鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十八話
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〜バンエルティア号〜

 

エステルは、ミアキスの子供をあやしながら、エド達の帰りを待っていた。

 

ユーリは、何か予感を察知し、眉間を歪ませた

 

その様子に気づいたエステルは、ユーリの方を見つめる

 

『どうしたのですか?ユーリ』

 

エステルに言われたユーリは、表情を取り戻す前に、心情を伝える

 

『………何か、変な予感がするんだ』

 

『予感?』

 

エステルは、疑問の顔をしながら、ユーリに問いた。

 

だが、表情を取り戻した後、ユーリは気が変わったように言った

 

『………いや、なんでもない。どの道、明日は大変な事になるもんな。何せ、ウリズン帝国の素性が知らしめられんだ。』

 

そのユーリの表情で、エステルは安心した表情をした。

 

『そうですね……。明日は、私たちも頑張らなければいけませんね。』

 

二人はそう言って、笑いあっていた。

 

しかし、その笑いは、5時間後に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

朝、4時半

 

エステルとユーリの部屋から、ノックが聞こえる

 

『おかえりなさい。師匠』

 

エステルが、元気良くエドに挨拶をする。

 

だが、エドからは返事が無かった。

 

『…………師匠?』

 

エステルが問いかけても返事が無い。

 

疑問に思ったユーリが、扉も前に出る。

 

『おいおい、なんだぁ?まさかとんでもない失敗をしたんじゃぁ無いだろうなぁ。』

 

ユーリがそう言った後、まだ沈黙が流れる

 

それを聞いて、ユーリは表情を戻す

 

『ま……それを聞いても、俺たちには責める理由が無い。気にすんなよ。また別の方法を考えれば良いさ』

 

『作戦は……成功した』

 

エドの言葉を聴いて、ユーリは少しだけ混乱した。

 

ただ、それ以上に安心感が強かった。

 

エステルも、それを聞いて歓喜する

 

『そうなのですか?でしたら……入ってきてくださいよ。師匠、お祝いをしましょう。』

 

エステルの言葉に、向こう側の扉から大きな物音が鳴った。

 

扉を強く叩く音だった。

 

『!?』

 

『お……おいソフィ!』

 

エドは、止める様にソフィの腕を掴んだ。

 

扉の向こうのソフィが、この扉の向こう側を叩いたのだ。

 

『………おいエド』

 

ユーリが、言葉を出す

 

『…………作戦は成功して、ウリズン帝国の素性が、国民に晒されて、星晶の場所も分かったんだろ?』

 

その声は、疑問の声に近かった。

 

そして、ついに間接的な質問をした

 

『エド…。何があった。ちゃんと俺たちに説明をしろ。』

 

そう言った後、またしばらく沈黙が流れた。

 

そして、扉の取ってが動く。

 

そこから、扉の向こう側と、扉の内側との壁が無くなった。

 

扉の向こう側の光景が、二人に知らしめられた

 

 

 

 

 

 

『……………エド…!!』

 

ソフィの抱いているアスベルを見て、ユーリは驚愕した

 

アスベルの顔は、生気を欠いている。

 

生命活動が、無くなっていた

 

エステルは、その光景を見て呆然としていた。

 

声が、上手く出せずにいた。

 

『………………!!!!』

 

その光景に目を疑い、信じる事が出来ず、目に映っているアスベルを、頭の中で否定している。

 

『……………アスベルは……死んでいない』

 

ソフィがそう言った瞬間、ユーリは頭の中の何かが切れたのか、

 

エドの襟首を掴んだ

 

『エド……!!これは……これはどういう事だ……!!!』

 

『……………やられた。』

 

エドの言葉を掘り下げるように、ユーリは質問をする

 

『誰に!!』

 

『……人造人間。前に話して……聞いているはずだ』

 

人造人間

 

その言葉を聴いて、ユーリは頭を思い浮かばせる。

 

そいつは、エドの世界に居た、前にアルケ村を賢者の石にした奴ら

 

という事は………

 

『俺たち、そしてもう一人意外は、全員賢者の石になった。あのサレという奴も……死んだ』

 

エドは、ここで真実でごまかした。

 

サレは、自分達が殺した。

 

賢者の石を取り組む前に

 

だが、それを聞いたユーリは、エドの襟首を離し、エドから離れるように歩いた。

 

『……そうか。』

 

