ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 #final 真相 |
<ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 最終話 真相>
(3日目・午後6:30付近・ミクの部屋)
ミク:やっと、全て解けたわ。早くみんなを集めなくちゃ
ミクは室内電話からスタッフルームに電話をかけた。
レン:はい、レンです。なんでしょうか?
ミク:レンさんですか? ミクです。ちょうど良かったです。例の件、最後まで謎が解けました。すぐに関係者全員を談話室に集めて頂けますか? 真相の発表をしたいんです
レン:それなら、資料を全部持って、すぐに談話室へ向かって下さい! しびれを斬らせたメイコさんが私たち以外の関係者全員を集めて、あなたをどうするか会議してます! 任を降ろされたら、もうおしまいです!
ミク:え!! い、急いで向かいます!!!
レン:私もすぐに行きます!
事態は一刻を争っていた。ミクは本物の遺言状などが入ったA4ファイル等の全資料をかき集めて鞄に入れ、そのままの格好で談話室に向かった。
(談話室)
談話室にはレンとミク以外の関係者全員がいて、ホワイトボードにはなにやら色々書き込まれていた。
メイコ:では、皆さん、話し合いの結果と当旅館の事情により、ミクさんには遺言状の解明をあきらめて貰う事にしますが、宜しいですか?
ミリアム:でもメイコさん、今日もミクさん、うちにお団子を食べに来てましたが、何かがわかったみたいでお団子を持ってすぐに帰っていきましたが?
メイコ:時間がかかりすぎです! いくら難解だからって、たった1枚で三日かかっても解明できないのでは、当旅館の事情を鑑みても遅すぎます!。また他をあたるか、当旅館のスタッフ代表1名に必死で頑張って貰うか、そうしたいのですよ
ミリアム:しかし・・・・
???:待って下さい! 今から説明致します!
ミリアム:ミクさん!
メイコ:わからないからって、テキトーな事言って誤魔化そうなんて事では、ないでしょうね?
???:ミクさんの発表の信憑性は私が保証します。ミクさんは完璧に謎を解きました
メイコ:レン! 本当なのね!? 解りました、あなたの名にかけて、これから発表して貰うことにしますよ? いいですか?
レン:はい。私の名にかけてもらって構いません
メイコ:一応言っておきますが、これからのあなたの発表結果は、とてつもなく重要な事ですから、そのつもりで
ミク:はい。解ってます
メイコは一番最初にミクに見せた木箱を持ってきて、紐を解いて中を開けた。中にはあの(偽物の)遺言状が入っていた。
メイコ:発表内容に虚偽がないように、皆さんにも出来る範囲で原本との照合を行って頂きます。いいですか?
メイコ以外の全員が頷いた。
メイコ:わかりました。じゃ、ミクさん、お願いします
ミク:はい
遂にラストバトルが始まった。
(談話室・結果発表)
ミク:まずこの遺言状の意味不明の文章部分は“暗号”でした。それを解くトリック部分が、その上の2つの文章、『いつもは右から左へ眺めていたが、今日は、左から右へ大地を眺めてみる。“花 又や 朝 変わらん”』、『いつもは上から下に目線を動かすが、今日は下から上へ空を見上げてみる。“青い上”だ』です
メイコ:・・・原本の記載と同じね。続けて下さい
ミク:そして2つを繋げる謎解明のキーが“ひらがな50音表”でした
ミクはミリアムの店で買ってきた“ひらがな50音表パズル”を取り出した。これは既に完成されているものだった。
ミク:“いつもは右から左へ“というのは、このあ段の部分を切り取った箇所を右から左に読んでみて下さい。私たちが学校で習った、”あかさたなはまやらわん“、この事です。その裏付けは、”今日は左から右へ“の部分で読んでいる箇所“花 又や 朝 変わらん”の読み仮名からわかります
ミクはホワイトボードに“あかさたなはまやらわん”と書き、その下に“はなまたやあさかわらん”と書いた。
ミク:見てお解りの通り、1:1対応です。つまりこれは『あ段がコレと同じようになるように、行を入れ替えろ“と言うことです。これからそれを実践します
ミクはメモに書かれたとおりの順序に、50音表パズルを入れ替えた。
ミク:同じく、2行目も入れ替えのトリックがありました。『あ行を下から上に読んで、“あおいうえ”となるように、段を入れ替えよ』ということでした。するとこうなります
