【銀英伝】とある日の双璧と
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久しぶりに俺の家で飲まないか?と誘われたミッターマイヤーは、ロイエンタールの邸宅にて黒ビールとワインで喉を潤していた。

ふと、腕時計に目をやると、時計の針は日付が変わるまであとわずかという位置を指していた。

「もう、こんな時間か……」

そう呟くと、座っていた黒い革張りのソファから腰を上げる。

「なんだ?もう帰るのか?」

「エヴァが心配するんでな」

疾風ウォルフの二つ名の他に愛妻家の異名を持つ若き提督は、ソファの背にかけていたコートを手に取り、勝って知ったる邸宅内を玄関に向かって歩み始めようとしていた。

「まぁ、待て。まだ残っているぞ。これを飲んでからでも遅くはないだろ」

ロイエンタールがまだ王冠を取っていない黒ビールの瓶を差し出すと、ミッターマイヤーは少し困ったような顔をして、その瓶を受け取る。

「エヴァには泊まらずに帰ると伝えてあるんだ。それを破るわけにはいかないだろう」

ミッターマイヤーが自身の妻であるエヴァンゼリンの愛称を口に出した途端、顔を見ただけでロイエンタールの機嫌が悪くなるのがわかった。

「そうやって卿はいつもいつもエヴァエヴァと……」

ソファに深く座っていた体を起こし、ミッターマイヤーの方に向き直る。

見上げる金銀妖眼にはいつもの鋭さは無く、目蓋は少し重そうである。

「奥方なんて家に帰ればいつだって会えるんだ。もっと俺をかまえよ、ミッターマイヤー。もっと俺にかまえよ」

言葉の最後の方は力無く、見上げていた視線も下がりそのまま項垂れる。

弱ったな……と視線を巡らし、ため息一つついてからミッターマイヤーは、項垂れたままのロイエンタールの隣に座り、声をかける。

「ようするに、寂しいんだな、卿は」

そう言われ、ゆっくりと顔を上げたロイエンタールは、ミッターマイヤーをじっと見つめ、口を開く。

「そうだ、寂しいんだ。だから、もっと俺の側にいて、俺をかまえ」

そう言うと、ロイエンタールは起こしていた体をミッターマイヤーの方に雪崩させる。

そのまま倒すわけにはいかないミッターマイヤーは、自分より12センチ高い身体を受け止めた。

先ほどの様な事をシラフでは絶対に言わない彼がその様な事を口に出すと言う事は……

「酔っ払いめ……」

すでに倒れこんだ先で寝息を立てている長身の友人に対して、一言二言文句を言いたいが、言ったところでなんの意味もない事を、経験上彼は痛い程よく知っている。

しょうがない……と言うと決心と共に、彼の手はテーブルの上に無造作に置かれていたヴィジィフォンに手を伸ばした。

 

説明
「ロイエンタールへの3つの恋のお題:駅の改札口で待っていて/もっと俺に構えよ/ずっと隣で笑っていて欲しい」から「もっと俺に構えよ」。
半分寝ながら書いたのでいつも以上にボロボロです。
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