そらのおとしもの二次創作 〜エンジェロイド改造計画 桜井家編 そのに〜
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「これは由々しき事態ね〜」

 ミカコの言葉は私達の現状を明確に物語っていた。

「イカロスちゃん、桜井くんの状況は?」

「はい。マスターは拘束して保健室に隔離、カオスの相手は部長さんがしています」

「そう。守形くんならうまくやるでしょう、私達はここで今後の作戦を立てるわよ〜」

 そして私達は会長の生徒会室で作戦会議を行っている。

 この場にいるのは私とアルファー、デルタにソハラ。そしてミカコの五人だ。

 もちろん集まっている理由は他でもない。驚異的な新兵器を導入してきたカオスへの対策についてである。

 今、私達桜井家のエンジェロイドは危急存亡の時を迎えていた。

 

 

 

 〜エンジェロイド改造計画 桜井家編 

  そのに おしゃれをしよう!〜

 

 

 

 

 今朝、トモキを訪ねてきたカオスは恐るべき機能を搭載していた。

 それは自分の衣服を瞬時に更新するお洒落機能だった。

 トモキはカオスに籠絡されつつある。だってカオスが着替えるたびに慌てて止めているのだから。

 このままだと自分のリビドーを抑えられないから、必死にカオスを止めようとしているのだろう。間違いない。

 

「トモキのロリコン属性は私が開発してきたっていうのに…!」

 このままではカオスに美味しい所をさらわれてしまう。早く何とかしないと!

「会長。ニンフさんが何やら不穏当な発言をしているんですけど」

「今回はスルーしましょう。ニンフちゃんは相当焦っているみたいね〜」

 ソハラとミカコが何か話し合っているけど無視。とにかくカオスへの対策が急務だ。

「それじゃあ、午後からのプール授業について作戦のある子はいるかしら〜?」

 午後はプールの授業。カオスは午前の授業で見せたスクール水着でトモキを誘惑するに違いない。

 対する私達は普通の水着。正面から勝負するにはハンデが大き過ぎる。

 こんな事ならもっと手持ちの服を増やしておくべきだった。そもそも私達はお洒落に対する関心が低過ぎたのだ。

 私は普段着(シナプス製)とトモキが見つくろってくれた(ここ重要)私服が数点。

 アルファーもソハラが勧めてくれた服装意外は私と大差ない。

 デルタにおいてはそもそも服を買うお金もない。

 だからこそカオスのお洒落機能は想定外の攻撃だった。

 このままだとトモキがカオスに取られてしまう! この場はもはや―

「とりあえずトモキごと殲滅して、滅殺して、焼却するべきじゃないかしら…?」

 とにかくカオスの排除が最優先。少々トモキを巻き込んでも取り返しはきくんじゃないだろうか?

「何言ってるんですかニンフ先輩!? そんな事したら学校まで壊れちゃいますよ!?」

「そうよ、ニンフさん。学校が無くなったら困るわ!」

「学校を壊すと、マスターに怒られる」

 くっ! 確かにそれは世間的に目立つし拙いかもしれない!

 ちなみにトモキ自身の心配は誰もしない。どうせ死んでも次回になったら何事もなかったかの様に蘇生するからだ。

「落ち着いて、ニンフ。できるだけ穏便に済ませる方法を取らないと、駄目」

 確かにアルファーの言う通りだ。

 下手に騒ぎを大きくするとトモキに怒られてしまう。出来ればそれは避けたい。

 少し悔しいけど、アルファーはまだ冷静さを保っているらしい。

「マスターを屋上に呼び出して、全員で調きょ…お仕置きをする。これなら学校に被害はでない。無問題」

「それ問題しかないわよ!? というか今調教って言おうとしたわよね!?」

「…ノーコメント」

「調教ってなんですか?」

「アストレアさんは知らなくてもいいの! イカロスさんも落ち着いて!」

 前言撤回。アルファーも冷静な判断ができていない。しかも私と違って怒りの矛先はトモキの方らしい。

 一見無表情に見えても内心は腸(はらわた)が煮えくりかえっているのかもしれない。

 