同じく、ミクはメモに書いた“暗号解析50音表”の通りに、ピースを入れ替えた。
ミク:これが下の文章の“ひらがな暗号文字を入れ替える解析50音表”となります
メイコ:・・・・・・なるほど。そういうトリックだったのね(やるわね・・・)
ミク:有り難う御座います(あなたが作ったものなのに・・・さすがメイコさん・・・動揺すらしない・・・)
ミクは、原本から写し取ったメモを出した。
ミク:これから、この意味不明の文章部分のひらがなだけを、この暗号解析表を使って解読します。時間がかかりますが、見ていて下さい
メイコ:ちょっと待って、その部分の確認はさせて貰うわよ
ミク:お願いします
メイコはメモの文章と原本の文章を1個1個確認していった。
メイコ:間違いないわね。じゃあ解析お願いします
ミクは1こ1こ、どれがどれで、という風に説明して、ホワイトボードに書き込んでいった。
(30分後)
ミクはホワイトボードの文字をペンで差した。
ミク:これがひらがなだけの解析結果です。見事にひらがなは全部変換できました。しかし、これだけではまだ不十分です。“カタカナ部分”の解析が終わってないです。そこで元の暗号部分を見てみます。カタカナは全て“2文字+濁点”で構成されてます。そして、全部ピックアップして2文字の後ろを見ると、ア行の文字だけになっています
ミクはメモに書いてあったピックアップした文字をホワイトボードに書き写し、後ろの文字全部を囲んだ。
ミク:そして前の文字の事も考えると、ある法則が浮き彫りになってきます。その法則とは、この変換50音表を使って“変換出来なかった”ひらがな文字の部分に相当しているのです。つまりカタカナの2文字は、この50音表の“X軸Y軸”を表してます
メイコ:X軸、Y軸?
ミク:つまり前の文字は横、X軸、つまり行の文字の事、後ろの文字は縦、Y軸、つまり段の文字の事を表してます。この座標の交わる文字が、その部分に入れる変換文字となります。濁点はあるならその変換文字に付けることになります
メイコ:なるほど、2段構えのトリックだったということね(くっ・・・)
ミク:はい。それを踏まえて1個1個変換していくと、全てのひらがな変換文章が完成します
ミクは1個1個変換の説明をしながら、ホワイトボードのカタカナ部分を消していき、そこに変換文字を入れていった。
ミク:これが結果として出来上がったひらがな文章です。これを私たちが知っている漢字などに変換すると、この文章が完成します
ミクはメモに書いてあった、漢字変換後の完成文章を書き写した。
ミクとレン以外全員が歓声を上げた。
メイコ:凄い! これでやっとこ安心して眠れます! ではこれを書き写して、財産分与の手続きに入りま・・・
ミク:待って下さい! まだ終わりではないです
メイコ:え!? だってしっかりした文章が出来上がったじゃないの!?
ミク:そう、“しっかりしすぎている”事に気づきませんか?
メイコ:だって、ちゃんとした遺言じゃないですか! 日本語で説明された通り、関係者全員に行き届いた財産分与だし、なにか問題でもあるの!?
ミク:この内容なら“暗号で隠し、解けるまでお預け”にする必要ないんじゃないですか? 普通の日本語で書けばいいことです
メイコ:あなたは“暗号を解く”ためにここにいるんです。それ以上の詮索をする必要はありません!
ミク:この書面、そのものも一種の暗号、つまり“謎”に含まれる事でしたら。私の仕事はまだ終わらないことになります
メイコ:謎!? まさかとは思うけど、この遺言状が・・・例えば“偽物”だとでもいうの!? いくら何でも失言が過ぎると思いますよ!?
レン:メイコさん・・・・私の方から、もう伝えちゃったんですよ。私が知っている真相を・・・・もうあきらめましょうよ
メイコ:な!!!! 何を言うの!! 真相も何も・・・・
レン:皆さん、本当に申し訳ありませんでした。“この遺言状”は、メイコさんが作った偽物です。そして、この“遺言状の解明”はミクさんのような第三者か、謎を知っている私が解く役割を担っていた、“私とメイコさんのシナリオ“だったのです
メイコ:!!!! 嘘よ! 何を証拠に言っているの! レン! あなた、そんなでっち上げ話作って! “あなたの名にかけて“って言った以上、ちゃんと証明出来なかったらどうなるか、わかっているの!?
