真説・恋姫†演義 北朝伝 幕間の十三
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 時と場所は、一刀たちと曹操らによる、官渡決戦が終結して数日後の、許昌の街。一刀という新たな統治者を迎えた、それまで漢の都だったこの街の者達は、正直言って一刀たちを諸手を挙げて迎えた……とは言えなかった。

 『天に唾する反逆者なんかに、なんで従わないといけないんだ』

 ……と、はっきり面と向かってそれを言うことこそ無かったが、大多数の者達は、一刀による統治を受け入れては居ないことが、警邏のために街を巡回する、一刀を始めとした将たちには、そのことが良く感じられていた。

 

 「……ま、分かってはいた事とは言え、こうもあからさまな態度を取られると、やはりいい気分のするものではないな」

 「蒔ねえの言うとおりやな。……なんか解決策はないんか、輝里?」

 許昌の城中にある軍議の間。そこに一刀を中心とした、当時はまだ北郷軍という呼び方だった、その一同が集まり、臨時の会議を開いていた。最初にその口を開いたのは徐晃で、街の者たちの自分達に対するここ数日の態度を見て、珍しく少々辟易した感じでぼやき、その徐晃に同調した姜維が、一刀の右隣に座る徐庶に、何かいい手立ては無いものかと、そう問いかけた。

 「……蒔姉さんや由の言うことも分かるけど、こればっかりは時間をかけてゆっくりと、人々の心を溶かしていくしか無いわ」

 「……ですね。人の心だけは、策でどうにかできるものでもないですから」

 そんな風にため息を吐きながら徐庶が答え、そしてその後に司馬懿が、相も変らぬ鉄面皮のまま続いた。

 「……」

 

 その会議が行われた翌日。同じく許昌の城中に用意された、とある人物の部屋を、一刀は一人訪ねていた。ほんの一瞬だけ、その扉に手をかけることを躊躇した彼だったが、すぐに軽く頭を振って気を取り直し、扉を拳で軽く叩いた。

 

 コンコン。

 

 「はい。どなたでしょうか?」

 「えっと。北郷……ですけど。ちょっといいでしょうか?」

 「あ。どうぞ。いま扉を開けますね」

 ノックと一刀の声に答え、透き通ったその声で返してきた部屋の主が、扉に中からかけていた鍵を外し、訪問者である一刀を迎え入れるべく、部屋の扉を開けて出てきた。

 

 足首まで届くほどの長さの見事な銀髪。一刀とほぼ同じ程度の身長に、すらりと伸びた細い手足。そして何よりも、並の男なら誰でも目が行くであろう見事なまでの二つのふくらみを持った、その女性。魏王、曹孟徳の一族である曹仁、字を子孝その人である。 

 

 「……北郷さん?どうかなさったんですか?……私の顔に何かついてますか?」

 「え、ああ、いや、その。……すみません、貴女のその銀髪があまりに見事なもので、つい、目を」

 「あらそうですか?ふふ、そう言って頂けるのは嬉しいですわ。私もこの髪が何より自慢なので。……ところで、私に何か御用では?」

 「……えっと。その……急で何なんですけど、……よかったら、俺と街に出かけてくれませんか?」

 「……はい?」

 

 

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 所変わって許昌の街中。その中央をはしる大路を、一刀と曹仁の二人は、雑多に行きかう人々に混じって歩いていた。

 「……あの、北郷さん?」

 「ふぁい?おいひいでふよ、これ。貴女もどうでふ?」

 「……口の中にものを入れたまま話すのは、お行儀が悪いですよ?」

 「んぐっ。……すみません、ついいつもの調子で……で、どうです?おいしいですよ、この豚まん」

 「……いただきます」

 そんな感じで、二人揃って饅頭をほおばりつつ、たくさんの商店が軒を連ねる、その道を歩く二人。

 「ところで北郷さん?私をわざわざ街にさそったのは、こうしてお饅頭を食べるためだけなんでしょうか?」

 「んー。当たらずとも遠からず……かな?」

 「?」

 「お。あんなところに茶店があるな。よし、あそこでお茶しましょう。豚まん食べたらのど渇いたし」

 「……構いませんけど」

 と言うことで、二人揃って茶店に寄り、中でのんびり茶をすする一刀と曹仁。

 (……なにしてるのかしら、私)