「やはり目には目を、歯には歯をしかないかしらね〜」

 このままだとまともな案が出ない事を悟ったのか、黙っていたミカコが口を開いた。

「と、言うと?」

「お洒落にはお洒落で対抗するという事よ。服なら会長が貸してあげるわ〜」

「本当ですか会長!?」

「ええ、これでも色々と集めているから期待してね〜」

 ミカコの私物というのが少し気になるけど、この際だから贅沢は言えない。

 今から家に帰って自分の私服に着替えていたんじゃ遅すぎるし、新鮮さも足りない。

「分かったわ。私もその作戦を支持する」

「私も、賛成します」

「師匠の作戦を信じますっ!」

「私もお願いします会長!」

 ここに私達四人の戦士はカオスとの開戦を決意する。午後のプール授業、そこが決戦の場だ。

「それじゃあいくわよ〜。空見〜」

『ファイッ! おおー!』

 全員で肩を組んで声を上げる。私達の士気は極限にまで高まっていた。

 

 

 …今になって思う。そんなテンションだったからこそあんな馬鹿な事をしたんだろうな、と。

 

 

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 こんにちは、智樹です。

 今、僕は保険室にいます。それもちょっと特殊な状況下で。

 

「…カオス、お前はチェスをした事があるんだな。それもかなりの経験があるだろう?」

「うん。時々マスターとやってるの」

 目の前ではカオスと守形先輩がチェスで盛り上がっていた。

 一切の身動きが取れない俺はそれを眺める事しかできないわけで。

「シナプスに地上とつながる娯楽があるとはな。他にもあるのか?」

「うーん、わからない」

「そうか」

 どちらかと言えば先輩はカオスから聞けるシナプスの事に関心があるみたいだけど。

「ねえお兄ちゃん。それ苦しくないの?」

 カオスが少しだけ心配そうにこちらを見る。

 俺がロープでがんじがらめにされている事が気になるのだろう。

「はっはっは。これくらいはいつもの事だから、ちっとも辛くないさ」

「そうなんだ」

 そう。ちょっと動けないだけで、こんなことは日常茶飯事だ。 

 会長の折檻やそはらのチョップ、未確認生物達の破壊行為を日々味わっている俺にはむしろ今の状況が平和に感じるくらいだ。

 

 ………平和って、なんだっけなぁ。

 

「美香子の事だ、そろそろ行動を起こすだろう。おそらくプールの時間に仕掛けてくる」

「ですね。一応聞きますけど、助けてくれます?」

「無理を言うな」

 先輩の答えは予想の範囲内の物だった。

 守形先輩が会長より立場が強ければ、そもそも俺がこんな目に遭う事はないだろうし。

「きっとお前はそういう星の下に生まれてきたのだろう。諦めろ」

「だからってその言い方は理不尽過ぎる! 少しくらい同情してくださいよ!」

「無理を言うな」

 え? それも無理なの?

 つまり俺は同情される価値もないって事なのか?

「ねえ、お兄ちゃん」

「ん?」

「困ってるなら、私が助けてあげるよ?」

 カオスの表情は真剣だった。だから俺は。

「…いや。これも遊びなんだよ」

 苦笑しながらだけど、俺はそう答えた。

 別に本気で困ってるわけじゃない。それこそいつもの事なんだから。

「そうなの? 地上の遊びって難しいのね」

「そうだな。智樹の遊び方は特殊すぎる」

「先輩の幼馴染の方がよっぽど特殊な遊び方してますからねっ!?」

 そもそも俺が学校で一番被害を被る相手は間違いなく会長だ。

 あの人に常識というものが備わっていれば俺の苦労はかなり減っているハズである。

 