レン:その意見ももっともです。だからミクさんに“本物の遺言状”を貸したんです。そうですね? ミクさん?
ミク:そうです。これが“本物の遺言状”です
ミクはA4ファイルから1枚の借りていた本物の遺言状を取り出した。
ミリアム:な・・遺言状が・・・二つ!
レオン:おいおい・・・じょーだんがきついぜ・・・
プリマ:アイヤー、こりゃ一大事アル!
メイコは真っ赤になって心で憤慨していた。しかし、言葉に力を込めて、出来るだけ丁寧に言葉を吐き出すことにした。
メイコ:ミクさんにレン・・・。百歩譲って“本物の遺言状”とやらがあるとしましょう。でもその内容に問題があった場合、つまりそれが“偽物の遺言状”だった場合には、それ相応の事を二人にやって貰いますよ。もう、これは冗談では済まされない事ですからね
レン:覚悟の上です
ミク:受けて立ちますよ
(本物の遺言状の解析)
レンが隣に来て、既に書き写されたホワイトボードの内容を消し、本物の遺言状の書面を書き写した。
レン:メイコさん、こっちに来て下さい。この書面と書き写した書面の照合をお願いします
メイコ:イヤだけど、仕方ないわね、やりますよ
メイコもレンの隣に来て照合を行った。
メイコ:間違いないわ
ミク:では、これから解析していきます
ミクの最後の解析が始まった。
ミク:まず暗号文以外で、この遺言状で書かれている、望日郎おじいさんの意図は2つです。さっきの遺言状と同じように、解るまで財産分与を一切行わない事。でも、もう1つが違います。『是非とも私の最後の遊戯につきあって欲しい』、つまり、“暗号文”にしたのは隠したいからとか内容がどうのこうのではなく、単なる“遊び”だったんです。おじいさんは軍の暗号解読担当であり、パズル好き、という情報からも合致します
メイコ:・・・・・
ミク:それを踏まえて暗号文の上の2文を見ると、『横に広がる48の山々、“色は緑”』、『縦にそびえるは、“五重塔”、その数11基也』とあります。でも先ほどとはトリックの種類が違います。この暗号文では矢印が4種類あります。上下で2つ、左右で2つ。つまり横向きと縦向きって事です
メイコ:・・・・・
ミク:それを考えると、上の文のトリックは、横向きの矢印が右に付いているものは上の法則に従い、縦向きの矢印が右に付いているものは下の法則に従う、事を意味します。そして上の48の数字、“色は緑”とは、48文字で『いろは・みどり』、つまり“いろは順48文字”の事を意味してました
メイコ:・・・・・
レン:(メイコさん・・・・・・)
ミク:同じように下の文章の、五重塔、11基とは、またもやこのひらがな50音表の事だったです。このパズルを使うとわかりやすいです。“五重”の段が縦に並んでいて、11行ありますよね。縦の場合、これを使う事なんです
ミリアム:なるほどね。私のお店の知育玩具とお団子が役にたったのって、これの事だったのね
ミク:これを元にして下の暗号文を解析します。でもその前に1文字の暗号文字構成を見ていきます。例えば“小”の文字や濁点まで入れた一番長い構成を考えると、文字の前後を解析すると、『ひらがな1文字+矢印+濁点か“小”』って事になります。ちなみに“小”というのは、もうお解りの通り、“小文字”って意味です。では、解析を始めます
ミクは1個1個、レンがホワイトボードに書いておいた“いろは順”と“ひらがな50音表”と照らし合わせて、解析ひらがなを横に書いていった。
ミク:そして、これを私たちが知っている漢字などに変換すると、このような文章になります
ミクはホワイトボードにメモに書いてあった、漢字変換文章を書き写した。
***
未来の優れた人材を
育成するため
以下のように私の財産を
分与する
勉学や技術向上のために
大切に使って欲しい
鏡音蓮に 1/5
鏡音鈴に 1/5
巡音瑠香に 1/10
温泉郷の小学校に
1/10
(各学校に均等に分ける事)
***
メイコは顔を真っ赤にして腕をわなわなさせて打ち震えていた。目線もホワイトボードに向かっていなかった。
ミク:つまり本物の遺言状によると、望日郎おじいさんは、自分の財産を子供などの勉学や技術の向上など、“人材育成”のために使う、という意志を表していたことになります
アン:アリャー、学歩さんと海斗さんの名前、本物にはないんですね・・・ドンマイ!
