GROW4 第十六章 死神(デス)
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「ここは?耐魔球の社(たいまきゅうのやしろ)?」

「カカカカカ。マタミョウナフィールドダナ。ボクニハイササカモノタリナイガネ」

 二人を取り囲む巨大な円状のガラス玉は、フィールド各地に点在している。そのひとつに、

エイミーさんと死神がまとめて入れられている。いや。出現した際に、偶然入ってしまったというほうが正しいのか・・・

 このフィールドには地面はなく、下は闇に包まれている。落ちたらただでは済むまい。

 

「コンナセマイタマノナカデハウゴキズライ。コワセ、エイミーサン」

「案外20mの範囲に絞ったほうがやりやすいかもね・・・

それに、“君の力”ならこんなもの破ることは造作ないよね」

「イウジャナイカ。マアイイ。セッカクダ。コノセマイバショデタオシテヤル」

 シュラァァァッ

「物騒だねまったく・・・」

 背中に背負う鎌を取り、前に出した死神。鎌を大きく振りかぶる。

「黄泉贈り(ヨミオクリ)・・・」

 ギラァァァァッッ

 ズバシュッッッッ

 

「ヤハリキカナイカ・・・」

 エイミーさんの身体を斬り裂く鎌。エイミーさんの身体からは黒い煙が吹き出るが、すぐに止まり

再生する。

 死神は分かってやっているみたいだ。

「お互いに寿命という概念がないんだ。効かないのは道理じゃないかい」

「シニガミノホンシツヲ、オモイッキリブットバシタキュウキョクナルコタイコソキュウケツキ。ダガボクハ、シニガミデアッテシニガミヲツイホウサレタ。ダイニダンカイヘイコウ!!

魂喰(タマシイグライ)」

「天使と死神のハーフってだけでレアなのに、加えて魂喰らいの殲贄檎神(バチスタ)のクォータだからね・・・

本来の目的を失った外れ者の末路がこれだよ・・・」

「エイミーサン。オワリダ。永久迷宮回廊(アイオーニオン・ドルニチェット・マ・セイロウ)」

 

 ビュビュビュビュビュッ

「精霊降臨(スピリチュアル・ヘルドゥカム)・・・」

 ギラッ

 死神の攻撃する鎌には、白い妖気が纏って歪んでいる。一閃の攻撃は四つに分裂したように見える。

「掌握する琺瑯呪(ビルデエム・マグスタチオ・コンプレッサ)」

 ガキュゥゥゥゥッッッ

 ジュゥゥゥゥッッ

「トメラレタ!?」

「ううっ。右腕が持っていかれる!!」

 右腕に霊呪を纏わせ止めにかかったエイミーさん。相手の攻撃は止まったものの、右腕が半透明になってく。いったい何が起こっているのか?

「ホウ、オドロイタ。ジョウジンナラフレタジテンデタマシイゴトショウメツスルンダガナ」

「その力は本来“ゴースト”の一種だ。死神の貴様がなぜ使える。魂喰らいだとしても、ゴースト程では無い筈!!」

「イッタダロウ、エイミーサン。オタガイニジュミョウノガイネンガナイト。ジュミョウノアルシニガミガ、ジュミョウガナクナリ、ウラサンダイヨウソノサイコウホウ。ゴーストのチカラヲエルホウホウハヒトツダロ?カカカカカ・・・」

「死んだのか貴様!!」

「カカカカカ」

 エイミーさんの表情が一気に歪む。“ゴースト”の力とはなんだ?

 

「貴様が使っている力がゴーストなら納得がいく。ゴーストの力・・・

裏三大要素。闇の魔法、光の魔法、そしてゴースト。この三要素で成り立つ要素だが、扱いの難しさ故に扱える術者などまずいない。光はほとんど一般的なため、聖職者の上位の者が20人ほど使っていると聞くが。ゴーストなど論外。

 残りの二つの要素を圧倒する力。完全無効化能力、憑依能力、実体の無効化、生命力喰らいなど、無限の能力があると言われる伝説の力。所得条件が“死人”であることから、使う術者はいないと思っていたが・・・」

「ココニイタトイウワケダ。カカカカカ。エイミーサン。クラッタミギテ、ニドトカエッテコナイゾ」

「ゴーストの能力は、喰らった生命力を自分に加える能力。わたしの右手分の生命力を奪ったわけか・・・」

「ジュミョウガナイカラトユダンシタナ。ジュミョウナイカラトイッテモ、“イキテイル”コトニカワリナイ。ジワジワトシヘノカイロウヲノボレ。カカカカカ」

 

