《華雄ＶＳ関羽》

華雄と関羽の一騎打ちは華雄の一方的な攻撃の前に関羽はなすすべが無かった。始めた頃は愛紗が押している様に見えたが華雄は暫く愛紗の攻撃を見極めていた。それが終わると攻勢に転じ愛紗に反撃の隙を与えずにいた。

「どうした関羽？先ほどの勢いはどこへ行った！？」

「くっ、黙れ！貴様如きさっさと倒して��水関を抜けてやる！！」

華雄の攻撃を受けながら何とか反撃の糸口を探ろうとするが見つからず、唯華雄の攻撃から身を守るのが精一杯であった。

「全く、威勢が良いのは最初だけだったな。大した志も無く我が主董卓様に弓を引くからこんな目に合うのだ。」

「志なら有る！民が笑って暮らせる。それが我が主・桃香様の願い！」

「その為なら董卓様を悪者にしてもか？」

「なに？！董卓は洛陽で圧政を強いているのではないのか！？」

「ふん。事の真偽も確かめず、攻め入ってくる貴様らこそ悪ではないのか？」

「では董卓は圧政を強いているという訳ではないのか？」

「そうだ、と言った所で貴様は私の言葉を信じるのか？」

「当然だ。言葉だけで信じられるか！」

「・・・・・」

似ている、華雄は嘗ての自分に重ね合わせる。以前の自分は己の武が最強だと信じて疑わなかった。

だが董卓軍の中には飛将軍・呂布と神速の張遼の二人が居り、手合わせしても呂布には全く歯がたたず、霞にしてもほとんど勝てずいい所引き分けになる。

その為何時しか自分の中ではこの二人は別格扱いし次第に見ないフリをした。その結果何も学ぼうとも得ようともせず力だけの単調な攻撃スタイルになっていった。

関羽も己の信じて疑わず突き進んでいる。周りを見ようともせず只只前へ。

だがそれでは何も生み出さない。それを教えてくれたのは北郷であった。

北郷に出会わなければ、また以前のように唯突っ込み、また此処で命を落とす派目になっていた。

華雄は別の自分が死んだ事を最初の頃は憤りもあり仇討ちの気持ちもあった。

だが北郷はその事を寧ろ済まなさそうにしていた。逆に自分が悪いことしているのではないかと思うくらい北郷は恐縮していた。

その事を詠や霞に相談した所、二人に笑いながら「それが北郷(一刀)だ」と言われた。

どこまでもお人好し。華雄が接しているうちに出した答えはそれである。

一刀や霞達と話をした際何のために武を振るうかという話になったとき、一刀はこう答えた。

「力無き人を守る為」

単純ではあったがそれを臆面も無く言い切った一刀を見て華雄は嘗て自分もそんな志を持っていた事を思い出した。

否、持っていたというのは語弊がある。今も持っているがそれは自分の武の自慢と比べると薄い。

「じゃあ自分の武と月の命どちらが大事だい？」

直ぐには答えられず思わず詰まってしまったが、一刀が何を言いたいのかを理解した。

それは守るものの優先順位を間違えるなということ。今回の戦で最も重要なのは月の命で別の自分はそれを忘れた為死んでしまった。

その所為か、以前の憤りもほぼ消え別の自分に対して『愚かな』という思いしか抱かなくなった。

そして一刀と鍛錬をするうちにとこういう風にしたらいいんじゃないかと言う助言を貰うようになり、今までは力押し一辺倒だった華雄の武も見違えた動きをするようになり、

以前と比べ物にならないくらい格段にあがった。勿論霞や恋もそうだった。

そんな思いをめぐらせているとガーン！ガーン！と銅鑼を打ち鳴らされたのが聞こえた為華雄はそのまま何もせず立ち去る。