 というのが、曹仁の正直な、現在の心境である。

 (今日の仕事もまだ終わったわけではないというのに、何故かそれをほっぽリだして、ほんの数日前までは敵だった勢力の君主に、かなり強引に引っ張られて街へと連れ出され、こうしてのんびりお茶なんかしている……)

 と、曹仁がそんなことを考えていたとき、不意に一刀が声をかけた。

 「そういえば曹仁さんって、華琳とは義理の従姉にあたるんでしたよね?」

 「え?え、ええ、そうですけど」

 「華琳の子供の頃って、どんな感じだったんです?やっぱり、やんちゃでお転婆だったんですか?」

 「お転婆って……まあ、否定はしませんけど」

 「はは、やっぱり。……さしずめ貴女は、華琳の押さえ役と言うか、お姉さんみたいな感じだったりしたわけですか?」

 「……そうですね。あの娘は当時から、周りと少しばかり、考え方が違ったものですから、理解者も友人も少なかったですし」

 そう言って、曹仁は少しばかり懐かしそうな表情になって、当時の事を簡単に話し始めた。

 

 

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 悪童というか、とにかく、子供の頃の曹操は大人の手にも負えない、いたずら好きな娘だったそうである。夏侯の姉妹を連れまわしての、子供同士で喧嘩などは可愛いもの。戦利品と称して喧嘩相手やその妹を強引に家に連れ帰ったり(その後何をしたのかは不明)。大の大人と賭けをして、勝てばその相手の家を自分の領地だといって、遠慮など何もする事無く遊びに行ったり泊まったりし、負けた場合は負けた場合で、平気で賭けそのものを無かった事にする。

 

 ともかく、いろんな意味で性質の悪い子供であったそうであるが、ただそんな曹操も、従姉であり姉代わりであった曹仁にだけは、全くといっていいほど頭が上がらなかったそうで、曹操が何かをしでかす度に、そんな彼女を叱り付けるのが、曹仁が子供の頃のほぼ日課であったそうである。

 

 そんなある日の事。曹操が洛陽の私塾から久しぶりに帰省していたある日、とんでもない騒動を、悪友であった袁紹と引き起こした。……結婚式からの花嫁泥棒未遂、という、前代未聞の悪事(本人自覚なし)をである。

 「あれだけ可愛らしい娘が、政略結婚の道具にされるのは不憫じゃない。だったら私の所で、何不自由なく暮らした方が、彼女のためにも私のためにもいいでしょう?」

 平然と。結局は失敗に終わった花嫁強奪のことを、そう言ってのけた曹操に、流石の曹仁も堪忍袋の緒が切れたそうで、こんな風に言って返したそうである。

 「……華琳」

 「な、何よ、彩香?またお姉さん風でも吹かせて、お説教でもする気なの?」

 「……貴女には、曹家の宗主として、それに十分たる器があるわ。けど、今のその器には、何も容れられないし、容れるに値する価値も無いわ」

 「……っ!!」

 「……今のが悔しいと、貴女自身が自覚出来ているのなら、その器、何処に出しても恥ずかしくない、価値あるモノへと磨きなさい。……自分自身の意思と力でね」

 その曹仁のお説教が効いたのか、曹操はそれ以降、その行状を改め、自身を律し、曹家の宗主たるにふさわしい人物へと成長した、とのことである。……ただし、曹操の根っからの可愛い娘好きだけは、結局治る事はなかったが(笑)。

 

 

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 「……人に人生あり、か。いやあ〜、いいお話を話を聞かせてもらいましたよ。ねえ、みなさん?」

 「そうですか、それは良かった……って、え?」

 ふと曹仁が周りを見渡せば。そこにはいつの間にか、同じ茶店内にいた人々が、うんうん、と頷きながら大挙して二人を取り囲んでいた。

 「いやあ〜、あの曹操さまからは想像もつかないお話だったよ」

 「ほんとほんと」

 「兄ちゃん、こんな面白い話を聞く機会を作ってくれて、ありがとうな?」

 「曹仁さま、これからも頑張ってくださいね?わたし、応援してますから」

 などなどと。今の話を聞いていた人々が、満面の笑顔で二人に対して気さくに話しかけ、一刀はそんな人々とあっさりと打ち解けて、更なる談笑に花を咲かせていた。

 「……(もしかして、北郷さんが私を誘ったのは……)」

 そんな一刀の様子を見て、曹仁は一刀が自身を街へ誘ったその思惑に、ようやく予測をつけることができた。

 (……街の者たちは、北郷さんたちをいまだ信用していない。そして北郷さんはそれを解決するために、わざわざ私を引っ張り出して、そのきっかけにしようとしたのね)