学歩:仕方あるまい。親族じゃないし、年が年だ
海斗:右に同じ。それに“子供”って年齢じゃないしね。ルカさんは二十歳でギリギリって所だったのかな
ミリアム:まぁ私たち温泉街の人は元々あてにしてないしね。小学校に寄付してくれるだけでも御の字よ
ローラ:・・・・でも、この文面、おかしいわよね
メイコは思い出したのか激怒寸前で、体を小刻みに揺らしてワナワナしていた。
メイコ:そうよ・・・“私の名前”がないのよ・・・・“孫の私の名前”が!!!!!!!!
レン:(メイコさん・・・ついに・・・・)
メイコ:そうよ!!! これが本物の遺言状よ! 私はレンと一緒におじいさまから聞いた場所に行って、この遺言状1枚を入手したの! そして私はすぐにミクさんの解いた通りに、謎を解明し、その内容に激怒したのよ!!
ミク:メイコさん・・・・・
メイコ:1円でも良かったのよ! なんで一番親しい間柄だった孫の私に相続する一文が書いてないの! 別に子供の育成とか親戚への相続とか、もうそんなこと、どうでも良かったの! 名前が無いことが解って、激怒すると同時に、“おじいさまに裏切られた”と思って、凄く悲しかったの! だからこれを元にあった所に戻して、あの偽物を作り、レンを使って、あの“誰もが納得する普通の遺言状シナリオ”を作ったのよ! ミクさん! あなたに私の気持ちがわかる!? この裏切られた気持ちが!
ミク:メイコさん、一番最初に解かれた時、この本物の遺言状に“2つの違和感”があることに気づかなかったのですか?
メイコ:なにが“違和感”よ! それ本物なのよ! 1つあるとすれば私の名前がない事くらいじゃないの!?
ミク:それが1つです。でももう1つあるんです。“分与される合計数”です
メイコ:な! 合計数!?
ミク:皆さんもこれからホワイトボードに、分与される分数を書いていきます。算数ですがつきあって下さい
ミクはホワイトボードに解析文章から分数をピックアップしていき、“分数の足し算式”を書いていった。
『1/5+1/5+1/10+1/10=(2+2+1+1)/10=6/10=3/5』
メイコ:!!!!!!!
ミク:もうお解りの通り、“合計数=1”になりません。つまり“不完全な財産分与”なんです。この1枚の遺言状は、“全てを分与した遺言状“、ではなかったのです
メイコ:な・・・・じゃあ、残り2/5は・・・・どうなるの・・・・
ミク:レンさん、この遺言状があった場所はどこでしたっけ?
レン:生前の望日郎おじいさんの部屋の戸棚、その上から2番目の引き出しです
ミク:そこは“元々なんのために使われていた引き出し”でしたか?
レン:え? それはその遺言状と同じ厚紙の白紙をストックしておく引き出しですけど
ミク:そしてあなたと一緒に取りに行ったとき、私が気づいて一緒に持っていったたものはなんでしたか?
レン:えっと、この遺言状の下にあった厚紙1枚ですよ。上には何も書かれてなかったし、“もしかして”、なんか裏に書いてあるかも、って事で持っていったんです
ミク:私はあの下の1枚が“白紙ではない確率が高い”事にうっすらとですが気づいてました
レン:え!? だって上には何も書かれてなかったし・・・
ミク:“薄い指紋“よ
レン:!?
ミク:何も書かれていなかったけど、両手で紙を持つ部分に、ほんのちょっとだけ“黒い指紋”があったの。もしかすると何か書いたときに指に付いていたインクとか墨がついたのかも、って。そして、その予感は当たっていた。裏にこんな文章が書かれていたの
ミクは上から2枚目厚紙の裏に書かれていた文章をホワイトボードに書き写した。
***
つ←さ↓つ↓か←き↑゛や→け↓゛お←む↓ろ←ふ→か→
く←し↑ら←お→す↑え→ち→か→小い↓み→す→る→に↑き↓み→
あ↓や→け←あ←゛へ←す→へ→む→な↓お→れ↓む→わ←き↑ふ←ち↑
ね↓け↓ぬ←お← え←゛ひ↓゛す→ね↓ほ←へ→ろ→し↓い↓に←し↓ほ↑゛あ←
あ→ゆ←ぬ↓む↓ろ←ふ→ほ←き→し↓゛を←め↓お←ち←し↓ぬ→
さ↓゛け→゛す→ね↓よ→む↓ほ←み→゛き→い↓は→ち↓き↑そ→小つ↓へ←み→ろ←
***
ミク:なにも説明がなく、暗号としてなら1枚目と同じ法則だと思われるこの文が書いてあったの
レン:ほ・・・ほんとだ・・・
メイコ:ちょ・・・・・・もしかして・・・・これ・・・・・
ミク:そうです。あの遺言状は“2枚で1つ”だったんです。つまりこれは“遺言状の2枚目”
メイコ:!!!!!!!