そう言うと、ユーリはベッドに腰をかけた。

 

そして、両手で顔を覆い隠した。

 

自己嫌悪が激しいのだろうか。かなりのショックを受けている。

 

むしろ、あのパーティは多すぎたんだ。

 

多すぎた故、このような結果を残してしまった。

 

『………あ……ああ…』

 

エステルは、声にならない位に涙を流している。

 

『………そんな……』

 

エステルは、アスベルの腕を掴んだ。

 

正くは腕の服の布地を掴んだ。

 

だが、もうアスベルの身体は冷たくなっている。

 

死んでいる

 

そう実感しているかもしれない。

 

『師匠……。アスベルは……アスベルは……この世の役に立てたのでしょうか。』

 

エステルは、すがるようにエドに言葉を出した。

 

『アスベルは……アスベルは無駄には死んでいないんですよね…?彼は……彼は勇敢に全力を上げて、悔いの無い生き方をしていたのですよね……?』

 

涙をボロボロと流しながら、エドにしがみついて泣いていた。

 

エドは、その光景を見て、エステルの情を理解した。

 

理解したうえで、エドはエステルの頭にチョップした

 

『!?』

 

その光景を見たユーリは、驚き、呆然としている。

 

機械鎧で殴られたエステルは、チョップされた所を痛がって押さえつけていた。

 

だが、エドはすかさず答える

 

『………そいつは、死んでない』

 

その言葉を聴いた後、エステルはエドの顔を見た。

 

エドの目は、真っ直ぐとアスベルの方を見ていた。

 

そして、すぐにエステルの方に向けられた

 

『だからなぁ……。悔いの無い生き方をした、無駄に死んでいない……。そんな言葉が許せねえ。』

 

エドの言葉に、エステルは分からぬ顔をする

 

『……師匠……?』

 

まだ死んでいない

 

その言葉が、いまいち理解が出来なかった。

 

そして、エドは叫ぶようにこう答えた

 

『この世の役に立てたか、悔いの無い生き方をした、無駄に死んでいない……?そんなもん、虫ケラが死んでも言える事だ』

 

その言葉の前に、エステルは前の言葉を気にしていた。

 

アスベルは、死んでいない

 

『アスベルは死んでいない。魂を抜かれただけだ。今やこいつは魂の抜かれた人形って事になる』

 

その言葉に、エステルは疑問の声を上げる

 

『それじゃぁ……。死んでいるんじゃ……』

 

『魂は、人造人間が持っている。だからそいつらからぶん取れば、魂は必然的にアスベルに帰って来る』

 

さらに、エドは話を続けた

 

『それに、アスベルは、俺の弟を探し出し、最終的には見つけてくれた。そして今回も、アスベルが居たからこそ、成し遂げた部分もある。』

 

エドは、アスベルの元へ歩き、そして屈んでアスベルの顔を見た。

 

『悔いの無い生き方をした、無駄に死んでいない。その事実を作るのはこいつじゃない。俺たちだ。俺たちがこいつの事業を無駄にしない様に、動いて行くしかねぇ。動かして行くしかねぇ。』

 

その言葉を聴いたエステルは、ただ呆然とアスベルを見ていた。

 

死んでいない……。

 

それが聞けただけでも十分だ。

 

そして、それを私たちが無駄にしない……。

 

『………それで、どうするんだ?』

 

ユーリが、割り込むように入ってくる

 

『そんな事を言っても、その人造人間をぶっ飛ばさねぇと、こいつが戻ってこないのは変わり無え。それに……この遺体は、長く船には置けねぇぞ』

 

ユーリがそう言った直後、エステルの口が動いた

 

『……戻しましょう』

 

エステルの言葉に、ユーリは聞き返す

 

『………え?』

 

『………アスベルを、騎士団に戻しましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都〜

 

ガルバンゾ国の城前に、騎士団の隊長が起床する。

 

今日も、まだ見つからないのだろうか。

 

ユーリの考えている事は分かる。だが、

 

仮にも規則があるのだ。そもそもあいつは……。

 

それに、王女救出に向かわせたアスベルは一体どこに行ったのだ。

 

まだ、見つからずにいるか、もしくは……

 

頭を悩ませながら、フレンは布団から起き上がる。

 

そこに、一人の兵が大慌てで部屋に入ってくる

 

『フ……フレン隊長!!』

 