 それにしても少し遅いな。

 そろそろ午後のプールの時間だから、誰かが迎えに来ると思うんだけど。

「あの、失礼します…」

「ん? 風音?」

 保健室の扉を開けて入って来たのは予想に反して風音だった。

 てっきり会長本人か、そはらが来ると思っていたんだけど。

「会長から、桜井くんを連れて来て欲しいって言われて…」

「ああ、やっぱそうか。んじゃ行くか」

「あ、あの、いいんですか? きっと会長は、その…」

 そう、きっとプールには俺を苦しめる会長の罠が待っている。そこは公開処刑場も同然だ。

 風音もそれに薄々感づいているんだろう。だから心配して俺を止めようとしてくれている。

「大丈夫。分かってるって」

 だけど俺は何事もないように笑った。

「まったく、会長も意地が悪いよな」

 確かにこれが会長本人かそはらだったら俺は逃走したかもしれない。

 でも、風音が相手だと逃げたら傷つけてしまうかもしれないし。

「やっとプールなんだね? 楽しみだなー♪」

 カオスが楽しみにしている以上、そもそも俺に逃げるという選択肢は無い。

 

 こいつにはもっと楽しい事や嬉しい事を教えてやりたいんだから。

 …ただし、これからプールで行われるであろう事が世間一般とは異なる事も教えないといけないけど。

 

「智樹、遺言があれば聞いておくぞ?」

「やっぱり先輩は会長の幼馴染ですよね!」

 本当、二人はこういう容赦のない所がそっくりだと思う。

 

 

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「…なんじゃこりゃ」

 大人しくプールサイドに来た俺を待っていたのは、ミスコンに使う様な巨大なセットだった。

 今は垂れ幕で壇上の様子は見えないけど、きっと会長達はここにいるのだろう。

「おっきいねー、これで何するのかしら?」

「そ、そうですね。いくらなんでも拷問器具とかは置いて無いと思いますけど…」

 …やっぱり帰ろうかな。どう見ても嫌な予感しかしないし。

 あと、風音から決して聞いてはいけない単語が聞こえた気がする。きっと気のせい、だよな?

 俺が逃げるかどうか迷っている間に、垂れ幕が上がり始める。ああ、こりゃもう逃げられないか…

「第一回〜。 チキチキ、お洒落選手権〜!」

 ファンファーレと共に壇上に姿を現した会長は、俺を見つけるとにっこりとほほ笑んだ。あれは悪魔の笑みだ、間違いない。

「今回はお洒落をテーマにしたコンテストよ〜。優勝者にはもれなく桜井くんを自由にできる権利を進呈するわ〜」

「初耳ですし了承もしませんからね!?」

「その代わり桜井くんには特別審査員を務めてもらうわ〜。参加者のアピールを受けてもらう権利があるわよ〜」

「…むぅ」

 それは美味しいかもしれない。

 どうせ参加者はイカロス達だろう。あいつらがお洒落をして俺にアピールするなら役得じゃないか?

 いや、そもそもこれってカオスのお洒落に触発されたあいつらがそれを披露したいだけじゃないのか?

 だとしたらそれは歓迎すべき事だ。あいつらにも年頃の女の子らしく振舞いたいという考えが生まれたって事だから。

「…仕方ないからその役、受けますよ」

「それは良かったわ〜。やっぱり桜井くんは優しいわね〜」

「そりゃどうも」

 きっとプロデュースは会長とそはらだろう。会長は不安だがそはらは信頼できる。

 それなりに平和な催しになるんじゃないだろうか?

「それじゃあ、さっそくコンテストを始めましょう〜」

 会長の宣言と同時に舞台が暗くなり、暗闇から一人目の参加者が出てくる。

 さて。イカロス、ニンフ、アストレアの中で誰が出てくるのか…?

 

「エントリーナンバー1番は、見月そはらさんよ〜」

「ぶふぉっ!?」

 俺は勢いよく鼻血を噴き出した。

 予想に反して登場したそはらは、何故かバニーガール姿だった。 

 

「それじゃあ、アピールポイントを…」

「待ったぁ!」

 当然ながら待ったをかける。いや待て。本当に待ってくれ。

「何かしら〜? まさか桜井くんったらいきなり優勝決定宣言?」

「ええっ!? そ、それは困るっていうか困らないっていうか…」

「違うわっ! そはらもモジモジすんな!」

 はっきり言おう。そはらのバニー姿は強力だ。

 ただでさえでかい胸がこれでもかと強調され、ぴっちりと足に張り付く網タイツが俺を誘惑してくる。

 …だがしかしっ!