レン:そ・・・・そんな・・・・・
ミク:そして、文章を解読すると、もっと驚く内容が書いてありました
ミクは解読文をホワイトボードに書いていった。
***
そしてわがまごのめいこよ
おさなくしてりょうしんをなくし
いままでほんとうにくろうをかけた
のこりの ごぶんのにとはすうはすべて
さきねめいこにゆずるものとする
じぶんのためにじゆうにつかってほしい
***
これを漢字変換すると、完成文はこのようになります。
***
そして我が孫の女威子よ
幼くして両親をなくし、
今まで本当に苦労を掛けた
残りの 2/5と端数は全て
咲音女威子に譲るものとする
自分のために自由に使って欲しい
***
メイコは涙をボロボロこぼして膝から崩れてしまった。
ミク:メイコさん、あなたは“とんでもない勘違い”をしていたんです。2枚目に書かれていたこと、それは、分与額としては最大の2/5もの財産を、一番苦労を掛けたあなたに相続する事だったんです。それも“条件なしで自分の自由に使って良い”ものとして。これが、1枚目にあった“2つの違和感”の答えです
メイコ:おじいさま・・・・わたし・・・・・
ミク:亡き人に言うべき事ではないと思いますが、望日郎おじいさんにも責任はあるんです。筆で書いて乾かしていた紙を纏めるとき、なにかの間違いで2枚目を“裏側”にして引き出しに閉まってしまったのです。これが今回の事の“全ての発端”になってしまったのです
レン:これが・・・・真実だったのですか・・・・
ミク:さて、ここに集まった関係者の皆さん、真相は全て明らかにしました。もうお解りの通り、メイコさんとレンさんは皆さんにかなりのご迷惑を掛けてしまったとは思います。でも、“まだ遺産に関する金銭”が動いたわけではないです。しかも本物の遺言状が出てきて、それをメイコさんもレンさんも認めました。本物では学校と孫と親戚にしか財産分与は行われませんが、ここは大人として、本物の遺言状に従った財産分与を行い、この“偽物による事件”については、水に流していただけませんか?
ミリアム:いや、私たちはいいんだけど、一番の問題はあなたよ。雑誌記者でここの事、記事にするために来たんでしょ? やっぱりここの事件の事、書かないと行けないわよね? お仕事として
ミク:私が知っているここの事は、『2枚綴りの謎掛けの遺言状が出てきて、私が解いて、無事財産分与が行われる事になった』、それだけよ。他になにかあった?
ミリアム:ミクさん・・・・
レン:ミクさん、あなたは・・・・・
メイコ:ミクさん・・・ありがとう・・・・ありがとう・・・・
ミク:じゃ、これでお開きよ
メイコ:待ってみんな!
一同がメイコの方に振り返った。
メイコ:ミクさんの仰った事なんだけど、私の気持ちが収まらないの。だから、“私の自由意志”の元に、こうしたいの。私の相続は2/5のうち、1/5と端数だけ。残りの1/5は、あの遺言状に書かれてなかった関係者で均等に分けて自由に使って欲しいの。お願い! 私の気持ち、受け取って下さい!