「ぐ、止めをさせ華雄！敗者に情けを掛けるつもり？！」

後ろで叫んでいる関羽に華雄は振り返りもせず

「お前を待っている者がいるだろう。その者を悲しませるわけにはいかない。それにそんな事はあいつは望んではいない。｣

そう言い残すと立ち去っていく。愛紗の脳裏には桃香の姿が思い浮かんだ。

「奴は・・・」誰とも無く愛紗はつぶやく。

《一刀ＶＳ雪蓮》

雪蓮は戸惑っていた。一刀の攻撃が変則すぎるために。

武器を只攻撃に使うだけではなく器用に防御と避けるのに使い、それと以前来たときに見せたことの無い動きを織り交ぜてこちらへ攻撃を仕掛けてくる。

厄介な事この上ない。勘に助けられてるがそれでも劣勢には変わり無い。

「（くっ、強いとは思っていたけど此処まで力量に差があるなんて思っても見なかったわ。）」

「ねえ一刀なんでそっちに行ったのよ？こっちに残っててくれれば孫呉独立が楽になるのに、今からでもこっちに来ない？」

「それは何度も断っているだろう。それに雪蓮は気づいてるだろう。これが茶番だってことに。」

確かに雪蓮は気づいていた。この反董卓連合は各諸侯の個人感情（特に袁紹）によるものが大きいことに。

だが今孫家は袁術の客将と言う身分、袁術が参加すると言えば従わざるを得ない。

そしてその後の為には孫策は独立に向けここで名を売っておこうと考えている。

それにここで袁術の軍勢に少しでも損害が出ればより一層やり易くなる事も計算しての事。

たとえ董卓が圧政してようが関係ない。だが孫策は

「さあなんのことかしら？だって今は袁術ちゃんの客将だもの。｣

と尤もらしい事を言って惚けてみる。その様に一刀は苦笑する。

孫呉の独立、だが以前の彼女はそれを見る前に亡くなっている。

後を託された孫権と周喩、しかし彼女達は意見の食い違いによって仲違いし、

孫呉軍と北郷軍との戦争に負け、周喩の謀反と自害と言う形で幕を閉じてしまった。

そんなことを思い耽っているとガーン！ガーン！銅鑼を打ち鳴らされたのが聞こえた為一刀は立ち去ることをする。

「あらもう終わっちゃうの？ざ〜んねん。けどまた逢えるでしょう？」

そう言って一杯一杯の強がりを見せる。そんな雪蓮に一刀は苦笑しつつじゃあなと手を振って立ち去った。

「あいつ本当に面白いわね。蓮華にはもったない相手かも。」

本人が居ないのを良い事に自分で勝手に話を進める雪蓮であった。

〜劉備陣営〜

愛紗と華雄、雪蓮と覆面男の戦いを見ていた劉備達は

「わわわ、愛紗ちゃんが全然歯がたたないよう〜」

桃香は愛紗が一方的にやられている様を見て慌てる。

「おお〜、華雄強いのだ！次ぎは鈴々が愛紗の敵討ちをするのだ！」

愛紗を攻め立てていた華雄に興味を持ち敵討ちをするという鈴々。

「う〜む、噂で聞いていたのとは随分違うようだな。それにあの覆面の男も中々面白い動きをする。しかもまだ全力を出して無いと見た。」

華雄の戦い方が噂で聞いていた事と違うことと一刀の武に興味を持った星。

「はわわ、鈴々ちゃんそれを言うなら雪辱を晴らすですよ〜。愛紗さんまだ死んでませんから〜」

鈴々に突っ込みを入れる朱里。

「あわわ、あの覆面さん、孫策さんを軽くいなしてました。あんな人がまだ居たなんて。そんな情報が無かったですよ〜」

自分の持っている情報に無い人物がいた為に慌てる雛里。

劉備陣営は主力の愛紗が全く歯がたたず、こちらの損害が出ただけの初戦に激しく動揺していた。

〜孫策陣営〜

「姉様！また勝手に前線に出て、姉様の身に何かあったらどうするんですか？！」