「なんでお前が参加者側なんだよっ! というかそれお洒落じゃないだろ!」

 何よりツッコミが先だ。そうしないとカオスに間違ったお洒落を教えてしまう。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

「ん? 今忙しいから後でぶはぁっ!」

「どう? ソハラのお姉ちゃんとお揃いだよ?」

 とっくの前にカオスはバニーガールへと着替えを完了していた。くそ、遅かったか!

「さ、桜井くん。私も着替えたんだけど、似合ってるかな?」

「なんで風音までぶふぁっ!」

「カオスさんからプログラムをコピーしてもらったんだけど、いけなかったかな…?」

 すっかり忘れていたけど、そういえば風音もエンジェロイドだった。

 そしてすでに本日三回目の鼻血噴出。初っ端からこれでは俺の命が危ない。

 というかシナプスのマスターはこんなものまで用意していたのか? 何に使う気だったのか激しく気になる!

「うう。こんなにもあっさり出番と注目を奪われるなんて…」

 そして俺を苦しめた張本人であるそはらはがっくりとうなだれていた。

 なんというか、すまん。

 

「それじゃあエントリーナンバー2番は、アストレアちゃんよ〜」

「はいは〜い! これで智樹もイチコロよっ!」

「………」

 意気揚々と壇上に上がるアストレアの衣装は、バカ殿だった。

 

「ふふん。どうよ?」

 ドヤ顔で俺を見つめるアストレア。とりあえず俺が言える事は一つだ。

「それもお洒落じゃねぇ! コントでもする気かバカ!」 

「なによ! バカって言う方がバカなのよ!」

 バニーからいきなりドリフ路線への変更。まったく意味が分からない。

 駄目だ。この後に続くイカロスとニンフもろくな服を着ていない気がする。

「う〜ん。アストレアお姉さまの服は持ってないわ」

「そうですね。残念です」

 あってたまるか。

 カオスと風音があんな恰好をしたら俺は自らの死を選ぶだろう。

 

「さあ、そろそろ真打ちの登場よ〜。エントリーナンバー3番はイカロスちゃ〜ん」

「…マスターを、お注射です」

 静々と壇上に登るイカロスはナース服だ。

 もうこれはお洒落コンテストじゃなくてコスプレショーだ、というツッコミはしないでおく。今更だし。

 

「…まあ、ありだな」

 こうなったらこのショーを楽しむしかない。そういう意味ではイカロスのナース服は十分にありだ。

 いつもの服より露出が少ないハズなのに、妙に興奮してしまうのは何故だろう。

「…マスターを、お注射です」

「…で、イカロス。そのバカでかい注射は何だ? あとその言葉使いおかしくないか?」

 イカロスの持っている注射は俺の身長くらいの大きさだ。あんな物は普通に考えれば使えるハズもない。

「…マスターを、お注射です」

 それなのに何故イカロスはそれを持って俺に迫ってくるのだろう?

「おい待て! その中に何が入ってるんだ!? そんなもんを俺に刺す気か!?」

「…マスターを、お注射です」

 微妙におかしな言葉使いを直す気は無いらしい。

 そして相変わらず無表情なハズのイカロスから怒りの波動を感じるのは何故だろう?

