俺の妹とあやせがこんなに可愛いわけがない |
第一章
外は雪が降っていて地面は白く染まっている。
俺はこの季節が苦手だった。
ピンポーン
玄関からインターホンが鳴り響く、なんだ?誰もいないのか?家を見回すと人の気配がない。
今日は今朝から桐乃も親父もお袋も留守みたいだ。
誰もいなかったので、しぶしぶ玄関を開けると、そこにはあやせが買い物袋を下げて立っていた。
「こんにちは京介さん今日は暇だったんで、お昼ごはん作りに来たんですが」
「おお、あやせじゃねーか」
あやせと恋人同士になって約2ヶ月。
最近はたまにこうして昼飯や夕飯を作りに来てくれている。
なんて家庭的な女性なんだ。
俺はあやせを家にあげ、すぐさまキッチンへ案内する。
あやせは慣れた手付きで袋から食材を出し、調理を始めた。
「何か手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。京介さんは甘いのと辛いのどっちがお好みですか?」
「うーんそうだな、あやせに任せるよ」
「もう、そういうのが一番困るんですからはっきりしてくださいね」
いつものようになんの変哲もない和気あいあいとした会話をし、あやせは調理を始めた
エプロンをしているあやせは、とても魅力的で、俺は顔がニヤケるのを必死でこらえた。
そうだな・・・何もすることが無かったので、新聞でも見るかと新聞を開き、今日のテレビ覧を見ていた。
後ろからはトントンと軽快な音が聞こえる。
トントントントントントントントン
「お、今日は加奈子やブリジットちゃんの出る特番があるじゃねーか、こいつらすげぇ売れて来たじゃん」
トントントントントントントン
「今度会ったらサインでもねだってみるか?」
トントントントントントン
「なぁ?あやせ聞いてるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・?」
後を振り返るとあやせがいない
「なんだ? トイレでも行ったのか?・・どこいったんだあいつ」
後を確認してまた新聞に顔を戻そうとしたその時だった。
「ここにいますけど?」
あやせは、俺の目の前に立っていた。
「うわぁ!!」
「ば、ばか脅かすなよ」
「・・・・・?」
なんだろう・・・様子がおかしい前髪が下がっていて表情が伺えない。
「ど・・・どうした?あやせ・・・そんな下向いて」
目線を下ろすと右手にはさっきまで調理に使っていたであろう包丁が握られていた。
だがそれに気づいた時には。
も う 手 遅 れ だ っ た 。
ド ス ッ
一瞬何が起こったのかわからなかった・・鈍い音がした後あやせの手が、体が、真っ赤に染まっている
「うっ!!・・・・あ・・・・が・・・・あやせ・・・どうして・・・」
顔を下げるとそこには、俺の腹に刃がぐッサりと刺さって、傷口から血がどくどくと滲み出てきている
「アハハ・・アハハ・・・京介さん・・・言ったじゃないですか」
「大学に落ちたら・・・・・・死んでもらうって」
「アハッ・・アハハハハハハハハハハ!!」
ドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッ
意識が飛ぶ瞬間・・・血だらけのあやせの表情に光は無く、ただ不気味に笑う口元が気持ち悪くて、
――――吐き気がした
・・・・・・・・・・・・・・・・
ドシャッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ガ バ ッ ! !