 でなければ、自身のような面白みの無い女など、北の精力魔人と陰で噂される彼が、誘ってくるはずも無いわね、と。……自身の心に生まれた、なんとなく面白くないようなそんな感情に、曹仁自身も気づく事無く、二人は暫く人々と語り合った後、茶店を出てまた別の場所を目指し、通りを歩き始めた。 

 

 そうして再び街を歩き始めた二人は、一件の衣装屋の前で、見知った顔を見つけた。

 「雹華じゃない。なにしてるの、こんなところで」

 「あ、彩香。それに北郷くんだ〜。な〜に?二人こそ逢引中かにゃあ〜?にゅふふ♪」

 「ばっ!何馬鹿なこと言ってるの貴女は!///」

 「あれ〜?彩香ってば顔真っ赤だよ〜?んふ〜、実は結構、まんざらでもなかったり〜?(ごちん!)あいたっ!いきなり叩かなくてもいいんじゃんか〜!彩香の暴力女〜!」

 「……もう一回殴られたいのかしら?」

 「ごめんなさい。調子に乗りすぎました。お許しください彩香お姉さま」

 「わかればよろしい」

 「は、ははは……」

 叩かれた頭を抑えつつ、そんな自分に迫力の篭った微笑を向ける曹仁に、ひたすら平謝りをする曹洪その人であった。

 

 

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 「……ほんで?実際のところ二人して何してんの?」

 「それは」

 「散歩にね、付き合ってもらっていただけだよ。饅頭食べたりお茶したりしながらね」

 「……な〜んだ、つまんないの〜。……あ、そだ。ねえ彩香、ここであったのも何かの縁だしさ、ちょっとだけあたしに付き合ってよ」

 がっし、と。そう言いつつ曹仁の手を掴み、半ば強引に、自身が立っていた衣装屋の中へと、引っ張り込んでいく。

 「ちょ、ちょっと?!衣装屋になんて私は用なんかないわよ!」

 「まーまー、たまにはいいじゃないの。彩香ってば、せっかく男どもの視線を釘付けにする、そんな容姿をしてんだもん。もちょっとお洒落とかに気を使ってもいいじゃん」

 「わ、私はべつにそんな、殿方にもてたいとかそういうのは」 

 「ね?北郷くんもそう思わない?彩香が、もっと自分の魅力を引き出せる格好しないのは、世の中にとって大きな損失だって」

 従妹にその手を引かれながら、店の中へ引っ張り込まれようとするのに、困惑した表情で曹仁が抵抗し。そんな従姉を何とか口説き、店の中へと連れ込むため、曹洪はそこで一刀に話を振る。異性である一刀から見ても、曹仁はもっと自分というものを自覚すべきだろう、と言って。

 「……まあ、確かに、俺もそう思うけど」

 「ほ、北郷さんまで……!!」

 「はいはい。そういうわけだから観念して、たまには女の子らしく、服選びに花を咲かせよう?」

 といった感じで、渋り続ける曹仁を無理やり店内へと引き込み、女子二人、従姉妹同士による服選びが始まったのであるが。

 「……ちょっと雹華」

 「なに〜?あ、もしかしてこっちのが良かった?それともやっぱりこっちの……」

 「だからちょっと待ちなさいっ!どうして貴女が選ぶ服って、こんなにその、だ、大胆な意匠のものばっかりなの?!」

 と。店内の更衣室前にて、何着かの服をその手にした曹仁が、従妹から手渡された何着かの服を手にした状態で、曹洪を激しく詰問する。それもそのはず。曹洪から、曹仁にぴったりだと言われて手渡されたそれらは、布地がかなり少なく、着用すれば肌の大部分が露出する、そんなお色気たっぷりの衣装ばかりだったのである。

 「そ〜お?私は単に、彩香の似合いそうな物を選んだだけだよ〜?その大きなおっぱいとか、細くて折れそうな腰とか、すらっとした長い脚を最大限に活かして、彩香の魅力を余すところ無く引き出せる、そんな服をさ♪」