「触れたら消える。触れられても消える。攻撃も効かない、か・・・

全く普通の人間なら死んでいるね」

「ニヤニヤシテ、アキラメナイノカ?」

「そんな危険な能力を、人間相手にさせるわけにはいかないよ。生憎吸血鬼には“完全”には効かないみたいだし・・・」

 半透明な右腕を見るエイミーさん。すべて持って行かれなかったとはいえ危険であることには変わりない。

「サスガハエイミーサンダ。オダガイゼンリョクヲダソウ」

「こっちは既に全力なんだけどね・・・」

 

 

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 2

 

「斬烈風洞(ざんれつふうどう)っ」

 パキャァァァァン

「キュウタイヲハカイシタ?イッタンキョリヲオクツモリカ?」

 

 球体を破壊して外に出るエイミーさん。右腕から黒い刀のようなものを生やしている。

 死神も球体から飛び出、エイミーさんを追跡する。

 二人とも当たり前のように空とんでるなー・・・

 

「キュウケツキノミガタナカ。ソンナモノデボクニタイコウシヨウトデモ?」

「吸血鬼の特性を知った上での発言なら愚問だな、死神。なぜ、さっきの攻撃でわたしが消滅しなかったか考えてみるんだな・・・

ハァッッ!!」

 二人の距離は100m。エイミーさんは近付いてくる死神に、近くにあった球体を投げつけた。

 ゴシャァァァァッ

「グッ、ヨケイナマネヲ・・・」

 パキャァァァン

 パラパラ

 

 予想に反し、球体にまともにぶつかってしまう死神。すぐに球体を破壊するが、既にエイミーさんに背後を取られていた。

 刀を構えるエイミーさん。死神に対し振りかざす。

「波打つ刀閃(なみうつとうせん)!!」

 ゆらゆらっ

「カタナガマガッタ!?」

 ズバシュッッッ

 バチバチバチバチィィィィ

 

 振り返った死神の右腕を斬り落としたエイミーさん。死神の右腕が斬り落とされたと同時に、エイミーさんの右腕が復活した。逆ではないのか?

 ニヤリと笑うエイミーさんは、死神に対して言った。

「とりあえずお返しだよ。そして・・・」

 ギラァァァァッ

「ググゥ。マサカソノノウリョク!?」

「刻銘像松(こくめいぞうまつ)!!」

 キュィィィン

 ガキィィィン

 

 エイミーさんの攻撃を、足で受け止める死神。連続攻撃の隙ができない・・・

「エナジー・ドレイン、カ。吸血鬼の真祖(ハイ・エンシェント・ウォーカー)トクユウノフカノウリョク。シカシドウヤッテムコウカノカベヲヤブッタ・・・」

「服についてるガラスの欠片が見えるかい、死神?君の服に散らばるようあらかじめヒビを入れておいたんだよ」

「マサカムコウカノウリョクヲ、コンナガラスヘンデ・・・」

 死神のフードに刺さっている無効化のガラス片。完全でないとはいえ、死神の全能力を底下げしているようだ。それに加え、エイミーさんは飛びまわっている間、術式を組み立てていたのだ。

 

「緻密な計算式で、能力の改竄(かいざん)を行った。いくら優れている能力も、やり方次第でどうにでもなる」

「ツマランマネダッタナ・・・」

 パラパラパラ

 完全に消えた死神。付いていたガラス片も奈落の底へ落ちてしまう。実体が完全に無くなったのだ。

 

「実体が・・・」

 フワッ

「いつの間に!?」

「ゴーストノチカラハコノテイドデハオサエキレナイ」

「術式解凍、捕らわれの乙女(メフィスト・カルタナヴァル)」

 シュシュッ

 スカッ

「貫通した?」

 エイミーさんの捕縛結界が全く意味をなさない。貫通した結界は空中消滅してしまう。

「ムダ。ジゲンガチガウ・・・

魂喰(コング)・・・」

 すっ

 バシュゥ

「聖固め(ひじりがため)っ、聖水(せいずい)」

 ばしゃぁぁぁぁっ

 ドドドドドドッ

 

 死神の攻撃を返そうとするが、全く止めることができないエイミーさん。能力の圧倒的差が出始めてきている。

「サスガハキュウケツキ。サイキョウシュダケアッテカンタンニハクズレナイカ。ダガ、イマノデカナリモッテイカレタナ」

「防御すらできない。ゴーストの力が圧倒的すぎる・・・」

 身体の半分以上持って行かれたエイミーさん。肉体の再生すらできない状況で、これ以上意識は保てなかった・・・

 

 ドサッ

 エイミーさんは、近くにあった球体に落ちてしまった。そのまま意識が無くなってしまう。

 「勝者、死神」

 

「リライト・・・」

 シュワァァァッッ

 死神の手が光ると、エイミーさんの肉体が回復した。奪われていた力が帰ってきたのだ。

「まったく。負けてくれてもよかったんじゃないかい?」

「アナタニシツレイダ・・・」

「ふんっ。君の名前は今度からゴーストだよ。死体はさっさと黄泉に還ったらどうだい?黄泉へと贈る立場が死人なんてね」

「マケイヌノトオボエハソレデオワリカ?カカカカカ・・・

ン?グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」

 ドサァ

「ん?」

 倒れた死神。いったいどういうことだ?