ミリアム:まぁ頂けるのなら・・・
レオン:そうだな、今までの仕事料ってことで
学歩:すみません。ありがたく頂いておきます
海斗:ありがたく頂戴致します
アン:もらっちゃうアルヨ
プリマ:頂いておきますね
ローラ:同じく、頂いておきます
アル:じゃあ、遠慮なく頂きます
レン:ボクも皆さんに・・・・
メイコ:レン、あなたはいいの。リンさんと一緒に“歌手”を目指しているんでしょ? 知っているのよ。学業とうちの仕事の合間に歌手になるトレーニング、していたのを。経理と接客は遺産を使って他から雇うわ。だから、あなたは、リンさんと一緒に相続したお金で歌手を目指しなさい。これはおじいさまの意志でもあるわよね。“技術の向上”って事で
リンとレンは清々しい涙を流していた。
レン:・・・・・ありがとう、メイコさん・・・・
リン:有り難う御座います、メイコさん・・・・
ミク:メイコさん・・・・
こうして、小さな温泉郷で起こった、遺産相続事件は、幕を閉じたのだった。
(4日目・駅のプラットホーム)
ミク:なんか長いようで短い旅だった気がします
メイコ:何から何まで、本当に有り難うございました
レン:心から感謝してます
リン:有り難うね
ミク:いえいえ、皆さんはこれからが大変だと思いますので、頑張って下さいね
メイコ:はい。これからこの温泉郷をもっともっと盛り上げていこうと思います
海斗:私もパティシエとして、アイスクリームの研究を進めていこうと思ってます。今度来たときはホテル以上のデザートをご用意致しますね
学歩:あ、そうそう、これは私達一同からのプレゼントなんですが、ミクさん、駅弁、まだ買ってなかったですよね?
ミク:あ! 忘れてた!
学歩:ミクさん一杯食べるってミリアムさんやアンさんから聞いたので、5個ご用意致しました
学歩達の手にあったのは、
北海道・函館本線・森駅のいかめし
北海道・根室本線・厚岸駅のかきめし
大分県・日豊本線・大分駅の豊後さば寿司
鹿児島県・九州新幹線・出水駅・鹿児島黒豚炙り弁当
メイコ:これ全部この街のデパートでやってる“全国駅弁フェア”で出品されていたものなの。そしてこれが5個目の当館特製“きのこ弁当”です。地物のきのこ使ってるんです
ミク:有り難う御座います! 道中で食べさせていただきます!
ミクは皆から弁当を受け取った。
プルルルルルル
ミク:あ! もうそろそろ行きますね
レン:是非ともまたいらして下さいね。今度は観光案内させて頂きます
リン:絶対来てね!
ミク:うん。絶対来るよ!
ミクは電車に乗り、対面座席に座った。
ガラガラ・・・プシュー
車掌:発車いたしまーす
ゴトンゴトン
ミク:みんな有り難うね!
ミクは窓から乗り出して手を振った。皆も手を振っていた。
こうして電車は駅を後にした。
ミク:ミクミクぅ〜! さーて、ご飯食べようかね〜。全部美味しそー! じゃあ、最初はやっぱり“特製きのこ弁当”よね・・・あれ?
きのこ弁当の上に封筒が1通挟んであった。ミクは手紙を出して読んでみた。
***
拝啓 初音ミク様
今回の件、本当に色々有り難う御座いました。
数々の失礼な言葉や対応、申し訳ありませんでした。
私の恩人として、そして私の良き好敵手として、
今度いらしたときは、私が作った謎解き合戦で
二人だけで勝負したいと思います。
今回の素敵な時間、本当にありがとうね。
咲音 女威子
敬具
***
ミク:メイコさ〜ん、もう謎解きはいいよ〜(笑)。でも、ちょっと嬉しいかも・・・・・
パクパクパクパク
ミクが弁当を食べる音と共に、電車は行く・・・・・。
(了)
***
CAST
<雑誌“ゆけむり”編集部>
温泉雑誌の記者・初音ミク(ミク):初音ミク
<温泉宿“巡咲庵”(じゅんしょうあん>
大女将・咲音 女威子(メイコ):MEIKO
女将・巡音 瑠香(ルカ):巡音ルカ
若女将・鏡音 鈴(リン):鏡音リン
板長・神威 学歩(がくぽ):神威がくぽ
経理担当・鏡音 蓮(レン):鏡音レン
パティシエ・工藤 海斗(カイト):KAITO
その他のスタッフ:全部、はちゅねさん
<きのこ温泉郷>
休憩所“透音”の主・透音ミリアム(ミリアム):MIRIAM
土産物屋“亜瑠”の主人・大場 亜瑠(アル):BIG・AL
射的&コリントゲーム屋“迫楽”の主・迫楽レオン(レオン):LEON
中華料理屋“大三軒”の3人娘・赤の服アン、緑の服プリマ、白の服ローラ:Sweet・Ann、Prima、LOLA
説明 | ||
○ボーカロイド小説シリーズ第3作目の” ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎“シリーズの最終話です。 ☆真相です! ○雑誌記者ミクが取材で訪れた温泉郷で起こる謎解きミステリー! |
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