 「……とか言って、ただ単に私で遊んでるだけじゃあ無いでしょうね?」

 「ぎく。……そ、そんなこと無いってば〜。ね、ねえ、北郷くんもこういうの、彩香に似合うとおもうよね?!」

 「ん?……うわ。またなんていうきわどいモノを……!ちょっと大胆すぎない?」

 「ふふ〜。とか何とか言いながら、じつは今その頭の中で、これを着た彩香を想像したでしょ〜?」

 「……いやまあ、その」

 「ちなみにご感想は?」

 「……ばっちりです/////」

 二人から少しだけ離れた位置で、店の主と何事か話していた所に、突然話を振られた一刀が二人の方を振り返り、曹洪が手に持っていたその大胆な意匠の服を見て少々驚くものの、その頭の中では曹仁がそれを着ているところを妄想し、ほんのわずかにその鼻の下を伸ばしたのであった。

 「だってさ♪よかったね〜、彩香。いっそのこと、これ着て閨にでも押しかけたら?北郷クンの事だから、それはもう一晩中寝ずに彩香のその肢体を(ぴー)して(ぴー)させて(ぴー)なことを……」

 「な、ななななななっ!!/////雹華!貴女は白昼堂々なんて台詞を……!!」

 「やははー♪彩香ってばまっかっかー♪相変わらずそっちの事には免疫無いねー♪ほんと、初心で可愛い♪」

 「……ひょ〜お〜か〜?(怒)」

 ごごごごご、と。そんな効果音でも聞こえてきそうな位、その体から憤怒の気を立ち昇らせる曹仁。それを見た曹洪は流石にちょっとやりすぎたと思ったらしく、店から慌てて出て行こうとする。……その腕に何かの入った袋を抱えて。

 「……えっと。そんじゃあわたしはそろそろ消えるね〜?あ、北郷くん?これの支払いよろしくね〜♪」

 「へ?え、ちょ、それの支払いって?」

 「彩香の可愛い一面を見させてあげた、その代金ってことで。それじゃあお二人さん、この後も楽しんでね〜♪ばいば〜い」

 たったったー、と。最後に二人に手を振って、曹洪は一目散に店から出て行った。……その後に残されたのは、ただ呆然と大量の服を抱えたまま顔を真っ赤にして、立ちつくす曹仁と。そして、『曹洪が買った』、数着の衣装代のその請求書を、店の主から真っ青な顔で受け取った一刀だけであった。

 

 

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 「……ごめんなさい、北郷さん。雹華にはあとで、きちんと代金払わせますから」

 「……いえいえ。まあ、その。彼女や曹仁さんと交流を深められた、その代金と思えば安いものですよ。は、ははは……」

 時刻は既に夕暮れ間近。先の衣装屋で(泣く泣く)曹洪の服代を払った後、一刀と曹仁は城へと帰還の途上にいた。

 「……あの娘はとにかく、ケチが服を着て歩いているよな娘なんです。たぶん、今回も最初からそれが狙いで、私を衣装屋に引っ張り込んだんでしょう」

 「……彼女、昔からああなんですか?その、お金への執着というか、えっと」

 「……色々事情はあるんですけどね。ただ、その理由は誰にも教えないと、あの娘と固く約束してるんです。……華琳もその事は知りません」

 その辺りの事情は、本人が話したくなったら、聞かせてくれますよ、と。そう言って、どこか寂しげな、それでいて優しげな表情をする曹仁。

 「そうですか。……さて。そろそろ戻りましょうか。これ以上遅くなったら、みんなに怒られますからね」

 「ですね。……あら?」

 「?なにか?」

 「……ごめんなさい、ちょっとだけ、最後にあの露天商を見させてもらっていいですか?」

 そう言って、曹仁は通りに筵を敷いて物売りをしている、その露天商の所へと足を向ける。愛らしさ満点ながらも、細かな細工の施された、指輪や動物を象った人形などの小物を、その露天商は扱っていた。

 「……(じー)」

 「え……っと。あの、曹仁……さん?」

 それら露天商が扱っている品を、その露天商の前に座り込んで、ただひたすら無言で見つめ続ける曹仁。で、ひとしきりそれらを眺めた後、彼女の口から出てきた言葉はと言うと。

 「……はわ〜////これ可愛い〜/////あら、こっちのは犬かしら?それとも猫ちゃんかしら〜。ああ〜もう、どれもこれも可愛くてよく出来てる〜……/////」

 「……」

 完全に呆気に取られた一刀の前で、普段からはとても想像のつかない、目をきらきらと輝かせて悶えているいる、ただの乙女な少女がそこに居た。

 「……(普段はクールで理知的なお姉さん。けど、愛らしい小物を見て子供みたいに目を輝かせるって、なんていう反則!なんていうギャップ萌え……!!)」

 と、曹仁とはまた違った意味で悶える、一刀だったりした。

 