「バカだね死神、それがゴーストの能力の反動さ。常時零体化は自分の霊力を使って発動する。霊力は死人の命と同意。ったく・・・

試合の時に倒れて欲しかったよ。いずれにせよ、“ご臨終様”・・・」

 本当の意味で絶命した死神。試合は死神が勝ったので、対戦相手なし状態になってしまった。

 ゴーストの力。絶対能力の反動は、絶対的な“死”を意味する。大きな力程、反動は大きいのだ。

これが使用した死神の末路だった・・・

 

  

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 3

 

 次の試合は、一回戦で松さんと林道が引き分けたため、緒貴田驚殿下(聖3)の不戦勝で終わった。

 そして問題の試合。第二回戦第十二試合目、大和舞姫(辛羅3)VS三澤薪南(流水1)の試合である。

 薪南はあの中尊寺を一撃で葬る程の力を付けた。しかし、相手から感じる異様な気質が、俺たちを不安にさせる。

 

「中尊寺が来るかと思ってましたけど、まさか流水が来るなんて思いませんです・・・」

「3年の連中に気を付けるように言われたけど、見かけそうでもないのね・・・」

 舞姫の見かけは、おっとりお譲さまタイプ。身長165cmくらい。式服が、巨大な胸でぱつんぱつんになっている。髪がたは腰まで伸びた綺麗な黒髪ロング。ニッコリとした表情からは、戦いとは孤立無縁である。

「はぁーううんっ♪退屈でしたです。ずっと見てるのは」

「・・・・」

「ん?どうかしましたです?」

「何もないわ。こっちが退屈しそう・・・」

「うふふふふ。始まったら少しは面白くなるのです^^」

 

 「第十二試合目、始め」

 

 すっ

 バババッ

 

 ガシャァァァァン

 パラパラパラパラ

 

 何が起こったんだ?開始早々薪南がぶっ飛びやがった・・・

「おおっ。一撃で堕ちない相手は久しぶりなのです」

 ガラガラガラガラ

「可愛い顔してとんでもないことするわね、おねーさん」

 バトルフィールドの反対側まで吹き飛ばされた薪南。瓦礫の山からはい出てくる。

 ビビビビビッッ

 シュシュシュシュシュ

「これは・・・」

「有刺鉄線(ゆうしてっせん)?」

 フィールドから突如として現れた無数の鉄線が、フィールド全体を大きく取り囲む。

 ガンガン

「鉄にしてはやけに頑丈ね。てゆーかわたし囲いの外だしww」

「アーストロ・マルチロイド。旧世代の合銀?ということは、なるほどです」

「どーいうこと?おねーさん」

「ここのフィールドは、旧世代の魔界都市ミューアズガブライトです。ゴーレム収納都市、ミューアズガブライト・・・」

「ゴーレム?衣さんが戦ったあのタイプの?」

 ガイィィィン、ガイィィィィン、ガィィィィン

「扉が、開いたの?」

「おおっ」

 鉄線内部。中心に位置する造形物から、大量のゴーレムが現れる。その数80体弱。

 人間サイズから、最大のもので10mを超すものも。

「ちょっ。わたしまだ蚊帳の外なんだけど!」

「ごめんなさい。すぐに入れるです」

 ゴシャァァァッ

 ガラガラガラガラ

 

「なっ」

 薪南のいる一帯が崩壊。有刺鉄線ごと粉々になる。

「あらら。死んじゃいましたですか?」

「残念ながら無事よ」

「おおっ。じゃぁ今度は無事じゃ無くなるです^^」

「・・・・・」

 

 

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 4

 

 次回予告

 

 ゴーレムさん大量発生。

 そして舞姫(マキ)の謎の能力(チカラ)・・・

 次回はいったいどうなるのやら?

 

 今回ぐだぐだすいません

 次回、GROW4 第十七章 孤高の頂(ここうのいただき)

 

 ではでは

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GROW 死神 エイミー=エヴァンス 大和舞姫 三澤薪南 

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