「あった! これでお揃いよイカロスお姉さま!」

「あ。これ中に入っているは空気ですよ?」

 そしてカオスと風音がイカロスと同じナース服で俺の逃げ道をふさぐ。

 そうか、注射の中身は空気か。それは間違いなく死んじゃうね。

「…マスターを、お注射です」

 あ、思い出した。あの言葉使いって某暗黒メイドの真似なんだ。

 イカロスも萌え文化を理解しようと必死なんだなぁ。

 

 空気注射(特大サイズ)三本は流石にきつかった。

 良い子の皆さんは決して真似しないでください。本当に死んじゃいますから。

 

 

「桜井くん、生きてる〜?」

「………イエス、マム」

 会長の声に辛うじて反応できた。生きてるって素晴らしい。

「最後の参加者、エントリーナンバー4番はニンフちゃんよ〜」

「………(モジモジ)」

「………ごハァッ!」

 裸エプロンに二―ソックスのコンボは反則だ! ルール違反だ! つまりエロい!

「は、恥ずかしいからこっち見ないでよ!」

「大丈夫よ〜。ちゃんと下着は身につけてるわ〜」

 いや、無理。下着とかそういう問題じゃなくて無理。こんなもん欲情を抑えきれるか! 

 くっ! 耐えろ! カオスや風音の前で色欲を解放したら俺の人としての最期の一線が!

「あのさ、トモキ…」

「二、ニンフ…」

 ああ、やめてくれニンフ。気持ちは嬉しいけど俺は―

 

 

「はい、あーん」←手料理(暗黒物質)を食べさせようとするニンフ

「………っ!」←無言で逃げる俺

 

 

「うふふ、待ちなさいよトモキ♪」

「いやだ! お前の料理って絶対人間の食べ物じゃねぇ!」

 ここでニンフの手料理なんて反則だ! ルール違反だ! つまり死ぬ!

「カオス、そっち抑えて」

「はーい。ニンフお姉さまともお揃いがあって良かったわ」

 いや、無理。カオスまで加わるとか無理。こんなもん逃げ切れるか! 

 くっ! 耐えろ! きっと風音が止めてくれると信じて最後の一線を守りぬけ!

「あの、桜井くん、胃薬用意しておきますね…」

 最後の希望は断たれた。あとは俺の胃袋が暗黒物質に耐えられるか祈るのみ。

「トモキ、あーん♪」

 

 今回の戦績。

 3分47秒。桜井智樹KO負け。

 

 

 

「…殺せ。もう楽にしてくれ」

「あらあら〜。さすがにギブアップかしら〜?」

 自分が生きているという奇跡に感謝したい反面、いっそ死にたいとも思う。

 この歳で人生の生死について考えるなんて思ってもいなかった。

「それじゃあ、そろそろ終わりにしようかしら〜」

「か、会長、まさか…」

 そう言いながら会長が自分の服に手をかける。

 いけない! これ以上は俺の理性が持たない!

 ただでさえ生死の境で性欲が高まっているというのに! 

「うふふ。最期は会長が止めを刺してあげるわ〜」

「や、やめてくれぇ!」

「さあ! 桜井くんのリビドーを解放するのよ〜!」

 会長が上着を脱ぎ捨てる。ああ、もう駄目だ…

 

「そーれ、御開帳〜」

 会長の服装は『いつもの』ボンテージ、女王様スタイルだった。

 

「………はぁ〜」

「…そのため息は何かしら〜」

「いや、その格好ってわりと見慣れてますし」

 いつも会長が俺を折檻する時とちっとも変わらない。

 てっきり全裸とか紐パンを期待していたのに、残念だ。

「その反応、やめてくれないかしら〜。それだと会長が他の子より魅力が無い様に見えちゃうわ〜」

「あはは。いやですね会長」

 

 

「そんなの、当たり前じゃないですか」

 

 

「英くん。ちょっとチェーンソーとって〜」

「俺の私物だ。できれば壊さないでくれ」

 守形先輩から会長にそっと手渡されるチェーンソー。

 なんでそんな物を持っているんだと聞くのは野暮なんだろうな。

「そ〜れっ!」

 可愛い子ぶった掛け声と共に、ドルゥゥンと勢いよく起動する電動伐採殺戮兵器(会長専用)。

 俺の目の前で本日最後の地獄の門が、開いた。

 

 

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 同時刻、シナプス。

 

「…ふむ」

 地上(正確にはカオス)の様子を見守っていたマスターは、ようやくモニターから目を離した。

「とりあえずサクライトモキを阿鼻叫喚の地獄へと落とす事はできた。作戦はかろうじて成功だろう」

「ええぇー…?」

 元々マスターの目的はアルファーを始めとするダイダロス製エンジェロイドの破壊じゃなかっただろうか?