 

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 「……その。お恥ずかしい所をお見せしまして……」

 その顔は真っ赤に。でもってその腕には大量の小物が入った袋を持って、ぽつりそんなことを一刀に呟く曹仁。結局、露天商が売っていた小物の内、そのほとんどを一人で買占めた彼女。ちなみに、全部ではなかったのは、単に所持金の問題なだけで、足りていれば確実に、店ごと全て手に入れていたと思われる。

 「その。小さい頃からこういう可愛い小物に目がなくて、ついわれを忘れてしまうと言うか。その、できれば先ほどの事は全て忘れていただけたらと……」

 「……はは。分かりました。誰にも言わずにおきますよ。……二人だけの秘密、ですね?」

 「……ありがとうございます///」

 そんな会話を交わしつつ、二人は夕日で赤く染まりつつある、許昌の城下を少々足早に歩いていく。街の家々からは炊煙が上がり始め、各所で店じまいをし始める店舗が出始める。彼らと同じく足早に路を歩く人々は、家族の待つそれぞれの家へと帰り、今日一日の疲れを癒すのだろう。

 「……北郷さん」

 「?はい、なんでしょう?」

 「……貴方の今日の目的、それは十分に達する事が出来ましたか?」

 「今日の目的……?」

 「……あの。北郷さんが今日、こうして私を誘って街に出たのは、少しでも街の人々と打ち解け、受け入れて貰えるようにするためだったのでは」

 「……ああ!そういえば、始めはそのつもりだったんだっけ。……すっかり忘れてた」

 「……は?」

 ぽか〜ん、と。思いもしなかった一刀のその台詞に、思わず口を開けて固まる曹仁。

 「でもまあ、結果的に街の人達とも多少は仲良くなれたとおもうし、曹仁さんや曹洪さんのことも、結構知る事ができたから、結果オーライってことで」

 「……おーらい?」

 「天の国の言葉で大丈夫とか良かったとか、そういう意味です」

 「……なるほど。けっかおーらい、ですか」

 「結果オーライ、です」

 あははは、と。今日一日の事を思い出しながら、一刀と曹仁は満面の笑顔をその顔に浮かべ、声高らかに笑いあうのであった。

 

 

 でもって、最後はそんな風に談笑しながら、二人は城へと到着し、それぞれの部屋へと戻るべく、軽く挨拶を交わして別れ……ようとしたのだが。

 「……お帰りなさい、一刀さん?」

 「……楽しい一日だったかの?一刀」

 「……そら楽しい一日やったろうなあ?……曹仁はんみたいな美人はんと一緒やったんやさかいなあ?」

 「……今日一日の武勇伝、聞かせてもらえるんだろうな?」

 『あ゛』

 城の入り口にて、二人を待っていたのは、何故かとってもいい笑顔をした、徐庶、李儒、姜維、徐晃、の四人だった。

 「曹仁さん。今日は一刀さんのお相手、大変ご苦労様でした」

 「あ、いえ、その、私のほうこそ」

 「後は妾たちがこやつにちょっと、オハナシがあるのでな?おぬしは風呂でも入って、ゆっくり休んでおってくれ」

 「そういうわけやから、カズ?ちょっと向こう行こうな〜?」

 「一応言っておくが、拒否権は無いからそのつもりでな」

 「……はい」

 

 

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 それからさらに数日後。

 

 「一刀さん?昨日の会議で決まった警邏の案件の資料をお持ちしましたよ」

 「ああ、ご苦労様です、彩香さん」

 

 許昌の城の一刀の執務室にて、曹仁は一刀の下の名前を、一刀は曹仁の真名を、互いに呼び合って政務の資料に目を通しながら、その場で話し合いを行っていた。……例の散歩に出た日の翌日。朝議が行われようとしたその場にて、突然曹仁の方から一刀に対し、その真名を預けたいと申し出てきた。

 

 「理由は色々とありますが、やはり決心をつけることが出来たのは、昨日の北郷さんと民の交わる様を見ていて、ですね」

 

 自身の身分を一切気にする事無く、人々と気さくに触れ合うその様子に、曹操とは違った王の姿を、曹仁は一刀に見たという。

 

 「……分かりました。俺が王の器かどうかはともかく、信頼出来る仲間が増えるのは何より喜ばしいですよ。貴女の真名、喜んで受け取らせていただきます」

 

