怪物 |
夏という季節は一個の怪物のようなもので、その大きさは時間にして実に一年のうちの約四分の一を占める巨大さである。人は誰しも一生のうちの四分の一程度はこの怪物と顔を突き合わせて生きねばならないという点では平等であるように思える。
だが運が良ければ、つまり秋に生まれて春に死ぬことが出来れば、そうでない人に比べてわずかにこの怪物に悩まされることなく生活をやりすごすことが出来る。もちろん絶対的な時間としては、季節は決まった機序で巡ってくるものだから、年を取った者ほど長くこの怪物と接することになる。しかしその割合は減る。比率の上下は分母が大きい分、年の多いものは少なく幅がふれ、年の少ないものは大きく幅がふれる。
その幅のふれ具合を気にしながら生を全うするのなら、自分の意思と関係なく変化する、その自動的な自律的な優越感の発生の具合を測定しつつ人生が進行していくのなら、水筒の麦茶に氷を入れるのを忘れないようにする必要があると思う。
終
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短編です。 | ||
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