 最近のマスターはサクライトモキに執着し過ぎていると思う。

『…まあ、そういう事にしておきましょう』

「カオスも後に帰還するだろう。今度はよく言い含めておかないとな」

 ダイダロスもあきれ顔だというのにマスターは満足気だ。

『それにしても、流石彼女ね』

「…同感だな」

 ダイダロスとマスターの見つめるモニター内では情け無用の残虐ファイトが展開されていた。

 

『うふふふふふふ〜〜〜』

『ぎゃあああぁぁ! 死ぬ! 殺されるぅ!!』

『お兄ちゃん楽しそうね。私も混ぜて〜』

『いや違うぞ! これはマジで危ないから! だから真似するなぎょええぇぇ!!』

 

 あ、カオスも参加し始めた。これでサクライトモキの未来は絶望的だろう。

 もっとも、次回までには無事蘇生している事だろう。サクライトモキとはそういう生き物だ。

「確かにあのダウナーの残虐性と戦闘能力は驚異ですね…」

「何を言ってるのだお前は。私とダイダロスが言っているのはそんな物ではない」

「え?」

 他にあのサツキタネミカコというダウナーについて見るべき所があっただろうか?

『私達が脅威に感じているのは、彼女のセンスと用意周到さよ』

「センス、ですか?」

「個人であれだけの衣装を管理、維持するのは並大抵の苦労ではあるまい」

『しかもアルファー達の性格とサイズに合わせて用意されていたわ。おそらくリサーチと下準備に余念がないわね』

 …ああ、そっちの話か。

「カオスにありったけの装備(衣装)を持たせたが、早々に更新の必要があるな…」

『単純に数を増やすのは早計だわ。内容を吟味してからじゃないと…』

 実はこの二人って仲が良いんじゃないだろうか。最近はそんな事を考えてしまう。

「…ねぇ、ご飯にしない?」

「そうね。マスターは忙しそうだしね」

 今後のカオス改造プランについて相談しているマスターとダイダロスを置いて私達は昼食を取る事にした。

 

 

「しかし、デルタが着ていたバカ殿とは何だったのだ? あれもダウナーの文化なのか?」

『分からないわ。今度スガタくん経由で聞いてみるけど』

 

 

 今日もシナプスは平和です。きっと明日も平和でしょう。

 

 

 〜了〜

説明
『そらのおとしもの』の二次創作になります。
 前回のシナプス編2からの続きですが、読んでいなくても話の流れが分かるようにしているつもりです。
 今回のテーマ:シナプスマスターとダイダロスをギャグキャラに仕上げよう!

エンジェロイド改造計画シリーズ
シナプス編1 http://www.tinami.com/view/225446
桜井家編1  http://www.tinami.com/view/231798
シナプス編2 http://www.tinami.com/view/284769
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コメント
升久野恭様へ ニンフさんは智樹に続いて進行役として便利です。逆を言えば進行役以外なら輝けると思います。それでもオチを取れるくらいキャラが濃いかというと…崩しきれないキャラの悲しい宿命ですね。(tk)
BLACK様へ 容易に想像が可能とは、かなりの猛者とお見受けします。このシリーズでのダイダロスとガタッさんは喧嘩する程という方向で行こうと思います。(tk)
これを読んで久しぶりにニンフさんが誘い系の萌えキャラであったことを思い出しました。地味な子じゃなかったんだ!(枡久野恭(ますくのきょー))
思ったより仲良いな。(ダイダロスとガタッさん)(笑)そしてヒロインズの格好は容易に想像できるな。しかし俺のリビドーを沸騰させるものではないな。(笑)(BLACK)
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そらのおとしもの エンジェロイド 別名シナプス勢改造計画 

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