 ちなみに、曹仁が預けるなら私も預けて良いと、その場に同席していた曹洪もまた、一刀にその真名を預けると言い出し、一刀のほうもそれを快く受諾。その場に居た全員と、真名を交換を行ったことを追記しておく。

 

 「……」

 「何か言いたそうだの、輝里よ」

 「……いえ、もういいです。一刀さんが一刀さんである以上、どうしようもないですから」

 「まったくやな」

 「……同感だ」

 「……ほんと。馬鹿ですね」

 「種馬だけにね。……やっぱりその内もいじゃおう♪」

 

 執務室内にて、一刀と曹仁のやり取りを見ながら、そう小声で話していた徐庶達であった。

 

 

 〜終わり〜

 

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 と言う感じの、彩香さん拠点だったわけですが、如何だったでございましょうか?

 

 ちなみに、彩香さんの生みの親であるSiriusさまからは、華琳に対するお姉さま風を吹かせるシーンがあったらいいな、というお言葉をいただきましたので、3p目のあのような回想シーンの中に入れてみました。ご満足いただけたら嬉しいですが、正直戦々恐々な心境ですw

 

 さて、次回の幕間は曹洪こと雹華のお話となります。

 

 生みの親のSiriusさまが描かれた彼女のイラストの中にあった、守銭奴というかお金にうるさいその理由を、ご本人からお聞きしたものにボクなりの設定を付け加えて、書いてみようと思っています。

 

 どんな感じに仕上がるかは、次回までのお楽しみってことで、ゆっくり生温かい目で見つつ、待っていてくださいw

 

 

 それではみなさま、また次回投稿にてお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 再見〜( ゜∀゜)o彡゜

説明
というわけで、この北朝伝での幕間も、これが最後のシリーズとなります。

まずトップバッターは、曹仁・子孝こと、彩香さんでございます。

一刀たちが官渡の戦いに勝利して、許昌へと入城して間もない頃のお話です。

もちろん、彼女の生みの親であるSiriusさまからは、許諾を得てこれを描かせていただいています。

いつもいつもほんとにありがとうございますwww

それでは今回のお話のほう、じっくりごらんくださいませw
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コメント
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO! Σ(゚д゚lll)ハッ 初コメこんなで申し訳ないwでも( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!(らっしぃ)
俺達の彩香姐さんが撃墜したぞ〜wwわぁいヽ(ω・ヽ)(ノ・ω)ノ わぁい♪ この調子で雹華も撃墜なるか?!(`・ω・´)キリッ(朱槍)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGETA!(通り(ry の七篠権兵衛)
そーいえば司馬懿ちゃんはデレたんでしょうか。(noi)
Siriusさま、ご満足いただけてなによりですwこれで胸のつかえが少しおりましたw 雹華のお話のほうはもう少々お待ちくださいませw(狭乃 狼)
( ゜∀゜)o彡゜MOGE・・っハ!?いけない。いけない。釣られる所だった。うん。いいですね彩香らしさが前面に出ていて面白かったです。次の雹華のストーリーも楽しみにしてます。(Sirius)
これはもう一番最初に一刀の子を授かった人が正妻という具合にでもしないと収拾つかないような・・・そして意外と瑠里辺りが勝ち取ったりして・・・。(mokiti1976-2010)
彩香も虜にしたか・・・。正妻候補がこれで三人目?修羅場だな〜。モゲテシマエ?(西湘カモメ)
モゲチマエ(VVV計画の被験者)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!の大コール! ほんと、ここの人たちはなんて訓練されたユーザーなんでしょwww でも、もうちょっとちゃんとした感想は欲しいかも・・・(え?贅沢?w(狭乃 狼)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!(ほわちゃーなマリア)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO! (大ちゃん)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!(道端の石)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!(kuon)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!(根黒宅)
雛里「あわわ〜 チ〇コモゲロ!?」(劉邦柾棟)
( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO!( ゜∀゜)o彡゜MOGERO! (アルヤ)
一気にみた!最高!一刀はもげたほうがいいと思う。うん。(たこきむち@ちぇりおの伝道師)
彩香も落ちたか。…モゲロ(量産型第一次強化式骸骨)
MOGERO!MOGERO!MOIJAE!(アロンアルファ)
果てしなくうらやましいのか迷う今日この頃 へう〜う〜音符( ゜∀゜)o彡゜(黄昏☆ハリマエ)
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