真っ直ぐと敬礼をすると、フレンは起き上がり、服装を整える。

 

『どうした?』

 

その慌てぶりは、尋常でないと考えた。

 

声まで震わせながら、一人の兵は答えた。

 

『エ……エステリーゼ様がお見えになりました……!』

 

その言葉に、フレンの表情が変わる。

 

さらに真剣な物になった

 

『なんだって!』

 

『更に…ユーリ・ローウェルも一緒です!』

 

その言葉を聴いたフレンは、居ても立っても居られず、

 

すぐさま部屋から飛び出した

 

『隊長!』

 

『これは、僕一人で十分だ!君達は念の為控えていてくれ!』

 

そう言って、城の入り口にまで移動をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入り口に辿り着いたフレンの前には、

 

ユーリとエステルの二人が、立ち止まっていた

 

『エステリーゼ様…!!ユーリ…!!』

 

強い口調に、ユーリは表情を変えなかった。

 

そして、少しだけふざけたように、こう答える

 

『……相変わらず固い奴だな。お前』

 

『ユーリ…!君がやっている事が分かっているのか?君がやっているのは王女誘拐で、相当な処罰を…!』

 

『フレン。それどころじゃ無いんです』

 

エステルのその真剣な言葉に、フレンは少々戸惑った

 

『……エステリーゼ様?』

 

その真剣な顔に、嫌な予感がした。

 

そして、エステルはソフィが持っていた棺おけを持って、フレンに差し上げた

 

『………これは?』

 

『……お前の、見覚えのある顔だ』

 

フレンが棺おけを開けると、

 

その中には、アスベルが眠っていた

 

その光景を見たフレンは、驚きを隠せなかった。

 

『…………!!!』

 

死んでいる

 

アスベルが、部下だった者が亡くなっているのだ。

 

これ程、苦しい事は無い。

 

『………最後まで、最高の騎士だった。』

 

ユーリがそう言った瞬間、フレンはユーリの襟首を掴み、怒りの形相でユーリを睨みつけた

 

『ユーリ!!これはどういう事だ!!説明をしてくれ!!』

 

フレンが叫ぶようにそう言うと、ユーリは素直に答えた

 

『……ウリズン帝国の悪行を掴み取る為に、命を賭けた結果。………その代償に、命を失った。』

 

『どうして王女救出の為に出した騎士団が!ウリズン帝国の悪行を掴み取る業に変わっているんだ!!!』

 

フレンの言葉に、エステルが答えた。

 

『………私が、アスベルをギルドに誘ったのです。』

 

ギルドとい言葉を聴いて、フレンは固まった。

 

『私は……城の中では知らなかった、この国、そして世界の現状を知りました。それを知る上に、この城に留まることは出来なかった。その為に、ユーリと一緒にギルドに入ったのです……。そして、アスベル君も誘いました。私の話を理解した上で……』

 

その話を聞いたフレンは、

 

しばらく俯いた後、ユーリの襟首を離した。

 

そして、アスベルの方に目を向ける。

 

アスベルの色の無くなった肌を見て、フレンは遠い目をした。

 

勇敢な青年だった。

 

真っ直ぐな目をしていた。未来に期待をしていたんだ。

 

それなのに………

 

『………すまない』

 

フレンはそう言って、アスベルに向かって、自分の心臓に拳を乗せた。

 

大いなる敬礼をしたフレンは、エステルの方に振り向く

 

『………話は分かりました。では、……城にお戻り致しますよう、お願い致します。』

 

その言葉に、ユーリが口を挟む

 

『ちょっと待てよ。エステルはこの城に残るためにわざわざ来たと思うのか?』

 

ユーリの言葉に、フレンは声を荒げて言った

 

『何を言っているユーリ!!アスベルが死んだのだぞ!?そのギルドに居る限り……安全はほとんど期待が出来ないじゃないか!僕は……二度と大切な人を失わせたくない!!』

 

『お願いします!フレン!!』

 

エステルは、騎士団の隊長であるフレンに土下座をした。

 

その光景をみたフレンは、何も理解が出来なかった

 

『例えエステリーゼ様の意見でも……お聞きする事は出来ません!これは………命に関わる事なんですよ!!』

 

『だからこそです!!』

 

エステルの目は、涙で溢れていた。

 

申し訳ない気持ちと、何も出来なかった後悔の気持ちだった。

 