「帰ってきて労いの言葉も無いの？！可愛げの無い妹ねえ、ねぇ冥琳あなたは心配してくれるでしょう？」

「全く蓮華様の言うとおりだ。お前は自分の身に何かあればどうするつもりだ？」

帰ってくるなり妹・蓮華にいきなりお説教をされそうになった為親友である冥琳に助けを求めたが逆に擁護どころか蓮華の援護に回られ劣勢になる。

「策殿、何で儂も連れて行ってくれなんだんじゃ？！」

祭は自分を置いて言ったことに不満を漏らし、

「雪蓮様、蓮華様の言うとおりです。少しは自重してください。」

思春からは蓮華達の更なる援護口撃、

「あははは〜、雪蓮様らしいですねぇ〜」

穏は雪蓮の行動に暢気に笑う。

一通り蓮華達のお説教が終わり、冥琳は雪蓮に感想を聞いた。

「でどうだった、雪蓮？」

「ん〜？やっぱり一刀は強いわね〜。全然本気出して無いんだもん。こっちの企みに気付いてるみたいだったし。」

「え？あれが姉様達が言っていた北郷なんですか？！」

「そうよ〜中々良い男でしょう？」

「あんな顔を隠している男のどこが良い男ですか？！分かるわけないじゃないですか！」

「分かってないわね〜蓮華は。男は顔じゃ無いわよ。」

「…姉様、ついこの間までは『男は顔だ』とか言ってませんでしたか？」

「今は顔を隠してるけど良い男よ一刀は。でもなんで顔を隠すのかしら？そんな必要ないと思うけど。」

「北郷にも色々と事情があるんだろう。その辺りはまた会った時にでも聞けばいいさ。」

「それもそうね。」

深く考える事を止め冥琳の言葉に相槌を打つ。

〜華琳陣営〜

「やはり出てきましたね。北郷は。」

「ええ、でも意外だったわ。一刀が前線に出てくるなんて。」

「？どうしてでしょうか。奴ならば他人を守る為に出て来ても不思議では無いはずですが…？」

秋蘭は華琳の言葉に疑問を抱く。

「前線に出てきたこと来る事自体不思議じゃ無いわ。問題はなぜ前線に出てきたかよ。」

『？』

一同は華琳が何を言いたいか分からず首を傾げる。

「つまりは董卓を助けるだけなら何もせず��水関・虎牢関を閉め切り、一刀なら裏方で時間稼ぎをして董卓達を逃がせばいいだけの事。」

『あっ！』

華琳の説明に一同は気付く。

「それではそれをしない理由がなにかあるという事ですね。」

「恐らくね。それがなんなのかは分からないけどね。ふふ」

華琳は一刀の狙いがなんなのか分からず困惑するどころか面白いとさえ思うようになっていた。

「それにしても愛紗が良い様にあしらわれていたわね。あれも一刀がやったのかしら？」

先ほど見ていた華雄と愛紗の戦いを思い出して言う。

「恐らくは。あの戦い方は一刀とほぼ同じですから。」

始めの方は様子を見て剣筋や体捌きを見てから攻めに転じる戦法を華雄もしていた事を言う。

「今の春蘭なら愛紗にも余裕で勝てそうね。じゃあ華雄相手ではどうかしら？」

「見ていただけで、実際はやりあってみないと分からないですが…私の方が僅かに上でしょうか。」

以前の華雄を知る者ならこれほどの変化と春蘭の意見に一同はそれほどのものかと驚く。以前の春蘭なら威勢良く「誰が相手でも勝つ！」と言っていたが一刀のとの鍛錬の末、相手への見極めが高められた。

「（その程度か関羽？ここでお前はやられるのか？！）」

そして愛紗が華雄にやられているのを見て歯痒い思いに駆られていた。

「全く一刀が敵に回ると厄介だわ。」

そう言いつつ華琳は楽しそうに微笑む。

まだ戦は始まったばかり…