めてしまっていた。

 

 

 

「あー・・・・なんか涙出てきた。 今年いちばん笑った気がする」

 

 

「これでも一所懸命に考えたんですよ!? そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!!」

 

 

「そんなの考えるより、口笛の練習をする方がよっぽど有意義だと思うぜ?」

 

 

「と、とにかく! この『天の御使い』の噂を信じている人々が幾千幾万もいるんですっ。そして、皆が『御使い』様の救済を望んでいます」

 

 

「へぇ」

 

 

 

さっきまで大爆笑していたとは思えない、一刀のあまりにも素っ気ない返事に、徐福は少しだけ不機嫌そうな表情になった。

 

 

 

「・・・・興味、なさそうですね」

 

 

「そうだな、だからどーした?って話だ。 俺が言えるのは、俺は『天の御使い』なんかじゃねぇってことだけだよ」

 

 

「でも! 北郷殿がこの国とは全く異なる技術を知っておられます! 全国の民が望む『天の御使い』に、貴方は名乗る資格があるんですよ!? 救世主になれる機会なんですよ!?」

 

 

 

徐福の言葉に熱を感じる。

 

 

彼女の様子に違和感すら覚える。

 

 

まるで何かを望んでいるようだ。

 

 

 

「・・・・俺に、『天の御使い』になれと言いたいのか?」

 

 

「この乱世を終結させるには、貴方の力が必要なんです!!」

 

 

 

力のこもった声だった。

 

 

それほどまでに彼女はこの国を憂いているのか。

 

 

 

「軍は?」

 

 

「国の軍隊はとっくに治安維持活動に従事しています。 でも、肝心の国の中枢や軍自体がが非行に・・・・・」

 

 

「だったら時を待て。 そのうち誰かが何かしらの行動を起こすだろうさ。 それが反政府運動や革命につながった場合、アンタも参加すりゃいい」

 

 

「その『誰か』を北郷殿が担ってほしいんです!!」

 

 

 

 

想いを抱く少女の眼が、一刀を捉えて離さない。

 

 

それに対して一刀はほんの数秒だけ間を置いてから、ひとつの決断を下した。

 

 

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「俺は部隊との合流を目指す。 それが最優先だ」

 

 

「そ、そんな・・・・・」

 

 

「そして上司に不明勢力との戦闘を報告、ここを『作戦区域』か『調査区域』に組み込んでもらう。 そうすりゃ任務部隊が来てくれるだろう」

 

 

「・・・・・え?」

 

 

 

不安げな徐福の表情が、徐々に変わっていく。

 

 

 

「現地の協力者として、お前を紹介する。 俺の合流部隊がお前の味方になるんだ。 もしそれが不可能となった場合は、俺が協力する。 どうだ?」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

 

徐福は飛び跳ねて喜んだ。

 

 

本を抱きかかえ、何回も何回もピョンピョン跳びまわる。

 

 

 

「ありがとうございます!! ありがとうございますっ!!!」

 

 

 

その様子を見て、一刀は思わず微笑んだ。

 

 

 

「よし、話は決まった。 これからお前はウチの部隊の現地協力者とする」

 

 

「はいっ!!!」

 

 

 

満面の笑みで返事をする徐福だったが、彼女は知らない所で一つの失態を犯してしまっていた。

 

 

 

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「聞いた? あの森に、天の御使いがいるんだって」

 

 

「嘘!?」

 

 

「だって、元直ちゃんが先生に――――」

 

 

 

 

女学院で生まれた、『一つの噂』。

 

 

 

「おや、いらっしゃい」

 

 

「店主さん、天文の書物ありますか!?」

 

 

「あるにはあるが・・・・・そんなに血相を変えてどうしたんだい?」

 

 

「天の御使いがこの近くにいるって噂が――――」

 

 

 

噂は、まるで蜘蛛の巣のように広がっていく。

 

 

あらゆる人たちの耳に届く中、とうとう一人の人物にまで行き着いた。

 

 

 

「天の御使いがこの荊州に降り立ったのであらば、早急に手を打つべきです」

 

 

「他の連中が動き出す前に、何としてでも確保せねばならん」

 

 

「荊州を平定したばかりでお疲れとは思いますが、どうか出立を!!」

 

 

 

「・・・・・・わ、わかりました」

 

 

 

噂の域を出ない話に、行動を起こす者たち。

 

 

 

「劉表様がご出立なさる。 速やかに準備をしろ」

 

 

「「「「はっ!!!」」」」

 

 

 

 

徐福の小さな失態は、半月をかけて一刀に帰ってくることとなる。

 

説明
勉強の息抜きみたいな感覚で書いていこうと思うので、読者様も暇つぶし程度に読んでくれればと思います。

今回から後書きナシです。やっぱ慣れないことはしない方がいいですんですかね。

コメントを頂いた方々にはこの場でお礼をさせていただきます。 ありがとうございました!
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コメント
この先一体どうなることやら・・・、次回も楽しみに待ってます。(ryou)
ロケランやグレネード、毒ガス弾(ガスマスク装備、ドン・クリークのMH5みたいなの)があれば楽勝ですね!W問題はどうやら無限バンダナみたいなのが無いからいつ弾薬が無くなるかですよね、無くなった途端一刀雑魚になる(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
あららwww(patishin)
あららww この世界の一刀は目立つ事、嫌いそうやのにww(IFZ)
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