『アスベルは……まだ死んで居ないのです。』

 

エステルのその言葉に、フレンは歯を食いしばった。

 

『理解が出来ません!エステリーゼ様!僕には……!!!』

 

エステルが、命に関わることである事にも関わらず、ギルドに居る事

 

そして、アスベルが死んでいないという、その言葉が

 

『だからこそ……だからこそ私は、ここで諦める訳にはいかないんです。アスベルは、死ぬ覚悟でギルドに尽くしてくれました。だから、アスベルの事業を無駄にしない為にも、私が動かないと駄目なんです……!!もし、私が動くことが出来なければ、私は王女となる資格がありません……』

 

エステルの言葉の後、ユーリが口を挟んだ

 

『おいフレン。どうしてこいつが、ギルドに居て、王女様を連れてかえらずずっと残ったか知らねぇか?』

 

ユーリの言葉に、フレンはただ首を横に振った。

 

それを見たユーリは、エステルに言葉を告げる

 

『帰るぞ』

 

そう言うと、エステルは立ち上がり、フレンに背を向けた

 

それを見たフレンは、すぐさま呼び止めた

 

『待て!ユーリ!!』

 

声を聞いたユーリは、振り向いてフレンに声をかけた

 

『………アスベルも、王女の言う事に賛成だった。じゃねえんだ。』

 

『……どういう事だ?』

 

フレンの言葉に、ユーリは答えた。

 

そして、すぐさま家路に就いた

 

『ただ、間違った世界を直したかったのさ』

 

エステルとユーリ、そしてソフィが去って行く中、

 

フレンは、その三人を追いかける事が出来なかった

 

『……………』

 

いや、追いかけることが出来なかった。

 

振り向くと、アスベルの入った棺おけが置かれている。

 

その棺おけの元へ歩き、そして眺めた

 

『………アスベル……』

 

フレンは、答える棺おけに、言葉を送った

 

『…………お前は、本当にそれで良かった……のか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

全員が起き上がった後、エドは船の居間に居た。

 

そこで、ソファに座りながら全員が来るのを待っていたが、

 

最初に来たのは、アルフォンスだった

 

『あれ?兄さん』

 

アルが質問すると、エドは元気良く挨拶するように、手を上げた

 

『よっ、おはようアル』

 

『兄さん、こんな所で何してるのさ。』

 

そう聞いてきたアルに、エドは笑顔で答えた

 

『ああ、ちょっと教えるって言ったのに、エステルの野郎、中々覚えが悪くてなぁ、時間が掛かって、かなり眠くなったから、部屋に戻らずここで寝てたって訳』

 

エドの理由に、アルは呆れて溜息を吐いた。

 

そして、親が注意をするように、エドに答えた

 

『もう、船の人たちに迷惑かけちゃ駄目だよ。』

 

『へへっ。悪い悪い』

 

まるで反省の色を出していないエドに、アルは再び溜息を吐いた。

 

その仕草全てが、全て演技だと言う事は、誰も知らなかった。

 

『ところで兄さん……カロル君がここで寝てるのは良いとして、隣に居る人は……誰?』

 

アルの質問に、エドは苦笑いをした。

 

そして、白々しく紹介をした。

 

『あ………ああ。こいつは……ええと、新しくガルバンゾ国の騎士団から来た……あの……』

 

エドは、陰で話しをするように、小声でヴェイグに質問をした

 

《おい、お前誰だよ》

 

《ヴェイグだ》

 

《あ……ああ、ああ。》

 

話が終わった後、エドは再び紹介した

 

『こいつは、ヴェイグって言うんだ。新しくこのギルドで働きたいんだそうだ。』

 

『……兄さん。名前ぐらいは覚えておきなよ。』

 

アルは、エドの行動にそう突っ込んだ

 

『ああ…。俺も少し傷ついたな。』

 

ヴェイグはボソリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アドリビドムに入りたい?どうぞどうぞ。』

 

アンジュにヴェイグの事を伝えたら、三秒で許可された。

 

早い。これは早すぎるんじゃないのか?と思ったエドは

 

『おい、何も気にしないのかよ』

 

『気にするも何も、逆に何か気にする事があるのかしら?』

 

アンジュが、笑顔でエドにそう答えた。

 

おそらく、こき使う気満々なのだろう。目が爛々としていた。

 