「は、はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」
「はぁ・・あっ・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・なんて悪夢だ」
真冬だと言うのに、全身を汗でぐしょぐしょになった状態で目覚めた。
「落ち着け・・・ここは現実だよな・・・」
両手でこめかみをぐっと押さえ動揺した心を落ち着かせる。
「はぁ・・は・・・ふぅ」
今の状況を説明すると、センター試験を乗り越え、2次試験が終了し、後は結果待ちの状態だ。
現在あやせとはあまり会えてはいない。最近はメールや電話もしていない。
それは受験に専念するためで、けして中が悪くなったわけでも、嫌われたわけでも、愛想つかされたわけでもなく
ただ会っていない。
元々俺は恋人同士の関係は今回が初めての事なので、正直言うと上手く付き合い方がわからないというのもある。
大体クラスが違うどころか学校も違うし、この年で3つも離れてるというのは結構でかい。
すれ違いなんかもおきやすいだろう。俺は携帯の電源を入れようか入れまいかずっと迷っていて・・・
「おいコラバカ兄貴」
ポカッ
「痛って何すんだよ!」
「あんたねぇ・・・自分の部屋にこもってはうじうじうじうじ!!」
「見てるこっちが腹たって来るのよ!!」
「うるせぇな・・ほっといてくれよ・・・」
いつ入って来たのかわからないが、普段着で、この寒い日だというのに足がおもいっきり出るような
短いズボンを履いている。いつもは俺のこと気持ち悪がってるだけなのに、うじうじしているのが気に食わないという理由でちょっかいを出して来た。
「で?・・・その・・・」
「なんだよ」
「自己採点どうだったの?」
「自己採点?・・ああ二次試験の事か、」
「・・・・・・・・・」
「・・・・さぁ」
「はぁ!?あんたあんだけ勉強してきたじゃない、それで上手く行かなかったって言うの!?」
「うるっせぇなぁ・・・いいじゃねーか俺が大学受かろうが落ちようがお前には関係ねーだろ!」
「なっ!!」
桐乃は目を見開いてびっくりした表情を一瞬見せたが、すぐに顔を真っ赤にして怒りの表情になった。
「ぐ・・・この・・・・」
「なんだよ?それとも何か? お兄さんが心配なんですか?ブラコンだったのか?お前」
ゲシッ!!
「ぐはっ!!」
いきなり俺の顔を素足で蹴り飛ばした。
「ふん、やっぱキモ・・もう知らない・・好きにすればぁ?」
俺を蹴り飛ばしたと思ったら急に興味を無くしたようで、すんなりと部屋を出て行った。
バタンッ!!!
「うわっ」
壊れるんじゃないかってぐらい大きな音を立ててドアを閉めて行った
なんなんだよあいつ。
どうせ何しようが試験は終わったんだ、今更もがいた所でもう何も変わらない。
試験の手応えの話だが、今の状況を一言で説明すると、『厳しい』だ。
無理していい大学を選んでしまったのが失敗だったんだと思う。
大きな問題がどうしても解けなかった。
一生に何度あるか分らない人生の分岐点。
選択枝を誤ったのかもしれない。
その後だらだらと一日を過ごす。
夕方になった。
「はぁ・・・」
試験が終わった俺は、合格発表を待つだけで、学校も登校することはあまりなくなっており、
自分の部屋にこもってるわけだが、自分にそんな一人でする趣味もなく、何をするかと言えば、
ベットの下のダンボールを出して、
エロ本を・・・
トタタタタ
ガチャリ
「エロゲーやるわよ!!」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
いきなり桐乃が部屋に入って来ていた!!
「ひゃっ!あ、ああああアンタ何やってんの!?」
いきなり部屋に入ってきた桐乃は顔を真っ赤にして動揺していた!!
「バッおまっ!ノックぐらいしろよ!!」
「ふ・・ふーん私が隣りにいるっていうのにそんな事するんだ?・・・ど変態!!」
「いやいや、俺はまだ何もやってねーだろっ!!へん、何を根拠にそんなこと言うんだよ!!」
顔を真っ赤にして桐乃は怒ってる。
なんだ、こいつは何がしたいんだ!? いい加減ほっといてくれ!
ここからまた蹴られる覚悟をして、衝撃に備える構えをとって目をつぶったのだが、何もおこらない。
薄目を開き、桐乃の表情をうかがうと、
意外にも桐乃は怒りを我慢して、手に持っているノートパソコンを開いて見せた。
「フゥー・・・フゥー・・・・・・・ま、まぁいいわ・・・今からエロゲーやるって言ってんの」
俺はもうどうとでもなれと言う気分で、兎に角この状況から一秒でも早く開放されたくて、桐乃に言われるがまま、
2人でエロゲーをすることになったのだった。
ゲームを開始して数十分
そこには、あやせ似の黒髪ロングのキャラクターが、妹の前で主人公とHをしていた。
『あ・・あん・・・いや・・・雪乃が見てるから・・・』
『いいんだよ、見せつけておけば、ほら!』
『あん?・・・あ・・ふわぁ・・・激し・・あん、あん』
「ちょっとまて!!なんだこのゲームは!!」
妹と一緒にエロゲーをやってる時点でもう十分におかしい状況だと思うんだが、よりにもよって
妹の前で兄が彼女とHするシーンに行かなくてもいいんじゃないだろうか!?カオスすぎるだろこの状況!!