ヴェイグに申し訳ない気持ちで、エドはそのままヴェイグの方を見た

 

『…………』

 

ヴェイグは、それが睨みつけているように見えていた。

 

その瞬間で、ヴェイグは自分が嫌われているのではないかと考え始めた。

 

『あら?そう言えば』

 

アンジュが、思い出すように答えた

 

『え?どうしたんですか?』

 

アルが質問をすると、普通にアンジュは言葉を出した

 

『朝からエステルとユーリとソフィちゃん。そしてアスベル君の姿が見えないんだけど……。何か知らない?』

 

その言葉を言われ、エドとヴェイグは表情を変えた。

 

カロルは、まだソファで眠っている。

 

『いいえ。知りません。兄さんは何か知ってるよね?確か……一緒に居たって言ってたから。』

 

アルは、疑問をエドにぶつけた。

 

その疑問を言われたエドは、少しだけ俯いてしまった

 

『兄さん?』

 

アルは、なんだか不安そうな様子になる。

 

だが、その後すぐにエドは笑顔で答えた

 

『いや、なんだか急に騎士団に呼び出し喰らったそうで、騎士団に帰ってったぜ、あいつ。エステルとユーリと、ソフィはその付き添いに付いてっただけだ。』

 

エドがそう言うと、アンジュは考える仕草をした

 

『呼び出し……かぁ。このまま帰ってこなかったら、寂しくなるわねぇ……。』

 

『ああ、大丈夫……。帰って来るよ。………多分』

 

最後は、やけに自信が無い声だった。

 

やはり、様子がおかしいと感じたアルは、エドに疑問を持った

 

だが、どうしようも無い

 

 

 

 

 

 

『ただいま』

 

しばらくして、エステルとユーリとソフィが帰って来た。

 

その様子を見たアンジュは、安心した表情を見せる。

 

『おかえりなさい。』

 

そう言われた二人は、苦笑いで対応をした。

 

ソフィだけ、無表情で俯いていた。

 

ソフィの様子に気づいたアンジュは、二人に疑問を向けた

 

『……アスベル君は?』

 

そういわれた時、エステルは一瞬息を思いっきり吸い込むような反応を起こした。

 

だが、ユーリは平常になっていた。

 

その様子を見たアンジュは、アスベルの様子に察知した

 

『………そう。やっぱりね。………帰っちゃったのね』

 

そう言われ、エステルはキョトンとした。

 

逆に、ユーリは心の中でエドに賛美した。

 

良い方向に向かっている。

 

知らなくていいのだ。仲間達にアスベルの事は。

 

知った所で、これ以上の犠牲者は出したくない。

 

ウリズン帝国の事も、後に分かることだ。

 

『………ああ。ちょっと問題が起こったらしくてな。しばらくギルドには戻れそうにないと』

 

『そう。困ったわね。アスベル君に行って欲しい依頼があったんだけど……』

 

その言葉に、ソフィが反応する。

 

そして、アンジュの元に歩み寄る

 

『………私が、行く……』

 

その言葉に、アンジュは一瞬だけ驚きの言葉を発した

 

『……え?』

 

自ら、依頼を受け止めるのは、ソフィにとっては珍しい事だった。

 

いつもは、アスベルの隣に居て、アスベルがソフィと行動していた。というような物だった。

 

というよりも、アスベルが居なかったらソフィが何をしているのか理解が出来なかった。

 

それ故、扱いにくくなったのかと思われたが、

 

彼女の中で、何かが成長していた。

 

それに期待して、アンジュも安心した。

 

『……そう。分かったわ。それじゃぁこの依頼をお願い』

 

そう言って、アンジュはソフィに依頼書を見せる。

 

その依頼内容は

 

《依頼人:マリアル:カダイフ砂漠のオアシス都市、パラサイスが盗賊団によって脅かされている。平和の為にも、その盗賊団を退治して欲しい。》

 

『パラサイ……ス?』

 

ヴェイグが、表情を歪ませた。

 

『何か知ってるんですか?』

 

『いや……。聞いたことはあるが』

 

ヴェイグは、そう呟いた。

 

そうだ。聞いたことがある。悪名が高い街だ。

 

だが、それは多分盗賊団の話だろう。

 

彼らが居なくなれば、きっと街も良くなるに違いない。

 

だが、ヴェイグの心に、何かが引っかかった。

 

 

『……パラサイス…』

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