「あのさぁ・・・スキップしてもいいかな?」
「はぁ?スキップなんて作ってる人に失礼よ!未読文スキップなんて邪道なことありえないでしょ」
俺は、この状況をいたたまれなくなって当然の申し出をしたのだが、当たり前のように断られた
「ちなみにこのゲーム、そういうゲームだから」
「へ?」
「『A・NTR』通称兄寝取られゲームよ」
・・・・・・・・・・・
だれだそんな無茶苦茶なゲーム作ったのは・・・今はこんなのが人気なのか?
分からん・・さっぱり分からん。
「ちなみに妹寝取られゲームもあるわよ?」
・・・・・・・・・・・
これを買った桐乃も一体何考えてるんだろうか・・・妹ゲーならなんだっていいのかよ。
俺は、いい加減気まずさと居心地の悪さから逃げたかった。
気まずいなんてレベルじゃねーぞ、はっきり言って拷問だ。
一体何がしたかったんだコイツは・・・
「あ、あの」
数時間後、ひたすらクリックを続けている状況から不意に桐乃が声を出した
「うわっ」
「なによ、そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「急にしゃべるからびっくりしただろ」
「その・・・今週の土日って・・・暇?」
「は?いや、特に用事はないけど」
「温泉行かない?」
・・・・・・・・・・
一体何を言い出すかと思えば温泉だと?
それともなにか?妹と一緒に温泉に行けと?ホワイ?
どうも今日一日桐乃の様子が変だと思ったらもしかしてこれが言いたかったのか?
「・・・俺と2人でか?」
「ば、馬鹿じゃないの!?なんであんたと2人で温泉旅行なんて行かなきゃいけないのよ
気持ち悪い事言わないで!」
「そ、その、沙織が知り合いに温泉旅行の団体券を貰ったから、皆で行こうって話になったの」
「まぁあんたは別に連れて行かなくてもいいんだけどぉ、どうしてもって言うんならつ、つつつ連れてって上げてもいいわよ?」
桐乃は、かなり挙動不審な様子でポケットから一枚の紙切れを俺に渡した。
なにやら温泉旅行のしおりらしく、そこには
『ドキッ?!高坂家と田村家の住人だらけの温泉旅行♪』
ポロリもあるかも!?
と書かれていた。
・・・・・・・なんじゃこりゃ?
高坂家と田村家?ってーことは何か?家族連れで温泉旅行に行くって話か?
だいたいなんだこの『ドキッ?』っての。このメンバーにドキッ?とする要素なんてねーぞ。
「一泊二日の温泉旅行よ。うちら家族と、田村家と、それに黒猫や沙織も来るって言ってたわ」
「まだスケジュール次第では増えるみたい」
「そりゃまた大勢だな」
「参加人数が結構な数行けるらしくて、どうせなら知り合いに声かけてみようってことになって」
「へぇ」
「そ、それで・・その・・・どうなの?」
桐乃は眉間にシワを寄せて俺の返事を待った。
なんだろう、もしかして今日一日俺にちょっかい出してきたのは、これが目的だったんじゃないだろうか?
「お前ねぇ・・旅行行って欲しいんなら行ってくれって最初からそう言えよ」
「は、はぁ!?声かけたのはたまたまに決まってるでしょ!?変な勘違いしないでくれる!」
「・・・・・・・・・・・」
「・・ったくもういい、分かった、行く、行くに決まってるだろうが」
そう言うと桐乃のこわばった表情がほっと安堵した顔になった。
桐乃に言いたい事は山ほどあったが、喧嘩になりそうなのでやめておいた。
旅行に行く前にこれ以上中悪くなりたくない。
だいたいそんな大人数で行く旅行をのけものにされた方が傷つつくぞ
もしかしたら、憂鬱な日常を送っている俺のために裏でいろいろ動いていたのかもしれない。
そんな桐乃なりの心遣いに、水を差すわけにはいかないと思った。
だが、その時俺は気づいてはいなかった。これから始まる本当の悪夢に。
―――そんなわけで、今回の温泉旅行が始まったのだった。
【つづく】
予告イラストです。次は割と力入れてるのでよろしくです。
説明 | ||
新シリーズ作りました。一応前回の続きです。 なんか前見た人にヤンデレじゃないあやせなんて・・・と言われたので冒頭こんなんなっちゃいました(笑) でも最初だけで今後はこういうのないです。 ■続きの2章は9月10日俺妹9巻の発売日に合わせて上げようと思います。 | ||
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いろいろとまずいだろ(VVV計画の被験者) | ||
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